簡雍酔夢   作:高島智明

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無謀と思いつつも書き始めた此の未熟な作品も、とうとう此処まで辿り着くことが出来ました。
ここまで読み続けてきて頂いた皆様には、心より感謝致します。


第61席 恋姫無双 乙女たちのLast Battle

泰山

歴代の中華皇帝が山上に“天”を祀(まつ)り麓に“地”を祀って、天下太平を天地に報告してきた「名山」である。

 

その山中。如何なる謂れが在るのかすら既にアヤしい神殿らしきもの。

そんなアヤしさ大爆発な場所で、アヤしい儀式を進めようとしているアヤしい2人既。

微かに焦りが見えなくも無い。

まるで、予想以上に抵抗するイジメられっ子にイラつくイジメっ子の如くに苛立つ左慈。

そんな相棒や目前の状況をすら、何処かで楽しんでいる干吉。

その2人組は「儀式」の進行を急ぐと同時に、白装束たちを召還して時間を稼ごうとしていた。

激突と同時に何人かの白装束が消失し紙人形が空中に舞う。恋の強さは健在だった。

それでも数を頼んで其の突撃を阻もうとする敵に対して、本陣で指揮する華琳が先手を取った。

恋の左から春蘭、秋蘭、右から季衣、流琉が投入されて突進力を取り戻す。

 

更に、梁山泊の水上から雪蓮、冥琳たちの指揮する水軍が矢の雨というよりも火矢の嵐を叩き付けた。

白装束の「正体」が、アヤしい方術か何かをかけられた紙人形と見切っての火矢の嵐である。

当然ながら陸上でも恋たちの頭ごなしに、火矢の嵐や「石砲」から打ち出された焼石が飛び越えていった。

 

着弾する辺りから燃えさしの紙人形が飛び散り、それだけ敵の陣形が崩れると、それだけ味方の突進力が増大して行った………。

 

……。

 

…遂に、泰山の登山口まで先鋒が辿り着いた。

その先鋒をかき分ける様にして登山道に取り付いたのは、焔耶が陣頭に立つ「旧」蜀軍だった。

ここは、未だ決勝点では無い。

最終段階での「突撃隊」と成る北郷一刀たちを中軍に守って、焔耶や蒲公英たちが前曲で突破口を開き、桔梗たちが後曲を固めて追撃を撃退しつつ山上へと向って行く。

麓や水辺で戦う華琳たちや雪蓮たちも、これで「お役御免」等とは思って居なかった。

目前の敵と戦い続けると同時に、余裕の出来た戦力から後を追って泰山へ向う。

白装束どもを紙切れに変えながら、突破口を開いていった。

遂に、神殿の前庭というべき空間に「旧」蜀軍の前曲が斬り込み、そこを守る白装束たちを紙人形へ戻していく。

 

その後方で一刀や桃香たち最後の突撃隊が、突入の「タイミング」を見積もりつつあった。

「これはこれは。我々が相手をせずに、儀式に専念も出来ませんかね。もしかして」

「ならば、奴を殺すまでだ。ノコノコ「諸悪の根源」が殺されに来てくれたわ」

「ご主人様…」

「帰ろうな、桃香。阿斗たちが待っているぞ」

軍議の直後、水軍へ戻ろうとする雪蓮を華琳が呼び止めた。

「ここで貴女と約束して置きたい事が在るの。曹操孟徳と孫策伯符の名において」

 

戦い。それも全てを賭けての決戦と成れば最悪の場合を想定して置く。

それは敗北主義では無く責任だ。

「だから、未だ幼い阿斗が蜀王となる事態に成っても、現在の「三国」による「天下太平」は維持する。

それで好いわね」

「結構だ。妹たちにも約束させよう」

 

その雪蓮に華琳は自分の右手を差し出した。

「己の武器を持つ利き手を預けるのは、相手を信じるから。それが「天の国」での流儀だそうね」

同意した雪蓮と華琳は、互いの右手を両手で包むようにして約束した。

「三国」による「天下太平」を。

その「約束」を見届けて来たからこそ、必ず生きて帰る。その為に今を戦う。

「行くぞ」

「天の御遣い」は、最後の突入を決断した………。

 

……。

 

…鈴々を先頭に突入して来る一刀たちを視認して、戦意どころか殺意も満々な左慈が逆襲する。

これに対して、星と翠が連続攻撃を仕掛け朱里が後方から助言を送る。

この間に、左慈をすり抜けた愛紗と鈴々が干吉に襲い掛かり雛里が助言する。

 

これが竜鳳の軍師の策戦だった。

知略で戦う竜鳳だからこそ、冷静沈着な干吉の方が危険と見て、星・翠より半歩前に出る愛紗・鈴々と臨機応変な戦術なら朱里に勝る雛里を干吉にぶつけたのである。

 

