スリザリンの末裔 ~Silver-Haired Wizard’s Legacy~   作:如月斎

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【ホラー注意】
今回うっすらホラー回です。まぁ全然怖くはありませんが、もしめっちゃ苦手な方がいたら薄目でご覧くださいませ(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)





第2章 第8話 地下に眠る/第9話 地下聖堂に眠る男

 

地下に眠る

 

医務室から退院した翌日、約束通り図書館での宿題を終えた3人は、夕暮れの廊下を歩いていた。寮へ戻ろうと階段に足をかけた、その時だった。

 

───ガコン。

 

鈍い音とともに階段がぐらりと動き出す。

 

「わっ──!」

 

たまたま先頭にいたセドリックが、足元をすくわれるようにして階段の隙間へと滑り落ちていく。セドリックのダークブラウンの髪がセリクスの目の前で揺れた。

 

「セドリック!」

 

咄嗟に腕を伸ばしたセリクスが、彼の手首を掴む。だが体重を支えきれず、今度はセリクス自身も足を踏み外した。

 

重力が2人を引きずり落とす。2人はあっという間に暗闇の隙間へ落ちていってしまった。

 

次の瞬間、セリクスはセドリックの体を抱き寄せ腕に抱え込むと、ローブから杖を抜いて素早く呪文を放った。途端に杖の先から透明な魔力の波が生まれ、2人の体を包み込む。

 

「《アレスト・モメンタム(動きよ・止まれ)》」

 

落下の勢いがふっと軽くなる。2人の体は床に柔らかく着地した。セドリックはポカンと口と目を開けたまま硬直していた。

 

一瞬の静寂の後、上階から慌てた声が降ってくる。

 

「大丈夫!? 2人とも!」

 

手すりから身を乗り出しているコーウェンが、おろおろとこちらを見下ろしていた。

 

セリクスは床から上を見上げ、落下した高さを確かめると、ゆっくりと立ち上がった。杖を振り上げて低く呟いた。

 

「《ウィンガーディアム・レビオーサ(浮遊せよ)》」

「えっ! ちょっ、何するの!?」

 

体がふわりと宙に浮いたセドリックが、驚いた声を上げる。じたばたと手足を動かすが上手く動けないようだ。

 

「君だけなら上に戻せる。君はまだ人間を浮かせられないだろう?」

「……君はどうするの?」

「自分自身に浮遊術は使えない。私は他の道を探す」

「僕も行くよ! だから降ろして!」

 

必死な目を向けてくるセドリックに、セリクスは短く息を吐いた。そのまっすぐな瞳に、下手な説得は効かないだろうと直感的に悟ってしまった。渋々杖を下ろす。ゆっくりとセドリックの足が地面につく。

 

「……仕方ない」

 

こちらを心配そうに見ているコーウェンに視線をやる。

 

「君は先に戻れ。もし私たちが消灯時間までに戻らなければ、スネイプ教授に伝えてくれ」

 

コーウェンは戸惑いながらも、小さく頷いた。

 

「2人とも無理しないでね」

「大丈夫。ホグワーツにそんな危険なんてないさ」

「そうかなぁ……」

 

セリクスとセドリックは心配そうなコーウェンに軽く手を振り、落下した階段下の空間に足を踏み入れた。そこには古びた扉が一つだけあった。ここに落ちてしまった生徒用の脱出経路だろうか。

 

セリクスが杖を構えながら扉を押し開けると、蒼白い石で造られた廊下がずっと奥まで続いていた。両脇にはいくつもの扉。人気(ひとけ)は全くない。異様な雰囲気であった。

 

「……ホグワーツに、こんな場所があるなんて」

 

セドリックが目を丸くする。セリクスは迷わず先へ進もうとするが、セドリックは並ぶ扉を気にして立ち止まった。

 

「ちょっとだけ見てみてもいい?」

「……分かった」

 

セリクスも多少興味があったのか、浅く頷くと手前の扉に手をかけた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

1つ目の扉を開けた瞬間、空気がひんやりと変わる。そこはまるで学校の地下に広がる"もうひとつの湖"だった。天井が岩で覆われた洞窟のような空間で、中央に黒く澄んだ水が静かに広がっている。

 

舟も足場もなく、小さな波紋だけが音もなく水面を揺らしている。遠くには出口のような影が見えるが、泳いで辿(たど)り着くにはあまりに危うい。

 

