龍姫終焉譚ー滅びの運命を破壊する者ー   作:龍姫の琴音

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第六話常世桜を蝕む歪み

琴音が到着した事が想定外だったようで魔族の顔に焦りが見える

 

「随分と早い到着ですね」

 

「時間稼ぎしても無駄よ。あんた達の目的は分かっている

自爆するよりも早く、海の彼方に吹き飛ばす方法はここに来るまでに幾つも考えているからね」

 

少量の“歪み”であれば琴音でも時間は掛かるが消し去る事は出来る。だが、大量の“歪み”となれば消し去るのは難しい

 

それでも、常世桜から遠ざける事が出来れば侵蝕される事はない。たとえ侵蝕されても少量の“歪み”なら自浄作用で浄化できる

 

「対策も完璧というわけですか……」

 

混乱に乗じて常世桜を“歪み”で支配する

それは敵の目的

だが、その狙いは既に看破され、対策までされている。この状況では敵に勝ち目はない

 

「なら、やることは一つですね」

 

何かを覚悟した顔つきになり、琴音は警戒する

 

「配下達!貴方達の命は魔王様のためにある!魔王様のためにその命を使いなさい!」

 

配下達は武器を自らへ向けると。次々と自分の心臓へ突き刺した

 

「自爆する気!?」

 

自爆しても防がれるのは敵もわかっているはず

なのに何故──そう考えながら爆発する前に海の彼方へ吹き飛ばそうとした。その時だった

 

心臓を刺し。絶命した魔族達の体が、体内に埋め込まれた“歪み”に飲み込まれていく

肉体は真っ黒な液体へと変わり、その“歪み”は残った魔族の体に収束すると、体内で今まで以上の速度で膨張し始めた

 

「どうです?少しでも衝撃を与えれば爆発しますよ。これでそこの小蝿共も道連れにしてくれる!」

 

「っ!」

 

琴音は瞬時に魔族に背を向けて走り出す

次の瞬間、魔族の体が限界を迎え、巨大な爆発が巻き起こった

琴音は若葉達の前に到着すると同時に、鞘を地面へ突き刺す

 

龍王の守護結界(ドラゴン・フォートレス)

 

半円状の結界が避難民達全員を包み込む

この技は琴音から無意識に溢れ出している龍力を龍葬の鞘が蓄積し、全体防御の結界として展開する技だ

しかし、“絶対防御“と呼ばれるこの技は龍力の消費が激しく、広範囲に展開した結界を長時間維持する事は出来ない

 

若葉達へ迫る“歪み”を防ぐ事は成功した

だが、“歪み”は結界の表面を滑るように這い、後方にある常世桜へ向かっていく

 

「止まらない!」

 

このままでは常世桜が“歪み”に侵蝕されてしまう

常世桜を守るために結界を解除したいが、一瞬でも解除すれば若葉達が“歪み”に呑み込まれてしまう

 

琴音は今出来る最善の手を瞬時に導き出すと、守護結界から飛び出し、常世桜の前に立つ

 

そして右手に限界まで龍気を込める

 

混沌の終焉(カオス・エンド)

 

右手を地面へ叩きつけた瞬間、混沌が“歪み“を呑み込む。さらに、その内部から終焉が侵食するように広がり、“歪み”を次々と無力化していった

 

「くっ……」!

 

だが。“歪み”の勢いは収まらない

濁流のように押し寄せる“歪み”は常世桜を侵蝕しようと迫ってくる

 

そして遂に、琴音の技の許容量を超えた“歪み”が琴音の右手に触れた

 

「あぁぁぁぁぁ!」

 

まるで、神経の一本一本を逆撫でるかのような激痛が右腕全体に走る

“歪み“は琴音の腕を黒く染めながら這い上がっていった

 

手から腕へ、腕から肩へ、首筋を通り琴音の体を侵食していく

そして、右目に侵蝕が到達した瞬間。視界の半分が一瞬で真っ黒に塗り潰された

 

(このままじゃあ……!)

 

完全に侵蝕されてしまう

これ以上は危険だと分かってなお、琴音は技の放出を止めなかった

“歪み”の侵蝕が更に進み、脳へ到達しようとする

 

──その時だった

 

突如として、侵蝕が止まった

 

「解析……完了!」

 

琴音がそう呟くと今まで使わなかった左手に龍気を込める

純粋な“歪み”なら解析する事なんて出来ない。でも、今回の“歪み”は魔族が体に取り込んでも影響のないように調整されている

 

なら、琴音自身が体内へ取り込み、解析する事で“歪み“を消し去る術式を構築出来る

 

混沌の終焉(カオス・エンド)!」

 

左手を地面に叩きつける

次の瞬間、混沌は瞬く間に“歪み”を呑み込み、その全てを消し去っていった

 

やがて、常世桜へ迫っていた全ての“歪み”は完全に消滅した

 

「はぁ……はぁ……」

 

食い止めるのには成功した

だが、あまりにも危険な賭けだった。あと少しでも解析が遅れていれば、脳を侵食されて命を落としていた

 

「琴音さん!」

 

遠くから若葉の声が聞こえる

 

薄れゆく意識の中、視線を上げると若葉がこちらに向かって走ってきている

 

「駄、目……。今、わた、しに、触れちゃ……」

 

最後の力を振り絞って羽織に触れる

すると羽織が意思を持った生き物ように動き出し、侵食された右半分の顔を覆い隠し、右腕全体へ包帯のように巻きついていく

 

それを確認した直後、琴音の意識は闇の中へと落ちていった

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