スリザリンの末裔 ~Silver-Haired Wizard’s Legacy~   作:如月斎

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第3章 第3話 カエルの王子さま/第4話 不文律の紹介

 

カエルの王子さま

 

ホグワーツ特急は、たっぷりの煙を吐きながら、のどかな田園風景をゆっくりと切り裂いていた。

 

車内のコンパートメントでは、セドリックとコーウェンが向かい合い、穏やかに談笑している。コーウェンの隣に座るセリクスは、静かに本を開いている。肘置きの上に肘をつき、ページをめくる指先は一分の隙もないほど洗練されていて、話に加わる気配はまるでなかった。

 

「……でね、魔法薬学の課題、スネイプ先生の意図を汲んで書いたら逆に減点されてさ」

「それは……ひどいね。察するに、"余計な理解"ってやつ?」

「そうそう! スネイプ先生ってそういう"媚び"みたいなの大っ嫌いみたいでさ」

 

軽妙なやりとりが続く中、突然扉が音を立てて開いた。現れたのは、丸顔で小柄な少年。頬に汗が滲み息が切れている。

 

「こ、こんにちは……。このへんでヒキガエルを見掛けませんでしたか? "トレバー"っていうんですけど……」

 

少年はネビル・ロングボトムと名乗った。4寮のカラーに染まっていないローブから、今年の新入生だと分かる。ペットのカエルが逃げ出してしまったらしい。

 

セドリックが優しく微笑む。

 

「ごめんね、見てないな。トレバー、いなくなっちゃったの?」

 

ネビルは頷いて、しょんぼりと扉を閉めた。

 

数分後、またしてもノックが響く。今度は栗毛のふわふわした髪の少女だった。彼女も新入生だ。

 

「失礼します。ネビルのカエルを見掛けませんでした? 名前は"トレバー"っていうんですけど、逃げ出しちゃったんですって! 自分のペットに逃げられるなんて信じられないわ!」

 

少女の勢いに圧されつつも、コーウェンとセドリックが首を振り、少女はふうと溜息をついて去っていった。

 

静けさが戻った車内に、今度は前触れもなく勢いよく扉が開いた。コーウェンとセドリックの肩が同時に跳ねる。

 

「セリクス! ここにいたのか!」

 

そこにはプラチナブロンドの少年──ドラコ・マルフォイが、大柄な少年2人を従えて立っていた。クラッブとゴイルだ。どうやら3人ともが、酷く怒っているようだった。

 

「さっき、あの有名なハリー・ポッターに会ったよ。世間じゃ"生き残った男の子"だの救世主だの持て(はや)してるけど、あんなのただの貧乏人さ。あいつが英雄だなんて馬鹿げてる!」

 

そう息巻いていたドラコだったが、ふと視線を横にずらしてセドリックの姿を認めると眉をひそめた。"何故、セリクスとハッフルパフなんかが一緒に?"とでも言いたげな目だったが、さすがに先輩たちの前では何も言わず、ふんと鼻を鳴らして足取り荒く去っていった。クラッブとゴイルも慌てて追従する。

 

「……なんだったんだろう」

「気にするな。いつものことだ」

 

静けさが戻って、再び会話が弾もうとしたその時だった。

 

「……ゲコッ」

 

どこからともなく、大きなヒキガエルが姿を現した。扉の陰から、つぶらな瞳がこちらを(うかが)っている。

 

「……あれ?」

 

セドリックが目を丸くした。

 

「これってさっきの……」

「ネビル君の……トレバー……?」

 

コーウェンも目を(みは)る。

 

カエルはぴょん、ぴょんと跳ね、迷いなくセリクスの足元へ。そして次の瞬間───

 

「ゲコッ!」

 

—ぴょーん、ばふっ—

 

セリクスの頭上に、見事な着地を決めた。しばらくもぞもぞと動き落ち着く位置を決めると、手足を折り畳んで我が物顔で鎮座してしまった。まるでリラックスした猫のようだった。

 

カエルは満足そうにつぶらな瞳を閉じ、列車の揺れに合わせてプルプルと揺れている。

 

「……」

「……」

「…………」

 

口を押さえて笑いを(こら)える2人の間で、セリクスだけが完璧な無表情を貫き、ページをめくり続けていた。頭上にヒキガエルが乗っているとは思えない様子で。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

