お試し倉庫   作:ケツアゴ

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【挿絵表示】


高峰 葵  旨味メーカーにて


獅子身中の鬼の王(仮) 3

 新学期の始業時間前ともあって既に生徒の多くが教室の中に居る中、私はトイレへと向かっていた。

 用件は用をたす為ではない。空いた個室に入る前に隣の閉じた扉を三・三・七拍子のリズムで叩き、直ぐに隣の空いた場所に入れば上を通して一冊の雑誌が投げ込まれた。

 

 『魅惑の生足・美尻コレクション』。専属カメラマンの腕が悪いのか駄作続きで倒産した出版社の唯一の神作と称され、高価転売すらされていない希少本。

 

「じっくりと読みたい所ではありますが……」

 

 ほんの少しだけ、その様な誘惑の言葉が脳裏を過るものの、私は私が欲望に忠実だと知っている。

 昨夜も夕食後に深夜まで……

 

 誘惑をはね除けバッグの隠しポケットに雑誌をしまうと何食わぬ顔で個室から出る。手洗い場に居るケモ耳フードの見た目はずっと年下のクラスメイト【楠 蔵人(くすのき くろうど)】が手を洗いながら会釈をして来た。

 

「へへっ、お久し振りです、旦那。あの、不躾ですが次の授業でチーム戦の際は……」

 

「当然。自由に決められる時は私と組みましょう、蔵人君」

 

 自称・学園一の情報通、抜き打ちの持ち物検査や小テストの情報を仕入れては、保身の為に私を含む何人かに情報を流す少しばかり卑屈な小物ムーヴには困ったもの。

 

 (我が身が可愛いので)知ってはいけないことには近づかないし、言ってはいけないことは言わないくらいの良識はあるし、私も彼の持つルートには助けられているので報酬は惜しまない。

 

「さてと、教室に急いで行かないと雪山先生に叱られてしまいます。行きましょう」

 

「そうでやんすね。それはそうと、シッシッシッ。旦那ぁ、いいネタが上がってますよ? どうも学園の封印蔵に仕舞われていた何かが運び出されたらしいんですよ」

 

「へぇ……」

 

 猿の手、妖刀村正、エトセトラ、世の中には関わると不幸間違い無しな道具は数多く。その様な物を封印しているのが封印蔵。

 生徒や学園職員が流す霊力での封印強化や地脈の関係で学園内に建てるしかなかったものの、果たして何を持ち出したのやら。

 

 気にはなるものの蔵人君が其処で話を止めたのは直感で深入りを避けたが故。私も指令が無い限りは探らないでおく事に。

 

 関わる定めなら否が応でも関わる事になるのだろうけれど。

 

 

 

 

 始業時間ギリギリに教室に入れば既に二十席程の席はほぼ埋まっている。蔵人君は身長から前の席、私は後ろの席に座るのですが葵さんと序でに彼の席は当然ながら空席。

 

 恐らく今はお説教の途中なのだろうと考えていると前の扉から先生が入り、男子の多くの視線が彼女に注がれる。

 

 水色の長髪をポニーテールにして、眼鏡を着用した高身長のナイスバディな美人。我らが担任【雪山アルカ】。

 

「皆さん、お久し振りね。それはそうと男子達。視線、丸わかりよ。君達も男の子だし見惚れるのは分かるけど、他の女性の元に行きなさい」

 

 夫と子供がいるとは信じられない色気の持ち主だと男子の多くが胸やら尻やらに視線を向けるも当然気が付いている。

 

 私は胸も尻もバーンな女性は少々苦手。入学祝いだのとの名目で一服盛られ……思い出すのは止めておこう。

 

 尚、普通にフリーダムな雪山先生は個人として苦手である。名字の雪とか、得意とする術とか、色々と……。

 

「既に知っている子も居るとは思うけれど編入生が来るわ。その事について上位四人には頼みたい事があるから、始業式が終わって帰る前に学園室にまで来て」

 

「学園長の所ですか。いえ、何か頼みごとがあるのならお引き受け致しますが……」

 

 雪山先生からの頼みに私を含む三人の反応は様々。静かに頷くか急な話に驚くか、私は小声で不満を口にしてしまう。

 普段なら隠すのだが、今回は時と場合の違いだ。

 

 学園長の所に行くのが嫌だと言いたいが言えず言葉を濁す。化け物級の天才三人には及ばずとも優秀な成績、基本的には模範生。

 

 それ故に私は何かと頼まれ事をされがちで、雪山先生は無理に引き受けなくても良いとは普段から仰るものの、今回言わないのは決定事項且つ重要案件なのだろう。

 

 

 ……一秒でも早く生足と尻を堪能したいので始業式を抜け出したいのが本音だけれども。

 

 トップクラスには僅かに届かない優等生。それが()()()()。なのでそれを破る事は許されない。

 

 尚、葵さん達が解放されたのは始業式の途中だったので大いに目立っていた。

 

 

 

「相変わらず七面倒臭い。この柱さえ無ければ飛び降りますのに」

 

