シャアのいない宇宙世紀で   作:ギレンの野望大好きおじさん

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第11話 キラキラな宇宙世紀で

 

 

 

僅か数分であったが、その何倍もの精神的消耗を感じながらハマーンはパドックへとギャンを動かす。

 

「……2年、いえ1年MWに専念すれば」

 

おそらく、同じ機体であれば十本中二本は取れる。

ルールのある競技だからこそ、詰みに持っていける。

 

MWの操縦時間は及ぶまでもない。

しかし、今日の相手が野試合をしたとは耳にした事はない。

 

対して、こちらは軍用機を除いて市販のMWはあらゆる組み合わせで対峙してきた。

流石にGP01を持っていた相手はいなかったが、対MW戦は誰にも負けない自信があった。

 

思考が煮詰まっている自覚があった。

思っていた以上に、敗北が堪えている。

 

それでも身体は思考に乱れに揺らぐ事はなく、ハンガーに機体を固定させた。

一息入れ、操縦桿から手を離す。

 

「あ……」

 

コクピットに向けてタラップが伸ばされ、その先にはアマテがいる。

 

いや、アマテだけではない。

おそらく管制に詰めているスタッフ以外は勢揃いしている。

 

これまで試合終了後はハンガーに戻る際も、スタッフに報告や声掛けは欠かさずおこなっていた。

チームのオーナーは父だが、現場で率いているのはハマーンだ。

 

コロニー世界でMWは数年前に導入された新しい概念であり、モータースポーツは地上と断絶された半世紀で失われた文化だ。

これらを手探りで構築しているのが今だ。

 

ハマーンはこの娯楽文化の構築にその才覚をもって全力で当たっている。

学業は主席、生徒会を取り仕切り、それでも余裕を持ってAxizを率いている。

弱冠十八歳でありながら、チームの代表として遠征の際には折衝にあたり、市議会との協議や企業との企画にも参加している。

スタッフ一人一人にも気を配り、面接にも立ち会い、配置も指揮している。

普段であれば、ここでの沈黙はあり得なかった。

 

故に、今回のハマーンはアマテのみならず全てのスタッフからの心配が向けられていた。

 

負け慣れていない。

いや、慣れるのは不味いが、取り乱すのは良くなかった。

 

「……不甲斐無い」

 

己が失態に苦笑する。

ヘルメットを脱ぎ、顔を両手でほぐす。

 

アマテの思念がコクピット越しにも伝わってくる。

 

「心配、させてしまった……」

 

コクピットハッチが開き、タラップの向こうに顔を歪めたアマテが見える。

思わず笑みが浮かぶ。

そこまで悔しがらなくてもいいのに、と先程までの己を棚に上げるハマーン。

 

「皆、心配をかけたようね」

 

「ハマーンッ!」

 

コクピットから出て、周囲を見渡すハマーンにアマテが抱きつく。

 

「アイツ、白黒のアイツ! アイツ狡いんだ! 私たちが放課後から頑張ってるのに!」

 

アマテの憤りが周囲に響く。

 

試合終了後に漸く確認できた対戦相手の詳細。

 

スタッフがアムロの搭乗時間が5000時間を超えていることに、驚愕の声を上げ、軍の作業員だってここまで乗っている奴はいないと慄く。

MW免許の実技講習は凡そ20時間、アマテがAxizに加入してから搭乗したのは50時間ほど、ハマーンでも500時間は超えていない。

 

大学生が暇な時間をMWに注ぎ込んで、私たちに立ちはだかっている。

 

──アマテは激怒した。

 

そして今、怒り心頭のアマテがハマーンを見上げる。

 

「マチュ……」

 

どうやらハマーンが落ち込みを見せなかった事で、対戦相手への敵愾心が心配を傍に退けたようだ。

 

しかし、あれを見てなお意気込む様子に内心安堵する。

 

「次は、マチュも手伝ってくれるのでしょう?」

 

本格的にMWに乗り始めたアマテは、一対一の読み合いは不得手としてハマーンとコンビを組んでの航宙機動を重点的に訓練している。

 

今日のプログラムはこのポールアウトを複数行った後、精密作業や出力競争などの閉鎖環境プログラムになる。

 

