シャアのいない宇宙世紀で   作:ギレンの野望大好きおじさん

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第10話 最強が対峙する宇宙世紀で

 

 

AEグリーンノア01工場の敷地を6人の男女が歩いている。

 

パプテマス・シロッコがその伝手で入場枠を入手して知己を招待している。

 

カミーユ・ビダン。

ファ・ユイリィ。

フラウ・ボウ。

ララァ・スン。

そして、ミライ・ヤシマ。

 

何故ミライがここにいるのかというと、彼女はシロッコの秘書だからである。

 

ミライはアムロと同じ航宙大学のOGで、就職活動前にアムロ絡みで度々大学を訪れていたシロッコに研究所にスカウトされたのだ。

 

はじめは直感目当てであったシロッコだが、大型航宙船舶免許や第二種航宙免許を在学中に修得する他、研究所に入る頃には彼女がここで必要と感じた資格を取得していた事もあり、入所早々に自分付きの秘書に取り立てている。

 

しかも度々予定を変更するシロッコの移り気を、その直感でスケジュール管理しており研究所からは入所一年で大黒柱扱いだ。

 

ミライは原作通りモテるので、大学でも複数男性から言い寄られている。

あいにくスレッガー級のイケメンは居なかったので、そういったロマンスはなかった。

そんな折、アムロの入学後シロッコが大学を度々訪れ、スカウトを受ける。

 

ここのシロッコは似非では無く、普通に紳士なのでミライからはこの時点でカムランより好感度が高い。

早々に就職先を決めたミライは、その洞察力と観察眼でシロッコの移り気故の空回りがちな才気を、親のように気にかける様になる。

 

実はシロッコ、ミライの一つ下である。

 

こうして卒業までの二年間、シロッコとアムロの子供っぽいやらかしを嗜め、フラウからも大いに頼りにされた。

そしてアムロと違って、何度も食事やプレゼントという形で返礼している。

このころ既に他の男は寄り付かなくなっていた。

 

ここでブライトであればプロポーズしたであろうが、ここのシロッコは家族に幻想を抱く拗らせた童貞野郎だ。

出自は受け入れたが、己がそこに行くのは想像出来ない。

おままごとみたいな家族関係が限界だった。

 

そんな訳で、ここではミライから告白している。

シロッコからは絶対に無いので、それを理解した彼女は卒業と共に行動にでた。

此処でも想定外に弱い普通の天才が「お袋さん」に勝てるわけもなく、公私両方で世話される様になる。

 

そんなわけでまだ入籍していないが、シロッコ夫妻に連れられてカミーユたちが、本日アムロが参加するエキシビジョンを見学に訪れたのだ。

 

「確か、今日はポールアウトだったか?」

 

「そうみたい。アムロさんがトップバッターね」

 

パンフレットを見ながら、ファがカミーユと並んで歩く。

 

「アムロも有名人の仲間入りか〜。またモテるんだろうなー」

 

「一過性、とはいかないでしょうね」

 

フラウが来るべき未来に悩み、ミライも溜息を吐く。

 

「大分、強い子がいるのね……」

 

「クク、世界は広いな。実に興味深い」

 

呟くララァに、シロッコが同意する。

 

ハマーンの闘志が、この先の仮設エリアから流れてくる。

悪意は無く、純然たる闘志ゆえカミーユとミライは気付かない。

 

サイコミュ無しで、それに近しいレベルに感覚を尖らせている──同時に情報の取捨選択も可能な──ララァと、それに師事しているシロッコはハマーンの精神が安定している事に驚く。

 

身近なカミーユが思春期な事もあり──家庭事情も大きいが──精神状態が不安定で怒りっぽい。

 

ここのハマーンはフラナガンを経ていないので、状況的にはミライに近い。

家族に恵まれ、交友関係も順調で、趣味も親どころか企業の支援で湯水の様に金銭が注ぎ込まれている。

よって史実と異なり、アムロに近しい戦闘特化型NTとして成長していた。

 

 

 

 

 

ゴゥッ!!!

 

開始の合図と同時に、ハマーンが駆るギャンが高速で踏み込み、ポールの突き込みがアムロのネモの頭部に向かって一直線に進む。

 

『速いッ! だが!』

 

彼女が過去幾度も見せた速攻戦術だ。

初見勝利率は驚異の100%、まあ無敗なのでどんな戦法でも勝率100%だが。

 

当然、来るとわかっているのでバックステップで避ける。

 

『フッ!』

 

ハマーンとて、避けられるのは承知の上だ。

 

ポールが火花を立てて、突き出した右腕のマニピュレーターとガリガリと擦れる。

握りを緩めて、およそ4mの射程を延長したのだ。

当然、石突部分を掴み損ねればポールを失い敗北に繋がる。

 

だがハマーンがその様な操作を失敗る事はなく、必殺の刺突が──。

 

『やるっ!』

 

アムロが上体を半身に傾け、避ける。

 

空中で半身を動かし、エリア内に着地する。

相当の熟練者でもこの挙動をすると、たたらを踏むか倒れるが、アムロはその運動エネルギーを慣性に乗せ、前方の左脚を支点に半回転、その勢いをポールに乗せてギャンの頭部を──。

 

『アレを、避けるか!』

『コレを、避けるか!』

 

舌打ちして、ハマーンはギャンを屈ませて反撃の横薙ぎを回避した。

 

「ハマーン!」

 

パドックでアマテが叫ぶ。

 

開幕の攻防で、二人の実力が拮抗していると解る。

故に、機体の性能差とパイロットの年季が勝敗を分ける。

 

