スリザリンの末裔 ~Silver-Haired Wizard’s Legacy~   作:如月斎

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第3章 第9話 ボウトラックルとの友好/第10話 ベクトル教授と不本意な評価

 

ボウトラックルとの友好

 

『魔法生物飼育学』の初回授業は、湖を望む裏庭の芝地で行われた。地面には木箱がいくつか置かれ、その周囲に生徒たちが円を描くように集められている。

 

3人が着いた時には、既にほとんどの生徒が集まっていた。今までに見たどの選択科目よりも、生徒の数が多い。どうやら人気科目らしい。少し離れたところに、スリザリンの4人の姿もあった。

 

「──あ、セリクス、コーウェン。来たね」

 

人混みの中からセドリックが手を上げ、こちらへ近付いてきた。ヒッグスの姿を見て軽く会釈するが、ヒッグスは妙な顔で目を逸らす。シーカー同士、微妙なライバル意識があるのかもしれない。セドリックは軽く肩を(すく)めたが、あまり気にしないことにしたらしい。

 

「君、この授業も取ってたのか」

「セドと2つとも被ってるなんて。奇遇だね」

 

セリクスはじっとセドリックの顔を見つめる。今のところ、選択授業で彼とは全て被っていた──『古代ルーン文字学』と『魔法生物飼育学』。更にコーウェンとは『占い学』も共有している。

 

(まさか『マグル学』まで……? ディゴリー家が純血主義でないなら、可能性はあるが……。しかしさすがに『数占い学』は違うだろう)

 

セリクスの視線を受けて、セドリックが少し気まずそうに視線を()らした。コーウェンは最初ニコニコと嬉しそうに笑っていたが、セリクスとセドリックの様子がおかしいことに気が付いたようだ。きょとんと2人の顔を交互に見ていたが、不穏な空気を察知したのか不安そうに眉を下げてしまった。4人の間に微妙な空気が流れた、その時───

 

「みんな! 初めまして! わしの名前はシルバヌス・ケトルバーン。早速だが、授業を始める! 今日扱うのは──ボウトラックルじゃ!」

 

陽気な声が風に乗って響き渡る。片腕片足を失った老教師は、豪快な身振りで木箱を指し示した。生徒たちがざわつき、怖々(こわごわ)と木箱に近寄る。

 

「こやつらは木の守護者でな。樹皮と苔に擬態しながら、森の中でひっそり生きとる。見た目は可愛らしいが。──わしは昔、ドイツの黒森で遭遇したことがある……。その時は顔を削られてのう。……まぁそれはさておき」

 

ケトルバーン教授は木箱を開けながら溜息をついた。

 

「本当はグラップホーンを見せてやりたかったんじゃがな。アルバスが『生徒が串刺しになるのは困る』と言いよって……。あんなに丈夫で美しい角を持っとるというのに、突進の制御さえ覚えれば完璧な教材なんじゃが……。全くもったいない!」

「教授がそれでも取り上げたいってことは、すげー危ないってことじゃん……」

「うわっ……こいつ、動いた……!」

 

生徒たちは恐る恐る木箱に近付き、適度な距離を取りながら観察を始めた。誰かがスケッチブックを広げ、別の誰かがメモを取り出す。教師の指示で、1匹ずつ順番に観察出来るように配置されていた。

 

コーウェンもセリクスの隣に立って木箱を覗き込む。だが、次の瞬間───

 

「……うわ」

 

ざざっ、と小さく音を立ててコーウェンが後退した。

 

セリクスの前にいたボウトラックルだけが、明らかに"こちらに興味を示して"近付いてきたのだ。

 

その枝のような体は細く、表面には苔のような質感。目はビー玉のように光を反射している。

 

───だが、その目が……どこか、優しい。

 

「……え、近付いてきてない? セリクスの方だけ、なんか……目、きゅるんってしてない……?」

 

コーウェンが半分怯え、半分呆れた声で呟いた。

 

「……ほんとだ……」

 

セドリックも1歩引きながら、ボウトラックルとセリクスの"間"をまじまじと見つめていた。

 

ボウトラックルは元気良く小さな鳴き声をあげた。

 

「キュッ!」

 

細い枝──腕のようなそれを、高く掲げた。そう、まるで挨拶をするように。

 

セリクスは微動だにせず、その瞳をまっすぐに見つめ返す。そして、ゆっくりと同じように片手を小さく上げて見せた。

 

「……え、今……会話してる……?」

「……セリクスと植物?って通じ合うの……?」

 

