皇国の戦役 作:考えないタイプの葦
「魔法使いはいいな、水も火も何もない場所から用意できる。」
「私の膨大な魔力と認識系の異能で習熟した技術を転用しているだけだ、傷口を多量の水で洗い流そうなんて贅沢はこの世界の魔術師からしてみれば冒涜モノだぞ。
こんな贅沢な使い方するヤツ、私以外じゃ居ないだろうな。」
魔術師なら無から何かを生み出せる、極論巨大な砲弾が炸裂する瞬間を生み出したりな。
ただ水を生み出すだけなんて勿体ない、今の水を生み出すのに使用した魔力でそれ以上の物品を生み出せた。
「水と火の大事さを理解できない愚か者ばかりだ、まったく私達が食べている小麦は何で出来ていると思っている。」
ハーバー・ボッシュ法で作られた窒素肥料と豊かな水資源だ、まあウクライナ地域だと窒素肥料使ってないらしいから中央の方が水の価値を知ってると思うぞ。
魔術なら100人分の水を生み出すだけじゃなくて、数万人分の食糧を生み出すなり人間が飲める状態にまで水を清浄化させられる。
確かに国民全員に魔術が使えるなら話は別だろう、だが仕方ないリソースは限られている。
「学生なのにこんな危険な事をする必要はあるのか?」
「なんだ私の目的を知らないのか?」
「話を聞く事ができるのに会話で未来視のリソースを割くのは勿体ない、だから聞かせて欲しいです。」
「古代文明ダンジョンでも迷宮でも何でも良いから軍事利用できる道具を探すんだよ、解析して組み込めればブレイクスルーになる。」
「それくらいならお安い御用だよ、イネッサちゃんが約束を果たす為の支援ならいくらでもする。」
軍事関連の迷宮は毒ガスや致死量の電撃どころか空間制圧用地雷もあって危険性は高い、だが私ならその辺の危険を予め排除しながら進めるから適任なのかもしれない。
都合のいい存在だ私、しかもイネッサが求めている物品を探すのも余裕だと気付いてしまった。
戦中に掘り出す予定だったのを片っ端から...
いや今の楽しそうな彼女に水を差すのは良くない、安直に結果だけを手に入れようとするのは悪いところだ。
「これがダンジョンか、いいな古代文明のロストテクノロジーは。
電球が白く光が強いぞ、どういう仕組みか分かるか。」
「LEDだね、シリコンが基本の素材で半導体と呼ばれる物で出来ているんだよ。」
「博識だな、それは過去視で知ったのか。」
「いや異世界視だな、アッチだとLED電球として安い物だと食器と同じ値段で取引されている。」
「それは素晴らしい、一つ拝借してもバレやしないよな。」
「大丈夫だと思うよ」
頭盗賊かよ、何て言うか強かだ。
「ボロボロと宝がそこら中から見つかる、何で他の学生の連中もダンジョンや迷宮に入らないか理解できない。」
「少なからず危険な代物があるから、国家まではいかなくても周辺の都市どころか地域一帯を吹き飛ばすぐらいのがね。」
「終末兵器ってヤツか軍隊と科学が大っ嫌いな神父様が口煩く言っていた、場所も知ってるな。」
「もちろん!!私が知る限り未来の防衛戦で起爆してるからな!!」
「笑顔で言う事じゃねぇ...