画面の先では、再びギャンが連続で繰り出す刺突を、ヌルヌルと回避しながら時折カウンターを挟み込むネモのそれを、ギャンが大きく避ける。

 

素人目にもギャンが不利に見える。

 

まだ浅いとはいえ、アマテにも性能差を覆せるだけの実力差は見出せない。

逆にモニタに映るハマーンの表情は笑みが浮かんでいる。

アマテにはまだ分からないが、自分を超える好敵手の出現に歓喜している。

 

常勝無敗の戦績は、いつしか勝利の喜びが虚しさに変わりつつあった。

それがアマテに構う一因かもしれない。

意義のある敗北を、そうでなくとも手応えのある戦いを──。

 

ハマーンは自嘲する。

 

しかし、精神は澄み渡り感覚が研ぎ澄まされてゆく。

 

目の前の相手は加減をしている。

おそらく機体性能に差がなければ、もっと本気で来ていただろう。

ネモに乗った自分には解る。

このルールでは、MWの世代格差を覆せない。

 

既に何度かギャンの可動限界を見過ごされている。

デモンストレーションとして、映像の映えを考えた立ち回りをしていた。

それが堪らなく悔しく、この先が開かれて──。

 

「ハマーン! がんばれ!」

 

アマテの声が思考をもどす。

 

勝てと言えないアマテの葛藤を感じる。

 

──負けてもいいと、負けて当然は違うか。

 

こちらの意識が変わったことに気付いた相手が、距離を取って仕切り直してくれる。

ポールアクションを交え、ズッシリと構えた。

 

相変わらず、単純な女だ──と、再び自嘲する。

 

『ありがとう、マチュ』

 

親友の応援と、勝ちたいと思えるだけの相手に勝利への渇望が沸々と湧いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

VIP用に仮設された特別室で、シロッコ一行がアムロの戦いを観戦していた。

 

「次の攻防で終わりますね」

 

仕切り直した二機の動きに、カミーユが話しかける。

 

「ああ、もうギャンの関節が動きについてけていない」

 

シロッコが頷く。

彼は腕部をフィールドモーターに換装したことで、下半身の構造がエネルギーを受け止めきれていないことを見抜いている。

速攻で決める機体バランスで、長期戦に持ち込まれれば当然の結果だ。

 

「アムロらしくないわね?」

 

割と勝負事には容赦ないアムロが、この様に加減を見せるのは珍しいと、ミライが首を傾げた。

フラウも頷いて同意する。

 

「プロモーションですからね。アムロの方には試合を長引かせる様要請されているはずです」

 

見せ物ですよ、とシロッコは笑う。

 

「カミーユが怒らないなんて!」

 

こういったことに直ぐ憤るカミーユが、反応しない事に驚くファ。

 

「CM撮影にまで文句言うかよ!」

 

流石に真剣勝負ではない試合の段取りまで怒り出すほど短慮ではないと頬を膨らます。

とは言え、アムロのお相手は可哀想だなとも思う。

 

──あれ? 初めの攻防、アムロさんも決めにいってなかった?

 

「動くぞ」

 

シロッコが促したことで、カミーユも試合に集中する。

 

「──白い方が、勝つわ」

 

ララァが告げる。

 

カミーユは内心で、どっちも白い! と突っ込んだ。

 

勿論、ジョークだ。

 

動いたのは、ギャン。

半身に構え、片手で深く持ったポールを最速で突き出す。

先程までの両手持ちの突きとは速度が違う。

 

が、その突きを両手で保持したポールで、クルリと絡め取るように片手で端を保持したギャンの手からはたき落とした。

 

「なにそれッ⁉︎」

 

パドックでアマテが悲鳴を上げる。

 

「流石だ、アムロくん」

 

対面のパドックでボッシュがニッコリ笑った。

 

得物を失い、ギャンが降参を示して両手を上げる。

残心を残したネモが構えを解き、試合終了のブザーが響いた。




・内容補足のためのあとがき

カムラン、ミライに振られる。
これはブライトなしでも変わらないっぽいですね。

で、平和だとミライさん普通に進学すると思うんですよ。
そしたら本作の航宙大学に進みそうで、年齢調べたらアムロの三つ上でシロッコの一つ上。
その優秀さはシロッコの目に止まるでしょうし、自立した女性は彼の好みですしね。

で、シロッコの秘書にして出したあと調べ直したら、案外恋多き女でして。
スカした態度なのに、所々ガキっぽいここのシロッコが案外相性悪くないな? と。
史実と違って真摯な生き方しているので、まあくっつけても構わんか。

実はハサウェイ生まれる予定なかったのですが、なんやかんやあった結果シロッコの息子に。
どういう人生送るのだろう?

クェスは政府官僚の娘なのでいるけど、ギギが生まれる頃に、ここでは来年か?
もう地上に貧民層、存在しないんですよね。
北米の特別居住区のスラム出身なら或いは?

もう出すと決めたし、ハサは今年仕込まれて来年誕生。
クェスはもう5歳か、絡んだらおねショタになっちまう〜。

この宇宙世紀、軍がしっかり線引き守ってコロニー内に入ってこない。
おかげで接点が作れない。
すまないブライト、お詫びに大将になれる昇進ルートをあげる。

ハマーンvsアムロはアムロに軍配。

決定打は年季の差。

免許取ってから2年の女子高生と、免許取得後大学で4年間MW乗り回していた自由人とじゃ勝負になる訳もなく。

MWの世代差もかなりの割合。

史実的には、ガルバルディαとバーザムぐらい差がある。
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