シャアのいない宇宙世紀で   作:ギレンの野望大好きおじさん

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第5話 宇宙に集う宇宙世紀で

 

 

宇宙世紀も80年代に入ると、一時九十億を割り込んだ人口も再び百億に近づいてきた。

 

地上はジャミトフ率いるティターンズがスチームローラーの如くアースノイドを引き潰し五億を割り込んだが、65年以降ベビーブームが到来した宇宙では最古サイドのサイド1・ザーンは人口三十億を突破し、新造コロニー建設が追いつかず、サイド3、7へとその多くが移住した。

 

コロニー経済は60年代までアナハイムが事実上の独占企業として君臨し、民需を牛耳っていた。

しかし、65年以降はアナハイムが軍の大規模事業を受け持ち、規模の小さいコロニー内の民需や流通を各サイド企業に委託していく。

これが各サイドで新たにベンチャー企業が立ち上がるきっかけとなり、飲食業・娯楽産業を中心に栄枯盛衰の様相をみせていた。

 

70年代にサイド3が内戦を終えると、軍はコロニー間通信の規制を緩和。

これまでバンチ毎の通信にも規制がかかっていたことから、サイド内での通信回線が爆発的に増加、ここにルオ商会など後発財閥がアナハイムの隙をついてネットワーク産業を立ち上げた。

 

ここでアナハイムは軍に規制を要求するが、軍は逆に自由化を促進し、宇宙軍ネットワークを一先に各サイドと月に繋ぐと、各企業の競争を後押しした。

 

こうしてアナハイムとルオ商会の通信戦争が勃発、個人端末が爆発的に普及し娯楽産業拡大の後押しをした。

 

この動きに地上は取り残され、通信阻害もそもそも通信施設が軍事施設以外は特別区居住区を除き失われたことで実質役目を終えている。

 

また地上の上級市民も娯楽産業は既にコロニーに上回られ、古典芸能と美術観賞が宇宙にない高尚な娯楽として虚勢を張るしかなかった。

しかし、分母の少なさは才能の上限を狭める。

エリートのエリートたる教育を以てしても芸術技能の散逸は時間の問題であった。

 

一部は血の拡散でこれを維持せんとしたが、時代錯誤の行動は愛憎からくる血の惨劇や、血統と才能の逆転とそこから派生する差別がエスカレートし、早々に家ごと潰えることとなる。

 

こうして特権階級のエリート層の地球脱出も次第に始まり、連邦空軍・海軍も人員の維持の為、陸軍からの異動を受け入れざるを得なかった。

 

所謂棚ぼたで三軍全てを影響下に置いた陸軍総司令官ジャミトフ・ハイマン大将は、宇宙歴0083年に地球環境保全開始を宣言。

特別居住区を除く地球上から人類を排除した彼は、三軍共同の環境回復計画を始動。

 

凡そ二十億のアースノイドを殺戮した男は、その戦果をもって連邦議会を掌握した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宇宙へ上がるのは、初めてだったな。体に問題はないか?」

 

ジャミトフがシャトルの同行者を気遣う。

彼自身はこの浮遊感は好きではない。

 

「はい、閣下。問題はありません」

 

同行者の女性、ララァ・スンが微笑んで答える。

 

「……バスクが貴様を連れて来た時は、気でも違ったのかと思ったぞ」

 

ララァと邂逅した時を思い出し、顔を顰めた。

 

あの使い辛い巨漢が、何処ぞの娼婦を引っ張って来たのだ。

本当にどうかしたか驚いたものだ。

 

「あの時の中佐は、色々と鬱屈しておられたので……」

 

館の子供達に当たり始めたので、少し深い所まで読み取ってしまった。

そしたら女神と騒ぎ始めた、やり過ぎだった。

 

「今は落ち着いたが、アレがそのままであれば後方に送っていた」

 

そうため息をついた。

 

「お前の様なエスパーは、どうするのが正解なのだろうな?」

 

出会った時を思い出す。

 

バスクに連れられたこの女はジャミトフを見て、何回か言葉を出そうとして躊躇い、

 

『──一度、王にお会いする事が貴方の望みへの近道、とお考え下さい』

 

預言者の様な振る舞いを見せた。

 

これにバスクが、閣下の悲願が叶う時ィ!!!!!!! とまた騒ぎ出したので二人とも退出させた。

 

この女の、おそらく予言。

少し考え、王に当たるであろうゴップを思い浮かべるが、彼は既に軍を退き評議会議長の座に座っている。

 

で、あれば彼の後継たるギレン・ザビが今の王か。

 

「そういえば、ジャブローでも会ったことは無かったか」

 

そう考え、すぐに連絡をとる。

すると、待っていたかの様にアースノイド排除後の具体的なプランを求められた。

すぐさま腹案を話すと、文書での提出と全権の委任が任された。

 

成程、バスクがおかしくなるわけだ。

 

その後、北米の上級市民の変遷と海軍司令部のキャルホルニア・ベース、空軍司令部のベルファストから相当数が宇宙軍へと異動をしているという情報が送られてきた。

 

それを元に子飼いを何人かを送りだし、地上軍を掌握する事ができた。

そのまま、トントン拍子に話が進んで自分の望みが叶おうとしている。

 

自分には、このララァという女は手に余る。

 

かといって、地上に置いておくのは不安があった。

 

始末するには借りがある。

 

故に、上司に投げる事にした。

 

「──私に、世界を動かすような力はありません」

 

おそらく思考を読んだ上で、熟考したであろう返事がきた。

それは、そうだろう。

望む未来を選べるならば、あの場所にはいないだろう。

 

だが、方向を変えることは出来る。

 

ギレン、或いはゴップであれば使い方を誤る事はあるまい。

 

届いてしまった自分と違い、あの二人が目指す先はまだ遠い筈だ。

宇宙の安定が、己が望みにつながる。

 

「ああ──本当に、宇宙が蒼い」

 

ララァ・スンが感嘆の声を洩らす。

 

確か、ジオンが人が宇宙に上がる事で真なる革新を、などと嘯いていたが、これがそうなのか?

