シャアのいない宇宙世紀で   作:ギレンの野望大好きおじさん

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第7話 NTが躍動する宇宙世紀で

 

 

宇宙世紀0085年──。

 

「アムロさんは誰が好きなんですかっ!」

 

サイド7・1バンチ、グリーン・ノア1のテム邸でカミーユ・ビダンが吠える。

 

対するアムロ・レイはララァ・スンの膝枕で昼寝中であったが、カミーユの声に反応しゆっくり体を起こした。

 

フラウ・ボウは仏頂面でガーデンテーブルで課題に取り組んでいる。

 

「やぁ、カミーユ少年。昨日ぶりだ」

 

そして、ガーデンチェアで読書中であったパプテマス・シロッコが一旦本を置き、カミーユを歓迎する。

 

「……どうも。シロッコ博士も居たんですね」

 

カミーユは正直この男が苦手だった。

別に何かをされたというわけではない。

父親が自分といる時より、この男と話している時の方が楽しそうなのが気に入らないだけだ。

 

母と一緒に訪ねた時は露骨に嫌な顔をされた。

その後一人で進路の悩みを装って相談した時、父の分野を目指してみたいと言ったら嬉しそうに口早く語る。

その時同席していたこの男とやたら比較されたのが、気に入らない。

 

「フッ、ここは居心地が良いからね」

 

対して、シロッコはカミーユを反抗期気味の末っ子と見ている。

 

フランクリンは人としてはアレだから、どうしても目を掛けてしまうのだ。

シロッコはもう己が出自を気にしてはいない。

破格の男が目指す未来を共に進まんとする功名心、己が力の先の深淵にいる目指すべき女、科学の進歩もまた一人では及ばず、その分野の頂点は己が一歩先を歩いている。

己が一歩を十にも百にもしてくれる、この環境が自身を奮い立てる燃料になる。

 

こうして史実では支配に用いたその力を、ここではおせっかい焼きに使っている。

 

フラウがララァに嫉妬しても、アムロとの関係が破綻しないのはシロッコがちょくちょくフォローしているからだ。

 

ララァ本人はアムロの次ぐらいにはフラウを気に入っている。

しかし、それを告げたから何になるというのか。

 

アムロは基本的に男女関係は受動的だ。

お節介焼きのフラウとそのままの流れで付き合い、ララァと出会った時の刻の流れが心地よくそれに身を任せがちだ。

ここでフラウが離れてもそれを追わないだろう。

 

ララァもそこを繕う程、女側に寄り添わない。

そこをシロッコが補ったのだ。

 

「俺はフラウもララァも好きだよ。そう言うカミーユはファとどうなんだ?」

 

アムロが女の敵のような発言と共に、最近家に入り浸る弟分に尋ねる。

 

「オレは関係ないでしょう! 誤魔化さないでください!」

 

話を逸らされ、カミーユが再び吠える。

 

「そうは言ってもな……」

 

アムロが溜息を吐く。

 

フラウ・ボウには悪いがアムロに結婚願望はない。

父と共に宇宙へ上がった時に別居した母は、地上でテロに遭い死んだ。

何故父と共に来てくれなかったのか、自分を愛してくれていたのか。

答えのないまま永遠の別れとなった事が、未だに自分を縛り続けている。

 

「フラウとは毎週デートに行っている。それでいいだろ」

 

「アムロから誘ってくれたことはないけどね!」

 

アムロの言い訳に、フラウが文句を言う。

 

インドア派のアムロは外出に付き合うのだから文句はないだろ、と思うが口には出さない。

 

「アムロは部屋で機械に向き合う方が好きなのよ」

 

「ララァさんがアムロを甘やかすから……」

 

ララァのフォローにフラウが頬を膨らませる。

フラウにとって、ララァはアムロさえ絡まなければ友達になれただろう。

そもそもララァから二人の関係に割り込んだことは一度もない。

テムが上司から預けられ、アムロと同居する際にボウ家に面倒見をお願いされている。

 

その頃にはシロッコが我が物顔で住み着いていたので、二人暮らしとはならず、フラウもはじめは新たな隣人を歓迎していた。

 