「……ここ、外じゃないよね?」

「分からない。しかし雰囲気的にホグワーツではない気がする」

「この先ってどうなってるんだろう……」

「どうやって行くつもりだ? 舟はなさそうだが。泳いで行くか? 私はここで待っていよう」

「セリクスが意地悪だ……無理……」

「ふっ。戻ろうか」

 

2人は部屋の外へ引き返した。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

2つ目の扉を開けた瞬間、セドリックが小さく声を上げた。教室のような空間。だがカーテンは(まく)れ上がり、机や椅子までもが天井に貼りついている。下の床はがらんと空いていて、まるで重力だけが逆転しているようだった。窓の外は不気味な闇に塗り潰されていて、絶対に覗き込んではいけない気にさせられた。誰が見ても、ここで授業を行うなど到底不可能に思えた。

 

「びっくりした。目の錯覚かと思った……」

「錯覚ではない。重力反転魔法だろう。……目的は不明だが」

「なんかこの部屋、気持ち悪くなってきた……」

「魔力の方向性がバラバラだ。ずっとここにいると魔力回路がおかしくなる可能性がある。早く戻ろう」

 

異常な気配に、2人は入ることなく扉を閉じた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

3つ目の扉の中は、食堂だった。普段使っている大広間ではない。そこまで広くはない。20人も入ればいっぱいになりそうな部屋に、テーブルが2つ並んでいる。たくさんの蝋燭が灯されていて、廊下の蒼白さとは全く逆の暖かい雰囲気だった。

 

テーブルにはまさにたった今出来立てのような湯気の立っている豪華な料理が並んでいる。美味しそうな肉の焼ける良い匂いまで漂ってきた。セドリックの腹から、ぐうぅ……と小さな音が聞こえてきて、セリクスは思わず振り返ってしまった。セドリックの頬がほんのり赤くなる。

 

「お腹すいた……。これホグワーツの夕食? ハウスエルフたちが、僕たちのために用意してくれたのかな?」

「……どうだろうな」

「食べてもいいのかな?」

「ちょっと待て」

 

セリクスが一歩食堂に入ると、一番手前の椅子が勝手にぎぎっと引かれた。まるで"あなたの席はここですよ"と言っているかのようだった。セリクスはご丁寧に引かれた椅子には座らず、料理に顔を近付けて匂いを嗅いでみた。

 

「……毒ではなさそうだが」

「……毒じゃないけど、食べたらダメそう?」

「そうだな。毒じゃないから逆に厄介かもしれん」

「どういうこと?」

「……戻ろう」

 

セリクスとセドリックが背中を向け扉に向かおうとした瞬間に、テーブルの方からギギギギギギギギ……と聞こえてきたので2人は急いで振り返った。そこには先程と同じで誰もいない。しかし全ての椅子が引いてあった。まるで今そこに座っている人間が一斉に立ち上がったかのように。同時に息を呑む。

 

「走れ! すぐに出るんだ!」

「ひえぇぇ!」

 

2人は猛ダッシュで廊下に出て扉を閉めた。鍵はない。誰かが開けてくるかと思ったが、それ以上のリアクションはないようだった。同時に溜息をつく。

 

「あぁびっくりした。なんだったの……」

「分からんが……。おそらく"妖精の食卓"だ。食べたら帰れなくなるという伝承がある」

「あぶな———……」

 

息を整えた2人はまた廊下を歩き出した。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

4つ目の扉を開けると、冷たい空気が頬をかすめた。蒼白い光に照らされた空間の中央に、天井まで届くほどの背の高い鏡が一つ。フレームは金の細かな装飾でできており、鏡面は微かに揺らいでいるように見える。

 

「……なんだ、これ」

 

セドリックが魅入られたようにふらふらと部屋に入っていく。セリクスもすぐ後を追った。セドリックはゆっくりと鏡に近付き、ふと目を見開いた。

 

「……僕、クィディッチのユニフォーム着てる……。スニッチも、優勝カップも……。みんな嬉しそうに笑って喜んでる。セリクスにも見える? なんだろうこれ。……未来が視えるのかな?」

 

セドリックはどこか熱に浮かされたように言った。セリクスは黙ってその様子を見ていたが、ふいに鏡を覗き込むとそっと目を伏せた。セドリックが笑顔のままセリクスの方へ振り向いた。

 

「セリクスにも見える? ……セリクス?」

「……」

 