そのままホグズミード駅へ到着し、馬のいない馬車へと乗り込む一行。セドリックとコーウェンは、セリクスの頭上で揺れるカエルを見ては肩を震わせていた。

 

「いつまで乗せてるの?」

「降ろさないの?」

「……」

 

返事はない。完全なる黙秘である。

 

大広間に入り、スリザリンのテーブルに着席したセリクスの頭上で、カエルはなおもご機嫌にプルプル揺れていた。周囲の生徒たちがそれを見てざわめく。"スリザリンの蛇の王子様"の頭上にカエル。誰も突っ込める者はいないようだ。

 

そしてその時───

 

新入生が組み分けのために入場してきた。

 

その中の1人、ネビル・ロングボトムが、セリクスの頭の上を見て、思わず素っ頓狂な声を上げた。

 

「ト、トレバー!!」

 

叫び声と同時に注目が一気に集まる。ネビルはそのまま羞恥と緊張でふらつき、今にも倒れそうになっていた。

 

セリクスは無言で立ち上がると、そっとカエルを手に取り、列の方へ歩み寄る。

 

「……探していたカエルだ」

 

大事なペットを手渡され、ネビルはしばらく声も出なかった。呆然とした後、我に返ったようにセリクスを見上げる。ネビルの目には、端正な顔立ちの先輩が映った。背が高く、銀髪と緑の瞳がキラキラ光っている。しかしその表情は恐ろしく冷たく、無感動にこちらを見下ろしていた。ネビルの喉が引き()る。

 

「あ、ありがとう……ございます……」

 

そのか細い感謝にセリクスは何も言わず、再びテーブルへ戻る。

 

直後、マクゴナガル教授の大きな咳払いが響き、組み分けの儀式が始まった。

 

栗毛の少女──ハーマイオニー・グレンジャーというらしい──や、ネビルはグリフィンドールに決まった。

 

ドラコは帽子が触れるかどうかくらいのタイミングで「スリザリン!」と叫ばれた。あまりの早さに、コーウェンが思わず噴き出していた。

 

そして、新学期初日から大注目を集めるセリクスだったが、今年はセリクス以上に注目を集める生徒がいた。

 

「ポッター、ハリー!」

 

突然、広間中にシーンという囁きが波のように広がった。小柄で痩せっぽちな少年は、よろよろとよろめきながら組み分け帽子へと向かっていく。

 

「ハリー・ポッターだ! うわぁ、英雄が入学するって本当だったんだ!」

 

コーウェンが興奮混じりに声を上げたが、セリクスは腕を組んだまま反応しなかった。

 

組み分け帽子と何やら会話している様子だったが、なかなか決まらない。

 

ポッターは、しきりに何か呟いている。両手を組んで、必死に懇願(こんがん)しているように見えた。帽子は何やら渋っていたが、遂に決断したようだ。口のような切れ込みが大きく開く。

 

「グリフィンド───ルッ!!!」

 

グリフィンドール席が爆発した。あまりの騒音に、体が一瞬押されたような感覚がした程だ。

 

「ポッターを取った! ポッターを取った!」

 

あの騒音悪戯ドッペルゲンガーども(ウィーズリーの双子)が、また大騒ぎしているのが見える。セリクスは内心(あの鶏ガラのような少年が来たからといって何がいいんだろう)と中々に辛辣(しんらつ)なことを考えていた。

 

「あーあ、英雄をとられちゃったね」

「彼が来ても、スリザリンに馴染むとも思えない。それにドラコに嫌われたら、スリザリンでは厳しいだろう」

「あー確かに。ホグワーツ特急の中で、既に喧嘩してたっぽいしね。マルフォイ家に逆らうとか、さすがは英雄ってことなのかな?」

「何も知らないだけかもしれないな」

「あ……そっち?」

 

2人は騒ぎに紛れて取り留めもない話をした。

 

ブレーズ・ザビニという黒人の美少年を最後に、組み分けが終わる。ふとザビニがスリザリン席に視線をやり、コーウェンと目が合った。一瞬きょとんとしたザビニだったが、コーウェンに向かってキザなウインクを飛ばしてきた。コーウェンは、反射的に浮かべた愛想笑いが引き攣るのを感じた。

