無事に「桃園の誓い」は行われた。
桃香と愛紗、鈴々もとい劉備、関羽、張飛は姉妹の契りを結んだ。
そして「天」から落ちて来た、ということに成った北郷一刀も「天の御遣い」と認められた。
さて、これからどうするか。
これ自体は明白だった。
既に「黄巾の乱」は始まっていた。
琢群の周辺にすら、黄巾に便乗したであろう妙なやつらがウロウロし始めていたのだ。
現に「天から落ちて来た」直後の北郷も、黄巾を付けた3人組に襲われて、愛紗に救われていた。
だから義勇軍を結成して、黄巾賊から民衆を守る、というのは明白だった。
俺は「桃園の誓い」の2次会に当たる宴会を主催しながら、あれこれと思っていた。
幸い、簡家は其れなりの豪族で、部曲(豪族が私的に支配している民)も其れなりに抱えていた。
また、愛紗が用心棒を務めて来た馬商人の張世平に蘇双も、進んで投資を提案してくれた。
また既に、桃香も流石に劉備だという位には人望があった。
それやこれやで、それなりに義勇軍は揃いそうだった。
それでも、その先、と成ると行き先に迷いそうだった。
「ご主人様には、何か「天のお告げ」は御座いませんか?」
そんな風に聞かれて一刀は、つい漏らした。
「孔明が居てくれたらなあ」
「?」
そのまま、しゃべらされていた。
「天下に人知れず天才が居る。
知る人は伏竜鳳雛と呼び、その2人の内1人でも仕官させれば天下をとる事も可能だという。
劉備玄徳は3顧の礼を持って臥竜を招き、まさに水を得た魚の様に自らの求めた軍師を得る。
そして、その軍師の英知によって自らの王国を建てる事に成る」
「真ですか。やはりあなたは「天の御遣い」なのですね」
等と感心しているが、
「それで、その伏竜鳳雛とやらは何処に」
「俺が知っている話だと「3顧の礼」の場所は荊州襄陽の近くの…」
「(絶句)」
「(絶句)」
「遠いのだ」
当然の反応だろう。
ここ幽州はおおざっぱにいえば「現代」の北京辺り。
後漢帝国の版図では、長城にも近い北東の端に近い。
片や、荊州は「帝国」の中心より南より辺り。
ここから軍師を迎えに行くなら、ほぼ国内を横切る事になる。
おまけに今、その国土は黄巾賊が暴れ回っているのだ。
実の処「正史」の劉備たちは、流浪の傭兵隊としてあちらこちらで戦う事20年、その結果として荊州に辿り着いていたのだが。
「行きましょう」
「え?」
「ええ?!」
「伏竜鳳雛を迎えれば人々を救えるなら、行きましょう」
桃香は、それから愛紗を振り返って、
「それに、愛紗ちゃんは旅をしながら、この国や民の現状を見て来たのよね」
そして1同を見回す。
「この旅はその意味もあると思います」
まるで、天竺へ行くと言う三蔵法師だった。
「行って来いよ」
実の処、俺は知っている。
20年も待つ必要は無い。
すでに伏竜鳳雛は、存在しているのだ。
この世界が『恋姫』外史ならば。
桃香たちは出掛けて行った………。
……。
…琢群で留守を預かりながら、義勇軍の文官職の仕事を始めていた俺は、戻って来た桃香たちから事の顛末を聞かされた。
荊州襄陽の城内(歴史時代の中国の都市は城壁都市)には「水鏡女学院」が在って、その女学院に出入りする人たちの間では、伏竜鳳雛は其れなりに有名だった。
そして「3顧」の通りに、門前払いされたり、水鏡先生に、
「好々」
と、あしらわれたりした末に、3度目に会えた伏竜鳳雛を遂に口説き落として連れ帰って来た。
むしろ問題は、其の往復の旅の途上だった。
黄巾党の唱える、
「蒼天既に死す」
そのままの惨状を、いやと言う程目撃して来ることに成った。
その結果、いよいよ決意を新たにしていた。
「みんなが笑って暮らせる世の中を作る為に」
その桃香の決意を、皆が共有して戻って来た。
この連載作品の、外伝に当たる連載を新たに思い付きました。
暫くは、交互の投稿に成ると思います。