今回は『銀河英雄伝説』のパクリが在ります。
そのひと言すなわち「7度捕らえて7度放つ」
それだけで「伏竜鳳雛」には理解出来たらしい。
そう例え、南蛮王孟獲を殺した処で統制すらとれなく成った“南蛮”各部族がバラバラに略奪して来るように成るだけだ。
南蛮の全員を皆殺しにするなど不可能な以上、却って面倒に成るだけである。
それよりも孟獲の統制の下で侵入してくるのなら、その王ただ1人に「漢」への侵入を諦めさせる方がより完全な解決に成るのだ。
少なくとも、南蛮に隣り合う「蜀」の国をこれからも治めていく積もりならば。
その為には、孟獲には軍事的に限らず心理的にも「参った」と思い知らせるべきであり、それまでは孟獲を殺す訳にもいかない。
(よし、先に言えたぞ)
とでも、俺こと簡雍が見る北郷一刀の顔には書いてありそうだ。
孔明にこの戦略を思い付かせた切欠は『演義』だと馬謖の進言だった。
この為に次の「北伐」でも期待した結果が「泣いて馬謖を斬る」に成ってしまった。
今回も胡蝶は「妹」を連れて来ていたので、余分な事を言わせない方が無難だったかも知れなかった………。
……。
…山また山脈の雲南でも、そこは大陸。
山と山の間には其れなりの平野があり、そこに劉備軍と南蛮軍が布陣していた。
「にゃ?こっちの半分くらいだけにゃのにゃ。今回は今まで以上に楽勝にゃのにゃ」
ただし、敵はもう2軍いたのだ。
南から北へ向かう南蛮軍と、北から向かい合う劉備軍。
その東から接近する軍の武将は星。軍師は胡蝶。
さらに、西から接近する軍の武将は桔梗。軍師は狭霧。
「儂(わし)らをまるで荊州か、いっそ幽州から連れて来た者みたいに使(つこ)うてくれるのう」
桔梗の誰に言うとも無く言った言葉に狭霧が答えていた。
「そんな事も考えていらっしゃらないでしょう。あの方たちは。
ただ「伏竜鳳雛」は、厳将軍が長兵(射程の長い兵器)に熟練しているとは考えたでしょうが」
その通り、桔梗たちには虎牢関以来自慢の連弩を預(あず)けていたのだ。
いかにも蛮兵らしい勢いと数を頼んで押し寄せる南蛮軍を、愛紗と鈴々が陣頭に立ち、朱里と雛里が白羽扇を振って押しとどめる。
「しゅぶといにゃ!」
孟獲が苛立った、その瞬間…
「1点集中…狙え……撃て―!」
桔梗は自ら豪天砲を放つと同時に連弩を1斉につるべ撃ちさせた。
狭霧の戦術眼と桔梗の熟練によって、最大効率で統制された1点集中射撃が打ち込まれた。
何本かの矢に襲(おそ)われた1人が、その衝撃で跳ね飛ばされて周囲の何人かを巻き込む。
あたかも鏨(たがね)を打ち込まれた石が砕ける様に反対側へ陣形を崩した。
その方向には、星と胡蝶の率いる騎兵が待ち構えていた。
「ここは突撃するしか在りません」
「聡明なる「白眉」でもすら、そうしかないか。では、全軍に命令…
第1命令…突撃!第2命令…突撃!!第3命令!ひたすら只突撃!!!」
…愛紗や鈴々に比較すれば地道で着実な武将と思われていたが、これ以降の星は「全身すなわち肝っ玉」と呼ばれるようになる。
ドミノ倒しのように崩れかかる其の出鼻を思いっ切り叩かれて、もはや統制を取って戦う兵士では無く逃げ惑う群集となった南蛮兵たちは、敵のいない方向すなわち最初の布陣での後方へ逃げ散った。
しかし、これで南蛮王孟獲が負けを認めたとも思えない。
孟獲自らが負けを認めるまで、7度でも追い払わなければ成らなかった………。
……。
…まだまだ、武将とは言い切れない一刀にも、そう見えた。
「あれって?前回と逆」
そうだった。前面にはほぼ劉備軍の半分程の南蛮軍。
右手からは長弓を構えた弓兵が接近しつつあり、反対側の左手からは南蛮軍らしく戦象を揃えた突撃隊が好機を窺(うかが)っている。
「伏竜鳳雛」に言わせれば、
「前回、こちらにやられた仕返しをそっくりする積もりでしょう。
止めをさす役を自分でする積もりなのも」
「ただし、この陣形は事前に見破られると、各個撃破の好機を与える危険があります」
「そういう訳で、全軍、全速力進発。中央正面の敵から各個撃破します」
元々こちらが半分程度でも持ち堪(こた)えられるくらい、軍を預(あず)かる武将や軍師に差があった。
向こうの方が半分程度でしかも統率する王が居ない。
他の軍との連携もまだ遠い。これで破るのは容易だった。
中央正面の南蛮軍を撃破すると、そのまま敵の「包囲陣形」の外に飛び出した。
そのまま戦場を巡ると、弓兵隊の後ろから襲い掛かる
元々弓兵は接近戦、特に正面以外からの攻撃に脆い。
第2の敵も苦戦することなく撃破して、そのまま戦場の中央に飛び出すと、第3の敵と正面から向かい合った。
「こんにゃはじゅではないのにゃ!! 」
それでも、南蛮王孟獲は自軍の陣頭に立ち戦象に大地をゆらがせて劉備軍と正面衝突した。
そして、見事に中央を突破した。いや、突破「させた」のだ。
そのまま劉備軍は孟獲軍の左右をすれちがう様に後方へ飛び出すと、勢いのついた象を止められない間に、方向転換を済ませ今度は後方から追撃する形になる。
