シャアのいない宇宙世紀で   作:ギレンの野望大好きおじさん

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第9話 お祭り準備の宇宙世紀で

 

 

コスモ・モビル・グランプリ。

 

第一回と銘打たれたこれは、公的な観艦式と異なり民間が中心となり行政府が協力する祭典である。

 

世界(ワールド)ではなく、宇宙(コスモ)と銘打ったのは勿論、スペースノイドの憚りが如何なく出ているが然もありなん。

 

自然と発生したこの動きに、ギレン・ザビは満足する。

 

ここ最近は組織構造の微調整のみを自発的におこなっていたが、MWの平和利用が広がる事は望ましい。

まあMW自体、兵器ではなく重機だが。

 

怨念を溜め込んだ宇宙世紀の前半と異なり、平穏と繁栄が半世紀も続けば組織が腐敗するまで戦争は起きまい。

 

あと20年は自分がコントロール出来る。

その後は、後継者がすればいい。

 

システムは整えている。

後継者の指名はしない。

実子もいない。

キャスバル坊やをジオンの後継と呼び、ザビ家の独裁を非難した民衆にはぜひ民主的な選択をして頂きたい。

 

ギレンなりの皮肉である。

 

まあ、後継者がこれを聞いたらキレるだろう。

 

残されたシステムがあまりにも属人性に満ちているからだ。

 

よくある天才だけが運用できるシステムだ。

 

とはいえ、ここは宇宙世紀。

運用可能な人物はそれなりに居る。

 

ハマーン・カーンがその筆頭で、ここのシロッコならギリギリいける。

ドゥガチとその娘(生まれるか不明)とハウゼリー、カガチも及第点。

 

──割と居る。

 

──いけるいける。

 

ちなみに主権は未だ地球連邦政府が握っている。

人民? 絶対民主主義に基本的人権は存在しませんよ?

 

なので月の評議会は、軍が主催するコロニー間の相互扶助会である。

こうして責任の槍玉に政府を非難し、溜飲を下げ、その為だけに捨て扶持で政府を地上に残している。

 

さて実利を取って、いつの間にか宇宙を支配している連邦宇宙軍は、実はあまり事態について行けず、殆どの将兵は普通に平和を享受している。

とは言え将官はそれでは問題なので、現場よりの人間は政治から距離を置き、政治も担当する事となった参謀本部は増員され地上の三軍の異動先に選ばれた。

イーサン・ライヤーも職務が評価されここに配属されている。

コジマは現場を望んだが、艦隊は肌に合わないとサイド2でMP首都警備大隊を率いている。

 

逆にレビルは空回りして閑職に追い込まれていた。

 

おそらく、デギンの嫌がらせと、ギレンの黙認と、ゴップとの折り合いの悪さが原因だ。

 

こうして退役したとは言え評議会の議長をゴップが務め、総司令部をギレンが采配する現状は、まごう事なき軍事政権なのだ。

 

なのだが、絶対民主主義の60年以前に比べればスペースノイドの基本的人権は保障されていた。

 

まあ、その時代のスペースノイドは植民地人だったから仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は少し脱線するが、ギレンの脳内存在について少し語ろう。

 

設定的にアムロに準ずるパイロット技能と、アンチ・ニュータイプとでも言うべき感応波シールドを備えている。

 

もう少し説明すると、サイコミュ兵器でコイツを照準に捉えられないのだ。

それらを使うと勝手にステルス化してしまうのだ。

アムロの直感に捉えられないのだ、ヤバい。

 

ガノタ歴は長いが浅く、戦略ゲームを好みギレンの野望シリーズ以外はやっていない。

アニメも未視聴。

ネットで調べられる情報以外は気にしない派だ。

歴史好きなので、ジオン派。

デラーズ紛争の是非も、よくある事で流せるガトーファン。

キャラクターの行動の矛盾も気にしない。

現実の人間の方が、余程変な行動をとるのを知っている。

 

また、アンチ共産主義者なので連邦嫌い。

コミュニストの匂いがする、アムロはカラシニコフの息子ポジね、まぁ許す。

創作のアカは我慢できるタイプのアンチだ。

ソビエト崩壊時には万歳三唱していた筋金入りだ。

 

仮に50年代に生まれていればジオンに入り、シャアの代わりにサイド7に突撃していただろう。

 

アムロがマチルダ死後に一皮剥けるまでは確殺で、ガンダムMC後も確実に相打ちが取れるFOEだ。

 

