お試し倉庫   作:ケツアゴ

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獅子身中の鬼の王(仮) 7

「最近の学生は大胆ねぇ。こんな場所で好きって叫ぶだなんて」

 

「コスプレ美少女と高身長優男のカップルかよ。リア充爆発しろリア充爆発しろ」

 

 周囲がざわついて視線が私達へと集まり、元から少し離れていた三浦さんは更に距離を取って第三者を装う。

 

 名前を呼んで巻き込んでやろうかとも思ったが、関わらせたら射抜くと視線で伝えて来るので今は止めて……。

 

 

 

 

「三浦さん、三浦上総さーん! 此方にお越し下さい」

 

 止めておく? そんな筈が無い! ホテルのカフェで巫女服から大声で告白されるという訳ワカメな状況から一人逃れようだなんて考えが甘いとしか言えないだろう。

 

 私の呼び掛けに彼女は知らない振りをするが既に手遅れだ。何せ私と並んで入って丑宮さんに話し掛けたのだから既に目立っている。

 

 裏で鬼と繋がってるどころか平安時代からズブズブの関係だった一族の私が言う資格は無いだろうが、保身の為に仲間を見捨てるだなんて許す筈が無い。

 

 端的に言えば、死なば諸共道連れだ、である。

 

「……巻き込まれた」

 

「巻き込まれたって、私に関わる事であっても全くの無関係ではないでしょう? 頼まれて来ているのですから」

 

 横合いからは修羅場とか二股とか貧乳萌えとか聞こえて来たが知った事か。どうせ今後は関わらない相手で、ただの誤解なのだから好きに言っていれば良い 

 

「……そもそも認識阻害の術を使えば良い。私は苦手分野だから基礎で躓いて使えないけれど貴方は得意。何故使わない?」

 

「既に大いに目立っているので強めにしなくては駄目ですが、中には注意散漫や急な居眠りなどの睡眠不足に似た症状が出る場時もあるのですよ」

 

 多少会話を聞かれても平気にするのなら別として、此処まで注意を引いたら目建たない様にするのは骨が折れる。

 

 そもそも術を使わずとも一番の解決方法があるのだ。それも簡単なのが。

 

「丑宮さん、出来ればお部屋にお邪魔出来ませんか? 其処でお話の方をしましょう。ああ、異性が入るのが嫌なら……」

 

「そ、そんな! 再会して直ぐにホテルの部屋に来るだなんて。で、でも都会の男女にとってそれが普通なら。少女漫画だって直ぐにエッチな事になっているし……」

 

「場所を変えて公園に行きましょうか。それと普通の高校生は出会って直ぐの相手とエッチな事はしませんよ」

 

 好きとか急に叫んだと思ったらとんでもない妄想を暴走させていた丑宮さんを何とか宥め、そのまま三人で近くの公園へと向かって行く。

 

 この脳内ピンク、下手な相手に私への物と同じ言動を向ければ危ないだろうに、どうやって世間を渡って来たのか逆に気になる位だ。

 

 正直、一緒に来たのが三浦さんで助かった。葵さんなら余計に事態がややこしくなっていただろうから安堵する。

 

 

「葵が居たら修羅場確実? 浮気者扱いされそう……」

 

「遠回しにデートに誘ったり割りと大胆に好意は伝えられていますが、私は受け入れると口にはしていませんよ? 寧ろ流しています」

 

 まあ、一度実家に招かれた際にご両親から『姉と妹、どっちかの婿入りを検討して欲しい』とガチトーンと疲れた目で頼まれた事もあるけれど、その際も断った。

 

 あの葵さんでさえ年子の姉に比べれば奇行がたまに見受けられる程度なのだ。問題は姉の方。私にとっては目を付けられたのが運の尽き。

 変人の妹と暴君の姉。共に所属する学年の序列一位の才女だが、それを打ち消す問題児。

 

 思い出すのは去年、一年と二年生の合同授業。当然ながら向こうの上位陣を抑える役目は私達だったが、其処で目を付けられた。

 

『良いな、貴様。妹が気に入る訳だ。よし! 貴様は私の物となり生涯を捧げよ。対価に私を孕ませる権利をくれてやる』

 

『おいおい、話が急だよ姉様。そんな面白そうな話から僕を除け者にする気かい? どうせなら義兄よりは別の呼び方をしたいんだけれどね』

 

『どうせなら私を除け者にして下さいよ、先輩と葵さん』

 

 大勢の前で何を言うのだろうか、あの二人は。姉妹の両親の苦労が浮かばれるものだ。

 

「……実は本命が居た?」

 

 その言葉を耳にして、脳裏に浮かぶ顔がある。聞こえて来る声もある。

 

「さて、どうでしょう? ……三浦さんって実はゴシップ好きですか?」

 

「否定はしない」

 

 目を見れば無表情なのにワクワクしているのが伝わって来た。封魔士の原則……。

 

 本命が居ないと言えば嘘になるが、恋人だとは言えない……言ってはいけない。

 

 

『うーん、甘やし過ぎるのも駄目ですので制約を一つ。本当は両目をくり抜き四肢を千切った上で活け作りにして晒す筈でしたが、龍洞ちゃんの物としてなら飽きるまでは放置しますね』

 

 琴音が生存を許されたのは私の所有物という扱いになったから。もし何処からかそれ以外の扱いをしていると口にした事が伝われば大婆様が殺しに来るだろう。

 

 壁に耳あり障子にメリー、今貴方の後ろに居るの、とばかりに何処で何が見聞きしているか分からない。

 

 自らの血を引く坂田一族でさえ気紛れで滅ぼしたのだから、私が頼んでも今度は無理だ。

 

「恋人は居ませんよ。葵さんは人間としては好きですが、女性としてはちょっと……」

 

 胸の小ささや括れた腰回りは良くてもデカイ尻は駄目だ。もっと小振りで引き締まった尻ならば心が揺らいでいた。

 

 浮気? 本命が居るなら他のR18な物に一切反応が起きない方がどれだけ居る?

