龍姫終焉譚ー滅びの運命を破壊する者ー   作:龍姫の琴音

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第九話進むべき道

包帯と眼帯を巻き直した琴音は若葉に連れられて城下町へとやってきた

城下町は建物や道が壊されており、防衛戦の傷跡が色濃く残っている。だが住民達は復興作業に励んでおり、被災地とは思えないほどに活気に満ちている

 

「琴音様、到着です」

 

若葉が案内したのは『分福』だった。分福の前では福乃と源蔵が炊き出しを行なっており、多くの人々が列を作っている

 

「あ、琴音じゃないか!?」

 

福乃が琴音の姿に気づくと慌てて駆け寄り、その手を握った

 

「若葉ちゃんから重傷を負って目覚めないって聞いて心配してたんだよ。もう体は大丈夫?傷は治った?」

 

「体は大丈夫。傷は残っているけど数日もすれば傷跡も残らず完治するから心配ないよ」

 

「良かった……あの場所にいたお客さんの話を聞いて心配してたんだよ」

 

元気になっている事を告げると福乃は目に涙を浮かべながら琴音の無事を喜ぶ

 

「琴音様!」

 

若葉が一人の老人を連れてやってきた

 

「あの時、私達を守ってくれてありがとうございます。貴女が命懸けで守ってくれたおかげで私は今もこうして生きております」

 

琴音に向けて老人は何度も頭を下げながら感謝の言葉を口にする。老人の後ろから子供達が顔を出す

 

「お姉ちゃん!守ってくれてありがとう」

 

「ありがとう!」

 

子供達が満面の笑みで琴音に礼を言うと、それをきっかけに続々と琴音の周りに人が集まり始める

 

「助かりました」

 

「本当にありがとうございます」

 

「おかげで命拾いしたよ」

 

感謝の言葉が次々と向けられ、その光景に琴音は口元に自然と笑みが浮かぶ

 

(そっか……私は、確かに守ったんだ)

 

守れなかったものは確かにあった。だが、それでもあの時一番守りたかったものは守る事が出来た。その事実が少しだけ琴音の心を軽くした

 

すると琴音の目の前に源蔵がおにぎりを差し出す

 

「何があったか知らないが落ち込んだ時は腹を満たせ。考えるのはそれからだ」

 

琴音は差し出されたおにぎりを受け取るとかぶり付く

具の入っていない塩おにぎりだが、絶妙な塩加減と口の中でホロリと崩れる握り加減は絶品だ。あっという間に食べ終えると琴音は自分がするべき事を見つけ、決意に満ちた目には光が宿る

 

「色々とありがとう源蔵」

 

「腹減ったらまた来いよ」

 

源蔵に見送られて琴音と若葉は城へと戻る

 

「若葉、会議に戻る前に誰も来ない部屋とかない?」

 

「そうですね……あ!あそこなら」

 

少し考えて若葉は思い当たる場所があるようで琴音を案内する。そこは様々な物資が保管された倉庫だった

 

「ここは倉庫なので滅多に人は来ません」

 

「ありがとう。ちょっと外で待っていてくれない?」

 

不思議そうな顔をしながらも若葉は倉庫の外に出ると琴音は倉庫の棚の上に目を向ける

 

「私が外に出るまでは一人にしてくれない?」

 

そう言うとカサカサッ!と音を立てて織葉が琴音の見張りに遣わせていた子蜘蛛が倉庫から出ていく

 

「ありがとう織葉」

 

感謝の言葉を口にし、左手を目の前に掲げると天照と月詠専用の通信魔法を起動する

 

『通信してくるの待ってたぜ琴音』

 

琴音が通信してくるのが分かっていたかのように天照が通信に出る

 

「お久しぶりです師匠」

 

『歪みを取り込むなんて随分と無茶をしたな』

 

「あの時、あの場で私が出来る最善の手段だったので」

 

苦笑しながら答えると天照は手のかかる子供を見るような顔で琴音を見る。すると、天照の画面外から足音が聞こえてくると月詠が通信画面に割り込み、画面一杯に月詠の顔が映る

 

『琴音!貴女、大丈夫なの!?体に異常は?体調に変化は?傷は傷まない?』

 

「うん大丈夫。心配してくれてありがとう先生」

 

琴音の声を聞いて安心したのか月詠は冷静さを取り戻し画面から離れる

 

『全く……いくら歪みを消すためとはいえ体に取り込むなんて自殺行為も良い所です。ですが、精神に何の異常がないのは不思議です』

 

「あ、それについては理由があります」

 

琴音は夢で見た事を二人に話す

 

『なるほど。龍人族である琴音の中に宿る龍王の魂が精神汚染を防いでくれたと言うわけですか。龍人族にはまだ解明されていない未知の領域がある可能性がありますね』

 

月詠は興味深そうに琴音の話を聞きながら考察を始める

 

『研究者モードになった月詠の事は置いといて連絡してきた理由を聞いてもいいか?』

 

琴音はこれから自分がやりたいと思っている事を話す。口を挟まずに最後まで聞いた天照は深く頷く

 

『やっぱりそういう決断を下したか……』

 

天照は困ったような声で言いながらも満足したような顔をする

 

『月詠、あれの出番だぞ』

 

「分かっています」

 

月詠は資料を琴音に送り、琴音は資料に目を通す

 

「これなら……」

 

そこには琴音が欲しい情報と解決策が書かれていた

 

『琴音、私達はお前の決断を尊重する。後は自分の決断を信じて全力で前に突き進め!』

 

『時には立ち止まったり、後ろを振り返りなさい。自分の現状や歩いてきた道を振り返る事でしか見えない景色もあるわ』

 

「ありがとうございます。師匠、先生」

 

通信を終えた琴音は大きく息を吐いた

進むべき道、やるべき事は決まった。後はその道を進むのみ

琴音は決意を胸に会議の間へと向かった

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