簡雍酔夢   作:高島智明

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1国LVの戦略や政治と成れば、確かに劉備は孔明が頼りでした。
けれども、実戦指揮官としては100戦錬磨と言って好かったでしょう。
「戦下手」というイメージには、最後の最後で陸遜に大敗した事の減点が響いています。
実は、それ以前で負けていたのは曹操と呂布位でした。


第54席 孫呉爆発 「正史」は引き戻そうとする

「これは~まさかとは思いますけど「伏竜鳳雛」が御留守だと~こんなことも在るんですかあ」

 

蜀の本拠地、益州の只1つの出入り口と言って良い三峡渓谷。

その渓谷に沿って、蜀側の縦深陣地が続いている。

ひと目見れば鉄壁の布陣。だがしかし、穏は其の弱点を見抜いていた。

夷陵の戦い

劉備玄徳、生涯の不覚とすら言える此の戦いを、まるで再現する様な蜀軍の陣形。

だがしかし、ここには桃香は居ない。なのに再現されていた。

そう「天の御遣い」が、今度こそ最後と思いながら語った「お告げ」にしたがって、あえて再現したのだ。

敵将が穏すなわち陸遜であることを確認して。

「おそらく~火攻で~勝てる筈です~でも本当に~竜鳳の他にはぁ軍師らしい人居ませんかぁ」

「法正さえ生きていれば」

夷陵の敗報を聞いて、孔明はこう嘆いたという。

だがしかし”この”外史では、狭霧は健在で三峡での軍師を担当していた。

法正がその軍師としての実績を示した戦いでは、老練な黄忠を使いこなし、魏の勇将である夏侯淵すら倒している。

北郷一刀は、救援軍が江陵へ出発する前の慌ただしい中で、ある文章を認(したた)めた。

そして、一刀と桃香は狭霧宛ての詳しい手紙を持たせて、紫苑と璃々、それに桔梗を急ぎ三峡の益州側の出口である巴郡まで帰らせていた。

荊州江陵の城外。

「そうか。火攻か。流石は穏だ」

冥琳は、愛弟子による赤壁の再現を期待すらした。

その時まで現状を維持出来れば勝機は見えてくる。

孫呉の拠点である建業。

包(ぱお)とて、今さら主君である蓮華に説くのは、冥琳への裏切り以前に騙し討ちである事位は理解している。

だがしかし、この賭けに失敗したら?本当に此のまま勝利出来るのか?

「赤壁」の前でもあれほど強気だったが、今は迷っていた。

明命は暗躍していた。

実戦指揮官なら、有名無名あるいは男女を問わず、冥琳や穏の作戦の下で戦う中級LVの武将は何人でも居る。

 

だがしかし、明命にしか出来ない任務もあった。シャオの救出である。

幾ら冥琳が錯乱していても、人質に取られた場合は見捨ててもなどとは、蓮華に向って言える筈が無かった。

長江から吹き渡る季節風が三峡渓谷に吹き込み下流から上流へ吹き上げる、そんな夜を待って穏は総攻撃に出た。

 

長江と山脈に挟(はさ)まれて延々と並ぶ蜀軍の陣地のうちの、先ず呉軍に近い下流側の陣地が燃え上がった。

そして、上流側へ順次、延焼していく。

遂には、長江に沿って夜目にも明々と火炎の帯が連なった。

 

その火に追い立てられて益州の拠点の方へ逃げて行く蜀兵を追撃し、そのまま益州を侵掠すべく呉軍は襲い掛かった。

だがしかし、まるで空の袋を叩いている様な手応えだった………。

 

……。

 

…遂に蜀軍の本営に迫った時、火攻に会って総崩れになった味方に巻き込まれて混乱している筈が、蜀軍お得意の「8陣図」を布陣して待ち構えていた。

 

この状況で、致命傷を追わずに撤退出来ただけでも流石は穏だったろう。

だがしかし、三峡からは撃退されるしか無かった。

蜀の拠点である成都

留守中の治安を預かっていた黄権(真名霧花)は、内心秘かに感情を持て余していた。

「今回」の戦いに霧花を出さなかった事が、主君たち特に「天の御遣い」の温情である事は理解も出来れば、感謝もしていた。

それだけに、内心では余計に感情を持て余していた。

信じたくは無い。冥琳にとっては孫呉から「天命」の飛び去る事を意味しているのだから。

「まだだ。この江陵を確保出来れば、ここを足掛かりにして、又ひと度三峡を攻略出来る」

いや、そうするしか、成功させるしか無い。

 

冥琳は強襲を決断した。

城攻めなどは下策で、やむを得ないからするものだ。(「孫子」謀攻篇)

まして、後方に敵の救援軍がいて戦線が膠着している状態でだ。

 

冥琳は兵士たちを集めた。

収容した「第2師団」の兵を含めた全員に全てを隠さずに演説し、精神的に「死地」に追い込んだ上で総攻撃を開始した………。

 

……。

 

…文字通り味方の犠牲者を乗り越えて、城壁に取り付こうとする呉の兵。

 