が、想像以上に二人の距離が近い。

 

気がつくと引っ付いている。

性的な匂いは一切ないのだが、胸がムカムカする。

 

アムロの家庭事情は親から聞いている。

ララァの過去は本人から聞かされた。

シロッコがついでのように己の出自を面白おかしく語った。

 

どこか欠けている三人が、自分には無い何かで感覚を共有している。

最近訪れる様になったカミーユも、家庭に事情がある上、三人と同じ様子を見せる。

 

「はぁ、私だけ仲間はずれ……」

 

「……あまり、いいものじゃ無いぞ」

 

──ララァと出会って世界が変わった。良くも悪くも。

 

「苦労のほうが多いわよ」

 

──生きるための手段であった。多分、失敗の方が多かった。

 

「制御出来ねば、人間不信に繋がる力だ。そこのカミーユ少年の様にな」

 

──他人が愚かに見える。悪意の可視化は人を見下す原因だ。

 

思わず溢れた愚痴に、三者三様のフォローが飛んでくる。

カミーユは膨れっ面で黙っていた。

 

カミーユが黙った事で、テム邸の庭に沈黙が満ちる。

 

その沈黙を破る様に、庭先の道路にエレカが止まった。

 

「おーい、アムロくん。新型が届いたぞ!」

 

エレカに乗った大学の先輩、ボッシュ・ウェラーがこちらに呼びかける。

 

「来たか、ボッシュ!」

 

嬉々として立ち上がり、テーブルの上の端末をまとめ支度を始める。

 

親しい人間は目上相手でも等しく呼び捨てのアムロ。

当然、シロッコも呼び捨てだ。

 

大学に訓練用のネモが搬入されたのだ。

 

大学一のエースパイロットのアムロが待ち侘びた新型だ。

 

アムロとボッシュが所属するのはMW比較研究会。

世に出たMWの運用評価と、市販のアタッチメントの組み合わせや性能評価を行う実践的な部活だ。

 

「結果は後で送ってくれ、報酬もいつも通り振り込んでおく」

 

「ああ、楽しみにしていてくれ!」

 

シロッコが笑顔で見送り、アムロがボッシュの運転するエレカに乗り込む。

 

「感想聞かせてくださいねー!」

 

「行ってらっしゃい、アムロ」

 

一瞬で機嫌がなおったカミーユと、ララァが手を振る。

 

「……」

 

課題が終わらなかったフラウはテーブルに突っ伏し、手だけを振った。

 

その後、フラウは課題の続きに取り組み、カミーユの迎えに来たファと共に夕食の準備をはじめる。

ララァは自室に戻ると瞑想を始めた。

シロッコは居間で仕事を始め、その合間にカミーユの自作プログラムの質問に応答していた。

夕食前に、アムロから大学に泊まり込む旨が届き、フラウが愚痴りながらも皆で夕食を囲んだ。

 

食後、談笑を交え、カミーユとファが帰宅する。

研究所の迎えが訪れシロッコが帰ると、フラウも自宅へと帰る。

 

それを見送ったララァがふと呟く。

 

「誰とも知れぬ赤い貴方──ここでなら貴方も心安らかにいられたかしら?」

 

その呟きは、どこに届くこともなく、コロニーの空気に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハマーンは将来って決めてる?」

 

サイド6・イズマコロニーのハイバリー高校の生徒会室で、アマテ・ユズリハが親友で生徒会長のハマーン・カーンに質問を投げた。

 

「なに? 藪から棒に」

 

ハマーンは書類仕事から手を休め、生徒会役員でもないのにここに入り浸る親友に目を向ける。

 

長机に突っ伏しながら携帯端末をいじるアマテは不機嫌そうに口を開く。

 

「私、地球に行きたいの」

 

その言葉に、少し考え、

 

「地球に? ツアーは割と出ているけど、かなりするわよ?」

 

割と家絡みで地球出身者に会う事もあるハマーンは、地上の情報にそれなりに触れている。

他サイドに移住するより面倒臭いが、地球観光のツアー便がルオ商会など未だ特別居住区の繋がりを残す財閥の旅行会社から出ている。

これは最近は減ってきているが、上級市民の宇宙移住のシャトル便の流用である。

これがお値段が結構する理由である。

 