 

「ぼ、僕、女の子じゃない……」

 

コーウェンの悲愴な呟きを聞いて、セリクスの肩が僅かに震えたのだった。

 

料理が出されるよりも先に、ダンブルドアが立ち上がった。

 

その時、教職員席に目をやったセリクスの視線が一瞬止まる。スネイプ教授の隣に座る男──クィレル、と記憶していた──がいたのだ。引き攣った表情で、何やらスネイプ教授と会話しているようだ。

 

(確か、2年前は"来学期から自分を見つめ直す旅に出る"と言っていたはずだが……。あの席は……)

 

"マグル学"ではなく"闇の魔術に対する防衛術"? セリクスは眉をひそめた。

 

「おめでとう! ホグワーツの新入生、おめでとう! 歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上!」

 

ダンブルドアの朗らかな声が大広間に響き渡った。出席者の"ほぼ"全員が拍手し歓声を上げた。セリクスは眉間に皺を寄せて目を瞑った。

 

「相変わらず……変わった挨拶だなあ」

 

コーウェンは少し呆れた声を出した。セリクスは返事もしなかったし、ドラコはクラッブとゴイルと一緒に嘲笑(あざわら)ったようだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

晩餐(ばんさん)の終盤の食後の紅茶の途中、さっきから気になっていたことをコーウェンは思い切って聞いてみることにした。

 

「ネビル君になんかちょっと優しくない?」

「そうか?」

 

さっき気になったことをセリクス本人にぶつけてみようと思ったのは、優しい眠気のせいかもしれない。いつもより口が軽い気がする。

 

「うん……。わざわざヒキガエルを、頭の上に乗せたまま運んであげたでしょう? 別に特急でそのまま放っておいてもよかったのに」

 

コーウェンは自分が嫌な奴になった気分だった。なんでこんな事を言っているんだろう。本心じゃないはずなのに。しかし胸の奥にモヤモヤが溜まっていて、言わずにはいられなかったのだ。

 

「魔法使いのヒキガエルはマグル界のと違って頭が悪くはない。知性のある動物は嫌いじゃない。……それに彼、魔法愛玩動物みたいじゃないか?」

「えっ、愛玩動物?」

「落ち着きのない様子はニフラーみたいだったし、丸々ふくふくした感じはまるでパフスケインだ」

 

コーウェンは少し呆気に取られた。セリクスがちょっと楽しそう?

 

「……ネビル君は多分鼻くそ食べないと思うけどね……」

「似てると思っただけだ」

「ふーん。そっか」

 

コーウェンは少し考えた後、にっこりと笑った。普段とは違う妙な笑顔に眉を上げたセリクスだったが、特に言及することはなくダージリンを味わう作業に戻った。

 

その後もしばらくの間ご機嫌な様子になったコーウェンに、首を傾げるセリクスなのであった。

 

最後のデザートも全て綺麗に皿から消えたあと、ダンブルドアがまた立ち上がった。生徒たちはみな口を閉じて静かになった。

 

「エヘン──全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言───」

 

毎年恒例の注意事項のあと、いつもとは違うことを言い始めた。いわく、痛い死に方をしたくなければ4階右側の廊下は今年いっぱい立ち入り禁止らしい。

 

「去年はそんなのなかったよね?」

「ああ。あの老人何か隠してるのか?」

「……セリクスもしかして校長先生嫌い?」

「ふん」

 

肯定の代わりに小さく鼻を鳴らしたセリクスを見て、コーウェンは納得したように頷いた。まあ確かにあまり相性は良くなさそうだ。でも校長先生と一介の生徒に接点などないと思うのだが。

 

こうして、ほんの少しの不穏さを孕みながら、新学期が幕を開けた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

不文律の紹介

 

組み分けの儀式と豪華な晩餐(ばんさん)が終わると、生徒たちはそれぞれの寮へと戻っていった。石造りの廊下に響く足音の中、セリクスとコーウェンも連れ立ってスリザリン寮へ戻る。

 

地下へと続く階段を降り、薄暗い廊下を歩いていると、やがて見慣れた大蛇の像が姿を現した。

 

「純血」

 

セリクスの声に反応して蛇が滑らかに動き、隠し扉が開かれる。

 

