シャアのいない宇宙世紀で 作:ギレンの野望大好きおじさん
アマテ・ユズリハは親友で先輩のハマーン・カーンに連れられ、港湾エリアに足を踏み入れた。
勝手知ったる我が家の如く歩を進めるハマーンに、重力が弱いこのエリアをえっちらおっちらと着いて行くアマテ。
時折すれ違う職員達は、皆一様にハマーンに親しげに挨拶する。
「お嬢様だぁ……」
学校で高嶺の花との噂を聞いたりもしたが、思った以上の伝手に驚く。
アマテの家も両親が公務員で裕福だが、地球旅行をポンと出せるほどではない。
低重力エリアを通り抜けると、浮遊感と共に無重力エリアがお目見えする。
通路には移動用のエスカレーター・ハンドルが備えられ、ハマーンは流れる様に通路を進む。
逆にアマテは授業の無重力訓練以来だ。
一旦立ち止まって、通路に飛び込む。
「大丈夫?」
躊躇いに気づいたのか、ハマーンがクルリと振り向きそのまま背面で通路を進む。
「平気!」
手を繋いでくれそうな空気を断ると、そう、と言って前を向いた。
通路を抜けると、広大な空間が目の前に広がる。
学校の体育館を縦に三個以上納まりそうな天井を見て、空に大地が見えるコロニー居住区とはまた別の感覚がアマテを貫いた。
──この先が、宇宙。
手すりにつかまり、眼下の格納庫を見ると何台ものMWが鎮座し、何十人もの作業員が動き回っている。
「あれ? 色が違う……?」
学校の授業で使ったMW、確か名前はザク。
グリーンを基調とした落ち着いた色彩に、肩の校章が場違いに目立っていた記憶だ。
MW基本法により、犯罪抑止に高等教育にMW免許の修得を盛り込んだのだ。
そもコロニー住民は初等教育で宇宙空間のイロハを学ぶ。
中等部に上がる頃には、コロニーで生きるためのルールを叩き込まれている。
MW黎明期の混乱は操作性の簡易さもさることながら、MWを簡単に操縦できてしまう住民の基礎学力もそれを助長させた。
その為、各サイド行政府はいち早くMW技能を教育に組み込み、月の評議会も実機購入支援のための特別法案を直ちに通過させる。
ジオニック社はこの特需に手広くライセンス契約を結び、独占を選ばなかった事で各サイドから好感触を得る。
軍と二人三脚のアナハイムは特需を逃して上層部の顔ぶれが少し変わり、ツィマッド社のドムはサイド間配送業の隆盛に合わせて何度もマイナーチェンジが行われたが、新型のギャンは価格が問題となりいまいち振るわなかった。
──閑話休題。
「ワークスカラーよ」
アマテの疑問にハマーンが答える。
白を基調とし、紫とピンクをアクセントに加えたカラーリングのMWは格納庫にずらりと並ぶ。
ザク、ヅダ、グフ、ドムに加えてGP01。
さらにサク、シム、クフ、トムが、いわゆるキュベレイカラーが施され、整備を受けていた。
さて、MWの整備問題。
簡単な整備作業こそ個人所有のガレージでも可能だが、定期点検は各サイドの軍工廠か企業工場でのチェックが必要となる。
また、サクなどの簡易生産シリーズは、法的に町工場クラスの点検でクリアできることが人気の元であり、所有しやすさからMW需要全体を押し上げている。
こうしてMWがコロニー経済に組み込まれ、各サイドのGDPの一割に近づき、民需を逃したアナハイムが地団駄を踏む中、サイド6でMW競技の枠組やルール作成が行われている。
──話は戻って、
「……なんか、弱そう」
アマテの視線の先にはサクら簡易生産シリーズが並ぶ。
好きな配信は宙間機動動画なので、シムで歩いてみた動画やサクサク改造倶楽部などの動画は見ていないので、機体に詳しくないから余計に弱そうに見える。
現在、映像配信サイトで人気なのは『ポールアウト』と呼ばれるMW格闘だ。
凡そ5mのトリモチを先端につけた金属ポールを用いて、相手の頭部カメラの視界を塞ぐ競技だ。
規制強化後、コロニー内でのMW格闘に舵を切った配信者達であったが、格闘だけあって各種問題が発生。