 校舎の地下深く、地脈の力の溜まる場所に学園長の部屋がある。エレベーターはあるものの生徒は何故か利用禁止。

 なので私達四人は巨大な円柱の周りに設置された螺旋階段を降り続けていた。

 

 学生のエレベーター使用禁止の理由は……学園長の性格の悪さだと私は思っている。一応成長の為との建前で罠を用意しているのがタチが悪い。

 

「……来た」

 

 柱に貼られた札が私達に反応してか鈍く輝き、描かれた文字が溶けて崩れて黒くドロドロした物が垂れ流しになって床に広がって行く。

 

 それが膨れ上がり形作られたのは骸骨。黒い槍や青龍刀を構え頭蓋骨をカタカタと鳴らしていた。

 

 最初に武器である弓を構えたのは少し小柄で眠そうな半目。胸の方は弓の扱いに向いているとだけ。

 

「……」

 

 一瞬此方を見たのか視線を感じるも侍ポニーが僅かに揺れているだけだ。

 

 

 

 【三浦 上総(みうら かずさ)】、現在序列三位の同級生。三浦さんが弓を射れば咄嗟に盾にした刀身を貫き、そのまま頭蓋骨を粉砕しながら三体程倒した所で壁に弾かれて床に転がった。

 

因みに『弓使いにとって貧乳はステータス』だそうで、私も小さい胸は嫌いではない。可能ならば後ろから手で包んで揉みしだける程度は欲しいとは思うが。

 

「少なくとも鋼鉄以上の硬度でしょうに何の術も使わずとは。休み中に腕を上げました?」

 

「ん。頑張った。そっちは?」

 

「ぼちぼちですかね? 頑張ってはいますけれど」

 

 相変わらず眠そうで何を考えているのか分からない相手に調子が狂うと思いつつ、残りのが向かって来るのに対処しようとしたのを追い越す様に葵さんが一歩前に出る。

 

 手には蒼く透き通った刃の薙刀を携え、優雅な動きで一回転させれば水飛沫が周囲に散った。

 

「悪いが僕に任せてもらおう。漸く習得した技を実戦で試したい」

 

「別に良いですが大物が来たら譲って下さいよ? ……私も同じなので」

 

「へぇ。それは実に楽しみだ。じゃあ、僕も皆に格好良い所を見せないとね」

 

 余裕綽々の声と笑み、それでも瞳は闘志に満ち溢れ薙刀の切っ先を向ければ骸骨達の動きが止まる。

 

真っ当な生物ではないにも関わらず気圧された奴等には葵さんが蒼鱗の龍に見えた事だろう。

 

 

 

 

斬波(ざんぱ)!!」

 

 真下から掬い上げる一撃。刃が床に擦れる音はせず、相手が構える暇も無く振り終えた刃から放たれたのは激流。

 轟音を立てながら迫る水を前に骸骨達は反応すら出来ずに棒立ちのまま飲み込まれ、水が通り過ぎてもその場に立ち尽くした姿を一瞬だけ見せて崩れ落ちた。

 

 

 

「……斬った?」

 

「正解だよ、上総君。要するに今のは超極薄のウォーターカッターを組み合わせて放つ技なのさ」

 

 平然と口にしているが、どれ程に繊細なコントロールが必要なのやら。私が真似しても水圧で押し流し砕く事は出来ても超極小サイズの賽の目切りになど出来はしない。

 

 流石は二学年序列一位、その技の冴えを見せられれば自ずと熱意が燃え上がり、一刻も早く私の力も見せたいと思った時だった。

 

 ガシャガシャと耳障りな音に混じって必死に走る誰かの声が下から近付いて来たのは。

 

 

 

 

 

 

「だ、誰か助けて下さい!」

 

 最初に印象に残ったのは結われた亜麻色の髪。白衣に緋袴といった神社巫女の格好をした彼女は激しい運動に慣れれいない様子で必死に追跡者から逃げ惑う。

 

 人など簡単に握り潰せそうな程に巨大な上半身だけの骸骨。背骨の欠損した断面を階段に擦り付けながら二本の腕で這うように前進して目の前の少女を追い続けていた。

 

 前方の私達にも気が付けない程に必死な表情で、脚をもつれさせて転びそうになった彼女に向かい真上から巨大な掌が叩き潰さんと振り下ろされる寸前、私は既に動いていた。

 

「はい、助けます」

 

 転びそうになった彼女を右腕で抱き止め、頭上に構えた左腕を無造作に振るって振り下ろされた巨腕を弾き返す。

 大きく仰け反った巨体に向けて左腕を構えれば肘から先からバリバリと放電が起き、振り放つと同時に上空に向けて雷撃が立ち昇る。

 

 

 

飛雷拳(ひらいけん)!!」

 

 稲光と雷音が周囲に広がり、それが収まれば巨体は完全に炭化して崩れさった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、レディを抱えて放つ技かい?」

 

「……あっ」

 

 そして腕の中の少女は気絶してしまっていたが、一体誰だろうか?

 

 

 




ポヤポヤ系か純粋詐欺エロ巫女にするかは未定
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