お試し倉庫   作:ケツアゴ

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絵はFeminine Character Creator」でつくったよ!

酒呑童子  
【挿絵表示】



マリギャラムービー良かった  3Dで見た


獅子身中の鬼の王(仮) 6

 あの日あの夜、運良く助かった私は大婆様に背負われ裏界にやって来ていた、らしい。

 

 らしい、というのは幼い私は口遊む子守唄に誘われて眠ってしまっていて、目を覚ますと小さい子供用の上等な布団に寝かされていた。

 

「おっ! 目が覚めたか」

 

 見覚えのない天井を見るのを遮るかの様に視界に差し込まれたのは金色の毛を持つ妖狐の少女の顔。

 宝石の様な赤い瞳をパチクリさせながら私の顔を覗き込む。

 

「琴音? じゃあ、此処は……」

 

 彼女は琴音。狐の一派が大婆様と同盟を結ぶ時に差し出した人質……狐質? であり、大婆様のお気に入り。

 

 身の回りの細々とした雑用を任せる側仕えとして扱うだけでなく、着物や髪飾りを与えて着飾らせて人形の様に扱っている。

 

「あん? 分かっちゃいなかったのかよ。私が居るって事は総大将の、酒呑童子様の居城に決まってるじゃねえか」

 

 少しばかり口調が荒いのは鬼の居城で物心付く前から育ったからだろう。

 

 私にとっては同年代の友達。一族を裏から支配する大鬼である酒呑童子の縄張りに呼ばれた時だけ会える特別な遊び相手。

 

「そっか」

 

「起きたなら飯食おうぜ。朝飯一緒に食おうって待っててやったんだが腹減っちまってよ。ほら、行くぞ」

 

 布団から起き上がった私は琴音に手を引かれて部屋を出て行く。少し駆け足気味で音を立て、廊下を歩く大婆様の配下達の横を通り過ぎて行くのは楽しかった。

 

 そう、両親を、家の皆を皆殺しにされたにも関わらず幼い私はこの時を楽しいと感じて大してショックを受けていなかった。

 

 

 

 

「何をやってんだい、二人共。廊下を走ってるんじゃないよ」

 

「「はい、ごめんなさい」」

 

 この後直ぐ、私達は雪のように白い肌を持つ雪女郎の【雪来(せつら)】さんに正座させられて怒られる事になった。

 

 少し青みが掛かった髪を腰まで伸ばし、体の凹凸のラインが丸分かりな薄布の白装束を着た綺麗な彼女は成長するにつれ直視するのが少しばかり大変で、伯父さんの初恋相手なのも納得の相手。

 

 

 まさか高校入学が決まった祝いという名目で一服盛られて一晩中搾り取られる等と幼い私が予想出来る筈もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丑宮さんの編入を明日に控えた放課後、学園から走って五分以内の距離(封魔士基準)にて私達()()が集まって居たのだが……。

 

「相変わらず客層が悪いな、この店は。人のことを無遠慮にジロジロと。葵さん、どうせなら僕と二人でオススメのカフェにでも行きませんか?」

 

 黒い着物に白い羽織と随分目立つ服装。背も六尺には中指一本分程届かない程で赤みが掛かった髪をオールバックにした彼は顔立ちも優れてはいるだろう。

 

 それが入店直後から五月蝿いだの何だのと態度が悪い状態で入ってくれば否が応でも目立つに決まっているのに、それに気が付かず周りを非難する言葉を消えも潜めずにとは呆れる。

 

 【碓井是清(うすい これきよ)】。進級時の序列は十位。新学期早々に葵さんのデカ尻に視線を奪われて遅刻した彼を呼んでいるのは理由がある。

 

「おいおい、駄目じゃないか大声で。見知らぬ相手にも礼儀は尽くすものだよ、碓井君」

 

「そんな他人行儀な呼び方はおよし下さい。この碓井是清(うすい これきよ)、葵さんになら呼び捨てにされても本望です。寧ろ呼んで欲しい! 容姿端麗文武両道、その素晴らしさは僕が持つ言葉では言い表せないのが心にバビュンと伸し掛かります」