そして、翌日は宇宙に演習場所を移し、幾つかの競技が行われる。

 

パプテマス粒子を利用したビーム・ペイントを使う『スプラッシュ・ビーム』と、ビーム・フラッグを使う『フラッグ・レース』が予定されている。

 

その内の『スプラッシュ・ビーム』にハマーンとアマテはコンビで出場登録している。

 

「うん、絶対に負けない!」

 

「そうね」

 

アマテが力強く頷く。

ハマーンもそれを受け、周囲を見渡す。

 

スタッフはハマーンの様相に安堵し、アマテを残しそれぞれの仕事に戻っていく。

 

「これから挨拶に行くけど、マチュはどう?」

 

「……行く」

 

お礼参りだね! と意気込むアマテに、違うわよと頭を撫でながらハマーンは笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、ここまでできるのであれば盛り上がりは問題ないでしょう」

 

軍の中央から派遣されたという男の賛辞に、アナハイムのスタッフたちは安堵の息をもらす。

実際、MW開発部のテストパイロットでもあそこまでの激闘は難しかったはずだ。

 

「ギレン閣下もこの催しには協力を惜しまないと仰せでした。広報艦隊の派遣も決定しています」

 

艦政本部の長の思いがけない厚遇に、喜色とともに困惑を見せる。

 

観艦式の一切を取り仕切る艦政本部直轄の広報艦隊は、現在民間報道機関が宇宙空間での活動を禁じられているため、唯一の地球圏全体の情報発信源となっている。

 

なお、禁じているのは連邦政府だ。

改正は出来ない。

コロニー住民には参政権がないので。

 

こういう時、軍は政治不介入を建前にする。

情報を統制したいので、政府には矢面に立って批判されていただきたい。

 

反面、サイド内での報道活動は活発で、軍の情報ネットワーク開放後は様々な報道機関が乱立し、官報と揶揄されるアナハイム・ネットワークとルオ商会のコロニー・ジャーナルが二大マスコミとして鎬を削り、行政府の各サイド官営放送とバンチ毎の民放が脇を固めていた。

 

「全波通信を行うとの事です。全てのコロニー住民に祭典を知らしめんとするようですね」

 

続く男の言葉に言葉を失う。

 

宇宙軍は、観艦式の衝撃をもう一度再現するつもりだ。

 

既に観艦式はスペースノイドの日常に組み込まれている。

新たな娯楽枠としてこの祭典が選ばれたのだ。

アナハイム上層部としては願ったりな話である。

こういった餌を欠かさないことが暴走を抑えているのだろう。

 

「本放送はアナハイムに一任されます。閣下も期待しておられますよ」

 

男の言葉に、スタッフ一同に緊張とやる気が漲る。

 

目の前のスタッフは月から派遣されている。

この話は直ぐに本社に伝わるだろう。

 

連邦宇宙軍中佐、シャリア・ブルは満足げに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アムロさん! 最後のやつ、凄かったですよ‼︎」

 

カミーユが興奮しながら、手振りで先程の顛末を語る。

ファが、落ち着いてと裾を引くが気が付いていない。

 

「あれはマグネット・コーティングであっても、かなり難しい動きであったと思うが?」

 

シロッコも疑問を尋ねる。

ここのシロッコは純粋に技師なので操縦技能は原作に劣る。

 

「アレは先読みあってさ。演武、見せただろう? そっちと同じで、皆で悪ノリして遊んでいた時のプログラムを流用したんだ」

 

パイロットスーツのまま観戦ブースに訪れたアムロが苦笑して肩をすくめた。

本来、スタッフを交えての感想戦と機体情報の報告だが、ボッシュがフラウたちに気を遣って送り出したのだ。

 

「ここで話に混ざると、アレだから貴方も大変ね」

 

ブスっとしたフラウをミライが慰める。

グリーンノア統合航宙大学は所謂国立大学なので、卒業論文で手一杯のフラウは大学であまりアムロと絡めないのだ。

アムロは既に軍工廠に内定が決まっているので余裕だ。

 

三歳年上のボッシュはアムロと卒業を合わせるために大学に留まっている。

気持ち悪い男だが、こいつも軍工廠行きだ。

 

