カーテンやクッションのカバー等、全体的にピンクの割合が多い内装の室内。
ぬいぐるみや可愛らしい雑貨が多く、ほんのりと甘い香りも漂う女の子らしい部屋の中、私は渡辺君と向かい合って座っていた。
「成る程。渡辺君の家は……」
「そうそう。酒呑童子を討ち取った頼光四天王の一角の子孫なんだ。坂田せんぱいとはお揃いだね」
ドア一枚隔てた寝室では丑宮さんが一糸纏わぬ姿になり、黒八木さんと雪山さんが全身を隈無く調べている頃だろう。
淫魔若しくは夢魔の類いがターゲットの夢に入り込む際に付ける印。場所と模様と数によって相手の強さや干渉する方法が変わって来るらしく、当然ながら野郎二人は閉め出されて暇潰しにお話中。
頼光四天王か。大婆様の死んだ振りにまんまと引っ掛かった連中だが、茨城童子さんは渡辺綱に腕を切られた事を今でも根に持っていると他の幹部が笑い話にしていた。
「それにしても……凄かった。大人の女性ってあんな感じなんだ」
何に対してのコメントなのか聞き出す必要は無い。エロ触手に好き放題されていた店長についてなのは明白で、どうやら刺激が強過ぎたらしい。
これでトランスジェンダーの上でレズでもなければ基本的に男扱いで良さそうなのは一安心。
マーキングの隙を作る為に通気口を通して媚薬効果のある匂いを流す術を使われた後遺症もあってか渡辺君は一旦トイレに向かった。
事態が事態なので触手プレイを中断された店長が意味深な笑みを向けていたのでナニが目的でトイレに行ったのかは明らかで、黒八木さんと私は知らない振りで通したのだが、残り二人は何も気が付いていなかったらしい。
「丑宮さんが気になりますか? ああ、胸もお尻も立派ですし、君の視線の高さだと会話の距離になった際に……」
丑宮さんも背が大きい方ではないものの渡辺君は女子だったとしても小柄な部類。真正面から彼女を見ていたら何処を見ていたのか試しに口に出せばビンゴ。
バッと起き上がって顔が真っ赤。其処には余裕は欠片も存在しない。在り方は特殊でも矢張り年頃の男、本能は変わらない。
「なんの事かなー? ボク、まだお子様だから分かんなーい」
「そうですか。どうせなので猥談でもして親交を深めるかと思ったのですが。因みに私は引き締まった小尻と細長い美脚が性壁です」
「……おっぱいは大きい方が好きかな」
是清君がデカい尻が好きな様に渡辺君とも趣味は合わないな。胸は手で包める程度が良い。全くの平らではなく膨らみはあるが微妙な大きさなのが一番だ。
ただ、性癖を暴露しあったので渡辺君……いえ、あやせ君とは少し仲良くなれた気がした。
「所で龍洞せんぱいと黒八木先輩だけサキュパスの術の効き目が軽かったけれど、もしかして既に?」
「……逆レを経験に数えて良いのなら」
「この度は無遠慮に軽質な質問をしてしまい大変不愉快な思いをさせてしまった事を深く反省しております。誠に申し訳ございませんでした」
その相手が爆乳の美女だと言ったらどうなるのだろうか? キャラも忘れ深々と首を垂れて這い蹲るあやせ君の姿を眺めながら思った。
実の叔父でさえ血の涙を流しそうな勢いで悔しがりつつ心配する事態だし、猥談をしただけの彼の反応が少しだけ気になった時、 寝室に続く扉が勢い良く開いた事で私達は何事も無かったかの様に姿勢を正して視線を向ける。
「はへ?」
視線の先ではショーツを穿いた丑宮さんがブラのホックを付けようとするも胸がキツいのか苦戦している所だった。
『ドッキリ大成功!』
「レオ!?」
ドアノブに絡み付くヌラヌラした触手。つまりレオナルドがやらかしたのだが、私とあやせ君は三秒程の硬直の後に視線を外し、耳を塞ぐ。
「ひゃわわわわわわわわわっ!?」
これ、覗きをした扱いになりませんよね? あやせ君など刺激が強かったのか悲鳴が収まるなり鼻を手で塞いでいるし、本当にエロ触手はロクな事をしない……。
どうせなら黒八木さんの方が見たかった。
「ふーん。それでどうだったんだよ?」
「印からして未熟な個体で、店長から貰った資料通り。世の中を知らず人間社会に適合するのを嫌ったバイセクシャル。ただ……印自体はお粗末。力ばかり大きい未熟者との事ですが」
一旦解散して夕食前、先ずは汗を流そうかと入浴していた。大柄な私でも足を伸ばせるサイズの浴槽ではあるののの、今は足の間に収まった琴音が胸に頭を預け寄りかかっている。
