お試し倉庫   作:ケツアゴ

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二位の女子 募集中


獅子身中の鬼の王(仮)5

 京都の郊外、私有地につき立ち入り禁止の看板が建てられた日本家屋の敷地内に一台の軽自動車が入っていった。

 

 相当酷使されているのか年式は古く、手入れはされていてもエンジンの音がおかしい。

 何度かエンストを起こしかけつつも手入れされた駐車スペースに停まれば出て来たのは軽薄そうな中年男性だ。

 

 ギャルゲー要素の強いソシャゲのくじの下位賞であるキーホルダーを付けたキーを指先で回しつつ口笛を吹きながら出て来るも指からすっぽ抜けてあらぬ方向へと飛んで行く。

 

「ありゃ、ついてねえ。復刻ガチャで神引きした揺り返しだな。給料半分注ぎ込んだら限定キャラ全部完凸出来たし」

 

 後頭部をポリポリと掻きながら中庭に入り込む際、男は一瞬だけ憂いの籠った目を玄関に向けるも溜息混じりに中庭に入れば広がっていたのは見事な枯山水。

 

 幾日か前に強い雨が降ったにも関わらず一切の綻びが無く、男が踏み入っても描かれた線は乱れない。

 

 真上から見れば分かるが塀や縁側等によって正四角形となっている中庭を歩き回る事四度。

 四度目を終えた男は中央へと歩を進め、瞼を強く閉じて両耳を塞ぐ。

 

 

「鬼さんどうぞ、此方においで」

 

 まるで童子が目隠し鬼でもする時の様に軽くリズムを乗せて呟き、目蓋を開ければ世界が変わっていた。

 

 骨を露出させた鴉が散乱する屍肉を啄み、晴れ渡る青空は血をぶちまけた様に赤い。

 立派な家屋は見る影もない荒屋になっており、直ぐ後ろに黒子姿の男が立っていた。

 

 

 

「お久しぶりですな、化間(とが)殿。本日は総大将へ報告する事があるとか」

 

「そっ。龍ちゃんはこっちに来ない方が良いからね。……あっ、悪い意味じゃなくて、繋がりが露見したら困るでしょ? それと我者髑髏(がしゃどくろ)君。今の俺は熊田ね。今は彼の方の部下だから」

 

 

 

 

 

 俺は八咫烏学園購買部店員【化間 熊成(とが くまなり)】、ちなみに偽名。

 趣味はギャルゲー要素の強いソシャゲで、イベント同時進行の為にスマホの契約数は十台を超えている。

 

 お馬さんやボートレースも大好きだが、パチンコは機械音が煩いので苦手。

 

 元自衛官で封魔の家系出身,そして今は鬼の手下やっているギリギリ三十代の絶賛嫁さん募集中。

 

「所で股間の物をもぎ取られたとは本当か?」

 

「君だって無いじゃないのさ。俺は戻せるんだよ。コブ取り爺さん方式で」

 

 尚、男だが股間のアレは現在持っていない状態だ。

 

 

 

「あらま。ずいぶんとちっこいのが増えたな。少し見ない間に勢力拡大しちゃった感じ?」

 

 俺が今居るのは人間の巣世界と少しずれた世界である裏界。本来の京都とは似ても似つかぬ荒れた町並みを眺めつつ進めば感じるのは獲物へ向ける視線。

 子犬サイズで知能の欠片も無さそうな小鬼が瓦礫の陰や枯れ木の上から狙いたがるも無骨が怖いのか動けない。

 

 何かの拍子に居なくなれば喜んで飛び掛かって来るのだろうけれど、一応これでも伝令役。総大将お気に入りの龍ちゃんの為に動く俺を襲わせられないし、余裕を持って問い掛ければ骨の矢が周囲の小鬼に突き刺さる

 

「この程度ならば万も居なければ使い物になりませんよ。何時も通りの気まぐれで、殺すも食らうも好きにして良いのです」

それを放った本人はどうでも良さそうに先導を続け、真っ赤な 楼閣の前に到着した。近付く途中から漂って来た酒の匂いは近付く程に強くなり、門が開かれればむせ返る程。

 

「ビールに焼酎に紹興酒、それにワインとか相変わらずだねえ」

 

 鼻で酒の種類を判別しながら拠点の造りを門の前から観察する。気まぐれで何度も移動し、その度に構造設計すら一新して来たのがこの拠点。

 何かの際には構造を覚えておかないと鬼の拠点でお陀仏だ。

 

「鬼の拠点ですからね。では、新たな拠点も相変わらず迷宮ですのでご案内を……」

 

 幸い、今までも道案内役に連れられ天守閣まで行けた。今回も狙いどおり道案内で

行けるだろう、と狙いどおりに無骨が案内してくれるらしいのでホッと一息、一瞬目を閉じ、開ければ俺が居たのは天守閣。

 

「……は?」

 

「中を歩きたそうにしていたので悪戯をしちゃいました」

 

 全く悪びれずに言いきりながらその鬼は上座で酒を煽る。この楼閣の主にして大江山に巣くう鬼の頭目。

 

 

 

