スリザリンの末裔 ~Silver-Haired Wizard’s Legacy~   作:如月斎

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第1章 第3話 スリザリン談話室

 

スリザリン談話室

 

湖の底に広がるスリザリン談話室は、石造りの壁と緑色の照明に包まれていた。その光が湖水の向こうから差し込む淡い光と混じり合って、幻想的な雰囲気を(かも)し出している。黒い革張りのソファや椅子が配置され、壁には歴代の著名なスリザリン生の肖像画が掛けられている。

 

セリクスとコーウェンが談話室に足を踏み入れると、同学年らしい男子生徒数人が近付いてきた。

 

「……君たちも新入生だよね?」

 

穏やかな口調で声を掛けてきたのは、細身で端正な顔立ち、物腰が柔らかく人当たりの良い笑顔を浮かべている少年だ。

 

「僕はエイドリアン・ピュシー。僕、こういう雰囲気に慣れてなくてさ。なんか緊張するよね」

「おお、新しい仲間だ!」

 

ピュシーの隣から飛び出してきた少年は、元気よく手を振りながら、お調子者らしい明るい声で話しかけてきた。男らしい輪郭にソバカスが目立つ顔をしている。、

 

「俺はグラハム・モンタギュー! ……さっきの組み分け、お前なんか注目されてなかったか?」

 

モンタギューはセリクスの顔をジロジロと覗き込んだが、セリクスはちらりと視線をやっただけで返事をしなかった。その眼光にモンタギューが一瞬たじろいだのが分かった。少し後ろから、生真面目そうな少年が一歩前に出た。細面で涼しげな細い目をしている。

 

「マイルズ・ブレッチリーです。よろしくお願いします。……寝室の場所とか就寝時間とかちゃんと案内があるんでしょうか。なんて、君に聞いても分からないですよね」

 

きちんとした口調で自己紹介をしたブレッチリーは、新生活に不安を抱えているのか心配そうに談話室を見回している。その隣で優等生らしい雰囲気を漂わせた整った顔の少年が頷く。

 

「僕はテレンス・ヒッグスだよ。好きな物はクィディッチ! よろしくね。──マイルズ、寝る部屋はさっきあっちで監督生が案内してたよ。後で行こう!」

 

ヒッグスが指差す方を見ると、新入生たちになにやら親切に教えている男女の上級生がいた。おそらく彼らが監督生なのだろう。セリクスたちも後で行かなければいけない。

 

最後に、5人の中では1番大柄な体躯で、少し眠そうな目付きの少年が何故か腹部を押さえている。

 

「カシウス・ワリントンだ。なあ、腹減ったんだけど、食い物とか持ってないか?」

 

しかし、セリクスは無表情のまま軽く首を振るだけで、積極的に話そうとはしない。会話が止まり微妙な空気が流れ始めた時、コーウェンが慌てて間に入った。

 

「セリクスは無口だけど、いいやつだよ。本当に頭がいいし、信頼出来る。──あとごめんね、ワリントン、僕たちご飯は持ってないかな……」

 

コーウェンの言葉に、皆の表情が和らぐ。ワリントンだけは少しがっかりした顔をしていたが。

 

「そうなんだ」

 

ヒッグスが微笑む。

 

「無口な人も味があっていいよね。君もクィディッチ興味ある? スリザリンチームは結構強いんだ。あー、兄さんが言うにはグリフィンドールのシーカーがいなければ、だけど」

 

セリクスはそれにも首を横に振るだけ。正直言ってクィディッチの存在は知っていたが、観戦はしたことがなかった。そもそもセリクスはスポーツを観ない(たち)である。

 

「まあ、人それぞれだからね」

 

ピュシーが穏やかに言う。

 

「僕らも最初は遠慮してたけど、みんなでいると楽しいよ」

「そうですね。規則を守って、お互い協力していきましょう」

 

ブレッチリーが生真面目に頷いた。

 

窓の湖水越しに見える淡い光が揺らめいている。石の壁に反射する緑の光が、談話室全体を神秘的に包んでいた。

 

「寮の伝統もいろいろあるみたいだから、少しずつ慣れていこうね」

 

ヒッグスが親切に言う。スリザリンの伝統、セリクスは家族にホグワーツ出身者がいないため事前知識はほぼゼロである。僅かに首を傾げた。

 

