遅ればせながら、同スレッドのスレ主様ならびに投稿された皆様へ、厚く御礼を申し上げさせて頂きます。
黄忠(真名紫苑)の最初の子である黄叙(真名璃々)は成人を迎えた。
年齢的には丁度、年頃だったろう。
張飛(真名鈴々)とか袁術(真名美羽)とかが、益徳とか公路とかの字を名乗り始めた年頃からしても。
その途端、妙な言い方だが、縁談が来放題に成った。
まあ、求婚してくる側が何を計算しているか、が読み取れなくも無い。
義妹たちが幼過ぎるのだ。
皇帝に成った「天の御遣い」の実子の内「第1妃」でもある蜀王との長女である阿斗ですら、ようやっと、璃々の実母である紫苑が初めて現在の主君に仕えた、その当時の璃々ぐらいの幼女。
他の妹たちに至っては更に幼いか、下手をすれば赤子だ。
縁談など論外である。
少なくとも、父親である皇帝が「天の国」の恋愛認識を引きずっている限りでは。
片や璃々は、阿斗を始めとする皇帝が実父で三国の王や黄忠よりも位の高い妃を生母にしている義妹たちと、全く分け隔てなく「天の御遣い」の正式な養女も同然に育てられている。
実際、成人した黄叙に与えられた官職は「執金吾」だった。
後に後漢王朝の初代皇帝に成る青年が、まだ無名の地方豪族の子弟だった頃、こう公言して憧(あこが)れていたと伝えられる。
「仕官するなら執金吾。妻を娶らば(彼の初恋の人で後の第2代皇帝の母)」
この「執金吾」とはそれほど華やかな官職でもあり、大げさに言えば王朝の威信を示す官職でもあった。
帝都の巡察・警備を司る官であり、その「パトロール」はそのまま、帝国の威信を示す「パレード」でもあった。
その執金吾の「パトロール」が都の大路を「パレード」して行く、その執金吾が黄叙であること自体、彼女が皇帝でもある「天の御遣い」を父親として育てられた「娘」である事を、そのまま見せていた
*
ある日「天の御遣い」は、友人でもある相談相手の俺こと簡雍(真名絆(きずな))に、ハッキリ言ってグチを零(こぼ)した。
「”10常侍”の類は、何時の時代でも居るものなんだな」
皇帝と言う絶対権力者の心の弱点に付け込もうとする「小物」は、どんな名君の下でも後を絶たない。
そうした小物の1人が、さぞ手柄顔に密告して来たのである。
「黄叙将軍に縁談を持ち込んだ事がある者どもの間に、恐れ多い流言が流れております」
「流言?」
「はっ。恐れ多くも、陛下が御返答に消極的であられるのは、何れ黄叙将軍を後宮に御入れに成られる御積りだと」
皇帝は、怒るよりも呆れてしまった。
「それで?「皇帝陛下」としてはどういう積もりなんだ」
「絆は好いだろう。希望(のぞみ(馬謖の真名))1人だけを守って済んで」
「これとそれの話は別だぞ」
「”前世”で生涯を共にした伴侶か。
だけど、璃々には中身も見かけも無い。
俺は、あの子が7つの時から「父親」をして来たんだから」
「あの娘本人は、どう想っているかな?まあ「天の国」にだって『源氏物語』もあるしな」
「俺は光源氏に成った積もりも無いよ」
結局、この時はグチを聞いてやっただけの結果に終わった。
*
実の処、この時点での「天の御遣い」は、実母の紫苑には璃々目当ての縁談の大半に付いて話してもいない。
もっぱら、紫苑の旧友でもある厳顔(真名桔梗)を相談相手にしていた。
そういう態度も、またトンデモない流言飛語の発生源に成ってしまったのかも知れない。
俺にはグチを聞いて貰っただけに終わった。
それでも「天の国」の言葉で話せるだけでも貴重だっただろう。
その結果として、今度は「天の御遣い」は桔梗に相談を持ちかけた。
「ほう」
今までとは異なって、というのも、自分の産んだ小桔梗が未だ幼女(年の差母娘?失礼)のせいか、今1つ璃々の縁談に対しては真剣味が少な目に見えていたのだが、今回は奇妙に真剣そうだった。
「お館様こそ、真面目に考えた事があるのか?幼くても女は女」
「桔梗にも覚えがあるの?」
「自分も娘を産んでみれば、あの頃の璃々の気持ちも紫苑の気持ちも分かったわい」
*
俺から話を聞いた希望は、流石に「前世」で天寿を全うした経験者らしい助言をした。
「結局は、璃々ちゃん本人次第でしょう?彼女の幸せが大切なんじゃ無いの」
確かにその通りだった。
ご意見ご感想をお待ちしております。