お試し倉庫   作:ケツアゴ

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獅子身中の鬼の王(仮) 11

「おいおい、シャワーを浴びて帰らないのかい? 僕なんて念入りに洗ったっていうのに。嘘だと思うなら嗅いでみると良いさ」

 

 初日の授業は午前中だけ。中には学校から斡旋された任務に出掛ける生徒も居るが、私は真っ直ぐ帰路に着く。

 

 そんな私を呼び止めたのは葵さんだ。任務の際は嗅覚が鋭いターゲットを警戒してかお湯で流すだけが基本だが、彼女も任務には行かないのか微かに石鹸の匂いを漂わせつつ招く様に片手を差し出した。

 

 これだけ露骨に好意を向けてる癖にデートには賭けを口実にしないと誘えないのは理解不能だ。

 

 なので訊いてみたら速攻呆れられた。乙女心がわかっていないと大袈裟に溜め息を吐き出して、口元を隠しながら目を逸らす。

 

『……だって恥ずかしいじゃないか』

 

 普段の言動の方が恥ずかしいのでは? 水着エプロンで登校する人が何を言っているのやら……。

 

「最後に水浴びになりましたし、シャワーより風呂派なので」

 

「へぇ。だったら次に家に来た時は自慢の檜風呂に招待しよう。水着なら水泳の授業と同じだし問題無いさ」

 

「問題しか無いさ。友人の家でそんな事はしませんし、ご両親に姉妹の何方かを押し付けられるの確定じゃないですか」

 

 本当にこれで何を言っているのやら! それとお姉さんが厄介なので断固拒否! 確実に襲われる!

 

「では、私は先に失礼します」

 

「ああ、僕は虎空ちゃんと周辺の店を見て回る約束をしているからね。名残惜しいが寮でまた会おう」

 

 案内、か。実際は護衛も兼ねている。鬼門を開く能力だなんて妖怪側も好戦的な封魔士側も欲する物だ。

 

 故に護衛として誰かが共に行動するが、丑宮さんが女性で助かった。これで彼女が彼でサポート役が全員女性だった場合はハーレム物のラノベになっていた。 

 

 全員男だった場合も互いに気を使うだろうし、そもそも生理用品とか女性用下着を買える店に案内するのは抵抗がある。

 

 その事に安堵して寮に向けて歩き出せば私以外にも幾人かが用事が無いのか寮へと向かっていた。

 

「あの人が坂田家の……」

 

「既に幾つかの家が狙っているって噂の.…」

 

 新入生らしき見知らぬ顔も幾つか。聞こえていないと思っているのか私に関するヒソヒソ話が聞こえて来る。

 

 興味打算奇異嫉妬、幾つかの感情が入り混じった視線を向けられるも今更だ。

 

 伝承に残る大物の子孫であり、十年程前に壊滅した一属の生き残り。女性が強い界隈で上位に食い込む私が後ろ盾が無く、秘術や関連する道具等の遺産を持っていては狙わない道理は無いという物。

 

 それなりに異性からの人気がある私だが、その背景にはその様な物があった。

 

 尤も仮に手を出しても子供は出来ない。変な事になったら困るだろうと大婆様が呪いを掛けて二十歳まで種無しだ。

 

「授業での昂りが収まらない。あれは不完全燃焼が過ぎますよ」

 

 体の奥底に熱が残っている感覚。封魔士として、それ以上に人外の血が昂りを抑え込むのを拒絶する。

 

 破壊か逃走か、暴虐を尽くせと訴え掛けるも本能に従い暴れるのは雑魚の選択。

 私は違う。だから発散させる選択肢をちゃんと用意していた。

 

 少し急足で自室へと戻り、もどかしさを感じながら鍵穴に鍵を突き入れて回す。

 靴を脱ぎ捨て扉の鍵を閉めれば準備は完了だ。

 

「琴音、何処に居ますか?」

 

 声を掛けるも返事は無く、都合が良いのはシャワーでも浴びている事だがそれも無し。

 テレビの音も聞こえない。

 

「まさか……」

 

 ジャージのチャックを下げながら寝室に向かえば琴音は仰向けになって寝息を立てていた。

 朝と同じ格好、まさか起きる事無く昼過ぎまで爆睡を?

