劉備の「義」曹操の「覇」といった「光」の「影」にある「闇」を担当している様な、人間の中のある種の悪を表現している感じのキャラクターで、董卓の悪逆非道の相当部分とか曹操の大義名分を落とした徐州虐殺とかの裏で暗躍したりしていました。
名前とかまで其のまま使っては盗作かも知れませんが『恋姫』設定では月ちゃんの罪を被って貰うキャラクターは必要なので、インスパイアはさせて頂くことにしました。
「天の国」では見覚えのある石油とかの「備蓄基地」を連想させる光景。
立ち並ぶ半地下式の「穀物タンク」が、中華帝国のスケールというものを視覚から納得させる光景。
北郷一刀にしても敖倉(ごうそう)に次いで2度目に目にする光景だが、これが1ヶ所ではない事に改めて思い知る思いだった。
中華帝国、その巨大さを。
その巨大な帝国が迷走し、その帝都に今や攻め上る、いや、既に帝都を包囲してしまっているのだ。
*
「間に合ったか。洛陽を未だ燃やされていなかった」
本気で一刀は安堵していた。
帝都洛陽の城壁沿いに、その周辺を完全に包囲して布陣した連合軍。
片や劉備軍は、そこからやや離れて帝都近郊の「食糧備蓄基地」を占拠し、同時に連合軍への兵糧支給を担当していた。
ここに至る2つの関門で「無名の私軍にあるまじき」手柄をたててしまったが為の、いわば左遷であることは明らかだ。
だがしかし、連合軍の殆どに其処まで記憶に残る功績を上げたのだから、後は戦後に其の実績を上手く利用して立ち回るだけだろう。
と、いうか「伏竜鳳雛」が上手くやるだろう。
そうわけで、現在は大人しく後方任務に就いていた積もりだった………。
……。
…聞く処に由ると、この「基地」を占領していた董卓軍に皇帝の方から飛び込んでしまったと言う。
まさか、当の本人たちが同じヘマをする筈も無い。
そう思っているから、その事情を知っている袁紹や曹操が此処を守らせているのだろう。
それでも例の「かくれ道」は1応、抜け道に使われるかも知れないから、1応の警備はしていた。
その警備中に、ひょっこりと現れたのである。ソイツが。
「何者」
見た目で侮(あなど)られないため、愛紗もとい関羽が尋問している。
無論、他の同志たちも立ち会っている。
「へい。俺は済成。これでも涼州軍では、それなりに兵隊の間で意見を纏められる野郎です」
(胡散臭(うさんくさ)―っ。成(な)り済(す)ますなんて名乗っている時点で)
一刀の印象では『演義』で知っている“董卓”の強欲貪婪(ごうよくどんらん)を其のままにして、
ある意味での豪傑ぶりだけを「羊の皮をかぶった狼」にしたらこんなんじゃないかな、とも見えている様だった。
さらにソイツは、これが暗器(かくし武器)だったら何人殺せるか、というほどの金銀財宝の類(たぐい)を取り出して見せた。
「これで信用して貰えるでしょう。これで足りなければ、また幾らでも」
無論、この面々では信頼度は下がっている。
だからといって、流石に其れをこの場であからさまにするほど、例えば「はわあわ」とかはお人好しでは無い。
「それで、何を言いたい」
「謀反人、董卓の首を持って来ますから、その手柄を認めて欲しいのでさ」
「……」
「将軍方にも、悪い話じゃ無いでしょう。
旗揚げした以上は手柄を立てたいでしょうが。
だのに太守だの、州の刺史だのの官位が無いばかりにばかりに、こんな兵糧の番人を押し付けられて」
敖倉の段階だったら微妙に当っていた。だから現時点では微妙に外(はず)していた。
悪い話じゃ無いかも知れない。
けれども、劉備軍の面々には好みじゃ無いし、それに連合軍にバレたときに面倒そうだ。
そこで、曹操の陣営に例の金銀を届け出た。
戦場や政略で敵に回したら油断も隙(すき)も無いが、こういう場合には袁紹や袁術より信頼出来る。
*
華琳は、あっさりと受け取った金銀を空いていた「長持ち」に放り込んで封印をした。
「出来れば、本来の持ち主に返したいのですが」
「まあ、貴女ならそう言いそうね。それで、申し込み自体はどうする積もりかしら」
「まだ、はっきり決めていないのですけど…」
そもそも、一刀には”あの”董卓があっさり殺されるとも思えなかった。
「正史」の董卓といえば、個人的な武勇でも有名だ。
暗殺するにも、あの呂布を裏切らせなければ、殺せる相手が居なかった位だ。
…確かに”この”世界では、劉備たちが桃香たちだったり曹操が華琳だったりしたが、それでも例え女の子でも、確かに劉備たちだし曹操だというキャラだったし“董卓”だって、そんなにキャラが壊れちゃいないだろう???
