スリザリンの末裔 ~Silver-Haired Wizard’s Legacy~   作:如月斎

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第1章 第27話 夏の朝、光の湖畔で/完結話 感情を映すバングル

 

夏の朝、光の湖畔で

 

まぶたの裏に、柔らかな光が差し込んでいる。フカフカのシーツの感触を味わいながら、セドリックはまだ夢の中にいた。けれど、そのまどろみは、ある"違和感"によって破られる。

 

……近い。何かが、顔のすぐ前にある。近すぎる。気配が。呼吸が。まさか───

 

意を決してそっと目を開けた瞬間、ドアップで屋敷しもべ妖精の顔が飛び込んできた。

 

「きゃああああああああああああああ!!!!!!」

 

まるで絹を裂くような悲鳴が、部屋にこだました。隣のベッドでコーウェンが寝ぼけつつも反射的に飛び起きた。

 

「敵襲!? なに!? どこ!?」

 

寝ぼけまなこのコーウェンが杖を探してうろたえる中、屋敷しもべ妖精のアゼルは慇懃(いんぎん)な態度で一礼した。

 

「お目覚めのお時間でございます、セドリック様、コーウェン様」

 

セドリックは布団を抱きしめたまま、涙目で小さく呟いた。

 

「……起こし方って、選べると思うんだ……」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

着替えの途中、まだ寝癖の残る頭を指で()かしながら、セドリックがぽつりと言った。

 

「……なんであんな起こし方だったんだろう……」

 

コーウェンは軽く笑って、肩をすくめる。

 

「目覚まし、ってことじゃない?効果抜群だったけど」

「心臓に悪いよ。まだバクバクいってるんだけど……」

 

身支度をしながら、セドリックが窓の外を見た。

 

「今日はいい天気だね。外で何かしようか?」

「そうだね。セリクスにも聞いてみよう」

 

2人は私服に着替えた。コーウェンは爽やかなスカイブルーのポロシャツにベージュのチノパン。セドリックは黒い英字の書かれた白いロックTシャツに黒いジーンズだった。コーウェンが珍しげな目でそのTシャツを見る。

 

「なんかセドリックがこういう服着るの意外だなー。……The Weird Sisters? えっ、妖女シスターズ?」

「そうそう! この前買ったんだ。格好良くない?」

 

セドリックは嬉しそうな顔で自分の服を見下ろした。妖女シスターズとは最近ジワジワと人気が上がってきた魔法使いロックバンドである。ホグワーツの先輩の中にもメンバーがいるので、コーウェンも認知だけはしていた。コーウェンは彼にそういうミーハーな趣味があるとはとても意外な気がした。そのマグルのような出で立ちは、ゴーント邸のクラシカルな客間には信じられない程馴染んでいなかった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

ゴーント邸のダイニングルームでは、セリクスが既に静かに朝食を摂っていた。銀の食器に陽光が差し込み、彼の銀髪を淡く照らしている。普段通りの無表情だが、どこか不機嫌そうな雰囲気がする。

 

「早っ……。もう起きてたの?」

 

セドリックが驚くと、セリクスはちらりとこちらを見て、冷たく一言。

 

「……騒がしかったんでな」

 

明らかに先程の騒ぎで起こされたのだろう。セドリックが気まずそうに頭をかき、コーウェンは少し責めるような目付きでセリクスの食器を下げているアゼルを見た。アゼルはコーウェンの視線に気付きつつも、しれっと給仕を続けている。コーウェンはふうと小さく息をついて着席した。セドリックも慌てて席に座る。

 

長い豪奢なテーブルにはセリクス1人しかいなかった。それに気付いたコーウェンが「お父様は?」と尋ねれば、セリクスは少しだけ視線を落として呟いた。

 

「……仕事だ」

 

目を伏せた──それだけなのに、不思議と寂しげな空気が漂った。

 

空気を読んだコーウェンが明るく提案する。

 

「今日は天気がいいし、湖とか行けたらいいね」

「……泳ぐのか?」

 

セリクスが一瞥(いちべつ)して問いかけた。思いもよらないことを言われたかのように不思議そうに片眉を上げる。

 

「泳ぐかどうかはさておき、行ってみようか。ね?」

 

