スリザリンの末裔 ~Silver-Haired Wizard’s Legacy~   作:如月斎

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第1章 第2話 組み分けの儀式

 

組み分けの儀式

 

大広間の天井には無数の蝋燭が浮かび、魔法で映しだされた満天の星空が広がっている。新入生たちが緊張した面持ちで列を作る中、セリクスは相変わらず無表情のまま順番を待っていた。両隣にコーウェンとセドリックもいる。

 

マクゴナガル副校長が大きなボロボロの古帽子を持って壇上に立った。1年生には少し大きそうな木製のスツールの上に帽子を置くと、全校生徒がそれに注目した。

 

帽子がひとりでにピクピクと震え始める。1年生の1部が恐れおののいたように後ずさったが、セリクスは冷静にその帽子を見つめていた。次の瞬間、帽子の切れ込みの部分が口のように開いた。

 

なんと帽子は各寮の特色を朗々と歌い上げ始めた。1年生たちは面食らったように目を見開き口をポカンと開けて聞き入っている。セリクスは内心(なるほど、知識のない新入生にも分かりやすい)と納得していた。

 

歌が終わった後、帽子は元の通りに黙り込んだ。副校長が長い羊皮紙に書かれた生徒の名前を読み上げ始める。

 

「ブレッチリー、マイルズ」

 

最初の方で呼ばれた少年は、スツールに座ると同時に帽子を深く被らせられ、次の瞬間には「スリザリン!」と宣言されていた。すぐにスツールから降りると、緑と銀のテーブルへと足早に歩いていった。その後も儀式は淡々と進む。呼ばれた生徒は皆恐る恐るそのスツールに座り、帽子を被っていく。

 

「デイビース、ロジャー」というダークブルーがかった黒髪の少年はレイブンクローへ。「ディゴリー、セドリック」は、本人の予想通りハッフルパフへと歓声とともに迎えられた。「フェン、ローレンス」という神経質そうな少年がハッフルパフに振り分けられるのを、セリクスは無表情のまま見つめていた。寮を宣言された生徒は一様に安堵した表情で各テーブルへ散っていく。

 

そして、その時はやってきた。

 

「ゴーント、セリクス」

 

副校長の声が響くと、大広間に僅かなざわめきが走った。教員席では何人かの教授が身を乗り出し、上級生たちからは小さな囁きが波打つように聞こえる。

 

「まだいたのか」

「ゴーント家ってもう途絶えたんじゃ……」

「見て、すごい綺麗な子……」

 

セリクスはそれら全てに頓着せず静かに前へ歩み出る。銀色の髪が蝋燭の光を受けて輝き、エメラルドグリーンの瞳が一切の動揺を見せない。粗末なスツールに座り大きな組み分け帽子を頭に被ると、帽子は彼の心を探り始めた。

 

(ふむ、確かに知識欲も強い……。そこはレイブンクロー向きだ……。だが、その血の誇りと志の高さ……。機知にも富んでいる。なるほど、なるほど……)

 

ほんの数秒の沈黙───

 

「スリザリン!」

 

帽子の声は力強く、迷いがなかった。スリザリンテーブルからは控えめな拍手が起こり、セリクスは静かに緑と銀の席へと向かう。

 

歩きながら、ふとハッフルパフのテーブルに視線を向けると、セドリックと目が合った。セドリックは軽く手を挙げて挨拶を送り、セリクスは目だけでそれに応える。小さな、しかし確かな交流だった。

 

スリザリンテーブルの空いている席に座ると、隣にいた上級生が興味深そうに声をかけてきた。2~3学年ほど上に見える。

 

「ゴーント家の末裔か。興味深いな」

 

セリクスは軽く頷くだけで、再び組み分け儀式に注意を向ける。セリクスにほとんど無視される形になった男子生徒は鼻白んだように黙り込んだ。

 

儀式は順調に進んでいた。「ジョンソン、アンジェリーナ」や「ジョーダン、リー」といった生徒たちが次々とグリフィンドールに歓声と共に迎えられていく。「モンタギュー、グラハム」や「ピュシー、エイドリアン」もスリザリンに決まり、セリクスのいる緑と銀のテーブルは少しずつ1年生で埋まり始めていた。

 

「セルウィン、コーウェン」

 

マクゴナガル副校長の声が響く。コーウェンは緊張した様子で前に出て、帽子を被った。今度は少し時間がかかった。なにやらコーウェンが指を組んで必死に祈っているように見えた。帽子は渋る様子を見せたが、やがて根負けしたように宣言する。

 

「スリザリン!」

 

コーウェンは安堵の表情を浮かべながらスリザリンテーブルへ向かい、セリクスの横に座った。コーウェンがこちらを(うかが)うようにそっと覗き込んできた。

 

「よろしく、セリクス」

「こちらこそ」

 

セリクスは無感動な声音で端的に応えた。それでもコーウェンの薄いブルーの瞳が、ほっとしたような笑みを浮かべているのが見えた。コーウェンはセリクスがそれ以上何も言わないと判断したのか、黙って残りの組み分けを見守り始める。

 

組み分けの儀式はまだまだ続いている。新たな運命の歯車が、静かに回り始めていた。大広間の蝋燭の光の下で、セリクスは無表情のまま、しかし内心では既に様々な可能性を計算し始めていた。

 

ホグワーツでの7年間が、今、始まろうとしていた。

 

 

 

 




【あとがき】
pixivから移植していますが、少し加筆修正を入れています。組み分けの儀式で名前を呼ばれた生徒たちは、これからも少し出番がある予定です。ハリーの2学年上の先輩は、ほとんど原作に出てこないので発掘するのに苦労しました。「あっ、この子知ってる!」って思ってもらえたら嬉しいです(˶ᐢωᐢ˶)

セリクスはレイブンクローとスリザリンで悩まれていましたが、コーウェンはどこと悩まれたんでしょうねꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)
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