一年戦争に参加できない70年代ならネオジオン紛争で大暴れし、グレミーを叩き殺した事だろう。

 

ジュドーとZZだと、コイツがザクⅢ改で襲いかかってくると死んじゃうのでハマーン大勝利。

 

逆襲のシャアは多分スルー。

シャア嫌いなので。

 

80年代生まれならコイツの居るところが勝つレベル。

アンチ連邦だからジオン残党のどこかに居る恐怖。

 

コイツがシナンジュに乗ったら、単騎で連邦艦隊潰せるのでラプラス戦争は大変なことになるでしょう。

 

マフティー動乱は、これに乗じてコロニー落とししそう。

 

火星に行っていたら、マーズジオンが統一していた。

叛逆者は粛清した上で。

 

100年代なら一足早く宇宙戦国時代が到来していた。

そこでも大帝国を築き、統一寸前で頓死しただろう。

 

要は政治にも口を出すアムロ、手段を選ばないシャアみたいなサイコミュ無効の最強オールドタイプが爆誕する予定だった。

 

多分、戦国時代とかにも順応出来るタイプ。

そこの類型だと森長可。

 

そんな設定爆盛りのヤラナイオ(仮)も、こうしてギレンの脳内の片隅に漂っている。

まぁ、連邦は爆散したので満足している。

 

軍事政権? よくある、よくある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙世紀0085年、サイド7・アナハイム・エレクトロニクス・グリーンノア01工場。

 

MW競技、ポールアウト用のリングに加え、事故防止用のフェンスと観客席が敷地内に敷設されている。

多くのスタッフが来年のCMGに向けた準備に動き回っている。

 

「おぉ〜!」

 

学生服のアマテ・ユズリハが、それを仮設MW整備用パドックの屋上から眺め、感嘆の声を上げる。

 

初のサイド間移動ですっかり旅行気分だ。

 

「チッ、アナハイムにしてやられたわね。折角ウチでMW興行の大枠を作っていたのに……CMGの大手スポンサー権で、軍から放映権を買い取ったか……」

 

対するパイロットスーツを着込んだハマーン・カーンは舌打ちする。

 

サイド6が音頭を取って、コロニー間で調整を進めたCMGは公平を旨に宇宙軍をけつ持ちに選んだ。

丁度、頭が変わって民需に軸を移したアナハイムが目敏くそこに入り込んだ。

 

この件でザビ系企業を主導する父マハラジャ・カーンはアナハイムとの対立を避けた。

ハマーンもそこを非難するわけではない。

 

そもそも、初めての巨大な催しに各サイド行政府も手探りで、各企業も安易な深入りは慎重だった。

そこにアナハイムが馬車馬のごとく飛び込んできた。

皆一様に、どうぞどうぞと道を譲った。

 

そして、ここで全てを独占して反発を買い、評議会の指導で幾分かを渋々手放した。

 

その上で、我が物顔で振る舞うアナハイムに腹を立てているだけだ。

 

「もー、折角のお祭りなんだからさ。ハマーンも楽しもうよ!」

 

アマテのテンションは高い。

 

先日、ハマーンと共に宙間機動訓練を終え感想戦の最中、母親からの連絡がくる。

イズマコロニー市議会に提出していたアマテの、マチュで登録名した書類をタマキから娘を知らされていた同僚が、気を使って彼女に知らせたのだ。

 

ここまで数日のバイト代は出ているが、目標まで稼ぐ前に親に知られたアマテは顔色を蒼くする。

 

それに気づいたハマーンは直ちにコネを大動員。

そこからアマテが帰宅するまでの間に、父を呼び出してユズリハ家訪問の準備を整え、ザビ系企業の伝手で幾人かの市議に連絡を取り、会計監査局に圧力をかける。

 

こうして、帰ったら説明すると娘からの返事に定時で上がろうとしたタマキは、上司から釘を刺され顔を顰めた。

 

嫌な予感を胸に帰宅すると、娘と共に、何度か話に聞いた娘の先輩と、サイド6名士のカーン氏に有力代議士が待ち構えていた。

 

かくして、外堀と内堀を埋められ、城門を内側から開けられたタマキの城は本丸を残すのみ。

彼らに連れられて、高級料亭に行くまでの間に夫から、上司にそれとなく圧をかけられた事を連絡され、タマキは天を仰いだ。

 

風雲ユズリハ城、無血開城。

 