「相変わらず尖った合言葉だよね……」

「スリザリンにも、半純血やマグル生まれは少なからずいるんだがな」

 

セリクスの返答は、いつも通り淡々としていた。コーウェンは、自分たちの後ろにいる生徒たちに意識を向けた。彼らの多くは純血──いわゆる『おおよそ純血』も含め──だが、中には半純血もいる。マグル生まれは稀だが、さりとて皆無というわけでもない。そして彼らは同寮生たちから、少なくとも表立っては差別されていなかった。

 

スリザリンは外には排他的だが、内では仲間意識が強い。半純血だろうがマグル生まれ──『(けが)れた血』という蔑称(べっしょう)をコーウェンは好まない──だろうが、スリザリンに組み分けられた時点で仲間なのだ。

 

それに、セリクスが誰に対しても一律に塩対応なのも一因だろう。

 

(セリクスは差別しないんじゃなくて、あんまり他人に興味ないだけなんだよね……)

 

寮内序列の頂点にいるゴーント家子息が差別しない──なら、他も表立ってはしない。いや、出来ない。そんな単純なカラクリを、当のセリクスは自覚しているのか。コーウェンは(せん)ないことを、つらつらと考えていた。

 

談話室に入ると、緑がかった光と重厚な調度品が出迎えてくれた。湖底に差し込む光の揺らめきが、石壁を静かに照らしている。空気は涼しく、どこか落ち着く匂いがした。コーウェンの肩から、知らぬ間に力が抜けていく。

 

(ああ、帰ってきた……)

 

「……あっ、みんな」

 

いつもの5人組が集まり談笑しているのが目に入り、コーウェンが駆け寄った。セリクスもゆったりとした足取りで続く。

 

「みんな、久しぶり。元気だった?」

「ゴーント、セルウィン。久しぶりだな。成長痛で節々が痛いよ僕は……」

 

ピュシーは情けなさそうに眉を下げる。コーウェンがピュシーと目を合わせようとしたら、少しだけ顎が上がった。明らかに背が伸びている。

 

「本当だ。ピュシーちょっと大きくなってるね。ていうかみんな背、伸びたなぁ」

 

コーウェンが感心したように見回すと、モンタギューがにやりと笑った。モンタギューも背が伸びたが、それより胸板が厚くなっているのが印象的だった。肩周りも多少ゴツくなっている。

 

「セルウィンは成長期まだなのか。ま、きっとすぐさ。俺より大きくなるのは難しそうだけどな」

「むぅ……。セリクスも大きくなっちゃってさ。みんなずるいよ」

 

コーウェンが口を尖らせて文句を言うが、誰もそれに反論はせず、どこか微笑ましい空気が流れた。成長期が遅く、しばらくの間伸び悩むことをコーウェンはまだ知らない。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「セリクス先輩」

 

コーウェンと5人組の和やかな会話を眺めていると、セリクスの後ろから密やかな声がした。振り返ると、去年のクリスマス休暇以来のセオドール・ノットが所在なさげに立っている。彼は1人だった。さすがにまだ友人は出来ていないのだろう。

 

「セオドール、久しぶりだな」

「はい。お久しぶりです」

 

セリクスの挨拶にセオドールはほっと息をついて返事をした。それにセリクスは小さく頷くと、簡潔に尋ねた。

 

「誰と同室になった?」

「あー……。ブレーズ・ザビニとかいう……。初対面ですけど」

「なるほど。最後に呼ばれていたな」

 

最後の最後に組み分けされた、黒人の少年だ。セオドールの様子から、まだ仲良くはなさそうだとセリクスは判断した。セオドールはセリクス以上の人見知りである。

 

そのままセリクスは振り向き、談笑を続けていた6人に声を掛ける。セオドールの少しだけ丸まった細い背中に手を添え、前に軽く押し出した。セオドールが突然のセリクスの行動に目を丸くする。

 

「紹介しよう。彼はセオドール・ノット。聖28一族、ノット家の跡取り息子だ。──そして、私の後輩でもある」

 

コーウェンもピュシーたちもセオドールも、こちらを意識していたのだろうドラコすらもみな目を(みは)って驚きを(あらわ)にしていた。咄嗟に誰も返事出来なかった。蒼白かったセオドールの頬にじわじわと血の気が昇り、セリクスを窺う瞳が薄く潤んでいく。黒い瞳が光って黒曜石のようだった。