パイロットの怪我問題に始まり、騒音問題、修理問題、そもそも場所を確保することからなど問題が湧き出てくる。
これら問題をクリアするため、配信者達は過去の武道に学び、ルールを練り上げる。
こうして出来たのがフェンシングをMWにさせる様な『ポールアウト』と呼ばれるものである。
場所を限定したことで開催場所の確保を容易にし、読み合いに特化させた戦闘は、怪我と修理と騒音問題を一挙に解決した。
派手さを失い宙間機動ほどの人気は出なかったが、玄人好みの読み合いと、そもそもの9mの巨体のチャンバラは唯一無二ともいえる迫力がある。
基本ルールは5m×25mの試合エリアから出たら負け。
頭部カメラを塞がれた負け。
ポールが破壊されたら負け。
ポール以外の腕部が相手の機体に触れたら負け。
パイロットが操縦不能になったら負け。
この五つだ。
これにキュベレイカラーのグフ・カスタムで参戦しているハマーンはサイド6内で無敗の王者だ。
肩に描かれた紫色のAxizのワークス名が白地に浮かんでいる。
興行化の流れに乗りたい配信勢は、企業に協力してプロ化への道を歩んでいる。
こうして配信者に相乗りしながら、ワークス勢は宙間機動を正式競技化する事で視聴者層からの支持を得るために軍と折衝を繰り返している。
「アマ──いえマチュ。貴方はどれに乗りたい?」
ハマーンがイタズラっぽく笑みを浮かべ聞いてくる。
流石にこれのバイト許可は出ないだろうと、アマテは昔の渾名を登録名に選んだ。
お母さんには、稼ぎ終わってから怒られよう。
こういう悪いことも投げてくるのがアマテは好きだ。
「あれ!」
選んだのは、当然強そうな機体。
アナハイム製、ガンダム・プロトタイプ一号機。
アナハイムの悪癖を詰め込んだ超高級機にして、超ピーキーな問題機。
テムが駄目出しし、ヤルオが苦笑して目を逸らし、シロッコが嘲笑してフランクリンがボロクソに貶すのが、このGP01。
──アムロと学習型コンピュータがあれば名機になったかもしれませんね。
「ふーん」
確かに性能はいい。
ジャジャ馬を乗りこなせるハマーンとしては、無いよりのアリ。
しかし、アナハイムが喧伝してきたので試乗したネモは、推力とパワー以外は全てを上回る出来だ。
正しく過去のモンスターマシンがこの機体の評価に収まるだろう。
アナハイムの評価は、ネモをどう民間向けに再設計するかにかかっている。
──アマテであれば乗りこなせるか。
ハマーンは思う。
とは言え、重量、推力、バッテリー容量で厳しくクラス分けする予定の公式競技で、GP01が出場可能なクラスは無差別級のみになるだろう。
汎用のザク、コロニー内競技特化のグフ、宙間機動のドムにライトからミドルが割り振られ、フェザークラスに簡易生産シリーズが入るだろう。
ヘビーは現在カスタム機のクラス予定で、GP01はそこすら入り込めない。
そう言えば、ジオニックから高機動試験機が送られてきている。
アレに乗せるか──。
「そう言えば新型が届いていた。マチュ、そっちにしてみない?」
ハマーンの口元が怪しく笑う。
アマテは、え〜⁉︎ と膨れるが、新型の二文字に興味が移った。
「うわぁああああああああ!!!!!」
アマテの絶叫が宇宙に響く。
高機動試験型ザク、見る人が見ればタコ足ザクと呼ぶだろう。
設計者は勿論、ヤルオ・ソク・ダイクン。
大出力に振り回されて、コントロールしきれない。
『マチュ!』
随伴の高機動型ザクを駆るハマーンが、随時修正コントロールを飛ばして機体を安定させるが、何分アマテは宇宙機動はこれが初めて。
つい、スロットルを踏み込んでしまう。
「ふぅー。ハマーン、騙したなー!」
とはいえ、さすがのアマテ・ユズリハ。
ハマーンの修正コントロールを瞬く間に覚えると、盛大に文句を飛ばす。
『もう慣れたじゃない』