「お母さんと同じことを言うんだ……」

 

先日、母親と進路について話し合ったアマテは地球へ行きたい旨を伝える。

当然その真意が分かるわけもなく、タマキは卒業の際の記念旅行と誤認する。

こうして一旦進路関連を傍に置き、地球旅行について調べ、その高額に目を剥くことになる。

 

「そういうんじゃ、無いんだよ……」

 

地球旅行は望ましい。

だが、それだけでは無いものがアマテにはある。

 

言葉にならない、それがもどかしい。

 

実際、母親から金額を見せられ愕然とした。

普通の旅行会社には地球便がないため、サイド間旅行便程度に甘く見ていた。

 

その後の話し合いの結果、いい大学に入ったら親が全額出す、そうでなければ勉学に影響が出なければバイトの許可を出すと言ってくれた。

問題は普通の学生バイトでは数年かかるという事だろう。

 

「ふーん、見たいものでもあるの?」

 

ハマーンは、何故アマテが自身の進路を尋ねたのか考える。

 

アマテの進路と地球旅行が絡んでいるのだ。

おそらく、時間がかかる事が問題なのだろう。

アマテの親は旅行を進学のご褒美に置き、勉強に目を向けさせようとしている。

しかし、それではアマテが今抱えている閉塞感はどうにもならない。

 

ハマーンにはアマテが地球にこだわる理由は一切理解できないが、ここでは無い何処かに惹かれる感覚は良くわかる。

 

父の後継は姉の婿養子に決まっているが、ハマーンには自分がそれより上手くできるという確信と、そこに縛られたく無いという相反する感情を持て余している。

 

現在、サイド6のカーン家が所属する民間研究所はMWによる犯罪抑止研究の一端で、MWを娯楽産業に組み込む計画を進めていた。

 

特にシムとサクはエレカよりも容易く入手できてしまうため、サイド警察とCP艦隊が抑止のためにMP(モビパト)部隊を設立し、行政府も法規制を強めている。

 

しかし、過度な規制は地下での違法活動に繋がるとデギン・ソド・ザビが競技団体の設立を提案し、MWの広がりを平和的にコントロールすべきとした。

 

これに販路の拡大を見出した各企業が行政府と協力し、モビル・スポーツ競技組合を立ち上げ興行化を目指して動き始める。

 

「一攫千金を見込めるバイトがあるけど、聞く?」

 

現在、カーン家とサイド6経団連が中心となって立ち上げているMWによる空間格闘競技、そのテストマッチバトルのトッププレイヤーの一人、ハマーン・カーンが含みを溜め込んだ笑顔で後輩を見つめた。

 

 




・色々補足するあとがき

もてもてのアムロ、こんな平和なアムロがいてもいいと思う。

急に出てきたボッシュ、転生関係ありません。
サイド3が不穏になった50年代にウェラー家がサイド7に移住しただけです。

ララァが変なことを言っているのは原作よりNT能力が成長しているので、GQuuuuuuXのララァが放った一瞬の思念を補足し、シャアの気配を感じたためです。

マチュはニャアンもシュウジも居ないので、ハマーンが相方に。
(ニャアンはサイド2で家族と暮らしています)

クランバトルと違い、合法で競技性の高いバトルになるのでモータースポーツに近いかも。

MW価格はイメージとして

ザク:1500万円
GM:2500万円
ヅダ:5000万円
GP01:1億5000万円
グフ:1000万円
ドム:2000万円

GMⅡ:1億円
ネモ:3000万円

サク:200万円
シム:150万円
クフ:100万円

ボール:3000万円
全天周囲コクピット仕様ボール:6500万円

MWは非武装でバッテリー駆動の重機扱いなので、軍の扱いも軍用ブルドーザーとかそんな位置付けです。

これがMW犯罪で警備取締用の汎用機の開発に繋がりました。
GMⅡ、ネモからシールドが採用されます。

武装もスタンロッド、スタンガンがメインで、それ以上は規制が掛かるでしょう。
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