 

 何とも長い上に恥ずかしい台詞を一気に吐き出すものだと逆に感心する。

 人前であからさまな口説き文句を平気で吐き出せる物だと。相手にもされていないのに。

 

 彼、人外の血が混じっていただろうか? 価値観が常人とは違い過ぎる。

 

「うん。機会があればその内に考えておくよ、多分」

 

「何と素晴らしい! こんな下等生物の集まる場所より僕達二人にお似合いの店までズバッと行きましょう!」」

 

「……鋼のメンタル。図太い」

 

「しっ! 断られているのに気が付いていないだけですって」

 

 この価値観だからこそ学園長に彼を巻き込む事を提案したけれども、短時間の言動に早速後悔し始める私達であった。

 

 三浦さんなどジト目を私に向けて何故呼んだと無言で抗議する始末。私だって決定した時の私に問い詰めたい位だ。

 

「そんなどうでも良い事よりも君を呼んだ理由を語ろう。聞きたまえ」

 

「はい! この是清、葵さんのお言葉なら一字一句聞き逃しません」

 

「鬼門の巫女」

 

 前にグイグイ来る彼に葵さんは眉一つ動かさず静かに呟く。その一言で碓井君の表情が一変した。

 鼻息荒く身を乗り出した彼は下心が丸出しであったのが一瞬で真顔になり、椅子に腰掛けると視線だけを私に向ける。

 

「おい、得意分野だろう。認識阻害はしたのか、坂田」

 

「貴方が下等生物と口にするのを見越して既に。現場での行動に関する座学の成績、そんなのだから悪いんですよ?」

 

 そもそも一般人が居る場所で話すなら使って当然だろうに。今こ時代なら厨二病か漫画の話と思われる程度でしょうが、一応必要。

 

「う、五月蝿い! 坂田の癖に!」

 

「現国や数学や外国語も……」

 

「実技だけなら男子で二位なのにね。君はもう少し机に向かった方が良い」

 

 今はトイレに立っている一人も多分同じ事を言うだろう。そう、碓井君は座学の成績と他者への言動の悪さが響いて序列を大きく下げて十一位。

 

 本来なら五位……は現在五位の彼女は手を抜いている節があるので厳しいかも知れないが。

 

「お前のせいで脱線したぞ、坂田! ……それで僕を呼んだ理由だが一体何だ? まあ、僕が優秀だから手を借りたいのだろうが」

 

「いえ、普通に一般家庭出身なので、下等生物とか平気で口にされて精神的に不安になって力が暴走とか厄介でしょう?」

 

 学園近くで鬼門が開いた結果、人手も費用もどれだけ必要となるのやら。

 学園の運営費は基本的に税金。税収の総額を低く発表したり使途不明金の一部から捻出されているのだから。

 

「閉じ込めていたら力の制御は成長せず、生きてる間は適合者が何処の誰か把握可能だから、管理上長生きしてもらった方が良い。鍵を扱うだけの力があって、その上で素人が適合者とか厄介だな」

 

「だからサポートが必要。極秘事項だから内緒。……理解出来た?」

 

「概ねね。良いさ、葵さんと行動出来るのなら封魔士の足を引っ張る下郎だろうと気に掛けてやるさ」

 

 これで一先ずの問題は解決。彼個人は選民思考が強い問題児でも実家は一般人との関係を大切にする穏健派。

 

 まあ、今の時代、悪鬼殲滅! 死んで屍拾う者無し! 一匹残らず駆逐しろ! 例え死んでもぶち殺せ! その様な過激思考の方が珍しい。

 

 下手に刺激せず、出て来たら相手をしつつ裏界と繋がりやすい場所を見張る方がリスクもコスパも高いのだから。

 

 人権意識の薄い時代とは違うという事で……。

 

 

「じゃあ、今から巫女のサポートについて話そうか」

 

