お試し倉庫   作:ケツアゴ

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33歳独身女騎士隊長って知ってる? たまたま電子書籍のサイトで見かけて、pixivで絵とかもあったから買ってみたら面白かった。

多分金貨1枚が100,000あたりのイメージ


封魔の鍛治師 2

 ヒガンとエトンが住むルイーズ王国より東の彼方、海を超えた先の大陸の山中、山頂の湖から流れる川を水源とする小さな村があった。

 

 主な産業は農業。傾斜の緩い山肌に畑を作り、豊かではないが飢えに苦しむ事も無いその村で育ったニコラ。

 村の子供が集まって村長から聞かされる御伽噺の王子様との出会いに憧れた時もあったが、現実ではそんな事は有り得ないと諦めている。

 

「すまない。道を教えてはくれないか?」

 

「顔が良い!」

 

 そんな彼女が出会ったのは旅の剣士。思わず叫ぶ程度には顔が良かった。

 

 輝く銀の髪を腰まで伸ばした長身の美男子で、細身に見えるも腕や胸を見ればしっかりと筋肉が存在する。

 

 気が付けば返事もせずに顔に見惚れてしまっていたニコラは我に返ると一旦村まで案内する事にした。

 

 その道中、突如起きた激しい地震にニコラは足を取られそうになるが男がいつの間にか彼女の肩に手を当てて支えてくれている。

 もう頭の中が限界になる中、大きな事件が起きていた。

 

「川が……」

 

 先程の地震で発生した落石によって川が塞がれ、特に大きい石は村の者達が共に縄で引いても微動だにせぬであろう程の大きさ。

 

 水を汲める場所まで行くには道が悪く危険が多い。村人達が悲観に暮れる中、何を思ったか旅の男が一人で近付き、涼しい顔で石を持ち上げると軽々と放り捨てた。

 

「これで残るのはそれ程の大きさでもない石だけだ。後は任せ……待つのも暇だから壊すか」

 

 村人達が正気に戻るよりも前に自己完結した男は背中の大剣を振り上げる。

 それはあまりにも巨大で分厚く、岩盤を削り出して剣の形に整えた様な物。

 

 それが振り落とされた瞬間、川を塞ぐ残った石が吹き飛んだ。

 

 堰き止める物が無くなった事で水が流れ出す中、正面から水を浴びた男はずぶ濡れの状態で川から這い上がるなり呟いた。

 

「……服を乾かせる場所を貸してくれ」

 

 

 翌日、引き止められるも旅を続ける事を選んだ男……アーロンの道案内をする事なったニコラは別れを惜しみながら最後にこう訊ねた。

 

「アーロンさんは何故村を救ってくれたのですか?」

 

「お前の為だ」

 

 その言葉にニコラが固まる中、道案内をしてくれるらしい相手が困っていたので義理で助けた事を伝えたアーロンは去って行く。

 

 弟達が知れば頭を抱えたくなる恋の犠牲者を増やしながら。

 

 何を考えてこの様な言い方をした? 何も考えずに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この疲労回復効果のアミュレットなんてどう? 疲れは美容の大敵。お姉さん美人だから使って欲しいな」

 

「お兄さん強いでしょ! この剣、頑張って魔法を込めたんだ。お兄さんみたいな人の役に立って欲しいな」

 

「うん。この盾はきっと君を守ってくれる。遠くからそれを願っているよ」

 

 以上、上から真面目そうなエルフの女、人の良さそうな冒険者の兄ちゃん、訳有りらしい十代前半の少女冒険者への弟が向けた営業トークだ。

 

 

 この日、街まで商売に来た結果がこれだ。普段通りの客層の場合は半ズボンで生足見せて冒険者の姉ちゃん方を引っ掛けるが、今はモンスターの移動に合わせて遠くから人が集まる時期だ。

 

 魔法使い風のローブという中性的な服装の上に相手に合わせて声色を変えてやがる。

 

 純真な少年や媚びた感じの少女風。そうかと思いきや必死に生きる子供の声になり、同じ年頃の女の子相手には真剣な口調で手まで握る。

 

 売れる売れる、飛ぶ様に売れる。まあ、品は良い。俺が打った物以外に売っているアミュレットだって着けて休めば半日で三日ゆっくり湯治した程度の疲労効果があるんだ。

 

