足柄山の金太郎、後の坂田金時には配下がいた。跨って馬の稽古に使っていたという熊のモデルになった武将。
やがて金時に金平という息子が生まれ、成人したその子が行方を眩まし、父が病で亡くなった後に子と共に姿を見せるなり源一族から袂を分ってもその関係は続く。
例えその子の母親が大鬼であったと分かっていても、平安時代から千年もの月日が経ったとしても坂田一族を補佐する為の存在として在り続けた。
保育が
緊急! 唯一生き残った身内である甥っ子がお盛んだった件について。
そんなスレタイトルが頭に浮かぶ程度にはナニの真っ最中だったかが伝わって来る室内、玄関口にて龍洞は熊成を出迎えるも少しばかり気不味さを覚えていた。
独特の臭いに乱れた髪や服、更に首筋には真新しい噛み跡やキスマークと今の今までナニが行われていたか大人である熊成は察し、時計を見て帰ったばかりでおっ始めたのかと思う。
「いやー、若者は元気で宜しい! 俺、家飛び出して自衛官になったじゃん。風俗なんて行く機会殆どねえしムラムラしても右手で発散させるしかなかったのよ」
ゲラゲラ笑いながら熊成はスマホの画面を差し出す。表示されていたのは風俗店のキャスト紹介ページ。
お気に入り登録者限定で見れる写真付きの日記にはグラマラスな半裸な嬢の姿があった。
「この子が今のお気に入り。他の店舗に出向する時は新幹線使ってでも会いに行って金欠なのよ。だから、うん……ムスコ没収されたのは金貯める機会だわ」
「あー、変化や幻覚も雄の匂いでバレるから潜入任務の際には……」
「ぶっちゃけコブ取り爺さん方式で持って行かれたし、返却時に金◯二人分貰って精力倍とかならねえかな?」
「それって鬼の不況を買った場合じゃないですか?」
「お、おう。確かに。回数無限の店で長時間遊ぶならギンギンの方が良いって思ったが無理があったか。あっ、これお土産の『◯◯から帰ったぜ』シリーズ三種。伊勢と丹波と筑前ね」
「パッケージ以外は同じじゃないですか。……まあ、友人を招いた時の茶菓子が切れていたので助かりましたけれど」
紙袋から出したお菓子の箱の表面を指先でなぞれば爪で引っ掻いた様な凹みが僅かだが存在している。
それは包装を破けば分からなくなってしまう程度。
龍洞は熊成の前で遠慮する間柄でもないと目の前で包装紙を雑に破いて中身をせんべいの空き缶に入れた。
「お茶でも出しますか? お菓子もある事ですし」
「いやいや、この後はキャバクラ行く予定でさ。金さえあればモテモテなのよ。……生活切り詰めれば金有るし」
それは金があるとは言えないのでは? その様な疑問が浮かんだがグッと飲み込む。
熊成の実家と坂田家の繋がりは強く、母方の生家でもある。なので彼が少年時代からチャランポランなのは分かっているので言っても無駄だと思っているからだ。
言うべきなのは一つ……。
「気を付けて下さいよ。叛意有るの伝わってるんですから」
それ程心配してない様子、精々飲み過ぎなのを嗜める程度の口調に熊成はヘラヘラと笑みを浮かべながら返答するも目は笑っていなかった。
「有ろうと無かろうと総大将の気紛れ次第じゃん,ウチの陣営。坂田家が滅びたのも、坂田家の家臣だった俺の実家も家を抜けていた俺以外叛乱の末に滅びたのも」
「大婆様って全く分からない様で地雷は分かっていますからね。猫可愛がりして将来私の嫁にする気だった琴音への態度の落差を見れば分かりますよ」
「……マジで怖いよね。死んだ姉ちゃんや妹の敵討ちより自分や龍ちゃんの命優先だわ」
その言葉はどこか諦めが混じりの達観した物で、苦笑いと共に両手を広げて肩を縮めて見せる。
ただ、最後の一言を言う際にはふざけた態度は一切消えさり真剣なものになっていた。
まるで、分かっているだろうが注意しろ、と忠告する様にだ。
「奪い、壊し、暴れ、殺し、犯し、そして喰らう。知性を持ちながら衝動に従い生きる災禍、鬼とはその様な存在ですよ? 人の理で考える方がどうかしている。家から離れていて助かったのに鬼の傘下に入るとか無茶が過ぎません?」