焦ったのは最初にアマテの機体がぶっ飛んでいった時のみ、一度機体を安定させた後は、叫びながらも次第にコントロールを取り戻している。
『それに、最初に選んだのはソレよりジャジャ馬よ』
ハマーンの言葉に、アマテがうげっと呻く。
目が回りそうなこの機体以上と聞いて、ちょっとだけ感謝する。
「でも、ありがとう。ハマーン」
『マチュ?』
狭いコクピットの中で、それでもアマテは解放感に満たされている。
「宇宙に誘ってくれて、ありがとう!」
『ええ、どういたしまして』
微笑むハマーンではあるが、彼女自身はこの宇宙は寒さを感じて苦手だ。
苦手ではあるが、アマテといる今は心地よい。
誰かがそばに居るだけで安心してしまう、単純な女だと自嘲する。
「ハマーン?」
弱気な思念を無意識に感じたのか、アマテが声をかけた。
『マチュが慣れたのなら、次のプログラムに進みましょう』
「う、うん。って、何この工程? 私、宇宙は初心者だよ⁉︎」
それでも踏み込まれるのは嫌いだと、ハマーンは手早く宙間訓練プログラムをアマテに送る。
『簡易免許用の訓練プログラムよ。これで今日中に来年の航宙免許、一年早く取れるわよ』
現在ハイバリーに限らず、コロニーの高等学校ではMW免許の修得が必須項目となった。
これに加え、航宙免許も希望者は校内受講が可能なため、余程のことがない限り授業の一環でこれを修得する。
アマテは既にMW免許は取得している。
航宙免許は三年時に受講だが、自習は推奨されているしシミュレータは開放されている。
ある意味、無料で遊べるコミュニケーション・ツールとして予約一杯の校内施設で増加の陳情が生徒会にも上がっている。
とはいえ、免許取得者がそちら方面に進むかと言えばそうでもない。
本番は宇宙服の着用が義務付けられ、校内で制服でシミュレータに入り込むのとは訳が違う。
命がかかっているのだ、無重力空間の踏ん張りのなさでワーキャー言っていられる校内と同じとはいかない。
半数はその後MWに触れない生活を送るはずだ。
ヤルオがアクション系ガンダムゲームを好んでいれば、戦場の絆を模したゲーム筐体でも開発したであろうが、Gジェネ系好きであったため手付かずだ。
この辺の世代が社会に出た時にアミューズメントパークの大型筐体として、世に出てくるだろう。
「……これで、お母さんを誤魔化せない?」
『素直に謝りなさい。私が誘ったのだから、親と一緒に謝罪に行くからその時に済ませましょう』
行政府の許可はあるとは言え、公営ギャンブルの側面もある。
準備段階ではあるが、嫌な顔をする人はするだろう。
コネと権力で黙らせる方向で進めるハマーンは、らしいと言えば実にらしい。
吹っ切れていないアマテは、まだその域にはいない。
まあ、いかないほうがいいと思うが。
『さあ、さっさと済ませて次にいきましょう!』
「はぁーい」
久しぶりにはしゃいでいるな、アマテはそう思いながらスロットルを踏んだ。
サイド7、統合宇宙大学ノア・グリーンノア01キャンバス。
「アムロくん、例のアレが始まったぞ」
ボッシュの声に、アムロは手元の端末から顔を上げ食堂のテレビに視線を向ける。
「ああ、モビル・スポーツか。速いよな、MWが世に出てまだ5年だぜ」
「ガス抜きですよ。観艦式以降の、オレらの下は大人達とはまた違った不平不満がありますからね」
アムロが感心の声を上げ、ボッシュが60年前半世代が持つ特有の斜に構えた感想を述べる。
ダイナミックに変わる社会に、教育・風習の変遷に振り回された彼らはサイド間通信の規制緩和も合わさり、大学間である種のセクトを形成している。
「ニューディザイズ、だったか? 割と論調が強いよな、その割に行政府は動かないし、何か知っているか?」
内向きな自分と異なり、色々な知己を持つボッシュに尋ねる。