 値段は銀貨十枚。銀貨百枚で金貨一枚なのを考えれば安く見えるが、日雇いの肉体労働者が朝早くから日が暮れて少し位まで働いた時の給料が銀貨十五枚程度なのを考えればわりかし高価だが、他が金貨数十なのを考えたら安く見えるらしい。

 

 それに野営だのでボロボロになった肉体には嬉しいんだろう、効果が切れる頃にまた買いに来る客だっている。

 

 俺は売らないのかって? 愛想笑いも値段交渉の駆け引きも出来ず、婆さんと比べてしまって自信に欠ける俺は戦力外だとよ。

 

 当然、周辺の商人や露店に関わる役人に話は通していても子供がやってりゃ問題だって起きる。

 

 

「これが金貨十五枚だぁ? 高ぇ。一枚で十分……」

 

「はいはい。ちょーっと来て貰うよ、お兄さん」

 

「こんな所で問題起こされたら迷惑だからねー」

 

 起きはするが、普段から治安維持を受け持つ騎士の詰所に差し入れしたりで顔を出して知り合いになっている。

 今だって絡むなりお得意様のショタコ……子供好きの女騎士様達がチンピラを取り押さえた所だ。

 

「ありがとう、お姉さん。凄く助かったよ」

 

「いーの。これがお仕事だからね」

 

「また遊びにいらっしゃい。楽しみにしてるから」

 

「アーロンさんが帰ってきたら教えてね」

 

 大体二十台前半、そろそろ婚期が気になり始める年齢の自分達に純粋に接する(みたいに見える)エトンは結構可愛がられている。

 中には兄貴にゾッコンな感じのも居るんだが、俺の兄弟はモテるもんだ。

 

 少し離れた場所で様子を伺っていたが、他の物陰から直ぐに動ける様にって待機している女騎士が何グループか居るし、そっちの仕事は大丈夫なのかって以外の心配は要らないらしい。

 

 

「紫の髪というだけではな。そのお嬢さんは名乗るのを忘れる程に焦っていたのなら余程の大事。敵討ちか門下生同士の戦いか……。私には何も入って来ていないな」

 

「そうかい。手間取らせたな、ギルバート団長」

 

 弟に商売を任せた俺がしていたのは剣を買ってくれた女についての情報収集。

 虐殺だのに使われるのは論外として、婆さんの剣でもないのに勢いで金貨百五十枚って大金を即金で渡して来るんだし、普通じゃねえ。

 

「エトンの話じゃ指には剣タコがあって髪は手入れがされている上に髪からは上質な石鹸の香りがしたって言ってたが、軍門一族の令嬢って所か?」

 

「その様なお嬢さんが一人で来るだなんて、あの子にとって良いカモに見えたのだろうな」

 

 俺が相談を持ち掛けたのは王国の第三騎士団、主に平民やら貧乏貴族の三男以降で継ぐ家督も婿入り先も無い様なのが入れられる所の団長をやってるギルバートさん、家名は……エトンなら覚えてると思う。

 

 この人は田舎貴族の養子に迎えられて騎士に入ったから成り上がり呼ばわりされているが、若くして騎士団長になった実力で婆さんの剣も持っている。

 

「それでアーロン殿は連絡を寄越されたか?」

 

 知り合った理由は兄貴絡み。武闘大会で優勝した兄貴をこの人が勧誘したのが切っ掛けだ。

 

「いや、相変わらずだわ。噂は聞こえて来るが何処で何をしてるんだか」

 

 此処らで話は終わり。取り敢えずキナ臭いってんで何かある前にと知らせたが、どうなる事やら。

 

 

 

「あっ! 抜き身の剣を持って行ったし、鞘師の所に情報行ってるだろうってエトンが候補を幾つか挙げてたな」

 

「それをもう少し早く思い出して欲しかったのだが」

 

「それと家紋か何かが持っていた剣とブローチに刻まれてたからって絵にして渡されていたな。ほら、これだ」

 

「……それももう少し早く思い出してくれ」

 

 呆れられても仕方の無いミスだが俺にだって言い分がある。売り物の為の鍛治以外にも研ぎだの打ち直しだの引き受けているんだ。

 作業中は無の境地って感じで他の事が意識の外になるから……まあ、そんな所だ。

 

 