セドリックが笑顔で促すと、セリクスは軽く頷いた。アゼルが指を鳴らすと、朝食には少し多い程の品数が宙を飛んでくる。まだ一口も食べていないのに、食後のデザートのプディングを見たコーウェンがにっこりと笑う。

 

「……ていうか、泳げるの? 水は綺麗?」

 

フォークでスクランブルエッグをつついていたセドリックが興味津々な顔で聞いた。

 

「……泳げる。ただ、だいぶ深いし、中にどんな魔法生物がいるか全ては把握していないが……。まあ巨大イカと水中人(マーピープル)はいない」

「……それあんまり慰めになってないかも……」

 

あまり上手く泳げないコーウェンは蒼褪めて言った。2人が泳ぐと言ったとしても自分は絶対に見学していようと決心しながら。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

朝食後、3人は家から外へ出た。しばらく歩いてから振り返ってゴーント邸の全容を見たセドリックとコーウェンは、その巨大さに改めて驚いた。

 

「でっか……」

「これ全部君の家なの?」

 

高さは3階建て──と言っても1階分がそもそも高い──で、横幅も信じられないくらい長い。それでも部屋数を考えると中は拡張魔法を使っているのだろう。尖塔もあり全体の雰囲気が少しだけホグワーツ城のようだった。

 

「曾祖父が子供の頃に住んでいた屋敷だ。長く廃墟になっていたが、父上が全て改修した」

 

セリクスが説明する。

 

「湖と屋敷と周りの森には認識阻害とマグル避けが掛かっている」

「認識阻害?」

「マグルには見えないし、入ってこられない」

 

3人は湖の周りを散策し始めた。穏やかな湖面に朝日が反射し、(きら)めきが辺り一面に広がっている。陽射しは強いものの、木々の葉が生み出す木漏れ日が柔らかく差し込み、心地よさを添えていた。

 

歩いていると、コーウェンが目を擦りながら言った。

 

「湖の真ん中らへんの景色が歪んで見える気がする……。なんか蒼白く光っているような……?」

 

セドリックはキョトンとした顔で首を傾げた。

 

「そう? 普通に見えるけど」

 

セリクスはそれを横目に見ながら、何を考えているか分からない薄い笑みを浮かべていた。コーウェンはそれを見て無意識に鳥肌を立てる。咄嗟に見ないふりをした。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

しばらく歩いていると、セドリックが突然言い出した。

 

「そうだ! マグル避けが掛かってるなら、誰にも見られないってことだよね? それなら箒に乗りたい!」

「家に2本ある。持ってこよう」

 

セリクスがそう言って屋敷へ戻っていき、やがて2本の箒を手に2人の元へ戻ってくる。箒を差し出されたコーウェンは苦笑しながら首を振った。

 

「僕は見てるよ。高いところは得意じゃないし」

「ふうん?」

「じゃあセリクス、僕とやろう!」

「分かった」

 

セリクスが適当なボールに魔法を掛けてミニクィディッチ用に変え、2人は空に舞い上がった。

 

セドリックはさすがの腕前で、軽やかに風を切る。けれど───

 

「……え?」

 

彼の目の前で、セリクスがすいと風を裂く。鋭く、正確に、余裕さえ感じさせる飛行だった。セドリックの手を素早く掻い潜りボールをキャッチしてみせた。

 

「うわぁ! セリクスすごいじゃないか!」

 

セドリックが素直に驚嘆する。

 

「クィディッチに興味はないが、空を飛ぶのは嫌いじゃない」

 

セリクスが風に銀髪をなびかせながら少しだけ楽しそうに答える。

 

「選抜出てみればいいのに。絶対選手になれるよ」

「……無駄な注目は要らない」

 

セリクスが一蹴すると、セドリックは残念そうな顔をした。大好きなクィディッチで親友と切磋琢磨出来るかと思ったのだ。ちなみにセドリックは勿論選抜を受けて、しかも合格する気満々である。

 

湖の(ほとり)に座って2人を見上げているコーウェンは、空を舞う2人の姿を眺めながら、穏やかな笑顔を浮かべていた。

 

夏の朝の光が湖面に踊り、3人の友情が静かに深まっていく。

 

そんな平和な時間が、ゴーント邸の湖畔で流れていた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

途中までは順調にクィディッチ紛いの遊びを続けていた2人だったが、何故か途中からわざと取りにくい角度でボールを投げるキャッチボールに変わっていった。

 

セリクスが投げた意地悪な速度のボールを取り損なったセドリックが、誤って箒から落ちてしまった。運動神経抜群なセドリックにしては珍しいミスだった。

 

───ドボォン!!

