龍姫終焉譚ー滅びの運命を破壊する者ー   作:龍姫の琴音

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第九話異界へ至る門

再試験に合格した琴音は天照と月詠と共に城の奥へと続く扉の前に立っていた

 

「ようやく……ここに入れる」

 

小さく呟いたその声には、今まで決して踏み入る事を許されなかった天照と月詠の仕事場に入れる事に対する期待と僅かな緊張が混じっていた

 

「行くぞ琴音」

 

天照が静かに扉を開ける

二人が部屋の中へと歩みを進め、琴音は覚悟を決めて後を追う

 

部屋の中に一歩、踏み込むとそこには部屋という言葉では言い表せない空間が広がっていた

その部屋には壁というものが存在しなかった。前後左右どこを見ても境界線が存在せず、まるで宇宙のように空間は果てなく広がっている

 

その空間の中に小さな光が幾つも灯っており、無軌道に動いている光もあれば一定の速度で同じ所をグルグルと回っている光もある

 

部屋の光景に驚いていると月詠が琴音の横に来て部屋の説明を始める

 

「琴音も知っていると思いますが私達の役割はこの移動世界『』から全ての異世界を観測し、異常があれば干渉する事です 

この部屋に無数に存在する光の数が異世界の数を表しています。新たな世界が生まれ、変化し、消滅する。そうやって世界は再生と破壊を繰り返しています」

 

「……」

 

一つの世界には数え切れない程の命が存在し、それぞれが一度きりの人生を歩んでいる

しかし、世界はなんの前触れもなく終わる事がある

 

月詠から知らされる世界の成り立ちは自分が想像する以上に大きく脆く感じた

 

「どうだ?琴音。これが私達の仕事だ」

 

「予想以上に大変で責任重大な仕事だという事がわかりました」

 

二人が世界を消滅させる事を決定すればその世界に生きる者達共々消滅させる。判断を間違える事の出来ない──まさに神にしか出来ない仕事だ

 

琴音の答えに天照は口元を緩める

 

「この部屋を見ただけでその答えにたどり着けた開け上等だ。月詠」

 

天照に呼ばれ月詠は琴音の方に視線を向ける

 

「では早速、貴女にに任せたる仕事を説明します」

 

軽く手を振ると空中に映像が映し出された

 

枯れ果てた森、大きく海面が抉られた海

明らかに自然現象では説明できない程の大きな異変である事が分かる

 

「これは、ある異世界で発生した歪みです」

 

「歪み……ですか?」

 

「異なる世界同士が干渉した際に生じる異常です

本来なら世界が取り込むか排除しますが、それが出来なかった場合──こうして“歪み“として世界に爪痕として残ります」

 

世界につけられた爪痕……世界そのものが傷ついているのだ

 

「この世界は自力での修復が不可能と判断しました」

 

つまり、このまま歪みを放置すれば世界そのものが壊れてしまうかもしれない程の大事件が起きているという事だ

 

「貴女にはこの歪みの正常化──異物の除去をお願いします」

 

「はい!」

 

正式に月詠から仕事の手伝いを頼まれ、力が湧いてくる

 

「覚悟はできているようだな。月詠、門を開く準備するぞ」

 

二人が向かい合い、両手を掲げる

 

太陽と月の光が溢れ出し、交わり、やがて一つの門の形を作る

 

「太陽の女神と」

 

「月の女神は」

 

「「かの者に祝福を与え、異世界に行く事を許可します」」

 

異世界へと続く門が完成すると琴音は大きく深く息を吸った

 

脳裏に過ぎるのは自分の気持ちとこれまで過ごした時間だ

 

赤の他人である自分を育ててくれた

力の使い方と戦い方を教えてくれた

 

二人からは数え切れない程の事を教わり、たくさんの愛情を貰った

その恩に少しでも報いたいという気持ちで琴音は仕事を手伝いたいと申し出た

 

その願いがようやく叶う

 

「行ってきます」

 

力強く一歩を踏み出して琴音は異世界に続く門へと足を踏み入れた

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