お試し倉庫   作:ケツアゴ

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獅子身中の鬼の王(仮) 24

ええい! 離さぬか、馬鹿者がっ!!

 

そこをどうにかお願いします!

 

 廊下で私が引きずられながら腰にしがみついているのは小豆色の振り袖に黒髪のおかっぱ頭、年の頃は十も行くかどうかで年相応の丸みを帯びた肉付きで肌は雪の様に白い。

 

 

 クリクリの大きな瞳をつり上げ、幼い声で不愉快そうに罵り声を上げて荒い足運びでドタドタと音を立てていた。

 

 同時になるのは車輪が床の上を転がり、時折跳ねる音。幼く小柄な見た目に似付かわしくない朱塗りの太刀の鞘の先端に取り付けられた物が鳴っているのだ。

 

 時々体を捻れば腰にしがみ付く私を太刀が激しく叩いて思わず手を離しそうになるも私にだって譲れない物があるからこその現状。でなければいい歳をした男が見た目は幼い少女の腰にしがみついたりするものか。

 

 やがて荒々しい足が止まり、腰に掴まったままの私に向けての怒鳴り声が響く。

 

「ジャージの限定デザインが欲しいから抽選販売に受かる幸運をくれとかふざけてんのか! あんなボンッキュッボンな姉ちゃん二人と散々NNした後でどうせ二人の部下も御相伴に預かるとかで乱行おっぱじめるんじゃろう!? 羨ま死ね!!

 

「師匠、あれって大変なんですよ? ヘロヘロの状態で複数の体が絡み付いて絶え間無く全身を刺激して来るんですから」

 

 立場を利用した強制猥褻の後に集団強姦、被害者は私。幾ら美女ばかりでも辛い物は辛い。

 

羨ま死ね!羨ま死ね!!

 

 尚、性別は男だし中身はエロ親父、趣味は風呂覗きな彼は私の……正確には坂田一族の剣術の師匠でもある。

 

 私はずっと【子泣き爺】とかの仲間かと思っていたが、親戚の子だと【座敷童】を紹介して来て種族が発覚した。

 

 

「儂だって古株で幹部なのに何故誘われん!?」

 

「私の場合は英雄と鬼の気が混ざり合って房中術的に気持ち良いだけらしいですよ? 師匠はほら……座敷童じゃないですか」

 

誰が背丈も股間も子供サイズだ!

 

「言ってませんし事実じゃないですか!?」

 

 ……実は似た事は言われているのを黙っておこう。宴の余興での裸踊りで見たけれど、アレでは生娘に使っても幕が張ったまま、そんな言葉を教えるなんで出来やしない。

 

「……其処迄叫ぶ割には地位を使って下の者に迫りませんよね。雪羅さんなんか少年少女を食いまくっていますのに……二つの意味で」

 

 人を娯楽で食う鬼の巣窟でそれなりの立場に

 

「無理矢理だと役に勃たんでな。レイプ物のエロでもヌけんし。なので自分でやるしかないが、力使うと尿の切れの悪さも加わった状態が暫く続くんじゃよ。……絶対漏らすなよ。ズボンを上げた後の儂みたいに……」

 

「外道丸様ー! 外道丸様はいっらしゃいますかー!」

 

「あの声は爆乳新米女中のお千歌ちゃん! おーい! 儂は此処だぞー! いや、こっちから向かわん方が良いか? 儂を見つけて急いで駆ければあの胸がブルンブルンと大暴れ。だが転んだ振りで胸にダイブするのも……」

 

 

 嫉妬と溜まった肉欲と悩みで曇っていた顔は聞こえて来た女中らしい声を聞くなり一瞬で顔が緩む。

 

 あれは葵さんを前にした是清君と同じ、もしくは混浴露天風呂で若い美女が現れるのを妄想しながら待ち望むエロ親父。

 

 盛りのついた雄犬の同類となった師の姿は見知っていても辛い物があるのだ。

 あの人、未だ此処に来たばかりで弱かった私を守ったりもしてくれたのですが、本当に女の人が絡むと……。

 

「あれさえ無ければ……」

 

