「もしかして、貴女は希望(のぞみ)なのか?俺は絆(きずな)だ」
それは”この”世界での真名であると同時に、俺と生涯の伴侶の「前世」での名でもあった。
何故か”この”世界の親たちは「前世」と同じ名を付けてくれていた。
「えっ?えっ!貴方が絆?!」
馬謖いや希望は瞬間だけ驚愕し、そして俺たちは見詰め合った。
「そんな…都合好過ぎる」
「元々、ある意味じゃ都合の好い世界なんだ……お久し振り、希望」
俺こと簡雍(真名絆)は、希望に手を差し伸べ、そして抱き合った………。
……。
…感激の瞬間を味わったが、最初の用件を思い出した。
このまま『三国志』通りに運命が進めば、希望は馬謖としての末路を迎えてしまう。
そんなのはいやだ!
俺たち2人は密談し、取り敢えず朱里の前で目立つのは回避することに決めた………。
……。
…益州侵掠の最初の攻撃目標と成った巴城の主将である厳顔(真名桔梗)は捕虜と成ったが、傲然としていた。
そして、出来るだけ犠牲を出したくない劉備(真名桃香)たちが説得しようとしたが…
「そうじゃな。美辞麗句を如何に並べても、その場だけのことじゃろう。
ならば実績を示してもらおうかの?」
「実績ですか」
「そうじゃ。南蛮のやからが、この益州を困らせているのは本当じゃ。
やつらの乱暴を止(や)めにして見せられるか」
かくて、南蛮との戦いが決まった。
ここで俺は、あることに思い至った。
馬謖が孔明に目を付けられる、その切欠が「南蛮征伐」に在ったことを。
俺は、先手を取って暗躍することとした。
「”天の御遣い”様には何か「お告げ」は在りませんか?」
俺は南蛮の侵入している益州南部へと向かう途上の、同志たちが集まった機会を捉(とら)えて、何気なし気に言ってみた。
「う~ん、確か、南蛮王の孟獲に対してなら「7度捕らえて7度放つ」だったかな」
「7度捕らえて7度放つ」そのひと言だけで「伏竜鳳雛」には理解出来た様だった。
(これで好し)
『三国志演義』では孔明に「7度捕らえて7度放つ」を思い付かせたのは、馬謖の進言ということに成っていた。
これで孔明は馬謖に期待することに成る。
その期待の結果が「泣いて馬謖を斬る」に成ってしまうのだが。
その可能性は、ここで潰した………。
……。
…益州侵掠は成功し、桃香こと劉備玄徳は蜀の主と成った。
俺たちも其々に蜀での官職を貰った。
希望も益州の或る地方の地方官に成り、赴任して行った。
正直、蜀の都である成都で桃香や「天の御遣い」こと北郷一刀の話し相手を務める俺とは、会う機会が減ることに成るが、目立って抜擢されてしまうより、つまり其の結果は「泣いて馬謖を斬る」に成るよりはマシと考えることにした………。
……。
…その後、関羽こと愛紗、張飛こと鈴々、趙雲こと星に加え黄忠こと紫苑、馬超こと翠が同志に加わり「5虎大将軍」が揃った。
「伏竜鳳雛」いや、今や飛翔する竜鳳である諸葛亮こと朱里、鳳統こと雛里も居る。
「5虎竜鳳」を筆頭にする同志たちが「比翼連理」を誓う2人の主君に誠を改めて誓う日。
俺こと簡雍も、酒を片手に其の場に加わっていた。
俺は内心で密かに思っていた。
「5虎竜鳳」が勢揃いしている。これなら……
「正史」の馬謖を孔明が抜擢したのは、結局は孔明自身が過労死してしまう程に蜀が人材不足だったからだ。
「5虎竜鳳」が揃った”今”の蜀なら、希望が目立つことも無いだろう。
このまま行けば……
そんな、エゴなことを思っていた。
希望も此の儀式に立ち会う為に任地から成都に来ていた。
その希望と俺は、自然と2人に成っていたが、
「あら、希望。貴女、どうしたの」
「胡蝶お姉様……」
希望の「今世」での姉である馬良(真名胡蝶)に見付かってしまった。
まあ、好い。
何時かは挨拶しなければ成らないだろう。
「お義姉様。どうか宜しく御願い致します」
そう、頭を下げた。
「絆君。何時の間に」
胡蝶に頭を下げている処を、桃香たちにも見付かってしまった。
「だけど、お似合いに見えるな」
若い一刀に言われるまでも無い。
俺たちは生涯を共にしたんだ。
結局、希望は俺の補佐官へと転任に成った。
誰が、どう気を利かせたのやら。
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