周囲が静まり返る中、ボウトラックルは満足したようにまた一声「キュッ」と鳴き、なんとセリクスのローブにしがみつき、するすると登ってきてしまった。

 

セリクスの肩へと辿り着いたボウトラックルは、枝のような手で頬へとそっと触れた。

 

「セリクス……! 危ないっ!」

 

コーウェンが血相を変えて叫ぶが、セリクスは全く動じない。じっとボウトラックルを観察している。

 

ボウトラックルは、そのままセリクスの頬を優しく──確かめるように、ぽすぽすと突いた。セリクスはそれに対して全く頓着せずに呟いた。

 

「……かの高名な魔法動物学者、ニュート・スキャマンダー氏は、ボウトラックルをペットにして常に肩に乗せていたという……」

「スキャマンダーって……。この教科書の?」

 

セドリックは呆然と手元の教科書『幻の動物とその生息地』を見下ろした。

 

「確かそのボウトラックルの名前は───」

 

セリクスが、ボウトラックルの目を見たまま静かに口にする。

 

「───ピケット?」

「ブ————————!」

 

ボウトラックルは機嫌を損ねたらしく、大きくブーイングした。

 

「さすがに違うか……。そもそもボウトラックルはそこまで長生きではない」

「冷静過ぎるでしょ……」

 

ぽつんと落ちたコーウェンの呟きに、生徒たちの肩が僅かに揺れる。

 

満足したのか、ボウトラックルはセリクスの肩からするりと降り、木箱の中へと戻っていった。

 

「……なんで近付いてくるの、あんな危険生物なのに……。ていうか、目ってあんなにまん丸だったっけ……?」

「……あれ、たぶん、確実に……懐いてたよね……」

 

セドリックがぽつりと呟く。セリクスは何も答えず、ただほんの僅かに口元をゆるめたように見えた。

 

セリクスの半径3メートルだけ、異様に静かで穏やかな空間が広がっていた。──が、そんな空気を微塵(みじん)も読まない男が、突然割って入ってきた。

 

「今、ボウトラックルを肩に乗せてる生徒がいなかったかね!?」

「ゴーントです」

 

咄嗟に気配を消そうとしたセリクスだったが、すぐさまヒッグスに裏切られる。先程の友情はなかったかのようだった。セリクスの冷たい視線がヒッグスに突き刺さった。ヒッグスはさっと素早くセリクスから顔を背ける。

 

「君か! なんと素晴らしい! 初対面でボウトラックルを懐かせるとは、まさに魔法動物学者になる為に生まれてきたようだ!」

「……」

 

大絶賛する教授と無表情のセリクスとの間の温度差があまりにも酷く、周りの生徒は体を震わせた。温度差で風邪を引きそうである。

 

「どうかね。このまま、わしの助手をしてみる気は? 君が望むなら、卒業後の口利きだって───」

「大変有難いお申し出ですが、私は履修している科目が多く、教授の助手を務める余裕はないかと。それに、将来は魔法生物とは別の分野に進む予定ですので……申し訳ありません」

 

セリクスは、見た目だけはしおらしそうに丁重に断った。ケトルバーン教授としては、この申し出は破格の待遇のつもりだった。まさか断られるとは思いもよらない。一瞬何を言われたのか分からなかったように、教授の"時"が止まった。

 

「なんと……」

 

電撃を受けたように体を震わせる教授。しかしなんとか気を取り直すと、満面の笑顔を取り繕い周囲を見渡した。

 

「んん……ごほん。まぁそれは追々。──みんな、ボウトラックルのスケッチは終わったかね? 次はワラジムシをボウトラックルに与えてみたまえ。あぁ、直接はやめた方がいいじゃろう。このトングを使うがよろしい」

 

教授に目をつけられてしまったセリクスは、ボウトラックルが触れた肩口の余熱を思い出すように視線を落とし──それから、静かに、深く、溜息をついた。

 

それから『魔法生物飼育学』の授業になると、目の色を変えたケトルバーン教授にしつこく絡まれることになるセリクスだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

ベクトル教授と不本意な評価

 

その日の3、4時限目は『数占い学』だった。セリクスは同じ科目を受講したブレッチリーを伴い、『数占い学』の教室へと向かっていた。7Aの教室に辿り着き、扉を開ける。中は広々としていたが、受講する生徒はとても少ないようだった。あるいは、他の選択科目に人気が集中しているせいで、この授業の受講者が少ないだけなのかもしれない。

 