「あら?」

 

そんなアムロたちを微笑んで眺めるララァが、ハマーンとアマテの接近に気づいた。

 

「ん?」

 

続いてアムロが二人に気づき、一旦話を打ち切る。

 

近づく二人に、カミーユがむず痒そうな表情を浮かべ、シロッコが不敵な笑みをつくる。

 

「いい試合をありがとう」

 

「ええ、こちらこそ。ためになる試合だったわ」

 

アムロが二人に近づき握手を求め、ハマーンもそれに応える。

 

「グリーンノア大学の4年、アムロ・レイだ。所属しているMW同好会がアナハイムと昵懇でね、ここに呼ばれている」

 

「リーアのAxiz代表、ハマーン・カーンです。明日の宇宙演習はどうされますか?」

 

簡潔に自己紹介を済ませ、早々に翌日に予定を尋ねる。

 

「ああ、出るよ、勿論。明日も俺らがオープニングだ。相棒共々よろしく頼む」

 

アムロも戦士の気風を持つ男だ、ハマーンの挑戦に気づいて不敵に答える。

 

「そう、でしたか……」

 

やはり、あちらが主賓か。

招かれた自分達と異なり、相手はプログラムの詳細を知っている様だとハマーンは納得する。

 

「あのギャンは面白い構成だったな。てっきりグフでくると思っていたから」

 

「こちらもネモには驚かされました」

 

アムロの感想に、次世代の最新鋭機を持ち出したことを揶揄する。

まあ、こちらも一般には出回らない高級機を持ち出したのだ、大人気ないのは共にだろう。

 

「ああ、ネモはな……アナハイムが是非にと言ってきてね。MPに導入させたいらしい、コロニー内はジムで十分だろうにな」

 

割とノリノリで持ち出したが、しれっとアナハイムに責任を押し付ける。

冤罪ではないので問題ないだろう。

 

「ネモ! アレはズルじゃん!」

 

「グリーンノアは行政府付けなんだからネモがあるのは変じゃないだろ。ギャンなんて持ち出して何言ってんだ」

 

アマテが唸り、カミーユが呆れてツッコミを入れる。

 

「はぁ? 割って入らないでよ!」

 

「そっちがアムロさんたちに割り込んだんだろ!」

 

アマテの標的が変わり、カミーユもそれに応戦する。

 

「ちょっと、カミーユ!」

 

ファが慌ててカミーユの腕を掴む。

シロッコがニヤついてその様子を眺め、ミライがその悪癖にため息を吐く。

 

フラウが仲裁をアムロに促そうと席を立ち、ハマーンはアマテの肩を抑える。

 

「おや?」

 

そんな中、翌日の宇宙演習前顔合わせでもと、シャリアがブースに訪れた。

 

「まあ……」

 

どこか人事のように呟くララァ。

 

刹那、ハルシネーションが彼らを包み込む。

 

「キラキラだぁ……」

 

アマテ・ユズリハの声が空間に響いた。

 




・とくに話すこともないあとがき

GQuuuuuuX組のNTは多分出ませんね。

エグザべくんは地元の警備部隊に入っているでしょう。

シイコさんは前歴がわからなすぎて、スガイ性かも分からん。
撃墜数的に地上戦経由だと思うんですが、ここだとあのバスクが消耗する地獄の非対称戦。

まあ、原作とは違う理由で軍は辞めてそう。

ソドンの面子は内戦時に多分移住しているので平和に暮らしているでしょう。

カネバン有限公司はザビ系企業の孫請けあたりにいるかも。

シャリア・ブルは木星船団→連邦宇宙軍に移籍。
ジュピトリスをグワジンに更新しているので人員整理も兼ねています。

原作よりギレンが使い回していますが、スペースノイドはまあまあ自立しているんで暗躍もしていません。

NTも概念が広まっていない所か、そもそも認識されていない。
シャリアの自認も、無茶苦茶勘のいい人間といったところ。

シャアもセイラさんもいませんしね。
ヤルオも責任は果たしたとジオニックで遊んでいますし。
そもそもダイクンの名に重みもありません。

ここでは茶色の連邦軍服を着ているので、茶色おじさん呼ばわりされるでしょうね。
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