「行政府、というより月の評議会がセクトの情報が民間に出回るようにしています。世論の支持を失うとどうなるかはサイド3が散々示していますからね、ニューディザイズの上層部はアレでも内部統制に気を遣っていますよ」
何か色々知っているボッシュがつらつらと答えた。
武力と情報と権力を握っている宇宙軍がその辺を逃すわけもなく、不満を暴発させないようコロニー内での相互監視を行うように仕向けている。
管理自体はし易いのだ。
国民国家は消滅し、民族・部族の対立もなく、過去の因縁がリセットされ、憎悪は地上の連邦政府に向けられている。
宇宙軍は抑圧を抑え、各サイドの権威として君臨し、警邏は艦隊から分派したCP艦隊とバンチごとのMPが受け持つことでクッションを挟む。
バンチごとの人口制限が存在するため、どうしてもサイド間、バンチ間のつながりは広く薄いものになる。
後はインテリ層の横の繋がりを監視すれば、経済が発展する限り民衆は平穏を望む。
戦争のないこの世界のニューフロンティアは太陽系を食い潰すまでは続くだろう。
宇宙人がいない事はわかっているので、軍備は装飾過多に向きがちだ。
軍需は大きいが、更新は鈍い。
また、アナハイムの上層部の顔ぶれが変わりそうだった。
対して、MW需要は右肩上がり。
GMⅡ共同開発は各社に技術のフィードバックが行われ、各社一斉に新型開発がスタートしている。
ツィマッドのギャンが出た瞬間に時代遅れになった悲劇を除けば、ジオニックがムーバブルフレーム内蔵の新型MW・ゲルググを発表し、アナハイムがサクを開発したサイド1の企業と共同開発したマラサイが悪くない感触を得た。
こうして新型MW開発が進む中、行政府でもMW需要の後押しをするための催しを始めた。
「ふーん、そうなると受付で渡されたこれもその一環か?」
アムロが一枚の書類を見せる。
「ええ、お祭りですよ。観艦式以来の、デカい祭りになりますね」
──第一回宇宙モビル・グランプリへの参加希望書であった。
・設定補足が多いあとがき
Axizはカーン家主催のMW興業をリードするためのワークスチーム。
そのうちキャラとかマシュマーが合流すると思う。
現在はハマーン一人軍。
グレミーはいません。
プルもオリジナルをクローン判定しました、シリーズ含めて出ません。
アクシズの30代以上のネームドは、サイド6のザビ系企業に就職している筈。
強化人間組は本名のままフェードアウト予定。
カミーユのヒロイン候補にニノ・シグレ(ドゥー)とヨツバ・ユウダチ(フォウ)、ロザミア(仮)がいるが果たして出るのか。
ここのマチュは犯罪者にはならないでしょう、カーン家のバックがでかい。
なお、親泣かせなのは変わらない模様。
ニューディザイズはここでは大学生の学生運動。
そのうち社会に溶け込んでいくでしょう。
この世界のハマーンはフラナガンの実験がなく、シャアとも出会わず、父も姉も生きていて指導者にもならないので、その才能の全てをパイロットに突っ込んでいます。
アムロを100とすれば99ぐらい。
アナハイムのテスパイのガトーが80、一番MW搭乗時間が長いエリオット・レムが75ぐらい。
ヤルオは50、大体現場の熟練作業員がこのぐらい。
マチュは今は70、成長すれば90まで伸びるかな?
シロッコは全くMWに乗っていないが、85ぐらいはある。
逆にララァは60いかない、サイコミュ無いので。
ハヤトは上手く話が作れなかったのでフェードアウト。
港湾エリアで就職しているでしょう、才能をプラスします85。
なんでストーカーだと思ったのか、ネットの変なコラか何かか。
ともかく、ハヤトファンの方、ごめんなさい。
カミーユはマチュと同じか、もう少し伸びる。
精神崩壊は、ファがNTRれて脳破壊されるぐらいか……
強化人間組が出てきたらフラフラするのに……
MSVエースが70〜80で、ボッシュはここ。
シローとかコウもこの辺。
ヤザンは90いくかな? 今どこにいるのか……