酒寄さんちの次男くん   作:へそ天ペロリスト

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一方その頃

 

 一方その頃

 

 

『うんうん、メニュー的に栄養素は足りてると思うけどもうちょっと彩があってもいいと思うんだ―――』

 

「いや、私が食べるだけなんだからこんなもんで良いでしょ。って、どうしたの」

 

『……ドジっちゃった』

 

 

 彩葉に自分がかぐやであることを打ち明けたヤチヨ(かぐや)はさも当然の様に彩葉の端末に常駐し始めていた。

 

 双子の兄に注意されてしまったので最低限は自炊するかと広いキッチンにノーパソをおいてカメラ経由でこちらを観測するかぐやからあーでもないこーでもないとたわいない話をしながら料理をしていると突然ピキっと画面に映る彼女は固まったため、彩葉は心配そうに声をかけた。

 

 

「別に私はかぐやの発言にいちいち目くじら立てたりしないんですけど」

 

『えっと、そうじゃなくって。あ、彩葉がそう言う事気にしない優しいのはわかってるんだけど、こっちのことじゃなくてツクヨミの方のプログラムが、ね?』

 

「ツクヨミが……?」

 

『えっとね――――』

 

 

 ツクヨミの管理AIたるヤチヨはもじもじと人差し指同士をくっつけながら上目使いであざとい事この上ない画角を作りつつ話始めた。

 

 

『ヤッチョとしては、ちょっとした冗談のつもりでおふざけと言うか、戯れと言うか~』

 

「なにやらかしたの」

 

 

 ころりとヤチヨのアバターもかぐやのアバターも使い分ける同居人がやましい事がある時のどうにか誤魔化そうとしている時のそれであることは彩葉には十分に理解できるリアクションであったため問い詰めることにした。

 

 それはそれとしてヤチヨのアバターでかぐやみたいな動きしてるの可愛すぎる、とリアクションを取りたい気持ちは彩葉の中で同時に存在している。

 

  

『実は―――』

 

「は?何それ私されてないんだけど」

 

 

 やましい気持ちはない、イヤちょっぴりあったかもしれないけど……なんて宣うかぐやのその全貌を聞いて彩葉はキレた。

 

 

『あの時は輪廻からハズレない様に必死に普通の人と同じように頑張って対応したんだよ~。あ、もちろんあの時対応したのは私本人だったけど』

 

「それはうれしいんだけど」

 

『えへへ、そう?』

 

「って、誤魔化されないから」

 

『いいじゃんか~妄想の中でくらい彩葉にしたかったことを考えてもさ~』

 

「かぐや」

 

『今度彩葉には一切自重してないのやるからゆるして♡』

 

「……もう!」

 

ちょろは

 

「か ぐ や」

 

『ごめんなさーい』

 

 

 要は今回のやらかしとやらは『ツクヨミを作ると決めてからヤチヨが彩葉にしたいとずっと考えていたキャラクメイキングチュートリアルでのイチャつきの妄想プログラム(甘さ控えめ)』の実行であった。

 

 

『でもねでもね、プログラム実行にはガッチガチに彩葉の生体情報を検知しないと作動しないようにプログラミングしていたはずなんだよぉ』

 

「私の生体情報?」

 

『スマコン由来の顔認証……彩葉のDNA情報から構成される彩葉であると認識されると要素が86.1%以上一致していないと実行されないはずなんだよ~』

 

「なにその中途半端な数字」

 

『168とかけてみた』

 

「大喜利かよ」

 

 

 そもそもそんな一致率兄弟だとしても早々に出てくる確率じゃないのにぃ、なんて呟くかぐやのリアクションに野菜を切りながら一つそれに当たりそうな人物について思い当たってしまった。

 

 

「ちなみになんだけどそれをやっちゃった人物の情報は」

 

『流石に彩葉でもツクヨミの個人情報保護的に話せないこともあるんだけどなぁ……確認するけど』

 

「多分それ私の双子の兄」

 

『なるほど双子のお兄ちゃん』

 

 