いつもの無表情のはずなのに、セリクスの顔にはどこか寂しさや哀しみが滲んでいるように見えた。意味も分からないまま、セドリックの胸を強く締め付ける。

 

セドリックは何も言えなくなってしまった。

 

静けさを破るように、セリクスがきびすを返し部屋を出ていく。セドリックも慌てて追い掛けた。2人とももう鏡には目を向けなかった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

それからも長い長い廊下で、無数の扉を次々と覗いていった。すべての部屋は普段彼らが使用する教室などとは全く違っていた。人気(ひとけ)はなく、生の気配が感じられない"虚無"ばかりであった。

 

最初は冒険心を(くすぐ)られた2人だったが、あまりにも精神を削る部屋ばかりなのでだんだん気が滅入ってきた。残り時間もなくなってきたので、途中でセリクスが探索を止め、まっすぐ廊下を進むことにした。

 

廊下の突き当たりには、大きな柱時計が一つだけ置かれていた。他には扉も何も見当たらない。

 

「行き止まり……?」

 

セドリックが顔を蒼褪めさせる。まさか脱出口がないだなんて。もうすぐ消灯時間のはずだ。早く帰らないといけないのに。

 

しかしセリクスは冷静に柱時計に近付き、表面を丁寧に調べ始めた。しばらくして杖を向けて呪文を唱える。

 

「《レベリオ(現れよ)》」

 

ゴウッ、と音を立てて柱時計が扉のように開き、奥へと続く黒い空間が現れた。

 

「な……!」

 

セドリックが息を呑む。《レベリオ》は初めて聞く呪文だった。何の魔法だろうか。

 

「すごい……。どうして分かったの?」

「隠し扉の基本だ。……《ルーモス(光よ)》」

 

奥は暗くて見通せない。しかしセリクスは杖先に光を灯すと、躊躇(ちゅうちょ)することなく歩き出した。

 

「セリクス、待ってよ……!」

 

その背中を、セドリックが慌てて追いかける。

 

すぐに2人の背中は闇に呑まれて見えなくなってしまった。柱時計がまた音を立てて、ゆっくりと閉まっていく。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

地下聖堂に眠る男

 

柱時計の奥は聖堂のようだった。ひんやりとした空気が肌を撫で、微かに湿った石の匂いが鼻腔をくすぐる。部屋は薄暗く、古い石造りの壁に囲まれている。微かな魔力が漂い、まるで空気そのものが生きているかのような──外の気配を完全に遮断する、静謐な結界のようだった。

 

セリクスは足を止めると、杖を軽く振り上げて呟いた。

 

「《コンフリンゴ(爆発せよ)》」

 

パチン、パチンと(ほの)かな()ぜる音とともに、部屋の隅に並んだ燭台に次々と火が灯っていく。炎は揺れながら空間を明るく照らし出し、重く沈んでいた空気が僅かに動いた。温かな光が石壁を這い、影が長く伸びていく。

 

その光の中で、部屋の奥に掛けられた1枚の肖像画が姿を現す。

 

老朽化した額縁におさめられたそれは、まるで時間の止まった一場面のように、動くことも喋ることもなくただ静かにそこにあった。

 

描かれているのは1人の青年で、気品ある顔立ちをしている。まぶたを下ろし静かに眠っているように見えた。銀がかった髪、整った鼻筋、そして薄く結ばれた唇──その面影には、どこか見覚えがあるような気がした。

 

「あの人、少しセリクスに似てる……」

 

セドリックが気付いて呟いた。声が静寂の中に小さく響く。

 

セリクスは近寄り、額縁の下に刻まれた文字に目を落とす。見覚えのあるイニシャル。炎の光に照らされた文字が、金色に浮かび上がっている。

 

「……O.G. ……オミニス・ゴーント……」

 

呟くように読み上げたその言葉に、セリクスの瞳が微かに揺れる。心臓の鼓動が少しだけ早くなった。

 

「……曾お祖父様?」

 

その言葉にセドリックが驚いて振り向く。グレーの瞳が見開かれた。

 

「えっ!?」

 

沈黙が破られたのは、その直後だった。

 

「……………俺の曾孫……か?」

 

低く、くぐもったような男の声。音もなく口が動き、表情が生まれ、肖像の男は確かに彼らを見つめていた。盲目のはずの瞳が、光を持たぬまま、それでもまっすぐにセリクスへと向けられている。

 

「わっ……!」

 