教室の前の方で座っていた、ハッフルパフの男子がパッと振り向いた。

 

「やあ、セリクス! また会ったね」

「セドリック。君、これも取ってたのか」

 

セリクスは不可解そうに眉間に皺を寄せて、セドリックを見下ろした。一体いくつ履修しているのか。あまり無茶をすると単位を落としてしまう可能性もあるが。セドリックは痛いところを突かれたような顔で、誤魔化すように自分の隣の席を指差す。

 

「まあまあ。ここ座る?」

「ゴーント君! 僕たちはあちらに座りましょう!」

 

セドリックはそう言ってくれたが、ハッフルパフが──いや、セドリックのことが──嫌いなブレッチリーが、セリクスのローブを軽く引いてきた。セドリックの横に座っていたローレンス・フェンも、セリクスたちを見て苦々しい顔をしている。全く気が付いていないセドリックの笑顔だけが場違いだった。

 

「セド。ミスター・ゴーントは友達と組むみたい。セドまで行っちゃったら僕1人になっちゃうよ」

「あっ……ローレンス。そしたら4人で座ればよくない?」

「……あんまりよくないかな?」

 

セドリックとフェンが小声で押し問答を繰り広げているのを横目に、セリクスはブレッチリーに引きずられるがまま反対側まで来た。そこにはレイブンクロー生たちが集まっていた。中には顔見知りもいる。

 

「よっ。セリクス」

「ロジャー」

「いいとこに来たじゃん。僕も入れてよ。こいつらと話してると頭が破裂しそう」

「ロジャー、君って僕たちのこと『人の頭を破裂させようとしてる』人間だって思ってたの?」

「マーカス。比喩って知ってる? そういうとこだよ。僕、セリクスたちと座るから」

 

ロジャー・デイビースはうんざりしたようにそう言うと、座っていた席から立ち上がりセリクスたちの方へ歩いてきた。そんなロジャーの背中を、ほんの少し寂しそうに見送る男子生徒。確か、マーカス・ターナーという名だ。セリクスは口を利いたことがない。学年順位は6位と上位の方だが、如何(いかん)せん影が薄い人間なのだ。

 

ターナーの前の席にはレイブンクローの女子が3人座っている。チラッとセリクスたちを見て、ヒソヒソと内緒話をしているようだ。何を話しているかは聞こえないが、特に悪い雰囲気という訳ではなさそうだった。

 

(スリザリンが2人。ハッフルパフも2人。レイブンクローが5人。グリフィンドールは今回もゼロ……いや、2人か)

 

教室の隅の方で、ひっそりとグリフィンドールの女子生徒たちが座っていた。グリフィンドール生にしては珍しく、大人しいタイプなのかもしれない。まぁ『数占い学』を履修する人間なら、迷惑な双子(ウィーズリーズ)のような人物ではないだろう。背中しか見えなかったのでセリクスはすぐに興味を失い、視線を()らせた。

 

ロジャーが何かターナーに一言投げてから、セリクスの立っていた近くの席に座る。無言で見上げられたので、セリクスもそのまま座った。渋々、ブレッチリーも座る。ロジャーはブレッチリーに対して、ニコリと友好的な笑顔を向けた。ブレッチリーはそっと目を逸らして、眼鏡を指先で上げている。

 

「やぁ、ブレッチリー君。今年は『DADA』も『呪文学』もクラスが合同にならなくて残念だね」

「別に残念だとは思ってませんが……。いえ、グリフィンドールと組む方が嫌ですねやっぱり」

「スリザリンってマジでグリフィンドールと仲悪いよね。なんで?」

「知りません。勝手に嫌ってくるだけです」

「……そうかなぁ?」

 

2人は2年生の学期末試験の時、『闇の魔術に対する防衛術』か『呪文学』で合同授業があれば、ペアを組む約束をしている。しかし今年は両方合同にはならなかった。『数占い学』ではペアで何かするか分からないが、今後はこの3人で勉強をすることになるのかもしれない。

 

セリクスは2人の少し温度差のある会話を聞き流しながら教科書を開いた。

 

教室の扉が静かに開いた。入ってきたのは、50歳代ほどの魔女だった。赤く高い三角帽子を被り、細かいウェーブのかかった長い黒髪を背中に流している。笑顔は欠片もなく、眉間の皺はスネイプ教授のように深い。

 

(これで鉤鼻(かぎばな)だったらマグルの童話に出てくる魔女そのものだな)

 