『――――え゛ふたごのおにいちゃん!?え、え、えぇ?何それかぐや知らない!ヤッチョも知らないんだけど!?』

 

「うるさ」

 

『え、あ、うん。えっと登録者は酒寄日向って名前だ』

 

「うん、じゃあ兄確定だ」

 

『言ってよぉ!』

 

「あの頃はそこら辺に意識向けてる場合じゃなかったし」

 

 

 自身が双子の兄にある種母以上にコンプレックスを拗らせていたことなど言えるかと彩葉は全力で目を逸らし、16インチの画面を縦横無尽にやかましく動き回るかぐや(大切な人)からの追及を回避した。

 

 

 それはそれとしていくら誘ってもツクヨミ、と言うかスマコンに手を出そうとしなかった日向が何故急に……?という疑問は彩葉の中に残り続けた。

 

 

 

 〇 ▲ 〇

 

 

 

 

 日向の通う通信制の高校は基本的にはWEB上で配信される授業を視聴し、課題を提出することで単位がもらえるタイプのものだ。

 

 その中でもいくつかの授業ではカメラを用いて明確に出席の確認を求められるものも存在するのだ。

 

 通信制高校に通う人の都合は様々であるため出席の機会は1週間に渡って猶予が用意されているのだが、自身の研究に夢中になるあまり日向は度々出席のタイミングがギリギリになってしまうことがある。

 

 そのため土曜日に授業を受けるなんてことも。

 

 かと言って授業の速度についていけないことはなく、何なら通信制すら省いて高認さえ取れればいいと思っていた節すらあったが、彩葉ほど真面目に自己管理ができないため半強制的にでも復習をする機会は設けておかねばならないとこの選択を行っていた。

 

 

「授業中から匂いで胃袋を刺激するのは卑怯では」

 

「大事な休日をうっかりで潰した罰です」

 

「……それはすまない」

 

 

 授業を終えパソコンの電源を切りリビングへ向かえば見計らっていたと言わんばかりに食卓には多くの料理が並んでいた。

 

 

「海鮮尽くしだ」

 

「ええ。海鮮尽くしですとも」

 

 

 彩波之神(あやなみのかみ)なるウミウシの化身を奉る神社の娘である九千代の得意料理は海鮮が中心である。

 

 見た目に似合わず特技は遠泳と言う意外な一面もあるほど海とは親しみ深い生まれなのだ。

 

 

「さ、手を洗って夕食にしましょう」

 

「ああ」

 

 

 十二分な間過ぎる広さの居室から洗面所へ向かう。

 

 一人暮らしをすると考え寝泊りしてバイトして稼いで、研究できればいいと木造2階建ての昭和溢れるアパートを選択しようとしたら九千代に首をブンブンと振られて押し込まれたのがこのマンションだ。

 

 九千代は本家神社の娘さんで、その分家には多種多様な人が存在する。

 

 九千代は月夜野の家系の子孫には基礎スペックが高い月人の生まれ変わりが度々生まれるとの談であったが、あまりにもその手合いは広すぎる。

 

 漁業、農業、林業、製造業、不動産に芸能など多種多様。

 

 果てには海の外に渡って宇宙開発に携わっている人間まで居る。*1

 

 日向の研究もその一角に携わるとある研究所にお邪魔して行っているのだ。

 

 

 ……まぁ、今年の初めに神社へ拉致られて彼女の親族の集まりで「私この人と結婚しますので」とあまりにも堂々と内輪を埋められてしまった時は大変胃にダメージがあった。

 

 あの時ほど司法試験合格したという実績を有していたことに感謝したことはないだろう。

 

 そのお陰で最低限のラインは超えられたと言っても過言ではない。

 

 勝手にそう思っているだけで皆いい人なのでこちらの考えすぎかもしれないが、あまりにもとんでもない所のお嬢様に捕まった感は否めない。

 

 九千代は九千代で「私は3女ですし、家業は兄がどうにかするでしょうし皆自由人ですから」と全く気にしていないようなのが何とも。

 

 

「俺も俺で家族に紹介しないとなぁ‥‥…」

 

 