「龍ちゃんも鬼に染まっちゃったねえ……。其処はあれだ。オッサンには貫くべき意地ってもんがあるのよ。じゃあ、今度こそ帰るわ」
忠告も徒労で終わって凄く疲れた様子で熊成はドアノブに手を伸ばし、開いた直後に動きを止めて振り返って。
「総大将に顔見せに行く時だけどさ、前日に玉の中を空にして行かない様にね? 幹部のお姉様方が久々に龍ちゃんを抱きたいって言ってたからさ」
「……叔父さんが代わってくれません? 薬使われて搾られるのキツいので」
「代われるなら是非ともお願いしたいけれど!? ボインでセクシーなお姉様方よ!? 何人も食ってるから絶対テクニシャンだしさ!」
「バイオレンスを加えて下さい。あの方達のせいで巨乳が苦手になったんですから。デカ尻はギリ許容内」
「俺はM気質だからバッチ来いなんだけれどね!」
血の涙を流しそうな勢いの熊成に圧倒されて何も言えない中、彼は悔し泣きをしながら廊下を走り去って行く。
廊下の向こうから階段を踏み外して盛大に転ぶ音と悲鳴が聞こえたものの知らん振りして扉を閉めて鍵を掛ければ寝室から琴音が顔を覗かせた。
「終わったか? ならゲームでもしようぜ。格ゲーな、格ゲー」
「え? 続きは?」
「邪魔が入って熱が冷めちまったよ。夜に好き放題にするんだから別に良いだろ?」
渋る龍洞の横を通り過ぎながらゲームの準備をする琴音は服が乱れたまま……既に下着が足首に引っ掛かった状態で他は何も着けていない.。
向けられた小さく引き締まったお尻の側で金毛の尻尾が左右に揺れて手招きでもしている様だ。
解けた髪が汗ばんだ身体に張り付いていて、チラ見しながら伸ばした手は軽く叩き落とされる。
「もうゲームの気分になっているんだ。襲ったら当分は衣装無しな」
そのままうつ伏せに寝転んだ状態で手にしたのはアーケードゲームと同じタイプのコントローラー、通称アケコン。しかもレバーレスタイプのボタンだけ。
使い込まれた様子のそれを自分側にセットし、普通のコントローラーを2P側に差し込もうとするも龍洞がアケコンを抜いて2P側と入れ替えた。
「2Pだとコマンドが逆じゃないですか。私は1P側が良い」
「私だって左右逆に慣れてねぇんだ。早いもん勝ちだよ、馬ー鹿」
「まあ、どっちにしろ私が勝つけれど」
「はぁー? 私の方が勝率高いだろ。何ならお前が勝ったら衣装もシチュエーションも拒否権無しにしてやんよ。その代わり、こっちが勝ったら今晩は私が攻めな。テメーは動くな」
「じゃあ花嫁衣装で。白無垢とウェディングドレス両方ヤりましょう!」
「迷い無しかよ!? ったく、これだから封魔士は。寝るか食うかヤるかのどれかに傾きやがってよ」
ぶつくさ呟きながらキャラセレクトを終えると直ぐに第一ラウンドが開始される。龍洞が選んだのは白髪のカンフーマスター、琴音は軍服の男を選択し先ずは小手調べの弱パンチキャンセルからの飛び膝蹴り。
「あっ、学園からの連絡が来たので少し待って下さい。えっと、恒例の新入生とのレクリエーション代わりの任務について。成る程、面倒な」
去年自分と組んだ高峰家の長女、つまり葵の姉について思い出しながら読み進めれば虎空の事もあって彼女を含む三名を二年生二名で受け持つとのこと。
当然、連絡が来た龍洞は二人の内の一人だ。
優等生らしく過ごしている身からすればそこそこの実力者にそれなりに自信を与えて終わりにしたかったので億劫に感じながら了承の返事を返す。
「流石に葵さんと組むのは避けられるでしょうけれど、言動的に。さてと、一体誰に……」
『パーフェクト!』
誰と組んでどんな一年生達の面倒を見るのやらと意識が逸れている内にカンフーマスター、は軍人の超必殺技を受けてダウンした。
「いえーい! 私の圧勝!」
「いや、セコ!? ……勝負は勝負だけれども」