思わずセドリックがびくりと肩を跳ねさせ、1歩後ずさる。燭台の炎が揺れて、影がぐらりと傾いた。

 

「まさか俺の子孫がホグワーツに戻ってくるとは……」

 

それは、動いていなかったはずの絵画からの、確かな声だった。驚きと、そしてどこか懐かしむような響きが混ざっている。

 

セリクスは静かに立ったまま答える。炎の光を背に受けて、その表情は半ば影に沈んでいる。

 

「父がイギリスでのゴーント家を再興しようとしています」

「ほう? それで帰ってきたのか。……ユリアナはもう亡くなっているか? 俺の息子は? この肖像画を描いた時、カシュートスはまだ2歳だったんだ」

 

オミニスの声には、遠い記憶を辿(たど)るような柔らかさがあった。だが同時に、答えを恐れるような緊張も滲んでいる。

 

「ユリアナ様──曾お祖母様はもうお亡くなりに。カシュートスお祖父様はまだご存命で、お祖母様と一緒に仲良く暮らしてますよ」

「そうか。みんな幸せならいいんだ。……俺が遺した鞄はお前が継承したのか? あれは良い物だから大事に使ってほしい。……俺の大事な友人の遺品なんだ」

「そうだったんですね。もちろんです」

 

短く交わされる会話の中に、いくつもの時代と喪失が浮かび上がる。燭台の炎が小さく揺れるたび、肖像画の表情も微かに変化して見えた。

 

「……そうだ。父上はさすがにもう亡くなっているな。兄上たちや姉上は? 会ったことはないが、甥や姪がいたはずだ」

「……もう全員いません。その系譜も。残っているのは、あなたの系譜だけです」

 

セリクスの声は静かだったが、その言葉は重かった。オミニスの表情が一瞬強張る。

 

「……そうか。その方がいい。兄上たちは闇に染まりすぎていた。──お前たちも、もうここには来ない方がいい。面白いものはここに何もない。もうずっとここには誰も来ていない。……後ろの三枚絵から好きな場所に行ける。光を当てればいい」

 

それが、かつてのオミニス・ゴーントの言葉だった。話は終わりだとばかりに目を瞑ってしまったオミニスに急いで話し掛ける。セリクスは一歩前に踏み出した。

 

「曾お祖父様、最後にお聞きしたいことが。禁書庫にノクチュアという女性の肖像画がありました。あれは誰です? 家系図には記されていませんでした。あと、あなたが遺したメモ。【血は門を開かず、取り返しのつかない痛みのみが鍵となる。後悔したくないのなら引き返すべきだ】これはどういう意味ですか? "スリザリンの書斎"には何があるんです?」

 

セリクスは一息に言い切った。去年からずっと心に残っていた謎である。マウリシオに聞いても、はぐらかされるばかりで何も教えてくれない。オミニスはメモを遺した張本人だ。絶対に何か知っているはずである。燭台の炎が激しく揺れ、影が壁を駆け巡った。

 

───沈黙。

 

長い、重い沈黙が落ちた。

 

やがて、オミニスの唇が震えるように動いた。

 

「……ノクチュアは俺の叔母だ。ゴーント家で唯一優しい人で、ただ1人の俺の理解者だった───」

 

オミニスはどこも見ていない眼差しで噛み締めるように呟いた。微かに苦しそうな表情をしている。肖像画の中の青年が、まるで遠い過去の痛みに耐えているかのように見えた。

 

「"スリザリンの書斎"には絶対に行くな。あそこで得られる物なんかほとんどない。ノクチュア叔母さんはあそこで死んだんだ。……骨も持って帰ってあげられなかった……。俺が生きて出られたのは運が良かっただけだ。俺の曾孫がそんなところで死ぬのは嫌だ」

「曾お祖父様……」

「いいな、曾孫よ。約束だ。どうかあそこには行かないでくれ。書斎に入ったことすら俺は後悔している。……あそこのせいで俺の親友は……セバスチャンは……!」

 

オミニスの様子がいよいよおかしくなった。苦しそうな息遣いで顔を覆ってしまった。肖像画の中の青年が、まるで今まさに悪夢を見ているかのように身を震わせている。燭台の炎が大きく揺れ、部屋全体が不穏な雰囲気に包まれた。

 

セドリックがセリクスの後ろで警戒するようにジリジリ下がっていく。

 

「曾お祖父様。大丈夫ですか?」

 

セリクスの声には、いつもの無表情の奥に、僅かな動揺が滲んでいた。

 

