龍姫終焉譚ー滅びの運命を破壊する者ー   作:龍姫の琴音

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第十一話神の意思と静かな終焉

初任務を終えて数日後

琴音は二人から呼び出され、部屋に入ると天照と月詠は神妙な面持ちで待っていた

 

「琴音、今回はお前に私達の仕事を見てもらう」

 

天照が真剣な表情で切り出す

 

「今回の仕事は──救済ではなく、世界を終わらせる仕事です」

 

月読の言葉に琴音の体に緊張が走る

二柱の神が自らの手で世界を終わらせると判断する事は滅多にない

 

「今回の仕事はそれだけ危険という事ですか?」

 

「いいえ、どちらかといえば──貴女に知っておいて欲しいんです」

 

月詠は静かに、しかし真っ直ぐと琴音の目を見て言葉を紡ぐ

 

「私達が、目の前で起こる事象を“神として判断している“という事実を」

 

天照と月詠は門を作り、三人は異世界へと足を踏み入れる

 

門の先に広がっていたのは灰色の世界だった

森は枯れ果て、海は干上がり、大地には深い亀裂が走っている

場所によっては断層が剥き出しになっており、空を見上げれば本来あるはずの太陽も月も存在しない空が広がっている

 

「これが、終焉を迎えた世界……」

 

自然エネルギーを一切感じず、生き物の気配もない

あまりにも静かで、あまりにも寂しい世界だと琴音は感じた

 

「琴音、地面に手を当ててみろ」

 

天照に促され、琴音はそっと地面に触れる──ほんの微かではあるが世界の奥底から地脈のエネルギーを感じる

 

「この世界……まだ生きている?」

 

「えぇ、この世界はまだ生きています」

 

月詠は頷く

 

「ですがこの世界は“歪み“によって死を迎えます

エネルギーが尽きた時、世界は消滅し──歪みを纏った余波が周囲の異世界に深刻な影響を及ぼすのです」

 

本来ならもっと世界は長く続いたはずの世界

それを歪みによって終わりを迎える──理不尽な運命に思えた

 

「もっと早く対処する事が出来たら……この世界は助かったんですか?」

 

「それは無理だ」

 

天照が琴音の考えを即座に否定する

 

「私達の役目は観測と干渉だ

起きている事象を観測して干渉をするかを決める。起こる前に防ぐのは別の神の仕事だ」

 

「それは……目の前で起きている事を見て見ぬ振りするという事ですか」

 

「端的に言えば、そうだ」

 

感情の乗らない淡々とした口調で天照は返す

琴音は何か言い返そうとするが、それより先に月詠が口を開く

 

「貴女の言いたい事は分かります。ですが──これだけは覚えておいてください

 

月詠の瞳は真っ直ぐと琴音の方を見る

 

「私達はその世界に生きる者達を守るために行動しています」

 

二柱の神が力を合わせても救う事が出来ないと判断した

だからこそ、自ら終わらせる決断を下したのだ

 

「……分かりました」

 

理屈では理解出来る

神である二人が出来ない事を、自分に出来るはずがない

 

(あれだけ教わったのに……私は──無力だ)

 

自分の無力さを痛感しながら拳を強く握り締める

 

その様子を見て、月詠はなて声をかけるべきか迷う。すると、天照が月詠の頭を撫でる

 

「安心しろ。琴音はこの程度の事で折れるような奴じゃない」

 

「ですが……」

 

「少なくても私には“意志の炎“を灯した目に見える」

 

「……分かりました」

 

月詠は物事を見て判断する

天照は感情を見て判断する

おそらく天照にしか見えていない琴音の姿が見えているのだろう。月詠は天照の言葉を信じて準備を進める

 

しばらくして準備を終えた二人は並び立ち、琴音はその後ろに控える

 

「太陽の女神『天照』」

 

「月の女神『月詠』」

 

「天を照らす和らぎの光よ」

 

「夜を包み込む安らぎの静寂よ」

 

「迷えるものに安息を」

 

「留まるものに解放を」

 

二人の力が重なり──太陽と月が一つ融け合う

 

「「今ここに、双極は重なり、始まりと終わりは一つへと還る」」

 

力は極限まで高まり、やがて世界を終焉へと導く光へと変わる

 

「「日輪月食・終焉ノ儀」」

 

放たれた光は世界を優しく包み込んだ

包み込まれた世界はゆっくりと静かに音もなく崩れて消滅していった

その光景を琴音はただ静かに見つめていた

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