当然ながら、江陵城の城内から守備兵が反撃するだけでは無く、救援軍の側も攻城軍の後方から反撃するが、呉軍の後曲が反転して救援軍と正面衝突する。

冥琳はその陣頭で戦っていた。

「何て事を?!」

俺こと簡雍には、周瑜の戦いが予想出来なかった、という事は無かった。

彼女の心境については、ある程度「天のお告げ」が在ったのだから。

もしかしたら、周瑜を殺す結果に成るかも知れない、その予想をしないでも無い従軍だった。

だからこそ、今の彼女との戦いには余計に閉口していた。

 

遂に俺は「お目付け役」の分を越えた。

「こう成ったら…連弩、1点集中。周瑜個人を狙え!」

俺の声を聞き付けた救援軍の武将たちは、瞬間だけギョッとして、理解した様に兵士たちに命令し出した。

(…やっぱり、こう成ったか…)

 

風を切る発射音。そして飛翔音。

呉軍の陣頭に掲げられていた「周」の旗が倒れた………。

 

……。

 

…洛陽から派遣された江陵救援軍の陣容は、武将は曹1族の華侖、栄華、柳琳たち。

中級の武将は「旧」魏の「3人娘」。

華琳を「人質」に取ってあるのだから問題は無い。

軍師は蛍。蜀軍を離脱した直後に「旧」魏軍が降伏したため、すんなり復帰出来ていた。

 

その彼女たちを前にして、俺は荊州への行軍中に語っていた。

「天の御遣い」の「お告げ」だと匂わせながら。

 

もしも「赤壁」での「歴史の改変」で「天のお告げ」が無効になっていなかったら、周瑜は矢傷にも構わず、もうひと度陣頭に立とうとする。

その結果、その矢傷が破れて……

……それで、自殺する結果に成っても、孫策との「断金の誓い」を貫く覚悟だろう。

そんな相手と戦うのは、例え偽善でも気が進まないな。

やっぱり、華佗先生でも呼んでおこうか。

明命は洛陽の城内にまでは潜入していた。

そして「北宮」へと潜入する機会を伺っていた。

 

けれども、微妙に違和感があった。

ひと目見れば、形式通りに警備されている。

だがしかし、、宮殿自体が修復中だけでは無い、何らかの手薄さが感じられた。

尤(もっと)も、現状では前線では無い以上、手薄に成る理由は無いでも無い。

再び、激突する両軍。

だがしかし、江陵救援軍の方は専ら応戦と戦線維持を優先していた。

そうして、いわばダラダラと戦っている間に……

 

「う?…!」

冥琳は前日の矢を受けた場所から出血し、落馬した。

明命は、遂に「北宮」の内部に潜り込んだ。

だがしかし「後宮」としての修復が進んで来ているため「ダンジョン」に戻りつつあった。

目指すシャオを探し回っている間に奇妙な事に気が付いた。

この「後宮の主」である筈の「天の御遣い」も劉備も、蜀の雄将、軍師の其々双璧である4者も見かけない?

 

取り敢えず、シャオを見付けるまで、ひと時の潜伏に使用するつもりだった酒蔵で「人質」の筈の曹操に出くわしてしまった。

「医者として折角(せっかく)助けた患者に自殺される程、虚しい事は無い。何時かも言ったな」

華佗から雪蓮の時の事を持ち出されては、冥琳も取り敢えずは「応」と答えるしかない。

 

だがしかし、、穏と亞莎に指揮権を移譲すると、何としてでも目的を達成するよう命令、いや厳命していた。

「残念ね。呉の姫も、一刀も桃香も、愛紗たちも居ないわよ」

「まさか」

明命にも想像の斜め上を飛び去る話だ。

「そうね。あの6人はこの「北宮」を動けない。

それも「人質」の私や麗羽たちを置いてなんて。

そう思っていたわね。貴女も。

確かに、バレない様に出かけないと、ややこしくなったかもね。だからコッソリ出かけたわ。

それに、私だって、今さら留守を狙って妙な事をする積もりなら、華容道で「女」を差し出したりしなかったわよ」

 

「……。…」

「何処へ行ったか?かしら」

成都や許昌よりも洛陽が有利な拠点である理由の重要な1つ。

洛陽の近郊を流れる洛水である。

この時代の水運の地位は高い。

洛水は黄河に合流し、黄河からは官渡水などの運河を経由して、長江へ物流が通じる。

その「水運ルート」を用いて、少数の大型船とその護衛船からなる船団が、洛陽から江東へ密かに直行していた。

孫呉水軍が総出撃していたこともあり、その船団は正体を知られる事も無く、長江下流まで来ていた。

それはそれで治安上の問題があるかも知れないが、長江周辺の江賊は孫呉3代がかりで全滅させられていた。

だからこそ、水軍の総出撃も可能だったのであり、こんな怪しい船団がやって来れたとも言えた。

 

この時点で、洛陽では「北宮」の「お忍び」がバレてはいなかった。

孫呉の拠点である建業。その公邸の奥にある御殿。

蓮華が見詰めるその御殿では、長姉の雪蓮が今だ植物状態のまま、喬姉妹の看護と介護を受け続けていた。

 

「お姉様」

蓮華は、姉に呼びかけるともなく言葉を発した。

 

私にこんな決断を押し付けて夢を見続けているとは、無責任では無いのですか?

 

何分の1かは、本気で愚痴っていただろうか。

この時、蓮華に決断が近付こうとしていた。今1人の姉妹と共に。




『三国志』から『恋姫』への分かれ道で、ウロウロしている感じだと思いますが、あと少しだけ宜しく御願い致します。
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