こうなるとタマキにできることは殆どない。

娘の先輩に懇願することだけだ。

 

ハマーンの手を取り、くれぐれもくれぐれもと頼み込む。

お母さんやめてよ、と娘が赤面しながら裾を掴む。

娘が懐いていることを確信し、母として情に訴える。

 

タマキの考えを簡単に見透かしたハマーンは、しかしその流れに乗った。

この場には父と見知った代議士が居る。

 

美談に仕立てて、アマテを私の隣に堂々と立たせてしまおう。

 

内心を隠し優等生の顔で、了承の旨を伝えた。

 

こうしてハマーンの学生らしからぬ手腕によって、アマテはハマーンのワークスチームでのバイトを許される。

 

「ハマーン! 大好きー!」

 

感極まったアマテがハマーンに抱きつき、ハマーンはわざと親密なように戯れ付く。

 

その合図に気づいたマハラジャが代議士と共に退室する。

彼らは彼らで、この件の後始末の奔走する事になる。

娘の機嫌に、優秀な人材の確保という報酬の先払いを得た以上、期待に応えるのが父としての役目だろう。

 

こうして娘とその友人と共に、高級料亭の奥座敷に残されたタマキはため息を吐く。

この後、運ばれて来る食事に手をつけたら収賄罪に当たるだろうか?

 

この件の問題点はアマテ・ユズリハのバイトの許可。

状況的にはタマキが脅されているが、アマテのバイト先に問題はない。

家庭内不和に知人が介入した状態だ。

タマキに訴える気がない以上、ユズリハ家がこの後何らかの利益を受けない限り無かった事に出来る。

 

その後、食事を終えハマーンから娘の大学推薦を打診されるが断る。

内心、目の前の少女の持つ権力に恐れ慄くが、娘には実力で進学して貰いたい。

大学に入る事が目的ではない、そこで学んでほしいのだ。

 

幸い、塾に通うまでもなく娘の成績は良い。

だからバイトの許可は出している。

報告なしにMWに関わっていたから、こうして大問題になっているのだ。

 

話を聞くと娘の好成績はこの先輩のおかげらしい。

他にも校内のMW検定でも娘は好成績を出しているらしく、それが今回の件に繋がったということだ。

 

「……お母さん、MW嫌いでしょ?」

 

初めて聞いた話に、娘を見るとそう返ってきた。

 

はい、監査局のMW諸問題の愚痴を何回か娘に語った事がある。

娘なりに気を遣った結果が、今だった。

 

「……怪我には、気をつけなさいよ」

 

思っている以上に娘は優秀で、周囲に恵まれている。

自分が手を引かなくても歩けることに、寂しさと嬉しさが同居する。

であれば笑顔で送り出すのが母の務めだ。

 

「うん!」

 

破顔一笑。

 

アマテ・ユズリハは満面の笑みで応えた。

 

 

 

──閑話休題。

 

 

 

こうして親の許可を得て、アマテはワークスチームの一員としてサイド7にいる。

背伸びでハマーンに付いていくアマテを、職員たちは微笑ましく見守っている。

 

対面のパドックから見慣れない機体が姿を現した。

 

「あれ? 見ないことないヤツ。ツノ付き程じゃないけど強そう」

 

アマテがネモを見た感想を話す。

 

「あれは威圧感を与えないよう外面を整えているの。中身はあれ以上ね」

 

ネモを最も配備しているのはCP艦隊、ついでMP部隊だ。

 

乗った事のあるハマーンの言葉に、アマテは感心した。

しかし、アマテの知る限りAxiz以上のMW運用をしているワークス勢はいない。

 

「アレ、うちにはないの?」

 

「いま、ネモの配備許可が下りるのは公的機関だけよ。今日のお相手はグリーンノアの航宙大学のMW乗りね」

 

アマテの疑問に、ハマーンが答える。

 

競技エリアに進んだ白黒カラーのネモが、ポールを掲げ、演武を始めた。

 

「イ“ッ???」

 

「ッ‼︎」

 

アマテが知る限りMWとしては有り得ない挙動に驚愕し、ハマーンはネモのフレーム構造上可能なことは分かるが、出来るか出来ないかで言えばハマーンは出来ない。

 

回転するポールがすっ飛んでいかない様、完璧にコントロールされたMWの動きはパフォーマンスとしては完璧だ。

 

そのド迫力の見世物は、催しに集まっていた学生の注目を一気に集め、それぞれの携帯端末で瞬くうちに拡散されていく。

 