「まあ、すぐまた来るわよ。お手並み拝見、少し楽しみね」
華琳もそう言った。
*
「本当に、董卓の首を持って来るのか?」
「信用して貰えませんかね?これでも」
前回より多い金銀の小山。
ここで、どう答えるかは、あらかじめ相談していた。
「首を尋問しても、董卓だと答えはしないだろう」
「これは、厳(きび)しいおっしゃり方で」
「尋問できる様に生け捕りにして来い。
“その”董卓が本人だと確認出来たら、連合軍にも、済成とか言ったな、そちらの方の条件を取り次ごうじゃないか」
(最初から殺す積もりでも、呂布でも無ければ殺せない”あの”董卓だ。
生け捕りなんか不可能だろう。これで、この胡散臭い話も真面に成るだろうさ)
とでも、一刀は思っている様に俺こと簡雍には思えた。
*
また金銀を届け出ると、
「この済成とかいう奴は、欲深ね」
と、華琳も言った。
「自分が欲深だから、他人も「コレ」で動く。
動かなければ、もっと欲しがっているとしか解釈出来ないのよ」
おそらくはそうだろう………。
……。
…数日後、済成は本当に連れて来た。
済成が連れて来た2人の少女。
そこにいた全員が「お人形さんみたい」だと思った、儚(はかな)げな少女。
もう1人は其れを庇う様にして1同を睨み付けている。
済成は、この2人が董卓と軍師の賈駆だと言うのだが、
(これじゃ“壊れキャラ”も限界があるじゃないか)
というのが「天の御遣い」の感想だった。
兎に角(とにかく)
「先ずは本物だったら。後の話は其れから」
と、言って帰らせた。
「あんたたち、いったい月(ゆえ)をどうする積もり」
「どうするって…」
(確か俺の読んだ『三国志』だと)
と、ボソッと呟くのが、俺だけに聞こえた。
“董卓”の死骸(しがい)は、帝都の市場に晒されただけではなく、人体ろうそく立てにされて灯(あかり)をを灯(とも)された。
そして数日間、その灯は燃え続け、これを見て泣くものは死罪とされたという。
(…って、何処の「鬼畜系18禁もの」だよ。この子じゃあ…)
案の定、賈駆(?)は“鬼畜”“変態”“ロリコン”などと翻訳出来そうな罵詈雑言(ばりぞうごん)の類を肺活量の限り喚(わめ)き騒いだ。
同志たちもジト目である。
「だ、だからさあ、これは“魔王董卓”の末路であって…この子が“魔王”に見えるかい」
一刀も焦っていた。
それぞれの個性と態度で渋々納得したみたいだったが、その途端に桃香が別な事に気が付いたみたいだった。
「すみません。もし本当に貴女が董卓さんだったら、私たちは大変な思い違いをしたかも」
突然、平謝りし始めた桃香を見て賈駆(?)は訝し気にしていたが、謝る内容から気が付いた。
汜水関で華雄(真名猫(まお))を挑発する為に「”魔王董卓”の10の罪」を数え上げた相手だという事に。
その途端、怒るより先に、
「ま、まさか。月の事をそんな風に思っていたから、さっきはあんな事を」
等と、月を抱き締めて震え出した。
「いや、だから、その子は“魔王”じゃ無いんだろう。その子が董卓かどうかより前に」
一刀のフォローもフォローに成っていたかどうか。
そこに曹操軍の面々が現れた。捕虜にしていた猫や 張遼(真名霞(しあ))を引き連れて。
霞たちは、必死になって否定した。
「ちゃうでえ。この子たちは「月」に「詠」っちゅう、只の侍女や。
そもそも、あの成り済ましものは、兵を扇動して略奪して回っていた様な欲深なんや。
適当に誤魔化す積もりや!」
だがしかし、必死に成り過ぎだ。その態度が語るに落ちている。
けれども、華琳すら言葉に出して突っ込みはしなかった。
当然ながら一刀たちにも突っ込む積もりは無い。
結局の処、華琳が言い出した事は、
「済成とやらが又来たら、私の陣営に連れて来なさい」
だけだった。
華琳たちが帰った後で。
「いったい、どう成っているのだー」
鈴々ならずとも、説明が欲しい処だろう。
「伏竜鳳雛」が流石に看破した処では、つまりはこういう事だ。
まず、この月(真名らしい)という少女が本当に董卓本人だろうが、只の侍女だろうが、連合軍が倒すべき“魔王”は他にいる筈だった。
「もしかして、アイツが本当の魔王だったりするのか」
まるきり直感だろうが「伏竜鳳雛」でも、そう疑ったりしている。
「それに、私たちの目的は帝都の民衆を解放する事です。未だそれは達成出来ていません」
「つまり、まだやっつけないといけない相手が、あの城の中に居るのか」
その通りである。しかも、帝都洛陽を燃やされないようして倒さないと成らない。
*
「華琳様、どう為されるのですか」
「あの子がたとえ董卓本人であっても、もう問題は別だわ。
あの帝都の中にいる「董卓軍」を今手中にしていて、おそらく私たちが主張してきた“魔王”の所業を、実際にやってのけた奴を引きずりだして倒す。
そして、奴らが握ってきた、最大の「宝」を……うふふ。
その為の策を仕掛ける隙を、向こうが見せてきた事の方が、重大なのよ」
華琳は「乱世の奸雄」の微笑をした………。
……。
…曹操軍の陣営。
劉備軍のときよりも大量の財宝を持参した済成との交渉で、華琳は洛陽からの退去を承諾させた。
ただし、洛陽に火をかけるとか、民衆を拉致するとかの行為に出た場合は、連合軍が総攻撃するとの条件を付けて。
ここで、ある条件を“スルー”していたことに、はたして何人が気付いていたか。
承認を求められた連合軍の諸侯からも、その点を言葉に出して突っ込んだ者は居なかった。
「長持ち」の封印を確かめた者は居たが。
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