簡雍酔夢   作:高島智明

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第6席 黄巾始末(前編)

轟音と爆煙。砲弾、そう言い切って構わないだけの威力の大石が、見事に城壁にめり込んだ。

「う~~また外れたのだ~」

本気で悔しそうな鈴々。

そう実は狙ったのである、城門を。

 

大砲の『砲』という漢字に石ヘンが入っているのは、火薬発明以前では投石器を意味したからだ。

古代中国では、最大で50人引きの投石器だと訓練次第で、つまりは50人の呼吸と力が合わされば数10kgの石を数十メートル飛ばせたらしく、立派に大砲の威力があった。

今回は攻城戦なので、この「砲」とか「雲梯」(早い話がはしご車)とかが活躍することに成った。

勿論(もちろん)恋姫たちが活躍していた。

 

本来、50人の兵士を訓練して操作させる「石砲」(投石器)を1人で使いこなす勇士が、公孫賛・劉備軍には「3人」も居た。

つまり、50人では力と呼吸を合わせて引くのが幾ら訓練しても精1杯だろう。

だがしかし、こう成ると1人が微調整して着弾を修正しつつ狙い撃ち出来る。

期待通り、愛紗と鈴々そして公孫瓚軍の客将だった趙雲(真名星)の操る石砲の砲弾は、1撃ごとに城門に近付いていた。

この時、後方の補給隊を采配して待機していた俺こと簡雍が後で聞いた処によると、北門から攻撃中の曹操軍でも、西門での攻撃ぶりを察して、

「味な真似を」

等という声が上がったらしい。

 

「どうします。こちらも季衣か流琉にでも」

「無用よ」

こちらでも定石通り50人引きの石砲が、それぞれの指揮官の号令で次第に呼吸を合わせて飛びつつあった。

更に、雲梯(はしご車)が石砲や弩(ボ―ガン)の援護の元で、城壁に取り付こうとしていた。

「母上…このままでは、北門か西門の方が先に破れるわ」

どうやら、後に「小覇王」と呼ばれるだけあって、戦場ではかなりテンションが上がる性格だったらしい。

もっとも、小さい頃から戦場に連れ出されていた影響もあるかも知れないが。

元々、劉備軍が公孫賛軍に合流してしまうと、4軍の中では孫呉軍の人数が少ない。

それに本来、長江の水上戦で鍛えられた軍だ。陸上戦や攻城戦の経験は少ない。

だがしかし、連れ回していた母親の方は、流石に経験の分だけ冷静だった。

「雪蓮。同時にこの南門に増援する余裕も無いということだ。

それに出遅れなければ好い。最後の最後にな」

 

そう、目的は城門では無い。城内に潜んでいる賊の首領だ。

黄巾「討伐」での孫呉軍にとっては殆(ほとん)ど最初の戦いが、最大の手柄を立てる好機に成り、結果として最後の決戦に成るかも知れない1戦に成っていた。

それだけに、テンションが上がっているのは雪蓮だけでは無い。

その兵の状態まで、孫堅(真名炎蓮)は見切っていた。

今度の愛紗の砲撃は城門のわずか左の城壁に着弾した。

「負けないのだ~」

今度は楼門の屋根に落ちて瓦をバラまく。

次あたりはピンポイントで城門にヒットしそうだ。

「若い人たちがやるわね。そして桃香や白蓮も」

東門から攻撃していた官軍を指揮する盧植(真名風鈴)は戦場全体を見回していた………。

 

……。

 

…結局、北、西、南の3門はほぼ前後して、突破された。

最も数の多い、それも正規の官軍が出遅れたのである。

けれども其れは、城内側に余裕がもはや無いという事。何歩か遅れて東門も破れた。

東西南北の全ての門から官軍が雪崩れ込む。もはや逃げ場は無い。

城内にいた黄巾賊は外側から順に殺されながら、内側に追い込まれて行く。

だがしかし、首領である張姉妹の首を取るまで、戦いは終わらない………。

 

……。

 

…夜明けと同時に始まった戦闘も、何時しか太陽は中天を過ぎて、西の空の半ばまで来ていた。

このまま夜に成れば、闇に紛れて大物に逃げられるか?

流石に軍の指揮官たちはそんなことを考え始めた。

 

無論、ここで逃がす積もりは各軍とも無い。

自軍の手柄の為にも。

 

今は官軍の殆どが城内に突入していた。

本陣で愛紗や鈴々、星たちを激励していた桃香や一刀、白蓮たちも自軍とともに突入していた。

俺は補給隊を采配しながら、彼女たちを待っていた。

(心配無いよな。未だ『三国志』が始まったばかりのこんな段階で何かある筈も無いだろう)

そんなことを思いながら、竜鳳の軍師たちと戦果を待っていた。

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