 俺が情報収集と買い物をしている間にもエトンは商売を続け、商品の殆どが売り捌けた。

 これで懐が随分と暖かく……と言えたら良かったんだが、

 

「材料費と鍛治ギルドに商人ギルドに支払う金と税金とかを抜いたらだいぶ持っていかれちまうな……はぁ」

 

「兄ちゃんの腕は周辺の鍛治師とは比較にならないけれど、ギルドに睨まれたら終わりだからね。横の繋がりも広いから別の街に行っても無駄だしさ」

 

 お金って直ぐに飛んで行くよね、と冗談めかして話しながら山道を進んでいたが、不意に足を止めた俺がエトンを手で制すれば伝わったのか袖に仕込んだ小杖を取り出した。

 

 木を丁寧に削ったシンプルなデザインで、当然普通の杖じゃない。

 

 俺も腰の剣を引き抜けば前方の茂みから音を立てて一本角の狼四匹と巨大な一つ目を持つ熊が姿を見せた。

 

 【ホーンウルフ】に【単眼ベア】。普通の動植物だのが自然界の魔力の影響で変異したモンスターと呼ばれる存在。

 此処数年で一気に増えたし、商売には繋がるが、遭遇すれば面倒臭い。

 

 一応モンスター避けのアミュレットを持ってるが、それも絶対じゃないからな。

 

「熊の方は僕がやるよ。兄ちゃんは狼の方をお願いね。試したい魔法があるんだ」

 

「無理はするなよ? まあ、俺も新作を試したい所……」

 

「兄ちゃんは駄目だからね?」

 

 剣の柄に埋め込んだ宝珠を撫でようとするもエトンの冷たい声で止められる。

 何故だと思って視線を向ければ突き刺さる絶対零度の視線に続いての深い深い溜め息。

 

 あれ? やらかした感じ?

 

「【シャドーパペット】 何を込めたか教えたよね? ヒントその一 水じゃない。ヒントそのニ こんな場所で使ったら山火事になるかも」

 

「……悪い。うっかりしてた」

 

「すまないからね? うっかりじゃ!」

 

 唸り声を上げてジリジリと距離を詰めるモンスターから視線を外し、エトンは俺に詰め寄る。

 鍛治師が火事やらかしかけるとか言い訳出来ねえ。

 

 その迫力は凄く、心なしかエトンの影が大きくなって見えて……いや、実際になってるわ。

 

 起き上がった影は二メートル程に伸びつつ形を変えて行く。頭部は輪っかに胴と手足は程長く、先端は鋭い。

 棒人間とでも言い表すのが分かりやすそうな形になった影の人形は単眼ベアに向けて右手を振り上げ、一気に伸びた。

 

 左手が収縮する事で押し出される様に長さを変え、背中から分厚い毛皮と強靭な肉を貫いて先端が飛び出す。

 そのまま先端を曲げて抜けない様にした状態で右腕が収縮すれば今度は左腕が伸びて頭を貫いた。

 

「単眼ベアの肉は臭くて食えたもんじゃない。毛皮の質も悪いから安値でしか売れないし、役に立つのは熊胆位かな」

 

「取り出す手間があるんだよな。血も臭いしよ」

 

 一番強い単眼ベアが呆気無くやられたせいかホーンウルフに動揺が走る。

 後ろの一匹が後退りしようとした時、俺は先頭の一匹に切り掛かった。

 

 脳天から顎下まで刃を通し、切れ味の鋭さで生じた血が噴き出るまでの僅かな猶予に後方に蹴り飛ばすと二匹の間を通り抜け様に胴を両断した。

 

 血を払い落とせば最後の一匹が恐怖に駆られて逃げ出した。枝や岩にぶつかるのも気にせずの全力逃走。

 

 その背中に向けて剣を投げれば回転しながら向かって行く。枝も岩も刃をすり抜ける様にして切れ、剣は最後にホーンウルフの上を回転しながら飛んで地面に深々と突き刺さる。

 

 ホーンウルフは前身の勢いを乗せたまま体を左右に分けて絶命した。

 

 

 

 




自覚無く顔の良さを発揮するのがアーロン 自覚して使うのがエトン

その内にいつものサイトで絵を作りますけれど美形をちゃんと作れるか心配 

募集中

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=341834&uid=22137
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