 蛇口から流れる水の音にかき消される程度の音量でぽつりとこぼれた。

 

 

 ―――兄妹はともかくあの母に説明どうすっかなぁ。

 

 

 そこがあまりにも面倒臭すぎる。

 

 九千代は全く意に介さず流すどころか徹底抗戦しそうだけど。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 夕食を取り終え、リビングでのんびりしていると電話がかかって来た。

 

 彩葉からである。

 

 

「どないしてん」

 

『日向ツクヨミ始めたやろ』

 

「何で知ってん」

 

 

 彩葉から電話が来たと九千代に声をかけて電話に出ると、久しぶりに関西弁を聞いたと言わんばかりに目をキラキラさせるものだからコッチ来いと手招きして膝枕をした状態で九千代の頭を優しく撫で始めた。

 

 

『えーと、私の友達が私の初期スキンの時とおんなじ恰好してるのがツクヨミのメインストリート歩いてるの見かけたって言ってきて』

 

「あーそれは迷惑かけたわ。ふじゅ~貯め次第、直ぐに変えるわ」

 

 

 ……え!?みたいな顔でこっち見んで。

 

 

『いや、うん。むしろ日向に迷惑行くだけだと思うからそのまんまで良いというか、リスク分散と言うか』

 

「変える、すぐ変えるわ。そしてスケープゴートにせんといて」

 

 

 そう言えば彩葉はツクヨミ内で有名人だったことがすっかり頭から抜け落ちでデートしていた。

 

 なんかひそひそされていたような気がしないでもない。

 

 

「そんだけ?」

 

『そんだけってあんたはさぁ』

 

「ま、彩葉がこんなタイミングで電話かけてくる言うんはちょっとツクヨミ来い見たいなことなんやろ」

 

『わかってるなら話切り上げようとせんといて」

 

「面倒ごと回避すんのも大事なことや」

 

『今面倒って言った?』

 

「厄介ごとの匂いがするねん」

 

 

 滅多なことで自分から電話をしてこない彩葉がわざわざ電話をしてくると言うことは面倒ごとと言うことは凡そ察する。

 

 

「別に彩葉の手に及ばずに手を貸してほしい事ならかしたるけど、内容的に日常的な範疇の何かやん」

 

『うぐ』

 

「何てな、たまには遊ぶか」

 

『……今日の21時くらいにツクヨミのログインゲート前で』

 

「わかった。そんくらいやな」

 

『詳しくはツクヨミであったら話す』

 

「あいよ。プレイ時間3時間程度の初心者だから優しくしたってな」

 

 

 そんなことを言いながら通話を切断。

 

 なーんかどことない厄介ごとの前振りにも思えるが、ちょっと図太さを出してきたことに兄感動。

 

 

「そう言うことで21時からちょっとツクヨミ行ってくるわ」

 

「わかりました。遠目で観察してますね」

 

「何故遠目……?何なら紹介「私の計画ではまだ少し早いので」さいで」

 

 

 計画とは。

 

 

「そうと決まれば先にお風呂済ませてしまいましょうか」

 

「……なんで俺の袖がっつり掴んでるんだ」

 

「それは一緒に入るからですけど」

 

「おい」

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

「うわ、本当に私の初期アバターじゃん」

 

「お前は月見ヤチヨに『これがいいと思うなぁ』と言われて断れるのか」

 

「それは無理」

 

「だろ?」

 

 

 ツクヨミへ訪れるとゲート前には既に彩葉がいた。

 

 

「そんで何用で?月見ヤチヨ案件?」

 

「え、なんで―――」

 

「いや、視界の端っこに映ってんだよ」

 

 

 早々に要件を切り出し始めた日向は困惑する彩葉を尻目にスッとログインゲートからメインストリートに向かった方角を指さす。

 

 それにつられて彩葉の視線もそちらに向かうと、電柱の影からこちらを除く下手な隠れ方みたいにちらりと覗いてはサッとさくれる特徴的な髪型とメンダコが確認できた。

 

 

「あーもう、かぐやってばッ!」

 