セリクスは内心で微かに笑い、背筋を伸ばした。教授はセプティマ・ベクトルと名乗り、出欠も取らずに杖を振った。一瞬で黒板に文字が流れるように浮かび上がる。

 

「皆さん、まずはこれを頭に叩き込みなさい。『数占い学』は、未来を夢見るための学問ではありません。数字を読む授業です。根拠のない直感を、解答欄に書かないように。いいですね? 数字は曖昧な予感ではなく、傾向と構造を示します」

 

ベクトル教授の声は大きくはないのに、教室の隅々まで染み渡るように響いた。隣からゴクリとブレッチリーの唾を呑む音が聞こえる。教授は更に黒板にマス目を書き、数字とアルファベットを書き込んでいく。数秘術の基礎中の基礎の対応表だ。セリクス以外の生徒が、一斉に羊皮紙にガリガリと書き込んでいく。セリクスは微動だにしなかった。

 

教授は生徒の様子を気にしないタイプらしい。朗々と説明を続けていく。

 

「自分の名前を数字に変換し、合計を1桁まで還元しなさい。ただし、答えだけではなく計算過程を残すこと。同じ名前でも略称・洗礼名・家名を含めるかで結果は変わります。何故変わるのかも考えなさい。さあ、始め」

 

前の方に座っているセドリックの首が、コテンと横に傾いた。理解出来なかったらしい。普段大抵のことは卒なくこなすセドリックにしては珍しい。それとも数字を扱うのは、純血家系で育ったセドリックにはあまり馴染みがないのかもしれない。横のフェンは分かったらしく、甲斐甲斐しくセドリックに小声で説明してやっている。セドリックの頭が小刻みに上下した。

 

セリクスが全く動かないので、ブレッチリーとロジャーが両隣から覗き込んできた。

 

「やらないのかい?」

「分からないんです? ゴーント君なのに?」

「いや、もう解いた」

「……」

「……さすが」

 

2人が引いているのがなんとなく分かった。遺憾(いかん)である。初期の数秘術くらい、とっくに予習済みなだけだ。ムッとしたセリクスは、仕方なく答えと、必要最小限の計算過程だけを簡潔に羊皮紙に書き込んだ。ロジャーとブレッチリーも慌てて計算を始める。

 

(やはり3年生の数占いは簡単すぎるかもしれない。5年生になってから履修しても良かったな……)

 

セリクスが思考を別の方へ向けていると、教授がいつの間にか真ん前に立っていた。気配がなさすぎる。セリクスは見上げたが、教授と目が合わない。教授はセリクスの羊皮紙を読んでいるらしい。(しか)め面のまま、うんうんと満足そうに頷いている。

 

「ミスター……なんだったかな。あぁ、そうそう。ゴーントだね。セブルスの小僧が自慢していたのはお前か。ふむ。秘蔵っ子ってことかい? これを読む限り、セブルスの与太話ってことはなさそうだ」

 

教授は何が面白いのか口の片端を歪に上げた。年は多少召しているが、造形は悪くない目力の強い魔女だ。しかし、癖も強そうだった。セリクスはこうやって教授に絡まれるのも、スネイプ教授に密かに自慢されるのもあまり嬉しくはなかった。

 

教授の言葉を聞き付けたのか、教室中の視線がじわじわとセリクスに集まってくる。居心地悪そうに身動ぎすることしか出来ないセリクスなのだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

授業のチャイムが鳴ると、すぐに慌てた様子でセドリックが出て行ってしまった。それをベクトル教授は不機嫌そうに見送る。置いて行かれた友人のフェンは、驚いたように立ち尽くしていた。セリクスもゆっくりと教室を出た。これから昼食だ。

 

廊下を歩いていると、大広間の近くの廊下にヒッグスとスネイプ教授がいる。何故かヒッグスが教授に向かって、ペコペコと頭を下げていた。セリクスは完全にスルーするつもりで横を通ったが、何故かローブが引っ張られる感触がした。軽く驚いて足を止める。見ると、ヒッグスがセリクスのローブを掴んでいるではないか。これにはその場にいたセリクス、ブレッチリー、スネイプ教授の全員が呆れた顔をした。

 

「……ヒッグス、なんだ。離せ」

「……あ、ごめん。つい……」

「ヒッグス。貴様、いい度胸だな。吾輩との話の時にふざけるとは」

「ひえぇぇ……。すみません。マジでふざけてるつもりはなくて……」

「……何があったんですか」

 

ヒッグスは震え上がってる割には、セリクスのローブを離さない。溺れる者は(わら)をも掴むというが、セリクスのローブは藁だったのか。

 