 

ララァ・スンが何処まで至るのか、宇宙の支配者がそれをどう見るのか、一抹の不安を感じるもののジャミトフの手にもうバトンは無い。

 

この先の結果を待つしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、だなララァ・スン」

 

ジャミトフに連れられ、ギレンの執務室に訪れたララァは挨拶を終えた二人に続いて、頭を下げた。

 

そして声をかけられ、不思議な感覚が身を包んだ。

 

目の前に居るのに、何も見えない。

思わず表情が固まった。

 

「読めない、だろう? シロッコも驚いていたぞ」

 

「シロッコ? あのパプテマス粒子の?」

 

愉悦を含んだギレンの言葉に、ジャミトフが反応する。

 

「読み辛い人間は居ても、お前クラスが一切触れられないのは驚いただろう? 気にするなと言っても難しいだろうが、本当に偶然だ。加えて言うが、気にするな」

 

ララァの能力を知っているかの様な口振りに、ジャミトフの背に冷たいものがつたう。

 

「聞いていくか? ジャミトフ・ハイマン」

 

スピリチュアルでオカルトな話だが、とギレンが笑う。

 

逡巡するが、頷く。

ララァ・スンが浮かべた表情が、聞く事に方向に傾けた。

 

「さて、オカルト的に言えば超能力者だが、そう便利なもので無いのは今見ての通りだ。物理的に干渉出来た例はまだ無く、思考が読めてもそれを誘導出来る人間は、実は少ない」

 

「そうなのですか?」

 

はじめに見たのがララァだったジャミトフが驚く。

 

「そう、思考を読んだ上で相手に反発されない言葉選びが必要になる。そのまま言葉に出せば不快感を感じるからな」

 

そういえば、と出会った時を思い出す。

あの時、何度か言葉に詰まっていたか。

 

「その程度には不便で使いづらいものだよ、本来は。お前ぐらい使いこなせるのは万に一人ぐらいのものだ」

 

史実のニュータイプを見れば納得するだろう。

お互いに分かり合えたニュータイプがどれだけ居たか。

人間、そんなにわかりやすくは無い。

朝令暮改は当たり前だし、付和雷同な行動は何処にでもある。

その時の心理を絶対と思い込んでぶつかり合うのが一般的なニュータイプだ。

何がニュータイプだ、読んだ上で人となりを考え、理解し合えるのが真なる革新ではないのか?

 

「結局、勘がいい程度の人間が大半だ。鋭すぎると却って反発されるのだ、とてもニュータイプなどと言えたものではない」

 

「ニュータイプ?」

 

ギレンの言葉に疑問を感じたララァが首を傾げる。

 

「……失言だ。ジオン・ズム・ダイクンの妄言の果てだな」

 

そう、苦笑して答えた。

 

人体実験や軍事利用をしない事を告げようとしたが、ジャミトフがどう曲解するか分からない。

一年戦争を経由しないニュータイプを、世界がどう反応するかなどやってみなければわかるまい。

 

──アムロ・レイに押しつけるか。

 

キャスバル坊やは居ないしな。

 

「ジャミトフ、ララァ・スンは私が預かろう。養子縁組でもすれば近付くものもおるまい」

 

イングリッド・ゼロをうまく御したゴップ閣下に倣うとしよう。

思考を読まれないのをいい事に勝手な事を考えるギレン。

 

権力者の後ろ盾を得たことに一応の安心を得たジャミトフは敬礼で応える。

 

ララァは表情から悪い事考えている事は読み取るが、その言葉には悪意を感じなかったのでこれも素直に応える。

 

何か、体が軽くなった気さえする。

 

ギレン・ザビが言葉にした事で、ララァ・スンは自身の力が型にハマったと感じる。

 

──ニュータイプ。

 

ギレンはこの言葉を好きではない様だ。

だから言葉にはしない。

 

しかし、自身のこの感覚は、そうとしか形容するしか無い。

間違いなく感覚が広がっている。

外の雑音は無視して、もう一度目の前の男を見る。

 

やはり、見えない。

 

分からないことが不安で、好奇心に心が震える。

 

──ああ、刻が見えればいいのに。

 




・言い訳の様なあとがき

今回はララァの話。

出す予定は無かったのですが、巻き込まれて死ぬ光景が見えなかったので。

シャアの代わりに連れ出す候補が、よりによってバスクかジャマイカン。
ジャマイカンは自分で独占しそうだったので、バスクの様子がおかしくなりました。

ジャミトフも悲願達成間近なので持て余してギレンにパス。

ギレンの思考ブロックは相方の転生特典の一つ。

ヤラナイオ(仮)ガードでニュータイプの読心を防御しています。



書く予定はないので、ララァのその後。

サイド7の航宙大学に通うアムロの元に現れる謎の女、ララァ・スン。
付き合っていたつもりのフラウ・ボウに、ストーカーっぽくなっているハヤト・コバヤシ。

肝心のアムロは母親の件で女性不信気味。
デートよりも機械いじりが好きな、若干オタクな20歳。

果たしてこの四角関係の恋の行方は?

どう思います?

自分はベルトーチカが湧いて来て、掻っ攫いそうな気がします。
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