皇国の戦役 作:考えないタイプの葦
「戦役史ですか?」
「はい、皇国の軍事に纏わる研究項目です。
兵器開発論
戦術理論
歩兵思想論
主力砲兵思想
最低でも4つのどれか一つを履修して下さい、3年後の卒業論文の執筆に際して必要になります。」
兵器開発論か主力砲兵思想を履修しろという圧を感じる、さて皆さん私はどれを選択するべきでしょうか。
歩兵思想論を選択するに決まっているだろ、戦場の主役は歩兵だからだ。
歩兵の携行と運用が可能な簡素な高性能兵器の開発が急務であり、砲兵も戦術も重要ではあるがその屋台骨である歩兵を一番強化するべきだ。
砲兵が迫撃砲の配備を望む理由として、120mm迫撃砲は下手な野戦砲や重砲に匹敵するかそれ以上に安くて高性能だから。
120mmの性能としては射程8kmから10kmで主力の7.7cm野戦砲並みの射程、炸薬量は5kgで下手な重砲より多い、そして既存の主力7.7cm砲よりも機動性と投射量に優れている。
つまり主力の代替品として砲兵科が求め、歩兵科は即応性の観点から量産配備を要求している。
砲弾の値段も4分の1と懐事情にも優しい逸品だ、40mmから120mmまで同じ基礎設計が流用されている。
地雷も榴弾も煙幕弾も、何でも速射できるためどこでも引っ張りだことなった。
その結果起きたのは、まさかの砲戦力の削減という名の軍縮である。
主力の中口径砲よりも火力が高く旧式の15cmsFH13重砲より射程が長いからさもありなん、歩兵科に配備するなら「とにかく射程と高火力!」と宣う金喰い虫の砲兵予算が削られた。
予算をつける人達は砲兵の大半を代替できると思ってしまったらしい...
一言だけ言わせてくれ
馬鹿じゃないの?
歩兵がそれだけ濃密な面制圧火力を運用できるなら、長砲身の8.8cmや128mmそして長射程155mmの需要拡大が発生するのは明白でしょうが。
若干12歳で軍内部の権力競争に巻き込まれてしまった...
内憂外患極まわれり、砲兵火力で劣る皇国軍が機動力で勝る魔王国軍に勝てるわけない。
...と主張しても、受け入れられず。
因みに歩兵思想論を選択するのをオススメされなかった理由は、単純な話で戦列を組み縦列の中で進撃するのは「決戦の場を作るのに必要な戦力を用意して、敵軍を誘引さえできればいい。」という思想故の発言だ。
魔術師や魔法使い等のハイパー存在が多い貴族の精鋭主義的な決戦思想に反するから、戦場の歩兵戦力は最低限でいい...というのが主流派だから。
戦場の砲兵戦力が敵歩兵を決戦前に漸減して、決戦に優位な戦場を構築する為の漸減作戦思想論だ。
どれも主力じゃなくて精鋭主義的な決戦思想故の付属品やんけ、当然である軍というか国家の高級財務官僚や高級軍人が魔術師の貴族ばかりじゃその他兵科に理解を示せる訳がない。
私がより良い提言をする度に更なる軍備縮小が行われる未来が見える見える、目論見通りに行く未来が急に見えなくなってきた。
このまま歩兵思想論を選択して生贄を優秀に育てて...
「私戦術理論を選んでるわ、あなたこそ兵器開発論を学んだ方が良いわよ。」
逆に私が進路先を諭されてしまう、彼女の提言通りに動いた方が案外自分の目的を達成できる事に気付いてしまった。
自分の知力<超常的な認識異能<超えられない壁<天才の提言
何という事でしょうか?
どうやったら人を思い通りに動かせるか全然分からん、備えたいという性質に解しやすく語りかけるのが苦手だ。
むしろ備えたいと思っている人の方が少ない、多分死ぬか生きるか明日に必死で国家の未来とかそんな事考える暇がない。
誰かが利益を享受するのはダメとは言わない、私も自分の身が蹂躙される可能性を減らすのが最優先だからだ。
※理想
誰かの利益と国庫<二形美少女の命
※現実
誰かの利益と国庫>二形美少女の命
このままでは両方とも世界大戦の勃発と同時に確実に失われる物だからって、私も目的のための犠牲になりたくはない。
...皇国全体としては二形美少女の命が失われるの見向きもしない、生き残った人達のみから継続力を買われるのだ。
迎合するしかない、自分が楽する為ではなく人を楽させる為に。
その為には人に楽させる苦労をするのが一番か...
「エリシアは何をしたいのか分からんぞ?」
「魔王国軍の機動的な縦深戦闘の胆である、装甲戦力及び騎兵戦力を阻止する。
手段としての機関銃と迫撃砲の歩兵科での標準大量配備と、射程20km以上の128mm砲と射程24km以上の155mm榴弾砲の量産。
敵戦車を遠距離から撃破可能な駆逐戦車もしくは敵の機動戦力に追従できる通常戦車の開発、最低でもドニエプルラインでの徹底した死守作戦を遂行したい。」
「やりたい事が多い、分かった全部広言するべきだな。
機動的な縦深戦闘という言葉の意味は分からないし、砲兵の射程を指定した理由の理解は示せそうにない。
私として気になるのはドニエプルラインという言葉だ、なんだそれは。」
「国境での防衛戦は魔国軍の縦深攻撃で後方を撃滅されて失敗する、工業力を維持しつつ皇国の戦力維持に必要な方法が巨大河川を用いての死守と考えた。」
頭hoi4な考えになるが、大河川と市街地を基軸にしての死守戦術。
リアルなら橋等でhoi4よりも更に強固な陣地を築ける、尚且つ泥沼で敵の進軍速度が下がるというオマケ付きだ。
「...言い方から察するに縦深○○は魔王国軍の戦術で合っているか?