「にゃにゃ!?!向かいにゃおって、反撃しゅるのにゃ!!」
だがしかし、勢いのついた象は急には止まれない。まして、方向転換と成れば。
手間取っている間に連弩の狙いを付けて象が横腹を向けたところに打ち込めば、象使いを振り落とし味方の歩兵を踏み潰して、勝手々々に逃げていく。
流石に王である孟獲を乗せていたのは1番強く1番賢い象だったが、こう成ってしまっては当人が逃げる役にしか立たなかった………。
……。
…その後も、戦術を変え布陣を変え南蛮王孟獲は劉備軍と戦い続けたが、その度ごとに裏の裏をかかれるか先手を取られるかして、逃走する繰り返しだった。
*
曹操軍の陣営。物語は、沛国からの急報を受けて軍議を開いた時まで遡(さかのぼ)る。
急報の内容が内容のため、軍議の最初から殺気だっていた。
軍議の行方は暴走するかと思われた。
…その時、軍師の1人である風(程昱)が意外と思える発言をしたのである。
「未だ、襲撃して来たのが徐州軍とは決まっていません。
また、御1族が悲運にあった、とも決まっていません」
何時ものノンビリした口調でも無く、頭上の「太陽の塔」らしきものが代弁する時の皮肉めいた口調でも無い。
あくまでも冷静な口調。
「他人が何を言う!」
とまで、曹夏侯1族の誰かは激高した。
*
俺こと簡雍は「的盧イベント」の前後、風を酒に誘ってみたことが在った。
実は、御節介である。
俺にも「正史」や『演義』の知識がある。
曹操の覇道を汚す程の大愚行という結果と成る、ある大失敗。
尤(もっと)も、俺の『原作』に接しての感想では『恋姫』の華琳には相応しくない。
とは言え、劉備軍の簡雍に出来ることには限界が在るだろう。
せいぜいが御節介の積もりだった。
「正史」や『演義』では、徐州軍と疑われる何者かに父親を殺された曹操は、復讐の軍を起こす。
けれども、何の罪も無い徐州の住民を大虐殺するのは、決して正当化出来ない。
劉備や孔明は、遂に許さなかった。
「正史」の孔明は、子供の時、この虐殺から生き残った難民の出身だった、という説もある。
曹操がどんな大義名分を唱えようが、その「正義」を信じない。
それほど、曹操の「正義」を貶(おとし)める結果に成ったのである。
しかも、結果として仇は討てなかった。
留守にした勢力圏を「旧」董卓軍壊滅の後行方不明になっていた呂布に乗っ取られかけて、徐州州牧陶謙を殺す事すら出来ずに、力の無い罪も無い住民を虐殺した汚名だけを被ってスゴスゴ引き揚げる羽目(はめ)に成る。
留守を預けていた旧友にすら見限られた。
おまけに『演義』の語る処では、この事件には陶謙は関与していなかったのである……
俺は、自分の「正体」を疑われる様な失言をしない様に言葉を選びながらも、風には曹操の大失敗について吹き込んだ。
「それは「天の御遣い」のお告げですか」
「そう思っていても好い」
何処まで、信じただろう。
*
俺のサジェスチョンが記憶に残っていたのか、風は独自に沛国周辺への用間を放っていた…
独自の用間からの情報を基にした風の主張に確からしさを感じたか、先ずは旧友でもある稟(郭嘉)が加勢し、1応軍師の筆頭である桂花(荀彧)が中立の立場から賛同するに至って、流石に華琳は自分が冷静さを失っていたことに気付き、内心で思った。
確かにまだ、何もかも不明だったわね。
攻め込んできたのが本当に徐州軍なのか。
何より、沛国の1族がどう成ったのかも。
殺されたかどうか、まだ分からない親の仇討で、冷静さを失うより先にする事があったわね…
冷静に戻った華琳は口を開いた。
「風は私を冷静にさせようとしただけよ」
1同はそれで納得するしか無かった。何せ緊急事態なのである。
殺気立っていた曹夏候1族の出身者たちも、取り敢えずは不平不満を引っ込めた。
「未だ沛国の曹夏候1族が殺されたという報告までは来ていないわ。
ならば直(す)ぐにする事がある筈よ」
冷静さを取り戻した華琳が、命令を下し出す。
霞(しあ)貴女たちが連れて来た涼州騎兵の快速を役に立ててもらうわ。
至急、快速部隊を選抜して。
春蘭、秋蘭、貴女たちは、この快速部隊と沛国に急行して。
貴女たちの役目は、快速部隊の道案内と1族に対しての味方だという証人。
だから、貴女たち自身の兵は足手纏いは連れて行かない様、今回だけは最小限。
風、確かにこの徐州軍らしきものは、正体も目的もはっきりしていないわ。
用間を使って調べて。
桂花、稟、この緊急事態の隙をうかがう何者かが出るかも知れないから。
例えば、あの呂布とかね。
油断や隙がないように目を配って。
「とにかく、仇討は殺されてからよ。その前に救う事を急ぎましょう」
*
益州永昌郡。すでに益州も南端の“南蛮”との“国境”の郡。
南蛮王孟獲の軍は、既に劉備軍から6度敗走し此処まで追い返されていた。
「次の戦いは逃がしません。その為に「8陣図」を使います」
「伏竜鳳雛」の作戦に、北郷一刀も納得した。
「そうだな。次が7度目だったな」
野神奈々さんの声で「第3命令 ひたすら只突撃」は書いていても楽しかったです。