「伝統?」

「そう。これも兄さんから聞いたんだけど、暖炉の前の大きなソファは特等席だから家柄がいい子しか使っちゃいけない、とかね。僕たちはみんな使えないってこと」

「そうそう、何か困ったことがあったら遠慮しないで」

 

ピュシーが明るく付け加えた。

 

ヒッグスはそう言うが、いい家柄の子息がそのソファに座れるのならば、ゴーント家嫡男であるセリクスが1番資格があるだろう。彼らは聖28一族のことにあまり詳しくないようだ。

 

お互いの自己紹介が終わり、なんとなく全員でぞろぞろと監督生のいるところへと向かった。7人がいきなり合流したので、先に集まっていた他の新入生たちが怯えたように場所を空けた。そんなにセリクスたちの見た目が怖いのだろうか。

 

新入生たちに何か演説めいたものをしていたらしい女子監督生が、笑顔で挨拶してきた。少し吊った猫目を茶目っ気たっぷりにウィンクさせている。

 

「はじめまして! 私は5年のジェマ・ファーレイよ。あなたたちも新しい仲間ね! 歓迎するわ」

 

それからファーレイはハキハキと注意事項や決まり事を教えてくれた。

 

「寮への入り口は合言葉で開閉するの。今週の合言葉は"野心"よ。これは2週間に一度変更になってそこの掲示板に貼り出されるからチェックしてね。もし分からなくなっても入り口のそばにある小部屋にいてくれたら、誰かが迎えに行くわ。最初慣れるまでは教室に有志の先輩や私たちが引率するから迷子の心配はないからね。まああんまり心配してないわ。なんたってエリートのスリザリン生だもの!」

 

新入生のことを何も知らないはずだが、ファーレイは自信満々に断言した。立て板に水のように話し続けるファーレイに、新入生は誰1人口を挟めない。

 

「他寮からは偏見の目で見られるけど、本当はスリザリンは偉大で最高な寮なのよ。私が入学してからずっと寮杯をスリザリンが獲得してきた。5連覇、ううん6連覇も全然夢じゃない。それになんたって世界一偉大な魔法使い、マーリンもスリザリン出身なんだから! これは他寮の人たちは聞きたがらないんだけどね」

 

止まらない自慢話にセリクスは退屈になってきた。ピュシーたちはキラキラした顔で聞いているが。あまりにも止まらないファーレイに痺れを切らしたのか、男子の監督生が止めに入った。長めの目を引く鮮やかな金髪で、制服のローブを着崩している。彼はハーマン・ウィントリンガムと名乗った。

 

2人は似たような髪色で並ぶと眩しい気がした。

 

「ジェマ、もういいよ。彼らをそろそろ寝かしてあげないと……」

「あら嫌だわ私ったら。1年生はまだたくさん寝ないとだもんね。これが寮室の部屋割のリストよ」

 

やっと解散らしい。セリクスは聞こえないように浅く溜息をついた。

 

そして静かに周囲を見回す。湖底の荘厳で物静かな談話室、新しい同寮の仲間たち、そして始まったばかりのホグワーツ生活。

 

(悪くない。──まずは何から手をつけるか)

 

全てが、彼の計画の一部として動き始めていた。

 

 

 

 

 




【あとがき】
セリクスの取り巻きになるのか、家臣になるのか、友人になるのか分からない5人組が登場しました。公式キャラではあるんですが、出番が少ないのをいいことに、めちゃくちゃ独自に肉付けしています。モブキャラに設定をつけるのめっちゃ大好きです(笑)

監督生のジェマ先輩ですが、髪型は『ドラゴンボール』の人造人間18号みたいなショートボブを想像しています。ちなみにハニーブロンドです。ジェマ先輩は原作小説には登場していませんが、実は公式(ポッターモア)の設定にだけ存在するキャラクターです。知ってる人がいたら嬉しいな( *ˊꇴˋ)エヘッ
最近彼女の存在を知って、ぜひ登場させたくなりました!

そして一言だけ登場したハーマン先輩。彼は妖女シスターズのリュート担当のバンドマンです。由緒正しい家系で教養としてリュートを習わせたのに、どこでとち狂ったのかバンドに加入したので彼の両親は頭を抱えていたり(笑)
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