更に、紫苑が長弓で全体の援護に回る。これで状況は均衡状態になった。

そして、一刀と桃香は突入の「チャンス」を狙う。

狙うのは神殿の中央に在る一刀には見覚えのある銅鏡だ。

「5虎竜鳳」相手に互角に戦い、殆ど神殿中を飛び回っている2人組が邪魔で突入の機会を掴めないが、その「ワンチャンス」に全てが賭けられていた………。

 

……。

 

…そのまま「5虎竜鳳」と2人組との戦いは均衡状態が続く。

そう、これまではおそらく圧倒的な力で、只1方的に叩きのめした経験しか無かったかも知れない2人組には、むしろ戸惑う様な均衡状態が生じていた。

だからといって彼らであれば、何れは自分からこの均衡を破れたかも知れない。

だがしかし、この時は其の余裕を乙女たちが与えなかった。

 

白装束は、所詮は「傀儡」と彼ら自身が言う通り、彼らがコントロールしていなければ自分の意思で等戦えない。

その意味では訓練された兵士の方が余程自主的である。

その代わりに状況が不利になっても“自主的な”敵前逃亡などはしないが、この場合は其の欠点が表に出た。

 

コントロールする側が自分で戦っていて、しかも均衡状態なのである。

コントロールして戦わせるだけの余裕が無い。

自らの意思で戦っている無双の乙女たちは、急に単調になった敵の動きを見逃さず、次々に突破口を開き出した。

梁山泊の水辺から上陸した孫呉軍が泰山を駆け上り始めた。

「我らが水の上以外で戦えないかどうか、見せてくれるわ」

雪蓮はむしろ楽しげに「南海覇王」を振り回しつつ山道を駆け抜けて行った。

「行きなさい」

華琳の振るう「絶」の大鎌が、また何人かの白装束を紙人形に戻した。

「旧」魏軍も今や「天の御遣い」の1軍として泰山を駆け上がろうとしてた。

「天の御遣い」の「天命」を終わらせる為に。

その戦況を切断して居なかった最低限のコントロールから認識した時、流石の彼らも危機感を持った。

 

「いささか、ややこしくなって来ました。ここは銅鏡を抱えてトンズラするのが利巧でしょうが」

干吉に対する何時もの左慈の憎まれ口からすれば、雄弁極まる沈黙で答えた。

 

ドス黒いアヤしい煙霧が立ち込めかけたが、奇妙に香(かぐわ)しいそよ風が吹くと、煙霧が散り散りに成った。

「裏切り者めが!」

「あら、私は私自身に忠実よ」

この2人組が動揺し、隙を見せたのは初めてだったかも知れない。

同時に其れが「天の御遣い」と同志たちには、只ひと度といって好いかも知れない好機。

 

初めて敵に見せた左慈の背中に翠の槍と紫苑の矢が突き刺さり、星の名剣「青釭」が首を絶った。

殆ど同時に、愛紗の大刀と鈴々の矛が干吉の背中を斬った。

そして、一刀と桃香が此の「ワンチャンス」に突入した。

 

「はわ?!?!」

朱里の警告。

その意味を考える余裕も無く、一刀は桃香を庇いながら転がる。

その上を左慈の首が飛び越えた。

 

何と、首を絶たれた左慈の体が、その自分の首を掴んで投げ付けて来たのだ。

飛び越えた向こう側で転がる其の首の歯どころか牙をむき出した口から、ドス黒い煙霧というより瘴気を吐き付けて来る。

その瘴気を貂蝉の香風が吹き散らす。

 

「人外?!」

流石に思い知った。人で無い相手と戦っている。

「ならばこうだ」

いち早く立ち直った愛紗が干吉の片足を斬り飛ばし、続く鈴々がもう片足を斬り飛ばす。

それでも、何時まで足止めに成り切るかは保障出来ない。

 

この「ワンチャンス」を活用するしか無い。幸いながら転がった先は銅鏡の手前だった。

桃香を助け起こすと同時に剣を構える。

桃香の「靖王伝家」の宝剣と雌雄1対となる名剣。

その剣に力を溜め、銅鏡に狙いを定める。そして、隣り合う桃香と頷き合う。

 

「止(よ)せ。止(や)めろ。」

初めて左慈が狼狽した。

「何が起こるのか分からんぞ。

俺たちにも「正史」にも分からん。

何をしようとしているか、貴様には分かっているのか」

 

「俺は信じる。”この”世界は”この”世界で生きている桃香たちのものなんだ。それを取り戻す」

今ひと度、桃香と頷き合う。

「1、2のチェスト――!!!」

北郷一刀と桃香が殆ど同時に振り下ろした雌雄1対の名剣に打たれ、4つに割れた銅鏡が跳ね飛んだ。

 

白い光が爆発して、全てを包み込んでいった。




この無謀で未熟な作品が、遂に次回をもって完結まで辿り着けたのも、全て皆様の御陰です。
改めて感謝させて頂きます。
又、温かいご意見ご感想を頂いた方々には、重ね重ね、お礼を述べさせて頂きます。
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