女尊男卑な異世界で成り上がるためにはわからせとハクスラが必要らしい 作:ベリーナイスメル/靴下香
異世界らしさ、というものを感じるとすればいつ、何処でだろうか?
例えばこの微妙に不揃いな石が敷き詰められた街路だったり、立ち並ぶレンガ造りの家々だったりを見た時なのかもしれない。
「モノホンの異世界転移だったとしたのなら、そうなのかもしれないだろうけどな」
自嘲して苦笑いが勝手に浮かんでしまう。
結局のところこれはゲーム世界への転移なのだ、つまるところ画面越しではあるが見慣れた光景である。
一人称視点か三人称視点かでの違いってのはあるが、大きな違いではないように思う。
だからこそ、俺にとって強く日本とは違う場所に来たんだと実感する場面は。
「……」
「これ、だわなぁ」
街歩く女性たちの不躾な視線と、まるでペット扱いかのようにリードを引かれる男たちがいる光景だ。
「常識が違う。それを体験として実感した時こそがその時である、ってか」
漫画だアニメだで見かけたことがある奴隷扱いされている人間を見て憤るというか、何なら義憤に駆られて奴隷を助け出すとか。
間違ってもこの世界では見られないだろう、俺も当たり前にそんなことはしない。
それが世界の常識だから、ではない。
助けたつもりで実のところ殺しているも同義だからだ。
俺含めた男ってやつは女によって生かされている。
生きる糧を得るためという面でもそうだし、何より腹の中に抱えている欲望を叶えてもらうために女が必要で、そのために喜んで女へ尽くす。
形が少し露悪的かつ即物的になっただけで、案外現実世界の結婚生活なんかもそういうモノなのかもしれないけれど……。
「なんて、な」
思わずおセンチになってしまったが切り替えよう。
火竜の庭ダンジョンは名前の通り雑魚モンスターであっても火属性の攻撃を仕掛けてくる。
ハラメントス家を出る前にゴブリンスティックを使った自傷レベリングで火耐性はレベル5まで上昇したがこの程度じゃあ焼け石に水もいいところ。
「予定、狂っちゃったしなぁ」
改めて思ってもいきなりサティアをご主人様に出来るとは思わなかった。
精々が中流階級のご主人様を仰ぎ、最初のダンジョンは推奨レベル10あたりから。
そこでいい感じにレベリングしてRPGパートは無双でとか考えてたけどチャートの変更を余儀なくされた。
「不幸中の幸いって言うか、ゴブリンナイト装備一式をゲットできて助かったわ、いやほんと」
セット装備効果としてこいつは自分よりレベルが低いエネミーに対して必ずクリティカルが発生するって特性を持っている。
元々の装備性能的にモンスターレベルが20あたりから実用的ではなくなってくるが、それでも格下殺し性能は極めて高く、序盤のレベリングでは最高効率を叩きだすと言えた。
「レベル15、か」
レベル10は超えただろうと思っていたけど、少し行き過ぎた。
レベルアップで上昇するステータスにはスキルレベルによる補正が入るから、原則としてスキルレベルを上げられるだけあげてからレベルアップするのが望ましいんだよね。
「とりあえず、火耐性を伸ばすのはマストだな。レベルパーセントそのまま軽減だし、最低でもレベル50は欲しい」
時間をかければどういった手段でも可能ではあるが、ご主人様クエストは基本的に早くクリアすれば早くクリアするだけボーナスが入ることもあり、あまり時間はかけたくない。
「となると……アレだな」
火耐性以外に手に入れないといけない『捕獲』と『採取』スキルもある。
四の五の言ってられないとまでは言わないが、リアルタイムアタック勢に感謝の気持ちを捧げながら。
「ゴブリンの炎、あったかいなりぃ~」
チュートリアルダンジョンへ再突入し、ゴブリンメイジのファイア・ボールを無抵抗で受ける作業を始めよう。
こうして気軽にダンジョンへ突入できるのは上流階級ご主人様を持てたメリットだよね。
基本ご主人様の社会的地位やレベルによって自由にダンジョンへ行き来できるかどうかが決まるからさ。
「ゲゲッ!?」
「グゲッ」
レベルは上げたくない、でも火属性耐性は欲しいなんて我儘を満たす手段と言えばこれ。
あるいはRTA走者のガバリカバリー策としても用いられることがあったりもするゴブ炎浴は実に効率的だ。
「おっと、アイツはそろそろか……よっと」
「ギャワッ!?」
ゴブリンメイジの湧きスポット、その最大数は20匹前後である。
レベルが8以上、そして装備が初級以上かつ火耐性がレベル5以上であればゴブリンメイジのファイア・ボールは丁度ダメージが1となり、一度のターンで火属性攻撃を最大20回、20点貰えることになる。
どんな攻撃も耐性を無効化までレベル上げないと1点のダメージを貰える仕様万歳だ。
後はHP切れに注意しつつ、魔力切れになったゴブリンメイジを適当に間引いておけば問題なし。
ゴブリンメイジから得られる経験値はもう小数点以下にまで低いし、レベルアップへの影響も多くの意味で無くなる。
「まぁ、6時間ってところかな?」
火耐性レベル50までそれくらいの時間ここに座り続けたらいいだろう。
今回はちゃんと時計も持ってきたし準備は万端、後は途中気が向いたら魔力切れのゴブリンメイジに向けてロープをひっかけ捕獲スキル習得、引きずり込んで素材部分の切り取りをしたら採取スキルも習得できる。
スキルレベル50以上は基本的にガチで効率考えなきゃマゾいどころの話じゃないし、こんなところで目指すようなもんでもない。
「うーむ、パーペキだね、我ながら」
走者の方々には足を向けて寝れませんな、ガハハ。
「がんばれ♡ がんばれ♡ ゴブリンメイジ君がんばって炎だせっ♡ ……うーむ、キモ過ぎおつであります、俺」
とりあえず大人しくファイア・ボール貰いながらアイリクエストの攻略方法を考えることにしましょうか。
そして。
「このクエストクリアしたら、どーなるかなー? 楽しみだぜぃ!」
鉄面皮が歪むところ見たい、見たくない? なんてね。
クールビューティーのイイところはわかっているつもりだけどさ、やぁっぱ崩れる所にぞくっとしちゃうよね? 紳士としては、さ。