 

水が跳ね上がり冷たい水飛沫がコーウェンの頬を濡らした。落ちた先は湖なので怪我はないだろうが、コーウェンは心配して立ち上がって叫んでしまった。

 

「セドリックー!! 大丈夫!?」

「…………ぷあっ」

 

すぐに湖面から顔を出したセドリックは、すぐさまクロールで岸辺まで泳ぎ陸に上がってきた。全身ずぶ濡れだったため、セリクスは急いで屋敷しもべ妖精を呼んだ。

 

「ノクティ。セドリックを綺麗にして乾かしてくれ。その後温かい紅茶を」

「かしこまりました」

 

主人の指示に間髪入れずに現れたノクティは、指を一つ鳴らすだけで全ての命令を執行した。セドリックは大して冷えてはいなかったが、美味しいミルクティーを有難く飲みながら言った。

 

「すごいよ! この湖、透明感がすごくて底まで見えたんだけど、なんか河童みたいなのがいた!」

「河童!? 蒙古(モンゴル)にしかいないやつだよね? 本当に?」

「多分!」

 

2人はテンション高く河童のことを話しているが、セリクスは首を傾げた。

 

「河童は蒙古(もうこ)にいると書いてある書籍もあるが、正確には蒙古ではなく東アジアの日本の小川に住んでいるはずだ。どちらにせよこの湖にいるはずがない。セドリックが見たのは河童ではなくてグリンデローか何かだろうな。攻撃されなかったのは幸いだった」

「「え、え〜……」」

 

冷静すぎるセリクスの考察に、2人はしばらく落ち込んでしまったのだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

感情を映すバングル

 

滞在から1週間ほど経った朝食時、珍しくマウリシオも同席していた。コーウェンとセドリックは最初よりは慣れてきたが、やはりまだ少し緊張しながらカトラリーを握っている。

 

「今日なら、付き添える。」

 

銀のカトラリーを音もなく置き、マウリシオが唐突に低く言った。その言葉に、コーウェンとセドリックが顔を上げる。2人とも困惑した顔をしている。

 

「付き添い……ですか?」

「今日って何かありましたっけ……?」

「ホグワーツの教材、まだ買っていないだろう。今日、ダイアゴン横丁へ行こう。」

 

マウリシオがそう提案すると、コーウェンが困った顔をした。

 

「でもまだホグワーツから手紙が来てないんですけど……」

「心配ない」

 

マウリシオが3通の羊皮紙の封筒を見せてきた。

 

「ホグワーツは君たちの所在を把握している。昨夜届いたよ」

 

羊皮紙の封筒にはそれぞれの名前が書かれており、3人は顔を見合わせた。

 

「父上にわざわざ付き添いいただかなくても、私たちだけで行けますが……」

 

セリクスは普段多忙な父親を(おもんぱか)ってそう言ったが、コーウェンとセドリックは違う理由から付き添いを遠慮したかった。どう考えても後ろからの圧がすごそうである。しかしマウリシオにはそんな3人の遠慮は欠片(かけら)ほども通じないようだった。

 

「遠慮はいらない。君たちはまだ12歳の子供だし、セリクスはダイアゴン横丁に行ったこともないだろう」

「はい……」

「えっ。行ったことないの? 入学する時どうやって教材揃えたの?」

「外商を呼んだ」

「……なるほど……」

 

こうして4人は朝食後にダイアゴン横丁へ行くことになったのだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

応接室の暖炉の前に立ったセドリックは、手にした煙突飛行粉(フルーパウダー)を握りしめていた。実はまだ数回しか煙突飛行をしたことがないセドリックである。

 

「ちゃんと発音するんだよ? 大丈夫だよね?」

 

コーウェンが心配そうに言うが───

 

「大丈夫、大丈夫。……ダイアゴン横丁!」

 

セドリックはきちんと発音し、緑の炎の中へ消えていった。続いてコーウェン、そしてセリクスとマウリシオもそれに続く。

 

次の瞬間、彼らはロンドンの裏通りにある『漏れ鍋』へと到着していた。店内にいた客たちは暖炉から突然現れた来訪者にはほとんど目もくれず、手元の新聞を読んだりしていた。カウンターの中にいたマスターだけが、グラスを拭きながら笑顔で会釈してきた。

