会議の間の扉の前に行くと琴音は若葉に声をかける
「若葉、お願いがあるんだけどいいかな?」
「私に出来る事であれば何でもしますよ」
琴音は若葉に左手を差し出す
「私と一緒に来てくれる?」
「琴音様と一緒ならどこへでも」
差し出された左手を握り、若葉が了承すると琴音は会議の間へと戻った
中に戻ると休憩を挟んだ事で少しばかり場の空気が和らいでいる。琴音が轟鬼丸の元に向かうと轟鬼丸は琴音の雰囲気が変わった事に気づく
「轟鬼丸、貴方が私に常世桜の防衛を任せた判断をしても結果として守れなかったのは事実。だから私には、その責任を取る必要がある」
「その手段があるんだな」
琴音の意図を察した轟鬼丸は口元に笑みを浮かべる
「私には協力者がいる。その協力者の話によれば世界には目には見えない力が存在し、その力が流れる道を地脈と呼んでいる」
会議室にいた者達は琴音の口から出た地脈という言葉に耳を傾け、琴音の言葉を聞きのがなさいようにする
「地脈は世界中に細い道のように張り巡らされており、地脈が集まる中継地点のような場所がこの世界に七つ存在する。その内の一つがこの国……正確には言えば常世桜なの」
桜花国の象徴であり、見守ってきた常世桜は世界にとっても重要な存在でもあった
「おそらく、最初はただの桜の木だった。だけど地脈から力の供給を受け続けた結果、何千年も枯れる事のない大樹へと成長したなんだと思う
地脈が正常であれば力は世界を循環している。常世桜の侵蝕も循環が正常であれば時間が経つにつれて元に戻るはず。なのに三日経っても症状は改善されない」
「その地脈の循環がうまく機能していないということか?」
轟鬼丸の言葉に琴音が頷く。おそらく循環を妨げられているせいで常世桜の状態が改善しないのだろう
「残り六つの地脈の中継地点が魔族に占拠されていると考えるのが妥当だと思う。もし、魔族が常世桜を制圧した場合、地脈の循環は完全に機能を停止する……そして、この世界は崩壊する」
その言葉に大名達の間に動揺が広がる。しかし、轟鬼丸は慌てずに琴音に質問をする
「この国は最終防衛地点という認識でいいんだな?」
「このまま何もせずにいた場合ね。だけどこのまま防衛を続けても常世桜は枯れたままで事態は改善しない。だから私は地脈を奪還しようと考えている」
「確かにやられっぱなしというのは俺の性に合わん。だが、奴らに対抗できるにはお前だけだ。お前がこの国を離れている間に再び襲撃を仕掛けられたら俺達では対処出来ないぞ」
歪みに対抗できるのは琴音だけ。その琴音がいない時に再び襲撃されたら常世桜を守る手段が花国にはない
「それは大丈夫。さっきも言ったけど常世桜が治らないのは地脈の循環が止まっているから。地脈を一つでも解放すれば二つの間で循環が始まり常世桜は浄化されていく
それに、今回の防衛戦で戦力はかなり削られているはず。そんな状態で私が地脈奪還に動けば相手だって防衛に戦力を回さなければならなくなる」
琴音が地脈の奪還に動き、桜花国は常世桜の防衛をする。戦力的にもこの役割分担が最も合理的だ
「反撃に転じるなら今というわけか」
「今回の作戦を実行にするにあたって、私の旅に一人だけ同行者をつけて欲しい」
「その理由は?」
「外の世界では人間は魔族に支配されている。私が地脈を奪還するという事はその土地で支配を受けている人間を解放する事にもなる
解放した人間達と円滑に話を進めるために私の代わりに人間達と対話できる者が必要になる。なるべく人間に近い者が適任だと思う」
容姿だけであれば葛葉や若葉のようななるべく人の姿に近い者の方が警戒される度合いが違う。琴音は更に理由を付け足す
「それと、桜花国には奪還した国に復興と援助、地脈の防衛をお願いしたい」
奪還後は人が再び暮らせるように援助と物資を届け、解放された人間達と共に地脈の防衛を行う
そうやって解放する場所を広げながら地脈の流れを正常にしていけば魔族の力を弱体化させながら本拠地に攻め込む事が出来る
「確かに奪還した場所を防衛する必要がある。そのためには戦力を送る必要があるが桜花国の防衛するための戦力を削りすぎないためにはその土地に住む者と協力して防衛する必要があるというわけか」
轟鬼丸は腕を組み、小さく頷いた
「……お前の作戦はわかった。それで、同行する者はどうする?」
琴音は同行する者を既に決めている
「私は、若葉を同行者にお願いしたい」