「おぎゃ~」
「生まれたか。この馬氏の5常の5人目が」
(えっ、えっ?)
私は普通の人生を送った筈だった。
普通に恋愛して、普通に結婚して、生涯を共にした。
その生涯の伴侶に再会出来ると信じたい、と思いながら意識を失った………。
……。
…筈だった。
それが何故か、時代がかった中国風の部屋で、時代がかった中国風の衣装の父親(?)らしい人に抱かれていた。
その父親(?)の後ろから、時代がかった中国風の衣装の少女たちが4人、私に群がって来た。
その中で最も幼そうな、けれども聡明そうな何故か眉の白い少女が、
「私の真名は胡蝶よ。宜しくね…」
そう言って私の名を呼んだ。
ちょっと待って。
「馬氏の5常」って、あの『三国志』の。
”あの”人の影響からか、私にも其の程度の『三国志』の知識はある。
そして…何故か「馬氏の5常」が女の子に成っていること自体にも解答らしきものが思い当たる。
”あの”人が私や子供たちには隠す積もりで遊んでいた「ゲーム」
確か『恋姫』とか何とか言っていた。
それじゃあ”この”世界は……
そこまでは、まだ好い。
だけど「馬氏の5常の5人目」って、孔明の「泣いて馬謖を斬る」の馬謖じゃ無いの。
そんなのはいやだ!
私が内心で抵抗していることも知らず、4人の「お姉様たち」は私の誕生を祝福していた………。
……。
…抵抗も空しく、私は馬謖と名付けられて成長して行った。
そして「お姉様たち」の後を追う様に「水鏡女学院」に入学させられた。
そこには居た。「はわわ軍師」が。
この娘が、私を「泣いて斬る」の?そんなのはいやだ!
朱里ちゃん(学院では学生同士は真名で呼び合っていた)から逃げ回る私を「お姉様たち」を含めた先輩や同窓生そして水鏡先生は不思議そうに見ていた。
それにも関わらず、儒教や兵法、政治等について学ばされた。
正直、手を抜いてやろうか、とも思った。
そうすれば、目立たず、目を付けられて将軍に抜擢されることも無いか、とも考えた。
だがしかし、胡蝶お姉様や水鏡先生には、何故か見破られていた………。
……。
…そうこうするうちに「3顧の礼」が起こって、朱里ちゃんと雛里ちゃんが劉備玄徳たちに連れて行かれた。
これで逃げ回るのも終わり、とは行かないことは分かっていた………。
……。
…案の定、荊州に戻って来た。
益州州牧の印綬を受け取った劉備玄徳の軍師として。
胡蝶お姉様や蛍先輩(徐庶)を始めとした「水鏡女学院」の出身者たちが、劉備軍の軍師や文官として加わって行った。
そして、私にも声がかかった。
何とか逃げようとした。
このまま劉備軍に加わったら、結末は「泣いて斬る」だ。
けれども、本当の理由を主張することも出来なかった。
信じて貰えるかどうか、頭がおかしく成った、と思われるのがオチかも知れない。
どうやって逃げる?
考えに考えた私は、ある人物に助けを求めてみることを試してみた………。
……。
…その人物、簡雍の「正体」は意外な人だった。
「もしかして、貴女は希望(のぞみ)なのか?」
突然、教えた筈の無い真名で簡雍は私を呼んだ。
「えっ?何時、私は真名を教えました」
「そうじゃ無い。俺は絆(きずな)だ」
それは私と生涯の伴侶の「前世」での名でもあった。