 

『漏れ鍋』からダイアゴン横丁に入ると、3人はそれぞれの買い物を開始した。

 

セリクスは書店で高度な魔法理論書を何冊も選んでいる。店主が「2年生には難しすぎませんか?」と心配する程だった。

 

魔法動物用品店の前でセドリックが興奮気味に鳥かごを覗いてフクロウを驚かせていた。かごの隙間から指を入れて威嚇されていても、セドリックは嬉しそうにしている。セリクスはほんの少し呆れた視線をやった。3人とも今はペットを飼う気はないようだ。

 

コーウェンは筆記用具の売り場で試し書きを繰り返していた。店員が後ろから心配そうに覗いている。「そんなに書いたらペン先が……」店員の嘆きはコーウェンの耳に入らないようだ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

買い物を終えた4人は、フローリアン・フォーテスキューのアイスクリーム屋に寄った。恰幅の良い店主フローリアンがにこやかに子供たちを見下ろしている。

 

「何にしますか?」

「遠慮しないで好きな物を選びなさい。なんならダブルでもいい」

「「わあ!」」

 

セドリックはアーモンドファッジとキャラメル、コーウェンはバニラとストロベリーチーズケーキ、セリクスはミントチョコレートを選んだ。それと紅茶を3つ。

 

マウリシオはブラックコーヒーだけを注文していた。

 

カフェのテーブルに座ると、マウリシオの威厳ある姿がアイスクリーム屋の可愛らしい雰囲気に全く合わず、完全に浮いている。パステルカラーの内装と、全身を黒で固めたマウリシオの対比で目がチカチカしそうだった。

 

セドリックとコーウェンが笑いそうになるのを必死に(こら)えていた。アイスが冷たいふりをして目を瞑ったが、マウリシオには見抜かれてしまう。

 

「何か面白いことでも?」

 

マウリシオが眉をひそめると、2人は慌てて首を振った。絶対に怒らせたくはない。

 

「いえ、なんでも……」

「アイス美味しいです!」

 

セリクスだけは黙々とアイスを口に運び、父の姿を見ても何の表情も浮かべていなかった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

一行が『漏れ鍋』へ向かおうとしたその時。セリクスが不思議な雰囲気の雑貨屋に引き寄せられるようにして入っていった。セリクスの突然の行動に3人は驚きながらも大人しくついていく。

 

店内は薄暗く外観よりも広かった。奇妙な魔法道具が整然と並んでいる。セリクスの目が、棚の奥にある黒い革装丁のノートに釘付けになった。見覚えの全くないシンプルなノートだ。羊皮紙ですらない、マグルの物のように見えた。普段のセリクスだったら絶対に選ばないだろう。

 

「これをください」

 

セリクスが迷わずそのノートを指差すと、コーウェンが首を傾げた。

 

「なんに使うの?」

「……日記でも書くか」

 

セリクスが曖昧に答える。このノートの使い道を考える前に購入を決めたようだった。コーウェンは更に怪訝な顔になる。コーウェンの目にはそこまで魅力的な品には見えない。強いて言うならシンプルな見た目はセリクスに似合うかもしれないが。

 

セリクスの呼び掛けに応えて、店番らしい魔女が店の奥からひらりと姿を現した。艶のある黒髪に黒い瞳の、細身の若い女性だった。セドリックが魔女の顔を見て頬を染める。

 

魔女はセドリックの視線に気付かず、セリクスの指差すノートを見て顔を(ほころ)ばせた。

 

「お客様、そちらは書いても書いてもなくならない不思議なノートですわ。更に──持ち主が許さぬ限り、他の者には白紙にしか見えない魔法も掛かっておりますの」

「ほう」

 

見た目以上に多機能なようだ。直感で選んだが正解かもしれない。

 

その横で、セドリックがカップルコーナーを見つけて興味深そうに覗いていた。

 

「これ、なに? 感情で色が変わるアクセって面白いね。しかもお互いの感情が分かっちゃうの?」

 

セドリックが笑顔で店番の魔女に話し掛けると、魔女も微笑みながら答えた。

 

「ふふ、カップル用だから普通は2つセットなんだけど、追加料金をいただければ、3つセットにしてあげるわよ。……でも男の子の3人組って珍しいわね」

「じゃあお願いしようかな」

 