 そして俺の家族を皆殺しにした伝説級の大鬼。酒呑童子が目の前にいた。

 

 珍しく着物に着替え、周囲に様々な酒を用意してツマミも無しに飲み続けている。

 

 

「総大将におかれましてはお変わり無きご様子で……」

 

 殺意を圧し殺し、敵意など微塵も放たず片膝を付いて頭を垂れる。長年続けて来た演技。あくまで今は鬼に屈して従う脆弱な人間であれと言い聞かせる。

 

「あっ、堅苦しいのは別に良いので本題に」

 

「……鬼門の巫女が見付かったらしいです。八咫烏学園の二年生として霊力のコントロールを学ぶとか」

 

「鬼門の巫女、ですか……」

 

 正直、この情報だけは隠しておきたかった。裏界の住人が現世に現れるには場所や時間が制限されるが、鬼門の鍵さえあれば自由自在。

 

 偶々開いた小さな穴から雑魚が這い出るとか儀式やらで呼び出される場合とは比べ物にならない事態だ。

 

 ……同時に俺がしたみたいに特定の場所で特定の手順を踏まなくても拠点に乗り込めもする。

 

 平安時代に好き勝手に暴れた悪鬼がどうするのか。どう出ても別に構わない。

 行動に出るという事、それは隙を晒す機会を生むという事だ。

 

 矮小な虫ケラだろうが獅子身中の虫として食い破ってやる。何を、唯一の身内以外の誰を犠牲にしようが俺は……。

 

 

 

 

「興味無いので流れに身を任せろと龍洞ちゃんに伝えておいて下さいね?」

 

「はへ? 良いんですか?」

 

「だって時と場所に囚われず現れるって風情が無いでしょう? 夜の恐怖を忘れた現代の人の子に妖への畏れと共に思い出させてこそ」

 

 手元のジョッキの中身を一気に飲み干した酒呑童子は俺に近付き、至近距離で瞳を見詰める。

 

 まるで喉元に刃を突き立てられ、生きたまま心臓を引き抜かれた錯覚に襲われて息が荒く鼓動が速くなって行く。

 

 

「無粋な真似は面白く無いですし……遊びはルールを守るから面白いのですよ?」

 

 全部見透かされている気がしてならなかった。金色に輝く瞳に射抜かれ、企みなどお見通しだと囁かれている気分だ。

 

「あっ! 龍洞ちゃんに次のお休みには顔を出すなら美味しいお菓子をお土産に持って来て欲しいのと、玩具に飽きたら直ぐに捨てるようにと伝えて下さいね」

 

「玩具……ですか。琴音ちゃんの事ですよね?」

 

「そんな名前でしたっけ? 殺す前に遊ぼうと目玉を片方抉った後であの子のお気に入りだと思い出してプレゼントしましたが、長い間お気に入りのままなら良かったです」

 

 俺が名前を出しても直ぐに思い出せずにキョトンとした表情を見せる姿に絶句する。

 少なくとも殺す理由が生まれる前は甲斐甲斐しく世話を焼いていて、将来は龍洞ちゃんのお嫁さんかとまで言っていた。

 

 そんな相手の名前を本気で失念して、更には飽きたら捨てろとまで平然と口にするのか。

 

 

「は、ははは、相変わらずですね」

 

「貴方も相変わらずですね。見ていて飽きません」

 

 これが酒呑童子。妖退治に優れた源頼光と四天王が神の力を借りて騙し討ちで漸く討伐したとされるもその実生き延び、四天王の一角の子孫を取り込んだ悪鬼。

 

 

 分かってはいたが……。

 

 

 

 

 

 

 

「それとある場所に潜入して欲しいので股間のラディッシュはもう少し預かりますね。じゃないと臭いでバレるので」

 

「せめて人参って言って!?」

 

 恐ろしい……。

 

 それと俺のは小型じゃないから!? 個室で女の子と入浴する店でも立派って褒めて貰えたから!

 

 

 

 

 

 

「そうですか。ではお酒に合う物を見繕ってお渡ししましょう」

 

「いやいや、^_^どうせ総大将には関係無いって。それよりもそっちは何してんの?」

 

「他の三人と作戦会議としてファミレスに来ています」

 

「女の子三人に囲まれるとか羨ましいわー。伯父さん、全然モテなくってギャルゲーに逃げちったもんさ」

 

 気紛れ一つで首が物理的に飛ぶ報告を終わらせて現世に戻って来て最初にしたのはアプリの立ち上げではなく電話。

 

 俺が逃げた事が原因で回り回って死なせてしまった妹の忘れ形見である甥っ子との会話だ。

 

 実に楽しそうで結構。このまま酒呑童子の気紛れが続いて平穏な暮らしを送れたら良いんだけれど……。

 

 

 

 

「ニャハハハハ! りゅー坊は相も変わらず道化やっとんのか? ほんま人臭いのぅ。今度稽古代わりに遊んでやると伝えといてくれ」

 

 俺の隣でコンビニのホットスナックを大量に食う鬼の言葉に不安が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 




酒呑童子 絵を作ったのに別の機械にダウンロードしてこっちにしてねえ
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