 

 一応出掛ける際には尻尾で返事をしたのに……。

 

 眼帯は付けたままだが髪型は崩れ、寝巻きの上着のボタンは昨夜左右に引っ張った際に外れて飛んで行ったままで、下は足に引っ掛かった状態。

 

 あっ、ブラジャーが床に放り出されたままだ。

 

 昨夜、私は彼女を散々貪った。犯し貪り全てを奪い尽くす勢いで、琴音は自分の所有物だと刻み込ませる様に。

 

 少しばかり乱暴だった気もするけれど、向こうも私を求めて腕を首に絡ませ腰を動かしていたので興奮して深夜まで営みは続いた。

 

 まあ、これが呪いの理由だ。私が飽きれば即座に処分する予定の名前も忘れた玩具が私の子を宿す事で変に絆されては興醒めなのだろう。

 

 かつて猫可愛がりしていた自分がそうであったのと同じで、私が興味を失った時に琴音が面白い表情を見せれば良く、そうで無いならどうでも良し。

 

 全ては大婆様の気紛れ次第。勿論私の命運もだ。それが幼少期からの当たり前だったので今更理不尽だとも思わないけれど……。

 

 脇から手を差し込んで琴音を抱き寄せ、ベッドの上で抱き締めながら向かい合って座る格好になる。

 それでも起きないのは図太いのか昨夜どれだけ懇願されても抱き続けたからか。

 

 汗の匂いが鼻腔を刺激して本能を刺激する。既に据え膳も同然、このまま初めて叩き起こしても良い反応をしそうではあるが気分では無い。

 

『ほら、起きなさい』

 

 なので尻尾の付け根を強く握り狐耳に強く息を吹きかける。

 

「みぎゃ!?」

 

 此処が弱点だと一目で分かる反応で大きく体を跳ねさせた琴音を抱き締める力を強めるも未だ寝惚けているのか状況を飲み込めない様子で私の顔を見上げていた。

 

「へ? あれ? おい、学校に行ったんじゃなかったのか!?」

 

「行きましたよ、学校には。随分とお寝坊さんですね」

 

「……誰かさんが全然寝かせてくれなかったからだろうが。昨日散々好き勝手にした癖に昼間っから盛りやがって。付き合う私の身にもなってみろってんだ」

 

 背中を強く抓りながら私の胸に顔を押し付ける。この間も尻尾は握ったままなので力の強弱や手首の向きを変えれば押し殺した声が響いてきて興奮する。

 

 

「え? じゃあ今回はそっちが動いて下さい」

 

「そういう意味じゃねえけれどな!? あー、はいはい。分かった分かった。このドスケベ野郎がよ」

 

 抱き付いたまま背中を強く叩いた後、琴音が唇を重ねながら器用に私の服を脱がして行く。

 簡単に脱げるのもジャージの良い所。

 

 ……有名デザイナー監修の限定生産品の抽選販売がもう直ぐ始まるが。どうにか手に入れたい。

 

「テメェ、私に抱かれてる時に余計な事を考えてるんじゃねえよ、馬鹿が」

 

「おっと、怖い怖い。勘弁して下さいね」

 

 怒りを受け流しつつ成されるがままに受け入れて行く。再び重ねた唇の隙間から侵入した舌が口の中を舐め回すのも、マーキングの様に体を擦り付けるのもだ。

 

「忘れるな。私はお前の物だからな。身も心も全部くれてやってんだからちっとは感謝しやがれ」

 

 返事代わりに抱き締める力を強めれば嬉しそうな声が漏れる。……此処から蹂躙に変えたらどんな反応をするのだろう。きっと可愛いに決まっているが……。

 

 三回戦目辺りで強引に押し倒すとしよう。琴音が一番上がる頃合いだし、だからこそ反応が見てみたい。

 

 

「なあ、私にお願いする事があるんじゃねえの? ちゃんと口に出して言ってみろよ。前回はシスターだったよな。今回はどんな衣装とシチュエーションが良いんだ?」

 

 背中に回された腕の力が強まり締め付けが強くなる。中身を絞り出そうとする勢いで体を上下させる中、差し出された選択に言葉が詰まった。

 

 

 

 そう、狐と楽しむなら……コスプレこそが醍醐味!!

 

 

 衣装も周囲の光景も幻術の応用で自由自在! 琴音は狐族の常套手段だからと嫌ってはいても私の頼みなら聞いてくれない事も無い。

 

 どうせ攻めさせるのなら色々と楽しみたいと迷う中、突如インターホンが鳴った。

 

 

 

 

 

「おーい。龍ちゃん帰ってんだろ〜? お土産持って来たぜー」

 

 叔父さんか。……空気読め!

 

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