簡雍酔夢   作:高島智明

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第7席 黄巾始末(後編)

黄巾の首領が潜んでいるとされる、荊州南陽群城の攻防戦は佳境に迫っていた。

本陣で愛紗や鈴々、星たちを激励していた桃香や北郷一刀、白蓮たちも自軍とともに突入していた。

その一刀たちから、補給隊を采配しながら待機して居た俺こと簡雍が後で聞かされた処に因ると、事の顛末は以下の様だった。

郡城の太守公邸と成れば帝都の皇宮を小規模にしろ見習っていて、その前面は其れなりの広場に成っている。

「本当にアイドルだったんだなあ」

北郷一刀には「天の国」でデジャヴのあるコンサート会場の跡が其処に在った………。

 

……。

 

…作戦開始の前、当然ながら只1つの目標ともいえる張姉妹の情報が全軍に配られた。

ここで初めて一刀は自分の誤解を知った。

とはいえ、劉備たちが桃香たちだったのだから、これもありだろう。

張角(真名天和)張宝(真名地和)張梁(真名人和)が『数え役萬☆しすたぁず』でも。

それに、一刀にも「天の国」での記憶がある。

アイドルとその「親衛隊」というのは、とんでもないエネルギーを持っている。

潜んでいるどころか、爆発させている。

むしろ、信じない者には理解出来ない宗教関係より理解し易かった………。

 

……。

 

…それだけにここからが、やっかいだった。

この先、公邸の内部に群がっているのは『しすたぁず』が只のアイドルだったころからの「親衛隊」だ。

自らの「偶像」の為なら死ねる本物の黄巾党が密集している。

こう成ると、知略とか戦術とかより個々の兵の戦闘力で力押しするしかない。

おまけに、四方から押し寄せる「味方」との競争にも成っていた。

こうなると、当てに成るのは愛紗・鈴々・星もとい関羽・張飛・趙雲という処だが、

(曹操や孫堅の処にどれだけの面子が集まっているかだな)

一刀がそんなことを思っている間にも、戦況は佳境に近付いていた。

 

公邸の奥にある迎賓閣、その軒先まで押し込むことが出来た。

太守以上に高位の賓客が訪れたときのためのみに建てられた高楼形式の御殿。

この郡城を占拠していた黄巾党の考えなら、彼らにとっての最上位者に宛がうだろう建物。

そして、ここまでには張姉妹は居なかった。

今も尚その周囲を取り囲む「親衛隊」居るなら此処だ。

 

こう成ると首取りの競争、殆(ほとん)どがそう思った瞬間、迎賓閣の1階付近から突然火炎が吹き出した。

包囲したままの官軍が唖然とする中で、楼閣は焼け落ちた………。

 

……。

 

…その夜、まだ燻(くすぶ)る焼け跡を掘り返す曹操軍の許緒と典韋。

そして、焼けぼっ杭の下から、石蓋を掘り出すと力任せに跳ね上げる。

 

「曲者」

見守る位置から鋭い声を投げたのは、曹操こと華琳だった。

「関羽に孔明。貴女達も来たのね」

微笑すら浮かべていた。

「流石と言いたいけど、ここに本人が居るかどうか、ここと断定して行動に移せるかが、私との差よ。

貴女達の様な部下に相応(ふさわ)しいのは、あんな…」

「そこまでにして頂こう。それ以上は貴女を許せなく成る」

「いよいよ勿体無いわね」

華琳は微笑すらした………。

 

……。

 

…公孫賛軍が接収した屋敷。劉備軍に宛がわれた屋敷内の建物。

冷静に報告しているのは専(もっぱ)ら朱里で、愛紗等は曹操の態度に憤慨していた。

桃香の方は、曹操軍とのトラブルに成らなかった事を先ず喜んでいた。

 

それに張3姉妹を此処で取り逃がしたのでは、元も子も無かった。

おそらく、これで黄巾の乱は収束に向かう。

だがしかし、乱世が此れで収まるとは思えない。伏竜鳳雛の予測も、そう見切っていた。

「3顧の礼」の時、すでにそう予測していた様に、これからさらに内乱、外からの侵略が続く。

その中から劉備軍が伸し上がる好機を掴む。

今後の方針をそう決めた上で、今回は帰還するしか無いだろう。

どうせ只1つの大手柄を曹操軍に攫(さら)われたのでは、他の手柄を幾ら言い立てても「50歩100歩」だった………。

 

……。

 

…荊州南陽郡城を後に「官軍」の各軍は其々に引き上げ始めた。

先ずは、今回の恩賞の為に帝都へと。

 

劉備義勇軍も盧植軍と公孫賛軍に同行していた。




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