「喜んで! そうだ、チーム分けしましょう。僕と葵さんの二人組とその他でどうでしょうか!」

 

「うーん、却下で。五人居るんだし、都合と状況で考えよう。まあ、個人的な希望を言えば僕は龍洞君とのペアが良いな」

 

 今の時代は珍しいのに、彼の選民思考は何処から来たのやら。実力主義ではあるので認めた相手に礼儀は払うのだけれども。

 

 

 但し、恋敵認定を受けた私は別とする。せめて選民思考を隠せば少しは扱いがマシになるだろうに。

 

 偶にウザいと愚痴を溢しているのを伝えないのは私の優しさだ。余計に面倒になるのも九割九分九厘を占める理由だけれども。

 

「こうなったら葵さんを賭けて決闘だ!」

 

「おや? 何度もして君が負けているし、僕は身も心も彼の物で良いって事かい?」

 

「いえ、クーリングオフをしていますので貴女は貴女の物ですよ。そもそも彼が一方的に言っているだけでしょうに」

 

「貴様ぁ! 葵さんの何が不満だ!!」

 

 彼、私にどうしろと? あえて不満点を挙げるなら強引さと尻の大きさ?

 

 

 

「……喉乾いた」

 

 呆れて付き合ってられないとばかりに三浦さんはドリンクバーへと向かって行く。

 

 話が全然進んでいないのを察したのかトイレから戻った彼女も私に視線でどうにかしろと告げて来るのだが、私にもこの二人はどうにも出来ないので無理としか……。

 

 

 

 

 

「何故ああまで話が脱線するのやら。そして何故私が巻き込まれるのか……」

 

 「……頑張って?」

 

「せめて疑問系以外でお願いします」

 

 ファミレスでの(全然進まない)話し合いを終え、私は三浦さんと共に丑宮さんが滞在しているホテルの前までやって来ていた。

 

 五人で押し掛けるのも碓井君を連れて行くのも問題があると思い、私は同性である三人の内の誰かが行くのが良いと思ったものの葵さんともう一人は用事が有り、三浦さんは少しばかりコミュ力に問題が有ると私まで同行する事に。

 

 

 気絶させてしまったのは私なので少しばかり気まずい所が……。

 

 この様な場合こそ葵さんが……いえ、あの人も勝者がパフェを奢られる等の条件を付けて試合を申し込む等の問題点があった。

 

 遊びに誘うなら普通にすれば良いものを、普段の優雅ムーブは一体何処に行ったのやら。

 

 実は裏で鬼と繋がっている私が任される時点で今年の成績上位者は問題児ばかりだ。

 

「さてと、もう来ていると良いのですが……」

 

 学園長から伝えられたスマホの番号から既に彼女に連絡は入れてある。ホテルのカフェで待ち合わせがしたいと伝えられて……あっ。

 

 カフェの外壁のガラス越しにでも一目で分かる巫女服。神社の出身と聞いてはいたが、何故ホテルのカフェで巫女服? 霊力を持った一般家庭出身に有りがちな子を不気味に思う親によるDV疑惑?

 

 

「話し掛けて来て。後から合流するから」

 

 表情を変えないまま三浦さんは親指をグッと立て、私に厄介ごとを押し付けた。

 

 ああ、本当に……。

 

 せめて巫女の立場への誇りとかコスプレ趣味だとか真っ当な理由があって巫女服で過ごしていると信じて彼女へと近付いていく。

 

 宗派によって服装に制限があるとか、きっとそうだと考えれば近付く事で私にまで視線が注がれるのも気にならない。

 

 私は葵さんと同程度の身長である事以外はジャージ姿と服装も普通だ。それ故に彼女に近付く姿が奇異に映っているのだろう。

 

 大丈夫。話せばきっと普通の人だ……。

 

 

 

 

「……あー、どうも。私を覚えていますか?」

 

 

 

 

 

「あの時の方ですよね。……好き!!

 

 あっ、駄目だ。変な人だ。

 

 

 

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