向かい合わせに入るのも良いが、密着した状態で何処でも触り放題なのも素晴らしい。任務内容について話をしている今も右手で尻を、左手で足をなで回している最中だ。
ある程度の話が終われば髪に顔を押し付けて吸う。微妙に獣臭いのも癖になり、狐耳をハムハムしても抵抗されず好き放題成すがまま。
そのまま腰を抱いて持ち上げようとした所で初めて抵抗され、腕を軽くカプリと噛まれる。血は滲まず少しの間だけ歯形が残る程度の力。
「……もう少し温まってからな」
「今日はちょっと刺激が強かったので早めにお願いします」
「戻って来るなり床に押し倒されて四発はされたよな!? ちったぁ我慢しろよ、
馬鹿!」
そう言われてもムラムラしている時に半裸で寝ぼけている姿が魅力的だったのだから仕方が無い。少し触っただけで準備が整ったので起こさずに始めたのが気に入らなかったのか抗議と共に胸部に頭突きを受けるものの、この会話の最中でさえ我慢の限界が近付いているのだ。
「マーキングをする時に使った術ですが、僅かに臭ったんですよ、鬼の血の匂いが。其に少し当てられて……」
「成る程な。妙な話だと思ったらそういう事かよ。……しゃーねえ。好きにされてやるが、ちょいと趣向を変えようぜ。あらよっと」
掛け声と共に両側の髪の付け根から両手の指を滑り込まして動かせば狐の耳が消え、金の髪は黒く染まり背も若干伸びる。
くるりと方向転換をして私と迎え合えば琴音の肉体は黒八木さんへと変わっていた。
上半身だけ湯から出せば長い髪が胸に張り付いて先端を隠し、下腹部に視線を向ければ整っている。先程までは完全に剃っていたのに。
遠慮しなくて良いのでジロジロ見れば漏れる笑い声も今の姿の物だ。表情も本人のままで、狐が人を化かすにしてはお粗末。
それもその筈。ちゃんと同族に習ってはいない。それより前に人質として差し出されたのだから。
「下とか内部は適当に変えたけれど、こういうのも悪くないだろ? 背徳感とか堪らねえもんな。まあ、私としてはコスプレの範疇だし、最後の瞬間だけは他の姿に譲らねえが……」
今回の様に誰かに化けるのは偶にある。グラドルだったり海外の何かは言わないが女優だったり、少し知り合っただけの相手だったり。
コスプレ衣装は序の口、正に狐の七化け。化け術を使う妖怪は多いものの狐狸は一線を博す
まさに化ける相手を抱く際の醍醐味。人としての姿は本人の者らしいが、髪型や化粧を変える感覚で全くの別人にもなる。
琴音の場合は最後に口にした通りの拘りがあるけれども。
それはそうと直ぐに化けの皮が剥がれて本性が出るので背徳感は秒で消えるのだけれども。口調の真似までは無理な様だが気にしない。どうせキスで唇を塞げば喋る余裕を失くすのが琴音なのだ、凄く可愛い。
結局の所、琴音は琴音。其処に変化を加えれば刺激があって凄く良い。此れだから据え膳だろうと他に手を出す気が起きない。
「小さな頃は普通に結婚すると思ってたんですけれどね。どうしてこうなったのやら」
「そりゃ化狐一派が同盟反故にしたからだろ。自分の子孫すら気紛れで潰す総大将が怖くなったって所だろうけれどよ」
寄り掛かる体を強く抱き締めながらしみじみ思う。私の所有物という立場でのみ生存を許された琴音を恋人や妻として扱えはしない。
だから時折強引に抱く必要があり、あくまで飽きてないから側に置いていると言い続けなければならない。
もし一言でも飽きたり嫌ったり、愛していると口にすれば殺されるだろう。
そして私が殺された場合、勿論彼女も殺されるだろう。凄惨に残酷に、鬼らしく最後の瞬間まで弄びながら。
ゲラゲラ笑い、酒宴の余興として。
だから私は殺される訳にはいかないのだ。私が殺されるのは鬼に関わって生まれたから仕方が無い。道で転んで頭を打ったり災害に巻き込まれるのと同じだ。
「まあ、この先ずっと所有物として手元に置くので変わらない気もしますけれど」
「だろ? ぶっ壊れない程度に好きに使えよ。私はそれで構わねえからさ」
私の人生は琴音を守る為の物であり、別にそれで構わない。
……それはそうとエロ本やらは買うけれど。それはそれ、これはこれ。
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