「……大した話でもない。こやつがいつまで経ってもレポートを提出しないから、催促していただけだ」

「なるほど。ヒッグス、お前が悪い。さっさと出せ」

「分かってる……! 分かってるけど、難しくて書けなくて……!」

 

セリクスにはどこが難しいのか理解出来ない。『縮み薬における小型化作用と年齢退行作用の違いについて』を羊皮紙1巻き分書けばいいだけだ。分量もスネイプ教授にしては短いし、優しい部類な気がするが。結局、セリクスがこの後少し手伝うという話になってしまった。遺憾である。

 

「ミスター・ゴーント。すまないが、この阿呆の面倒を頼む」

「仕方ありませんね。……そういえば教授は、ベクトル教授と仲がよろしいんですか?」

「何? ベクトル教授? ……あぁ、『数占い学』を受講していたのか。……仲が良いというか、彼女は一応私の学生時代の恩師に当たるのだ」

「……なるほど」

 

スネイプ教授は多少老けて見えるが、そういえばまだ30代くらいの若い教授だった。

 

「吾輩は学生時代、『数占い学』と『古代ルーン文字』を取っていた。昔はベクトル教授も今より若くて、男子生徒たちに大人気だった。『数占い学』の受講生も今の3倍はいた。しかし教授はあの性格だろう? 卒業する頃には吾輩と他数名しか残らなかった。そういうことがあって、未だに色々と絡んでくるのだ」

「なるほど」

 

色々と納得出来る話だった。まずスネイプ教授の選択科目がその2つなのには深く納得した。教授の性格からして、曖昧な『占い学』など取らなさそうだし、普段の言動からして純血主義寄りに見えるので『マグル学』も論外だろう。『魔法生物飼育学』は分からないが、教授が魔法生物の面倒を甲斐甲斐しく見るタイプには到底見えなかった。

 

(しかし、10数年前はベクトル教授も綺麗だったのか)

 

確かに今ある皺を取ったらそうなのかもしれない。教授の美醜になどあまり興味もないが、それがモチベーションになる生徒もいるのだろう。セリクスは1つ頷いた後、スネイプ教授をじっと見つめた。

 

「それはそうと、教授。あまり裏で私の話をしないでいただけますか」

「……ベクトル教授から何か聞いたのか。勘違いしないでいただきたいが、別に吾輩が君のことを気に入っているという話ではない。しかし自寮に優秀な生徒がいるとしたら、多少話に出ることもあるだけだ」

「……そうですか」

 

スネイプ教授は早口で言い切ると1つ咳払いをして、大広間の方へ視線をやった。

 

「君たちそろそろ昼食へ行きなさい。食いっぱぐれたら事だ。吾輩ももう行かねば。午後の準備があるのでな」

 

教授が生徒の腹の心配など、今までしたこともないが。そう言うと、教授はさっさと踵を返し去って行ってしまった。少しの沈黙の後、ブレッチリーがポツリと呟いた。

 

「……自慢、してたんですねぇ」

「切実にやめてほしい」

 

何故皆セリクスを放っておいてくれないのだろうか。深く溜息をつくと、ブレッチリーとヒッグスを率いて大広間へと足を向けたのだった。

 

 

 

 

 

 




【あとがき】
セリクスがまたしても不思議な求心力を発揮して、ファンタビでお馴染みのあの植物のような魔法生物に懐かれてしまいます。(作中の子は別個体ですが笑)

ちなみに、ケトルバーン教授とハグリッドの授業なら、皆さんはどちらを受けてみたいですか? 私はどっちも命懸けな気がしますが、消去法でケトルバーン教授かな……。尻尾爆発スクリュートのお世話はしたくない( ̄▽ ̄;)

『数占い学』の授業の話は、pixiv版にはない話です。第3章自体は半年前くらいに書いたんですが、そういえばセリクスは『数占い学』を履修しているのに描写がないと気付き、昨日、急遽書き足しました。

ベクトル教授のキャラが濃くなってしまいましたが、映画版の資料などで見かけるベクトル教授のビジュアルから受けたイメージを、そのまま書いたつもりです。ベクトル教授、どうですかね? 私は結構気に入っちゃいました(笑)

スネイプ教授の選択科目は完全に想像で決めました。『マグル学』だけは取ってなさそうだな〜と。セリクス学年の各キャラクターの選択科目も、ちゃんと決めた方がいいのかな〜?( •́ω•̀)
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