「ハマーン、アレっ!」

 

アマテが慄く。

訓練でハマーンとは何度も対面しているが、あの機体のパイロットは親友に匹敵すると直感する。

 

「ええ、マチュ。ここまで出向いたかいがあったわね」

 

ハマーン・カーンが獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボッシュ。これ、やる必要、あったか?」

 

アムロ・レイがネモのコクピットでぼやく。

ネモが搬入された時、可動限界チェックで悪ノリして皆でダンスプログラムを組んだ時を思い出した。

 

『ええ、いいパフォーマンスになっています。早速、バズっていますよ』

 

パドックは大変盛り上がっているようだ。

であれば、いいか。

アムロは直ぐに切り替える。

 

「Axizのエースか、上手いよな」

 

対戦相手のワークスチーム、すでに様々な媒体に露出している現役女子高生パイロットエース。

現在、外見人気が先行しているが、彼女を超えるパイロットはアムロの知る限り居なかった。

 

『ですね。アムロくん相手でもかなりやりますよ』

 

──おいおい、それは甘く見過ぎじゃないか?

 

そう思いつつも、相手の記録媒体を見る限り自分が上手な自信はある。

 

「こっちは無名の同好会だからな」

 

こちらは知っているが、あちらは知らない。

情報アドバンテージは比べるでもない。

 

成程、先ほどの演武がこちらの腕前の出来栄えだ。

 

まあまあの情報提供になっただろう。

 

考えている間に、対面のパドックが開く。

 

「ギャンか。いい機体だけどな、時期が悪かった」

 

出てきたのは白く塗装されたツィマッドのギャン。

 

MW規制強化の流れで、ジオニックのグフが再評価され、簡易生産シリーズにクフが加わったことで、ヅダを再設計し格闘戦を可能とするこの機体を販売する。

しかし、僅か数ヶ月後にツィマッドも参加した次期MW開発計画からGMⅡとネモが発表され、ラインが絞られた結果、価格に影響して性能の割に振るわなかった。

 

『外見の改装から予測されるカスタマイズ・データ、送ります』

 

市販も違法もあらゆるパーツ・データは網羅している。

あのパプテマス・シロッコが稼働データはここのものが一番信頼できると語る。

グリーンノア統合航宙大学・MW比較研究会、これまでに蓄積されたデータから対象の性能予測を瞬時に割り出した。

 

「ヘェ、随分尖らせたな」

 

腕を流体パルスからフィールドモーターに切り替えている。

 

『マグネット・コーティングが想定されます。推定される速度上昇は30%程かと』

 

「バランスはパイロット任せにして、速さを取ったな。俺はやらないけど、あれを捌くのは難だぞ?」

 

第一世代最終期のMWの可動速度の三割増だ。

パイロットがトップエースでは分が悪い。

 

『楽しそうですね、アムロくん』

 

「ああ、こいつを持ち出してどうか? とも思っていたんだが、丁度良いぐらいに魅せられそうだ」

 

アムロ・レイが悪戯っぽく笑った。

 




・色々な補足をするあとがき

ヤラナイオ(仮)の初期設定はNT防御のみ。
パイロットになったのは、そんなもの必要とするのはパイロットぐらいかな、と。

そうなると案外強い。
宇宙世紀でサイコミュで照準取れないのはかなり有利。
サイコミュ兵器が無力化した後も、NTの死角を一方的につけるのは普通に強い。

ガンダムのオリジナルパイロットとなると、バトルユニバースのプレイヤーキャラが根幹にあるので……

そんなこんなで書き連ねたらとんでもない狂人が……

ホワイトベースクルーで認識しているのはアムロとブライトぐらい。
他は攻略本見て、あーこんなキャラいたな〜ぐらい、ジョニーとかシンなどMSVの方がよほど詳しい。
ジオン派だから連邦プレイもほとんどしないので、ゴップを帰還イメージで有能と認識している。

他には、ギレンが情報を引き出したのは片手で収まる回数。

その後の歴史(あやふや)、連邦軍人について(ステータスは分かる)、連邦政府閣僚の詳細(誰?)……

これではヤルオの評価も高まるというもの。

──物語には一切影響ありません。

ボッシュがアムロをくん呼びなのは、さん付けは止めてくれと言われたから。
尊敬の余り呼び捨てにできず、くん呼びで妥協している。基本敬語。

あと次回、ハマーンvsアムロ(予定)
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