それなら魔術師や魔導師が不思議な力を使える理由って知ってるか、神が与えたとか言われてるが信じられなくてね。
どうしても知的好奇心が擽られるんだ」
「そこ、足元のレバー危険だから触れないで。
話を戻すが理由は遺伝、特定の遺伝子を体内に持つ存在が魔力だったり異能を手に入れるよ。
遺伝子ってのは生物の設計図だね、特定の遺伝子を持つか特定の遺伝子を持つ細菌やウイルスが体内に居ると魔法が使えるんだ。
だが問答無用で発現する訳ではないですからね、発現した上で習熟しなければ話にならないさ。」
「細菌やウイルスってのは病の気か、じゃあオマエさんは貴族だから魔術師の血を引いているのか。」
「あーそうだね」
「目を逸らしたな、エリシアは嘘をつくのが下手だな。」
「やかましいです、そこの岩の裏側に破損していない精密電子部品がありますよ。」
「そういうところも可愛いな、にしても認識した代物がどんな道具かを100%的中させるのは凄いな、電子機器か面白いモノを見たぞ私は。
魔力が使える魔術師の血統を継ぎつつ、未来予知まで出来るのは物語に出てくる英雄様みたいだ。」
「まあそうですね、ただ生まれた時からそれに触れているので身体機能や認識系に異常を発生させる形質が私は強かったので来世なり楽園があるなら絶対捨てます。」
「そうか勿体ない、あらゆる学問の最終定理も知れそうなのは羨ましいぞ。
神から見た人間とは何かを知り、そして神の存在を認識できるのは神学者としての絶対的地位を築けたろうに。」
神だって未知の存在からの攻撃を受ける、干渉するだけで竹箆返しを受ける罠ぐらい仕掛けられるんだよ。
...偉大なる存在にも隠れる理由がある、世の中好奇と善意と融和で成り立っている訳じゃない。
「神様にもプライベートがあるから、変に覗いたら怒られちゃう。
あと聖書と乖離した部分を理由に異端認定されて殺されたり、都合よく利用されて終わりね。」
意識を超越させる事ができるだけで実態は伴わない、個人なら手玉に取れても利益で動く集団を自分の思い通りに動かすのは難しい。
確かに能力だけ見れば物語の英雄にも劣らん、だが舐めるなよ私は外の世界に放り出された瞬間『新鮮な母胎だ!!』と数え切れない魔物や魔術師にハエみたいに昼夜問わず集られるからな。
逃げた先に例外なく敵が待ち構えてる、そして肉体一つじゃいずれ力尽きるから大儀の為に危険は犯せない。
神の存在定義を揺るがすのは危険な行為だ、どこかに譲れない領分がある。
...流石に神話みたいに神々に大洪水を引き起こされたら困るだろう?
「都合よくいかないんだな、嫌な話だ。
だからこそと言うべきかよく私に話してくれた、嬉しいぞ志高き選ばれた人間が私のような普通の人間に頼ってくれた事が。」
「私だって少し魔術と異能が使えるだけで普通の人間だよ、何も私だって特別な人間な訳じゃない。」
「ならば集団からあぶれた普通の人間同士で仲よくしようじゃないか、生き残るには人を率いる立場になるしかないぞ。」
この人も中々に覚悟が決まってるよなぁ...
どの口が集団からあぶれた者同士と言う、テメェは親友は居なくても友達沢山居るらしいが私は友達ですらガチで片手で数えられるぐらいだからな。
何であれ魔術が使える私は目立つから、市井で暮らすのは難しい。
...墜ちるのは怖くないが、墜ちた後が怖い事は伝わらんだろう。
私には魔物のDNA情報が混ざっている、触手の苗床にされた母親に残った遺伝子が悪魔合体してね。
あの変態趣味の女が人間サラブレッドの父と交雑して私みたいな化け物が生まれた訳だが...
そのおかげで魔術師としての劣性遺伝子が覚醒して、異能まで目覚めてその魔物の身体的な特徴(両性)を受け継いだ超希少種だ。
その生物的な価値は総数が減り続けている魔術師の家系でも唯一無二だろう...
さて世界観の確認をしていこう
総じて魔術師の遺伝子は順当に淘汰されている、人間という生物全体としては手に余る存在だから。
子供というか生物の無邪気さを舐めてはいけない、例えば生誕と同時に親殺し子殺し何だったら毒を意識せず分泌して遅効性だった場合は一族どころか地域一帯が壊滅する事だってある。
一部の魔術師が発する瘴気と呼ばれる概念は副作用として色んな効能というか効果を齎してくれる、例えば体液が毒として作用する事もあるし私の場合は選択式で体液が媚薬の効果を発揮する。
...ただ毒も呪いも特異体質も使い方次第で、例えば免疫系を含む生物機能の活性化等ができる良い効果を齎したりもな。
そんな特別な存在が昔は聖女とか聖人とか呼ばれて、宗教の勢力維持の為に抱え込まれたりもしている。
...多種多様な異能や魔術師の才能が過去にも存在したが、まあ遺伝子の継承の失敗や変質等で貴族として登用する等の支援をしても淘汰が順当に進んでいる。
