龍姫終焉譚ー滅びの運命を破壊する者ー   作:龍姫の琴音

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第五話桜花国防衛戦

防衛戦の日がやってきた

桜花国の戦士達は国を囲うように地上へ展開し、空には有翼人達が海から迫る敵を警戒している

 

琴音は戦術や陣形の細かな意味までは理解できない

だが、葛葉が未来視で見た情報を元に組まれたこの布陣が“守り“に特化している事だけは伝わってくる

 

「完璧の布陣……のはずなのに」

 

琴音は小さく呟き、目の前に広がる海を見つめる

胸の奥に、言葉に出来ない不安が渦巻いていた

 

「辛気臭ぇ顔してるな、琴音」

 

戦闘態勢の轟鬼丸が金棒を肩に担ぎながら隣に立つ

 

「戦争は初めての経験でね。正直、自分がどう動けばいいかとか全然わからないのよ」

 

これまで天照から教わって来たのはと一対一の戦いだ

だが、今必要とされているのは大勢の仲間と連携して戦場全体を見ながら戦う力だ

 

「目の前の敵をぶっ倒す。背中の敵は仲間に任せる。戦争なんざ、それだけで十分だ」

 

轟鬼丸らしい豪快な言葉に琴音は思わず苦笑する

 

「確かに、頼れる仲間と優秀な軍師がいれば心強いわね」

 

少しだけ肩の力が抜けた、その時だった

 

「敵影確認!」

 

上空の有翼人の声が戦場へ響き渡る

海の方を見ると、小さな影がいくつも浮かび上がっていた

 

「敵さんのお出ました」

 

「歓迎してあげないとね」

 

琴音は龍葬を抜き放つ

直後に後方から砲弾が放たれ、魔族達を乗せた船へ砲弾の雨が降り注いだ

砲弾を受け沈んでいく船、それでもなお、前進してくる船には有翼人が上空から奇襲を仕掛け、上陸を阻止する

 

だが、敵の数が多すぎた

遂に一隻の船が海岸へと辿り着いた

 

「お前ら!気合い入れろ!」

 

「おおおおぉっ!」

 

轟鬼丸の激励に戦士達は雄叫びを上げて突撃する

 

先陣を切ったのは琴音だ。真正面から迫る魔族へ、一瞬で間合を詰める

 

「ギャアアァッ!」

 

鋭い斬撃が魔族を両断し、短い悲鳴と共に絶命した

その瞬間、琴音の左目が反応する。魔族の体内で何かが異様な速度で膨張していった

 

「っ!?」

 

危険を察知した琴音は即座に後方へ飛ぶ

その直後、魔族の死体が轟音と共に爆発した

 

「捨て身の特攻!?轟鬼丸!」

 

相手の意図までは読めない

だが、体内に爆弾が仕掛けられているとなれば接近戦は危険すぎる

 

「全員撤退だ!」

 

豪鬼丸が即座に指示を飛ばす

だが、魔族達は撤退を許さない。武具を捨て、身軽になった体で戦士達へ抱きつき、次々と自爆していく

 

戦場は瞬く間に混乱へ包まれた

逃げ遅れた者、孤立した者、動きを止められたものから順に魔族達が群がっていく

 

「轟鬼丸、織葉から連絡はないの!?」

 

琴音は孤立した戦士を救援しながら叫ぶ

 

「自爆で子蜘蛛達も巻き込まれているらしい!情報網が完全に混乱してやがる」

 

「相手の目的は何……?」

 

混乱を起こすだけならここまで命を捨てる必要はない

連中には統率も戦術も感じられない。まるで“何かの準備”のためだけに命を投げ捨てているようだった

 

「……ん?」

 

その時、琴音は違和感に気づく

自爆によって飛散した魔族の血液が砂に触れた瞬間に吸い込まれていった。それは、普通ではあり得ない速度だ

 

「まさか……!」

 

琴音は左手を龍気で覆い、混沌を血液へ流し込んだ

すると、その中に異物の存在を感じ取った

それは、かつて琴音が訪れた異世界を蝕んでいた“歪み”と同じものだった

 

魔族の体には“歪み”の一部が混入している

そして、“歪み“は世界を侵食する。そこから導き出される答えは一つだった

 

琴音は常世桜の方を見る

意識を集中すると、常世桜に向けて進軍する一団の気配を捉えた

 

「轟鬼丸!魔族の狙いは常世桜よ!そこに向かっている部隊がいる!」

 

「何だと!?」

 

すぐにこの情報をみんなに伝えないといけないが、子蜘蛛達が機能不全を起こしており情報が伝えられない

 

「琴音!ここは俺達に任せろ!お前は常世桜へ向かえ!」

 

「でも!」

 

この場所を離れれば確実に轟鬼丸への負担は確実に増える

 

「常世桜には避難民もいる!機動力があって、俺よりも強ぇお前が適任だ!急げ!」

 

「……死なないでよ轟鬼丸」

 

「後で酒を飲み交わそうぜ、戦友」

 

拳をぶつけ合う

次の瞬間、琴音は龍気術──混沌の疾風で全身を包み込み空へ舞い上がった

 

───

 

常世桜の麓に作られた避難所には多くの民間人が避難していた

その中で若葉は避難誘導を行なっている

 

「若葉お姉ちゃん……大丈夫?」

 

「怖い人、来ないよね……?」

 

「大丈夫です。今、轟鬼丸様や琴音様が戦っています。ですから皆さんは安心して待っていてください」

 

怯えている子供達を安心させようと若葉は優しく微笑む

 

「おやおやぁ〜、こんな場所にうるさい小蝿共が集まっていますねぇ〜」

 

低い不快な声が響く

若葉が振り向くと、そこには巨体の魔族と、その配下達が立っていた

 

若葉は咄嗟に子供達を後ろに隠す

 

「子供達には指一本、触れさせません!」

 

「威勢の良い小娘ですねぇ。いいでしょう、まずは貴女から血祭りにして差し上げましょう!」

 

魔族達が一斉に襲いかかる

若葉は震える足を押さえ込みながら、強く拳を握った

 

(琴音様……!)

 

その瞬間だった

轟音と共に何かが上空から飛来する

魔族達の眼前へ着地したそれは、地面を砕き、土煙を巻き上げた

 

若葉が目を見開く

そこには、誰よりも頼もしい背中があった

 

「若葉の気持ち、ちゃんと届いたよ。後は私に任せて」

 

琴音が常世桜の防衛へ駆けつけた

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