 

 それはそれ、これはこれ。

 

 異性としての好意といえば……丑宮さんは本当にどうすべきか。 今後の動きに差し支えそうな予感だらけだ……。

 

 

 

 

 

「はわわわわっ!? 私ってば人前でなんって事を!? ごめんなさい! 初恋の一目惚れだったから再会の嬉しさにエッチな事まで許しちゃえってなってしまって。は、恥ずかしい……」

 

「これは落ち着いた……とは言えないでしょうね」

 

「多分言えない」

 

 公園にまで連れて行き、自販機で購入したお茶を渡した頃には丑宮さんも落ち着いた、と言うには発言がふっ飛んではいるものの、頭は冷えたらしい。

 

 今は両頬を手で挟んで真っ赤になっており、私とは目を合わせられない様子。何とか話は出来そうだ。

 

「……あの、先程の発言は忘れていただければ……」

 

「ああ、申し訳無い。寝不足のせいで記憶が飛んでいましてね。それよりも話を進めましょう。鬼門の鍵についてのお話は既に聞いていますね?」

 

「はい。急にお化けを見るようになったと思ったら学園の地下まであの子……学園長に連れて来られて、でも今まで見えなかったし今も朧気だから半信半疑だったら実体験が一番だと言ってトイレに出た私に巨大な骸骨を……」

 

「けしかけたのですね、あの合法ロリ」

 

 直ぐに私達に遭遇するなんてタイミングが良いと思ったら、実際にタイミングを見計らって襲わせていたとは、あの自称教育者。

 

 丑宮さんも大変だ。急に変な物が視界に入り込むと思ったら(見た目は)子供に現実離れした話をされ、トイレに行く最中に巨大な化け物に襲われたのだから。

 

 

「まあ、起きてしまった事も持って生まれた物もどうしようも無いですし今は基礎知識を身に付けて来週の編入に備えましょう。基礎の教科書は読みましたか?」

 

「そ、それが……」

 

 途端、丑宮さんは目を泳がせて鞄から本を取り出した。渡されたのを開けば初心者用に専門用語の解説と基礎トレーニングの方法が記載されているのだが、反応からしてまさか読んでいない?

 

「えっと、霊力をちゃんと扱えば読めると言われたのですが、そんな物の扱いなんて知らないから途切れ途切れにしか読めなくてですね……えへへ」

 

「困った時はちゃんと相談をしましょう? 何をやっているのですか、二人とも」

 

 特に自称教育者。PTAどうにかしろ。駄目だ、特殊過ぎて東北委員会ですらあてにならない。

 

 だから好き勝手しているのか、あの若作りクソ婆。

 

「……このままだと補修地獄?」

 

「はわっ!?」

 

 それは当然だ。教科書を読む事すらままならないのだから基礎の基礎から叩き込まねば。

 

 教員はブラックな職場だと聞くが封魔士業界も変わりがない。そして鬼門の巫女である丑宮さんには徹底的に教え込まねばならない訳で……。

 

 

「さて、常識的には問題ですが効率的には私の方が良いですね。丑宮さん、私の霊力を流すので霊力を扱う感覚を覚えて下さい」

 

 言ってみれば自転車の補助輪のような物だ。体に触るので同性の三浦さんの方が良いとは思うが、異性の方が相手に流し易い。

 

 触ると言っても肩や手で構わないのだし、その程度なら問題は無い……だろう。

 

 

 

「なので少しだけ触らせて下さい」

 

「触っ!? は、はい。私などので良ければ……」 

 

 私のお願いに丑宮さんは明らかに狼狽、流石に早急だったらしいので三浦さんに代わって貰おうかと考える最中、意を決した表情の彼女は顔を赤らめ視線を逸らすと背を逸せて胸を突き出した。

 

 

 

「誰かに揉まれるのは初めてなので優しくしていただければ……」

 

「三浦さん、効率は悪いですがお願い出来ます? 頭を掴むのが一番ですが、初回なので肩か腕辺りで」

 

「……脳内ピンクのドスケベ淫乱巫女が感染るのは嫌」

 

「ええっ!?」

 

「冗談。でも、そっち方面に飛躍し過ぎ」

 

 この後、普通に三浦さんが霊力を流して扱いを何とか感覚は掴ませ、そして編入の日がやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

「今日から編入して来た丑宮さんよ。実家が神社とはいえ少し前まで一般人だったからサポートしてあげて。どうしてそんな子がって疑問は……訳有りとしか」

 

「訳有りで編入して来た丑宮虎空です。宜しくお願いします」

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