魔術師もしくは異能者としての才能があるが、魔力がなかったり異能や魔術を持たない普通の『劣性血統』存在。
魔力を生み出す上で、魔術や異能のどちらかが使える『限界血統』の魔術師。
魔力を持つ上で、更に魔術の才能と同時に異能や複数の異能を同時に発現させた『淘汰血統』存在だ。
魔術師や異能者として高い...もとい先鋭化した能力なほど、母体や種から魔力と魔術の才能か異能の才能を魔術師として確実に受け継ぐ事は難しい。
そのため二つの才能を優性遺伝子として継承可能な一部の存在を例外として、魔物は『人間等の母胎を利用するなりして、異種交配で大量の命を育むか無性生殖で淘汰を逃れている。』つまり
魔術師の才能も安定した継承ができなければ、そういう異種交配だったり生殖機能の活性化や生理現象の制御そして免疫系等の強化に由来する才能に頼るしかない。
例え無制限に綺麗な水を出せても、中東や北アフリカの砂漠ぐらい水が不足している場所じゃなければ生存に直結しないから継承もされないから『限界血統』なんだ。
私はマイクロキメリズムで面白い具合に魔物の残滓から異能の才能を引き継ぎつつ、両親から魔力と魔術の両方を引き継いでるから確実に才能が淘汰される『淘汰血統』だ。
どんなに継承が難しい遺伝子でも孕める優秀な母体を見つけるか、余程遺伝子的に相性のいい女か男を見つけない限り私だろうが相手だろうが受精した卵子が着床しない可能性すらある。
総じて私の異能の才能は遺伝子異常によって天文学的な確率で発生した代物、だから普通だと石女となってしまう可能性が高い。
だが母親から継いだ魔物の遺伝子が、まあ未来視が基軸の異能だが付属して性の多様化等が受け継がれたおかげで人を孕ませられる可能性がある。
因みに私の唾液や精液等の分泌液を摂取なりすると、性病が自然治癒するレベルで健康になって肉体的に
栄養価も何故か万能食並みで、3大必須栄養素に加え鉄分含むミネラルや葉酸含むビタミン等も摂取できるからコレのみで生きていける...どこからこの栄養が生まれるのかは知らんぞ。
魔物からの遺伝で両性になっている事から女性器は完全に人間の形をしている訳ではない、そしてチンコと金玉はガワだけ人間と同じカタチをしているだけで中身は
以上の理由で魔物や魔術師はエロい存在ばっか、異種間NTRも何でもござれな連中の子孫である。
備考として
第一に突然変異で生まれる魔術師や異能者は危険な存在な事もあり、教会から悪魔憑きとして命を狙われる事もある。
第二に魔力がある上で異能や魔術の才能がないのに、空想的な技術を扱える連中が魔法使い。
第三に魔力の才能はないが異能や魔術の才能を持ち、魔力なしに空想的な技術を扱える連中が呪術師シャーマン祭祀等と呼ばれる。
第四にこれらを全部纏めて継承される魔術の才能や異能を持つのが魔術師と呼称され、一世一代の魔術及び異能を扱うのが魔導師と呼ばれる。
魔術の才能が継承されている場合は魔術師と呼称され、継承されていない場合は魔導師だな。
私の場合は魔術のみに限っては魔術師を名乗れるが、異能がオマケでくっ付いてる事を理由に才能の継承が不可能だから魔導師として扱われる。
また魔術師や魔導師異能者の定義は国や地域によって変わるから、ぶっちゃけ雰囲気でも良い。
彼女も魔術師魔導師異能者と説明されてもピンときてない、ひっくるめて魔法使いでもいい。
さてこの世界のファンタジー要素は人間に関係する分野を核心まで履修できたと思う、では軍事方面に関して話していこう。
「戦争ってのはよく分からない、講義では精鋭の魔術師達が敵を殲滅すると聞くが人間は思いの外頑丈だから英雄の様に一太刀で殺せるとは思えない。
そこのところを教えてくれ、昔から今に続く未来の戦争形態の変化も教えてくれたら嬉しいぞ。
私は戦術家だから、それに関係する事柄を教えて貰えると尚良い。」
「部分的に見ると間違ってるし、一つの側面を見て考えると正しい。
昔の戦争は常備決戦戦力と傭兵がどれだけ敵軍に打撃を与えられるかで決まっていた、そこから傭兵が国民兵になったのが今の時代だな。
寮じゃ話せない思想的な事もここなら話せるし、何度もスパイだと勘違いされて吊るされる未来を見たから理解者が必要だから理解してくれると嬉しい。」
「傭兵から国民兵と練度指揮物量その全てが比べ物にならん、皇国は東方聖争に勝利し今の覇権的地位を築いた。」
「この世界だと魔術師の精強さから魔王国の前身の帝国の大公軍との戦争が早々に決着したな、大公軍は戦列歩兵が主力の軍隊だったのに対して皇国はライフルと手榴弾を携えた上で散兵戦術を用いて最終的な勝利を掴んだ。
問題はここからで、この世界の軍事的な水準は低い。」
「...当たり前だろう?
