女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい   作:ベリーナイスメル/靴下香

8 / 39
わざわざ言う必要もない事

 あえて言う事でもないだろうが、やはり美女に起こされるというシチュエーションは性癖に左右されることなく素晴らしいものだ。

 

「起きなさい、この豚」

「ぶべっ!?」

 

 それが例え罵倒の言葉と共にあっても、である。

 

「おはよう、ございます?」

「口を開かないでください臭いです、くっさぁ」

「……」

「何か言ったらどうなのです? それともこういった言葉はご褒美でしたか? 気持ち悪い豚ですね」

 

 黙れと言われて黙ったらこれだよ! ありがとうございます!

 

 いやまぁ、なんだ。

 お言葉はともかく美女には違いないのである、このハラメントス家のメイド長様は。

 

 床に這いつくばりながら見上げた景色はメイド長様のまぶしく踏まれたら気持ちいいだろうなと思えるおみ足で、ずっと眺めていたい気持ちを堪えて立ち上がり向かい合ってみれば銀髪ボブカットの整った顔立ちがお迎えしてくれる。

 

 生憎主と違って体系はスレンダーウーマンではあるが、それが良い味を出しているってなもんで。

 

「汚らわしい視線を向けないでください」

 

 うーん、いつか聞いたことのあるセリフだよね。いつかってもちろんゲームの話だが。

 こうして面と向かってというか、画面越しじゃなくなればまた違った感じではある、よりぐさっと来る感じがとってもベネでございます。

 

 って、あれ?

 

「あの」

「黙れと言いました」

 

 いやどないせーっちゅうねん。

 

 じゃなくて、なんか違うなと思えばあれだ、赤い前髪留めがない。

 メカクレメイドも中々に良い属性ではあるが、アイリというキャラクターがするのはやっぱり違和感がある。

 

 というのもあれだ。

 確か髪留めはサティアから贈られたもので、アイリにしてみれば所有されている証であり宝物であるって設定があった覚えがあるのだ。

 

 サティアルートであれ、アイリルートであれどちらの場合でも既に装着済みだったし、何の理由もなく外すようなクレイジーサイコレズでもない。

 

 ということは。

 

「その笑みもやめなさい、極めて不快です」

 

 サティアによるお手付きがないということだろう。

 うーん、リアル化万歳と思うべきかね、それとも時系列的にゲーム開始前を設定されているのか。

 

 つまるところわからされる前という事だ、これは俺がわからせ一番乗りしろってことだよね? ヤっちゃうよ?

 

「はぁ、張り合いのないことです。まぁ良いでしょう、仕事の時間です」

「仕事ですか」

「うわくっさ。いえ失礼? 多少の発言は許すべきですね、話が進みません」

「ありがとうございます?」

 

 てめぇ絶対そのうち仕事中に背後から襲ってやるからな? 覚えておけ。

 

「あなたは従者でもなく奴隷でもない。つまり現状ただ飯食らいの立場となっております」

「働かざる者食うべからず、と」

「多少の知能はあるようで安心しました。そこで、喜びなさい。仕事を選ばせてあげましょう」

 

 ほむり、この導入はアイリルートの開始場面と似ているがやっぱり少し違う感じだな。

 

「文字は?」

「読めますよ」

 

 不思議パワーって便利だよね、異世界言語もばっちりカバーしてくれてるや。

 

 差し出された紙を受け取ろうとすればその手を離されて、何処となく鉄面皮が愉悦に歪んでいる様子をスルーしながら拾い上げて中身へと目を通す。

 

「……火トカゲの駆除、ですか」

「おや、それがよろしいので? そうですね、スミとなったのなら供養くらいはして差し上げましょう」

 

 はいはい、スルーしておきましょうね。

 

 ともあれ3つあった仕事のうち気になったのはこれだ。

 確か推奨レベルは20からのダンジョン、『火竜の庭』上層にいるモンスター討伐だったはず。

 

「もちろんただの駆除ではないことをお忘れなく」

「というと?」

「ついている頭は飾りですか? それとも中身がないのですか? あるのなら自分で考えなさい」

 

 この返事は知ってたってなもんだが、時期尚早じゃないかなと思う。

 あるいはサティアの期待の表れと考えるべきか、だとするのなら随分と期待値が高いことで。

 

「委細承知しました」

「よろしい。では、サティア様のため精々必死に働いてくるように」

 

 これ以上同じ空間に居てたまるものかと言わんばかりに足早で去っていく背中を見送る。

 

「……なるほど、ねぇ?」

 

 改めて周囲を見渡せば奴隷用の部屋でもなく従者用の部屋でもない、客人のために用意された上質な部屋だ。

 このことからサティアはどうかわからないにしても、アイリが俺をどう扱えばいいのか決めかねていることが伺える。

 

「開発者想定外ルートに居るのは間違いない。けど、示されたクエストに関してはアイリルートの物……ってことは、だ」

 

 通常の火トカゲ駆除クエストは倒した証として尻尾を20個集めたらクリアとなる。

 そうすることでアイリからの評価が少し上がり、アイリからご褒美としてツバのぶっかけを頂けるわけだが、永続デバフお断りの身からすれば。

 

「火トカゲ駆除クエストで、サティアが提示したアイテム回収するか」

 

 実のところ、サティアルートでも似たようなクエストを受注できる。

 その場合は駆除ではなく、火トカゲの幼体を回収するって形になるが、どうせなら。

 

「両方やってしまおうかね。ククク、どういう反応してくれるか今から楽しみだなぁ!」

 

 残念ながらお前らの想定内に収まるつもりは欠片もねぇんだな、これが。

 

「よぅし! そんじゃ早速、余ってるゴブリンスティックで自分を焼くかっ!!」

 

 火耐性ないと話にならんからなぁ! やってやるぜー!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。