「かぐ……?先週引退した子の名前じゃなかった?」

 

「あ゛」

 

「やっぱ面倒ごと。ほれ、人気の少ない所案内しい」

 

 

 予感はしっかりと的中していたと深くため息を吐き、彩葉の背を叩くように動き出した。

 

 アバター同士の干渉はアバター同士がぶつかった時のプレイヤーの視界の揺れで気づくのが何とも不思議な設計だ。

 

 プンスコとしながらすたすたと推定メンダコの方へ進む彩葉の後ろを日向はゆっくりと歩いた。

 

 

 ……彩葉はいつの間にか運営側になったのだろうか。

 

 

 なんて大まかな出来事の流れは九千代から聞いたりはしていたが、多くのことは知らないばかり。

 

 好意と言うものは一切包み隠さない癖に割と強かに情報の開示と隠匿を行うのが彼女だ。

 

 

 日向は少しすっとぼけた顔をしながら、とある世界線では彩葉と日向が育てることになった少女の成れの果てである月見ヤチヨの詳細を聞くことになるのだろうかと察した。

 

 夜中にぶつけられていいカロリーじゃない気がして来た。

 

 

 ―――なおこの後聞かされるのはほぼ惚気で、申し訳程度のキャラメイクの際の不手際の謝罪であった。

 

 

 何を見せられているので……?

 

 日向は想定していたものとは違う糖分過多を食らい、ログアウト後にデカフェ*2を飲んで寝た。

 

*1
月人因子が強いと帰巣本能が無意識に刺激される

*2
カフェインのない珈琲




・酒寄日向
 
 運動神経は雑魚

 彩葉に腕相撲は負けるし足の速さも負けるし運動で家族に勝てた覚えがない

 本来辿る予定だった未来とやらは断片的に聞いてはいるが、実際に遭遇し度々妹とその大事な人の惚気にあっけにとられる。

・月夜野九千代

 割とガチ目のお嬢様

 中学生時代など遠出が出来ない年齢では祭りがあると神事舞をしたりしていたが、高校生になった瞬間に記憶の情報を頼りに毎週末新幹線乗って京都の日向探しを敢行していた

 自身の望む未来のためにならどこまでも貪欲に成れる我儘プリンセス

 ―――ツクヨミの10数年先のセキュリティまで把握している私にこんなのも無意味なのでステルスでお邪魔しますね。

 ―――うわ、製作者の惚気キッツ

・酒寄彩葉

 双子の兄との成績差に人知れず悩んでいた時期がある。

 しっかり思ってくれているという事実と嫉妬やその他の醜い感情がごちゃ混ぜになって距離をとっていた時に人知の理解を超えし宇宙人がやってきて色々ぶっ壊されたので色々と許容と言うか清濁の見込めるようになった女。

 なお明確に日向に勝てる部分が存在していたのでギリギリ自尊心を保っていた模様。

 どこかの世界線では致命的に生活能力が適当すぎる所と頼れるときはしっかり頼りになる所でシェイクされた結果色々とどうでもよくなっていた。

 ―――ねぇ、なんでちょっと甘い声出してるのかぐや。

・月見ヤチヨ(かぐや)

 8000年の時を経て愛する人の双子の兄の存在を知った女

 え、彩葉が生まれてから監視していなかったのかって?

 好きな人の全部を知りたいけど、初邂逅の時期を誤って言動に不備が発生した場合輪廻がズレて何が起きるか分からないから(血涙)

 何ていうのは建前で、一目見たら我慢できないので必死にこらえていた。

 なお原作では気づいて♡気づいて♡が漏れまくっていた模様。

 ―――あ、彩葉これは浮気じゃなくて彩葉の家族と良好な方が嫁と小姑関係っていうのかな平和かなって~他意はないよ?ヤッチョが保証しちゃう


・ゴシップネット記事

 ツクヨミは光のインターネットなのでこんなものはないしヤッチョが即削除してくれるはず()

New【速報】いろP複数人説確定か【画像あり】[削除されました]

  【悲報】ワイ、推しのお忍びデート見てしまうwww[削除されました]
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