何で知ってるかを問い詰めたいが、私達の仲だから聞かないでおいてやる。
工業力は重要だから東部方面軍を死守命令で使い潰してでも死守する必要が見込めて、仮の話だがどこまで浸透されると考えている。」
「南方は
「あの邪悪な存在に私の故郷も呑まれると、憎たらしい魔王国め。」
「砲戦力を削減する暗愚な上層部を恨むといい、このままだと有り得る未来を話しているだけだ。
...という訳で手を貸してください!!」
「未来視か、ようやく奇怪なエリシアの全貌を見せてくれたな。
人に頭を下げられるのはお前らしくない殊勝な心掛けだ、何と言うか自分の知らないエリシアが知れて嬉しいぞ。」
何歳だよコイツ、殊勝な心掛けとか某運命作品のギルガメッシュぐらいしか言わないぞ。
「未来の友を頼るのは当然だろ、みんな死んでしまうから生き残れる人に頼る。
イネッサちゃんは人に好かれるからね、優しいから私よりも色々な人と助け合えるよ。」
「誰が貴様の様な胡散臭い囁きを私以外の人間が借りてやるものか
覚悟しろ貴様の様な胡散臭い魔術師を後方の安全な椅子から引き摺り出して、前線の味を堪能させてやると。」
「私死んじゃう予定の人間だからダメ」
「隣に居ろと言っている、私は魔術師ではないが戦技には自信があるから守ってやれる。
私にもやりたい事があるからな、エリシアのやりたい事は私がしてやるから手伝ってくれるなら交換条件で南方での工業地帯の保全に動いてやる。」
ヤダこの人超イケメン...
どうしよう、結婚したいかも。
その瞬間瞳に写った奇妙な光景、ゴリゴリマッッチョと肩を組んで結婚報告してくるとかNTRやんけ。
胸がどれだけデカくても困らない様に、筋肉がいくらあっても困らないもんな。
フラストレーションが蓄積する軍人ならなるべく屈強な相手の方がいいよな、ただそれでも色黒ゴリマッチョはどうかと思うわ。
「東部軍の提言は承認できん、敵に領地を明け渡すとは軍政令と戒厳令を認可した皇帝陛下の方針と統帥権を何と心得る。」
「我々が迫撃砲を開発したのですから、魔王国も似た兵器を生み出してくる筈です。
配備価格は主力野戦砲の半額で同量の炸薬量を有する榴弾砲の10分の1になります、擲弾の価格は主力野戦砲の4分の1で発射速度は2倍です。
また量産に際して値段の低下も見込め、同時にこちら側も敵の迫撃砲戦力の排除の為に砲兵戦力の拡充も必要です。」
占領地の放棄予定地には炭鉱に鉄鉱そしてダムを含む発電所に、重工業地帯及び精製所等が存在していた。
高性能兵器の量産に必要な研究所まで、その中には数十の国家プロジェクトで建築された最先端の拠点が無数に在る。
東部方面5個軍80師団を3個軍72師団へと再編成する中央の計画、ある程度の反発は想定していたがここまで苛烈とは思わなかった。
西方と北方を合わせたよりも多くの人材と資金が使われていたが、装備更新に際しての軍事費の削減にここまで露骨に反発するとは。
確かに重要な地域ではある、東部は食料の半分を賄っている土地で失陥は許されない。
だがそれでも、為す術なく蹂躙されると主張されては困るのだ。
資金は有限で、西方の脅威も拡大し続けている。
新兵器の迫撃砲を歩兵科に配属すべし?
砲兵科と役割が被るではないか、同時に砲兵科も更なる予算要求をしてきた。
断固として認められん、今の優先は西方であり東方地域への備えは過剰だと見積もっている。
そこで彼らは、ダムの破壊と焦土戦術を選択し河川を用いた戦略規模での遅滞戦略を採択する予定らしい。
敵しか育てられない特殊な騎兵戦力と敵砲戦力の飽和、必要な歩兵火力の増大と砲兵戦力の精鋭化は理解できない事もない。
1時間で一つの戦域で1個師団が消滅する戦争など、どんな戦争をする気なのか。
魔導戦力の引き抜きを認める意向はあるらしい、だが司令部付きの人員の異動に抵抗するか。
中央の方針を改めて示して、後々の東部軍の拡張を認めるしかないか。
迫撃砲の量産を認め、中口径砲を西方と同じ規格と認めさせて浮いた予算で大口径砲の開発費を捻出させるか。
東部と西方との取引を仲介して資金を確保、浮いた資金で人員の登用だ。
40日は時間を稼ぐと豪語しているが、何と後ろ向きな事か。
西方と東方に中央が貸しが作れる、この方針だな。
そう何個も軍団や艦隊を予備として各地に配置しておく事はできん、使えるならば子供だろうが活用する。
西方の犬め、貴様らも然るべき対応をさせてやるとも。
「よかろう、だが西方との予算の共通化は認めてもらうぞ。」
「いや良かろう、だが忘れるなよ我々軍官の失敗に際して地位にかまけ隙を作ったと糾弾されるのは我々だ。
有事の際は相応の覚悟をしろ、我々軍人と内務官と市民の献身で血と汗が守るのだ皇国の守護者は財務官たる貴様ではない。」
どの口で言う?
貴様こそ皇帝陛下の息子たる臣民が流した血で作られている、どれだけの者達が砲を作り砲弾を拵えるのに命を落とし手足を失ったか知らんのだろう。
有事ならばともかく、皇帝陛下の大権を平時から侵そうとする逆賊は貴様らだ。
やはり締め付けが足りんか...そうだろう?
あの狸め、我々を手玉に取ろうと西から出しゃばりおって。