セドリックがノリで買うことにしたようだ。こちらも衝動買いである。しかし財布を覗き込んで少しだけしょぼくれた顔になった。財布の中身がだいぶ寂しくなってしまいそうだ。

 

セリクスは内心(お揃いか。少し子供っぽいな……)と思いながらも、拒否はしなかった。無言のまま財布を出してきっちり3等分した分のガリオン金貨を差し出した。

 

「わ、こういうの初めてだな……。なんか照れるね」

 

コーウェンは少しはにかんだ。彼も財布を出したので、セドリックは明らかにほっとした顔になった。12歳のお小遣いには荷が勝ちすぎた買い物だった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

出来上がったのは、細めの銀製バングルだった。魔法銀で作られており、表には3つの小さな宝石が埋め込まれている。

 

セリクスはエメラルド──理知と再生の石。

セドリックは琥珀──友情と守護の石。

コーウェンはアクアマリン──癒しと信頼の石。

 

魔女が勝手に決めていたが3人とも否やはなかった。まあ男子に宝石などあまり興味自体なかったせいもある。

 

「それぞれが微弱に発光して、感情によって色味や輝きが変化するのよ」

 

魔女が説明する。

 

「怒りなら赤み、悲しみなら灰色がかって、不安なら鈍く曇るわ。幸福なら明るく輝くの」

「死んだら?」

 

セリクスが淡々と質問すると、魔女の顔が曇った。

 

「……色が抜けるわね」

 

死という衝撃的な単語を耳にした2人も神妙な顔で手首のバングルを見下ろした。今現在は透明感ある美しい輝きがあるだけだったが。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「なんか、すごいお揃いになったね」

「ちょっと照れくさいけど……。嬉しい」

 

3人でお揃いのバングルをつけて、と『漏れ鍋』へ戻った。マウリシオは気を遣って先に帰宅し、3人だけが暖炉の前で別れの挨拶を交わす。

 

「楽しい夏休みだったよ」

 

コーウェンが笑顔で言う。

 

「また新学期に!」

 

セドリックが手を振る。

 

「ああ」

 

セリクスが短く答えると、3人のバングルの宝石がそれぞれ温かく光った。

 

セドリックとコーウェンが緑の炎に包まれて消えていくのを見送りながら、セリクスは自分の左手首のバングルを見つめた。

 

エメラルドが静かに光っている。初めて友人と過ごした夏休みが終わろうとしていた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

セリクスは自室に置いてある艶を帯びた黒檀の書斎机で黒いノートを開いた。最初のページに、美しい星屑入りの流麗な文字で書き始める。

 

 

✒︎───────❖───────✒︎

友人というものは、思っていたよりも悪くない。

✒︎───────❖───────✒︎

 

 

窓の外では、夏の夕日が湖面を金色に染めている。

 

左手首のバングルが、僅かに温かく光っていた。

 

 

 

 

 




【あとがき】
妖女シスターズですが、デビュー年は公式に明かされていませんが、1994年『炎のゴブレット』編のユール・ボール時点では既に大人気バンドになっています。なので1990年夏頃には、もう結成されていたと考えても自然かなと。
最年少メンバーはセリクスたちと同学年か1学年下なので、この時点ではまだ加入していないのかもしれません。そんなことを考察してました( ̄▽ ̄;)
ちなみに「セドリック=妖女シスターズのファン」というのは完全に独自設定です。ミーハーにしてみたり、ちょっといじられキャラにしてみたり……私は一体セドリックをどうしたいんでしょうね(笑)

フローリアン・フォーテスキューの見た目は、カーネルおじさんにエプロンつけてもっと太らせたイメージです。外見の公式設定がないようなので、なんとなく決めちゃいました:( ;´꒳`;)
皆様のフローリアンはどんな人ですか?
アイスクリームはサーティワンアイスクリームを想像したら大体そんな感じです。書いてる間久しぶりにサーティワン食べたくなってきました……。

バングルは具体的にいくらとかは決めてません。でも小さいとは言え宝石嵌め込んでるし、魔法効果もあるので結構お高い気がしますね。
12歳にはちょっと背伸びした買い物ですが、なんだかんだでみんな裕福な家庭の子なので成立しちゃうあたりが彼ららしいですねꉂ(´‎‪ᗜ` )
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