「すまない。取り乱した。……何年経ってもまだ痛みは消えない。──ここで聞いたことも俺と会ったことも忘れてほしい。……さよならだ」

「…………」

 

セリクスはしばらくの間沈黙していたが、やがて一礼しながら小さく呟いた。

 

「……分かりました。さようなら。曾お祖父様」

 

振り向かず、そのまま奥に控える三枚絵へと歩き出す。革靴が石床を打つ音だけが、静かに響いた。セドリックはしばらくその背中と肖像画を交互に見ていたが、慌ててセリクスの後を追う。

 

三枚絵の前に立ち、セリクスが杖をかざす。

 

「《ルーモス(光よ)》、スリザリン寮のそばの廊下」

 

真ん中の絵画の表面が虹色にゆらめき、空間がひとひら歪んで開かれていく。光が渦を巻き、まるで水面のように揺らいだ。2人が絵画の中に足を踏み入れると、次の瞬間には元の廊下に立っていた。

 

石の壁に囲まれた、いつもの廊下。松明の明かりが静かに揺れている。

 

しばし無言のまま佇んだあと、セドリックがぽつりと呟く。

 

「……さっきのこと。もし、言えるようになったらでいい。いつか教えてほしい」

 

セリクスは顔を少し横に向け、彼の目を見つめる。表情は変えず、それでも確かに、小さく頷いた。エメラルドグリーンの瞳が、松明の光を映して静かに揺れている。

 

「早く帰らないと。コーウェンが心配している」

「うん、そうだね。僕ものんびりしてたら怒られちゃうな。──じゃあ、また」

 

それ以上の会話はもはやなく、2人はお互いの寮への道を歩き出したのだった。

 

足音だけが廊下に響き、やがてそれも遠ざかって消えていった。

 

 

 

 

 

 




【あとがき】
特徴的な部屋が4つも出てきましたが、全ての部屋が長居無用です。
ずっといると精神崩壊しますのでご注意ください( >ω∂ )☆
食堂の部屋はついさっき思い付いて加筆してみました。
書いている間ずっと背筋がぞわぞわして鳥肌が立っていました。
一斉に椅子が勝手に引かれるとか怖すぎでは? リアルだったら腰抜かす自信あります。
ちなみに"妖精の食卓"の妖精は、屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)とは別の存在です。
スコットランド系の「トマス・ザ・ライマー」には、妖精の女王に連れられて妖精界へ行き、食べ物や時間のずれが絡む異界滞在譚があるらしいです。
まあ屋敷しもべ妖精のような実体があるわけではなく、また悪意もありません。
彼らにしたら「新しい仲間?」「新顔?」「ご飯食べる? ここ座って!」「ここに住もうよ。楽しいよ」「あれ? 食べないの?」「帰っちゃう! 待って待って!」→ギギギギギギギギって感じです。
いや、怖いわ!( ̄▽ ̄;)

ちなみに描写はしてませんが、部屋はまだまだあります。

雨音だけが響く窓のない小部屋。
全員が眠ったままこちらを向く大量の肖像画の部屋。
開けた瞬間、誰かの囁き声だけが一斉に止む教室。
床一面に砂が積もっていて、足跡だけが先へ続く部屋。
燭台の火が全部青く燃えている空っぽの儀式室。

ホグワーツ城の地下はお化け屋敷かな?( ᐙ )スットボケ
全部描写したらジャンル変わっちゃいますね(笑)

そして遂にホグレガのオミニスが登場しました。ホグワーツ・レガシーの登場人物の中では、オミニスが断トツ1位で好きです。
シンプルに彼、顔が良くないですか? プレイ中ずっと「こいつ顔が良いな……」って思いながら操作してました。
肖像画のオミニスはこの時なんと46歳。でも魔法使いって老化が遅い印象があるので、見た目はまだ青年ということにしてます。
ちなみに私のレガ主は銀髪碧眼のイケメンでした。あれ? それセリクスでは? ꉂꉂ(ˊᗜˋ*)
安心してください。セリクスはレガ主ほどサイコパスじゃありません。(レガ主もサイコパスじゃねぇよってツッコミがあったら甘んじて受けます)
灯りを《コンフリンゴ》でつけるのは、ちょっと火力強すぎでは?と思われるかもしれませんが、ホグレガへのオマージュです。私もプレイ中ずっと「燭台ぶっ飛ばん?」と思ってました。
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