 呆れとお願いが通らない事への諦めが入り混じる中。気もそぞろになった事によって……いや,意識しても私程度では気が付かなかった可能性が高い。

 

 師匠の消えた方向を見ていた私の背後から両手が胴体に回され、その存在に気が付いた時には腕を絡み付かせる様に抱き締められていた。

 

 

「わっ!」

 

「ガフッ!?」

 

 驚かせる為の声と共に胴体に腕が巻き付けられた瞬間には衝撃に耐えかねて吐血。肋骨は折れて筋肉は断裂、内臓も霊力での強化が間に合ったので破裂こそ免れたが損傷は深刻。

 

 前のめりに倒れなかったのは何とか踏み止まった事とそもそもの原因である腕に支えられていたからに過ぎない。

 不意打ちで重傷を負った私だが、犯人に反撃はしない。したくても出来ない。

 

「うーん、もう少し鍛えないと駄目ですよ? もっと頑張りましょう…です。そんな事よりもお帰りなさい、龍洞ちゃん」

 

「大婆様、帰って来ました」

 

 此処は鬼の居城、だからか私の中の鬼が強くなるので重症ですら治療に、それほど時間も手間もかからない。

 

 術をパパッと使えば致命傷にかろうじて届かない程度の怪我は治り、久々に孫の顔を見て喜んでいる祖母の様な笑顔を浮かべる大婆様に軽く会釈をすれば気づかない内に手を繋がれていた。

 

「積もる話も有りますし、茨城達への伽の時間まで明日のんびりお喋りでもしましょうか。その後はきっちりとお役目を果たしなさい。どうせなら纏めて屈服させる勢いで」

 

「無理じゃないですか?」

 

「こーら! 無理とか簡単に口に出さない。私と近時の血が歴代の誰よりも強く現れているのですし、鬼の王を目指す位はしてもらわないと。今のままじゃ(仮)が付きますよ?」

 

 目指していないので別に良いです、と言えたらどれほど良いか。ただでさえ鬼らしくも英雄らしくもない立ち振る舞いで反感を買っているのだから、そんなのが鬼の王を目指すとかどれだけ面倒になるのやら。

 

 無理と言った事を叱る際に軽く握った拳でふんわりと叩かれた額が少し割れて流血するのを感じながら言葉を飲み込むのだが、どうせならものついでに聞いておくのも良いだろう。

 

「そういえば大変不評な優等生としての振る舞いってどの様な理由で決めたのですか?」

 

「身内から反感持たれて襲われたら楽しい修行になるだろうし、本質的に向いていない振る舞いでボロを出す姿が面白そうだと何となく思い付いたのでノリで。変更は駄目ですよ。考え直すの億劫なので」

 

 億劫と言いつつも面白そうだと思ったら即座に変更を命じてくるのだろうな、そんな風に考えている内に大婆様の部屋へと到着した。

 

 朱塗りの扉を開けば中はそれ程広くはない。八畳程の和室に少し棚があり、床の間に掛け軸が飾られているだけ。

 

 但し左右に幾つも存在する扉の先は別物。反対側が辛うじて見える広さの部屋が広がり、端まで並べられた棚には大婆様が気に入った宝を収集物として飾ってある。

 

 この辺の収集癖は私も持っているし血筋だと思う。……呪いの品があれば貰いたいがどうにかならないだろうかな。

 

 

 

「そうそう、そろそろあの狐の玩具を捨てますか?」

 

「あれはお気に入りの物で使い勝手が良いので捨てませんよ」

 

「そうですか。代用品は幾らもあるので飽きたら取り替えてあげますね。可愛い龍洞ちゃんだけ特別です」

 

 此処で思わず肯定を口にしたら即座に琴音を殺すのだろうという確信の中、大婆様は棚を漁って金色の何かを取り出す。

 それは一見すればお椀の様だが……。

 

 

「最近思い付いて作ってみた金箔塗りの髑髏椀です。これ、わ

分かります? 龍洞ちゃんの両親のものを使ってみたんです。私達用のお揃いの品ですよ」

 

 今お茶とお菓子を用意しますね、とニコニコしながら差し出して来た。

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