 

少し張ったその声は談話室に響き、空気が一瞬で張りつめる。その場にいた他学年の生徒たちの全てがセリクスに紹介されたセオドールの顔を見つめ、そして記憶した。

 

静寂の中で、セオドール・ノットの名は刻まれた。この瞬間、彼の立場はスリザリン寮の中で盤石(ばんじゃく)なものとなった。

 

誰もが理解していた──セリクス・ゴーントが認めた後輩だということの意味を。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

夜が更け、寝室に戻ったセリクスとコーウェンは、いつものようにナイトティーを囲んでいた。今夜はカモミールティー。コーウェンの好物である。甘く静かな香りが、石造りの部屋に優しく広がった。

 

コーウェンはティーカップに口を付けながら、セリクスの横顔を窺うように見上げる。セリクスはいつも通りの無表情だが、コーウェンはその"無"の中に何かしらの感情がないか探してしまった。

 

「君がまさかあんな発言をするとは思わなかったな……」

 

カップを揺らしながら、コーウェンがぽつりと呟く。その声には、どこか()ねたような響きがあった。セリクスが視線だけをコーウェンに寄越した。無言の催促に、次の台詞が口をついて出る。

 

「……ノット君、気に入ったの?」

「去年のクリスマスに相談を受けたんだ。ホグワーツで上手くやれるか不安だと。……だから、少し手を貸しただけだ」

「ふうん……」

 

それ以上は何も言えず、コーウェンはティーカップに視線を落とした。漂う湯気の向こうに、セリクスの静かな横顔がぼんやりと見える。

 

(セリクスは別に僕のものじゃない。分かってる。……分かってるんだけど……)

 

胸の奥が、少しだけきゅうっとなる。言葉にはならないその感情を、カモミールの湯気がそっと包んでいった。こんな感傷は今日だけだ。きっと。でも───

 

(──でも、マルフォイ君のことは紹介しなかった……。ノット君のことは、特別だから……?)

 

コーウェンの胸の内にあるモヤモヤが蓄積していって少し息苦しい気がした。でもきっと気のせいだ。コーウェンはそう思い込もうとした。寝てしまって、明日起きたらきっとなくなってるはず。きっと。

 

───でも胸の痛みは誤魔化せない。

 

こうして、3年生最初の夜は、ほんの少しのぎこちなさと痛みを残して更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




【あとがき】
3話はギャグ回です。ギャグはあんまり得意じゃないんですけど、書くのは楽しいです(≧∇≦)

皆さんお気付きかもしれませんが、私は結構ネビルがお気に入りです。子供の頃に映画を観た時は全然眼中になかったんですが、大人になってから改めて見返すと「ネビルって可愛いな。頑張り屋さんだな。自尊心低いから頭をよしよししてあげたい」って親目線で見てしまいます( ̄▽ ̄;)

作中でザビニがコーウェンにウィンクしてますが、これは本当にザビニがコーウェンを可愛い女の先輩だと勘違いしたからです。セリクス視点だと本人があまり美醜に拘りがないため分かりにくいですが、コーウェンは中性的な美少年です。高学年になってもう少し背が伸びれば、女の子に間違われることはなくなるはずですけどね。

せっかく原作の『賢者の石』に突入しましたが、ほとんどハリーとの絡みはありません。ハリー目当ての人は本当にすみませんm(*_ _)m

4話で私の推しの1人、セオドール・ノットの登場です。
セオドールは群れるのが得意じゃないし、1人でも平気なタイプ。しかも純血貴族のノット家なので、スリザリンで彼を虐めるような命知らずはいません。だから、セリクスが何もしなくても、きっと大丈夫だったのでしょう。
でも、セリクスに認められたようなことを言われて、どれほど嬉しかったことか。
そんなセオドールを表現出来ていたらいいな、と思っています。

セリクスは多くを語りませんが、彼の一言一言に周りが勝手に意味を見出します。コーウェンも、そんなセリクスに振り回される1人。今回はちょっと可哀想だったかもしれませんが、書いてる最中は「甘酸っぺぇ〜〜〜(´∩ω∩`*)」ってなってました(笑)
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