月詠の座学の講義が終わり、琴音が部屋から退出すると入れ替わるように、天照が部屋の中に入ってきた
「講義は順調か先生?」
悪戯っぽく聞くと月詠は小さくため息をつく
「揶揄わないで天照。順調……かは分からないわね。私は龍気術が使えない。書物に書かれた事を私なりに解釈して琴音に教えてあげているに過ぎないわ
もし解釈が誤っていたら──そう考えると不安で仕方ないの」
弱音をこぼす月詠に天照は優しく頭を撫でた
「お前はよくやっている。力の使い方も、危険性も教えた。お前に出来る事を全力でやり切ったんだ
なら、あとは琴音を信じて見守ればいい。──私と一緒に、な」
「……」
月詠は何も言わずに天照の胸に顔を押し付ける
「あなたのそう言うところは嫌いです。……でも、全部受け止めてくれる貴女は好きです」
「そいつはどうも」
天照は月詠が満足するまで頭を撫で続けた
──その頃、琴音は
天照が今回の戦闘訓練の場所に指定した庭園に到着していた
しかし、そこに天照の姿はない
「あれ……?」
いつもなら先にいるはずの天照がいない事を不思議に思っていると──
「すまん!待たせたな琴音」
両手に一本ずつ刀を持った天照が遅れてやってきた
「いえ、私も今きたところです。それより、師匠が持っている刀ってもしかして──」
「これまでは通常の剣術だけだったが、龍気術を理解したお前には早速、龍気術を組み込んだ戦い方を身につけてもらう。これは、そのための武器だ」
そう言って、一本の刀を琴音へ投げ渡す
受け取った刀には鞘と刀身を封じるように札が貼られている
「龍王の爪、牙、鱗を素材に、私の加護の炎で溶かし、月詠の加護の水で精錬した
世界でただ一振り──お前だけの刀だ」
「私だけの武器……」
初めて手にした刀のはずなのにまるで長い年月を共にしてきたと思うほどに琴音の手に馴染んでいる
「龍を一撃で葬る力を持つ刀。名を──『龍葬』」
「龍葬……」
まだ鞘から抜いていないはずなのに、手の中から龍王の存在感と威圧感を感じ、まるで龍王の存在がそのまま宿っているかのようだった
「その力はお前の想像を遥かに超える
扱い間違えれば斬るべきでないものまで斬ってしまう。──お前にその力を御する覚悟はあるか?」
本音を言えば怖い。この力は守る力にも、破壊する力にもなる。自分に扱えるのか……分からない。でも、答えはもう決まっている。
あの日、二人に修行を願い、自らに誓った時から
琴音は右手で鞘を握り、左手を柄に添える
「守られるだけの存在は嫌だ。私は──二人と並んで、共に歩きたい」
その言葉と同時に封印の札が黒炎に包まれる
黒炎に包まれた札が燃え尽きた瞬間──抜刀
白い鞘から現れた刀身は対照的に漆黒だった
その姿を見て、天照はふと、赤子の頃の琴音を思い出す
守るべき存在だった少女は──今、自らの意思で未来に向かって進んでいる
「覚悟を持って抜いたな」
口元に微かな笑みが浮かぶ
「なら、その覚悟が本物かどうか──確かめてやる」
天照もまた刀を抜く。その刀の名は『天叢雲剣』
「さぁ、お前の全てを私にぶつけてみろ」
次の瞬間
二人は同時に踏み込み──刃と刃がぶつかり合う