未来を知れるお前からしてみれば、今のこの世界は退屈に見えるだろうさ。」
「私は別世界の戦争と兵器の発展の遍歴も知っている、何もかもが脆弱だ。
理由は貴族や騎士家で継承されてきた魔術師が戦争の道具として優秀過ぎるから、存在が露呈した時点で下手な隠匿は私みたいな存在が居れば意味もないし諜報分野なら勝負にならない。
町を焼き尽くす大火や覆い尽くす氷や洪水の前じゃ、銃を持っただけの一般人なんて何人居ても話にならない。」
「人間は皮膚が爛れ四肢を失おうと、全員が死ぬ訳じゃない。
然るべき処置か魔法使いの治療のみで完結する、戦災で治せた怪我や病気を放置してしまう人は少ない筈だ。」
「そう第2の問題は魔法や魔術による治療が優れている点、四肢や目を失おうが損壊度や年齢によっては完全回復させられる事は珍しいんだ。
私がよく覗いている別世界だと120年後の2040年にようやく人体での再生医療の臨床試験が始まった、だがこの世界だと数百年前に標準化されている、これは奇妙な話だぞ。
あと古代文明だな、高度なインフラ水準なら理解できるが精密加工技術に関しては完全に私の理外にある。」
「壊死したら切り落として止血して終わりだと?
見て理解できない古代文明というのは気になる事象だが、私が聞いても理解できなさそうだ。」
「その後は野垂れ死ぬのみなのさ、いやはやこの世界の魔法使いの栄達は偉大だね。」
「古代文明や魔法はもういい、戦争分野で進んだ別世界の事を教えろ。」
「別世界では皇国と帝国の聖戦にて塹壕戦に移行したんだ、皇国が一つに統合されなかった世界で西の国が共和国だったり北方が3つとかに分裂していたりと色々環境は違うが。
毎秒5発から10発撃てる銃が大量にそこら中の穴倉に置かれてるんだよ、戦列歩兵は薙ぎ払う様に排除されて次の時代の戦争に移る。
互いに穴を掘り銃弾の雨を避ける時代が始まる、これが塹壕戦だ。」
「つまり過去類を見ない水準で人間の能力を超越した戦場が生まれたと、なるほど一人で何十人と殺す事ができる時代か。」
「そこから塹壕の内部を上から攻撃できる迫撃砲が開発されて、敵軍の隠匿性を意識した浸透部隊を排除するのに地雷が生まれた。」
「敵軍の突破力を漸減する迫撃砲と砲兵、その両方を削ってはいかんな。」
「その戦場で生まれたのが戦車、機関銃を無力化する頑丈な鉄板に全周守られた機械だ。
戦車と呼ばれて、未来では高高度の硬式気球や飛行船を狙う様な武器で対処していた陸上の怪物だ。」
「一つの皇と多数の貴族達からなる祖国からしてみれば、そんな世界の話など危険思想もいいところだ。
面白い、お高い魔術師共が苦戦している飛行船を上回る兵器の出現と、戦車だったな。」
機関銃と塹壕戦そして迫撃砲と地雷そして戦車か、大雑把には理解できた気がする。
機関銃の出現で歩兵はただの的となり、薙ぎ払う様に排除されてしまう歩兵を保護する為に塹壕が生まれた。
塹壕に立て籠もる歩兵を攻撃する為に、ほぼ真上からの攻撃を可能とする迫撃砲が生まれた。
塹壕陣地への浸透を阻止する為に生まれた地雷なる兵器か、コレは恐らくトラップの類だろう。
だがそれは歩兵用なのだろうな、全周が金属板で覆われているなら鉛弾はドアノッカーだろうし、手榴弾に毛が生えた程度では鉄板を破壊して中の人間を殺す事はできまい。
この事から、未来でも大口径砲弾を百発百中で直射する事は困難なのだろう。
だから破片榴弾をひたすら投射する、機関銃みたいに数打ちゃ当たる面制圧兵器なのか。
そう考えたら、あまり戦車攻撃への転用では有効な作用を発揮しないかもしれない。
...迫撃砲は歩兵突撃や騎兵には有効でも対戦車兵器としての主力にはならないのか?
別枠で対戦車兵器が開発されるのだろう、それが高射砲を転用した対戦車砲となるのか。
だが120mm重迫撃砲の開発で旧式化した主力野戦砲を転用した10cm未満の中口径なら、戦車への直射運用も可能で高高度の標的を狙う高射砲を戦車兵器として転用すれば備えにもなる。
同時に戦車も高射砲による直接射撃に対して対抗手段を得る、戦車は発展すれば魔王国軍の騎兵の正面に立たせられる戦力にもなるな。
高射砲を水平に射撃するとにかく重い動く鉄塊か、重量15tの魔物が相手でも30tだったり40tの戦車が居れば魔物の騎兵の前に立って歩兵を守れる。
だが今は戦車よりも飛行船を上回る兵器の方が気になっている、魔物の軍勢が手を出せない存在は軍事的ブレイクスルーだからだ。
その飛行船を上回る兵器は、是非とも戦術家志望として知っておきたい。