辞表とバス
厳粛な空気が張り詰めている、この建物の中を歩く者たちの足取りは確かであり少しのよどみもない
「惜しいものじゃないのか?、これほどの地位を持ちながらそのすべてを捨ててこのような契約を結ぶとは」
「君はもっと冷静な人間だと思っていたのだが」
「無いとは言い難いが、私はそれでもこの契約に価値があると思ったのですよ」
「私は、何があろうとも必ずこの事件の真相を求めなければならないのです…」
「そうか…それならば引き止めはしない、武運があるように祈るとしよう」
この人もなぜこうも余裕があることを言えるのか...
空いた席をいかに奪うのかという陰謀が背後で渦巻いているというのに、まあ権力闘争に無縁な人ではあるが。
「ありがたく受け取っておくとしましょう、困ったことがあったならいつでも連絡してきて構いませんから」
そう言い残した者の後には、一人減った建物と変わらない厳粛な空気、そして一人分の足音のみが響いていた。
「やっぱりあの時から変わってないな、ロレンス。可愛い部下のためにもこの辞表は取っておいてやるよ」
「だからこの書類仕事から逃げられると思うなよ、こっちだって限界に近いんだからな...(小声)」
山を通り越して壁となった書類を前に彼は
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「やはり、少し早すぎたか」
手に握られた金色の懐中時計には約束の時間より1時間ほど早い時間が示されていた。懐に仕舞ってある使い込まれた手帳を確認しても当然だが予定も仕事も何もない。
ティータイムには些か早いが、たまには悪くないだろう
そのようなことを考えながら、行きつけの店へ足を運ぼうとした瞬間
「お待ちしていました、少し早くなりましたが乗車してください」
ファウストさんだったか、これほど早く待っているとは予想外だったな。
「ああ」
なるほど、私のティータイムはもう少し先になりそうだ。そのうちヂェーヴィチに茶葉でも頼んでおくか。
そのようなことを考えつつ、バスに乗ると残された席はわずか。
見るだけでも十人十色な顔ぶれに思えるが些細なことである。
私は最後の方に回収されたのか。であるならば残りの一人を迎えるまでささやかな休息でも取るとしよう。
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バスは私のいたところなどあっという間に置き去りにし、見覚えのない建物を通過し、やがて「黒い森」としか形容のしようがないところまでたどり着いた。
若いとは決して言えないこの体を休めるには些か激しい運転であったが、この程度は全く問題ない。少し体を伸ばすかなどと考えていると
突然バスが大きく揺れ、停車した。
「あそこの人物で最後です、全員下車をしてください」
人を弾き飛ばしたのだと理解するのにそう時間はかからなかったが、まあいい
そう言い残した下車する彼女の後を追うように、愛用の武器と共にバスを降りた。
バスの外ではおそらく義体であろう赤い時計?が2人に、いや1人轢いたから3人か
とにかく襲われていた。
どう戦うかなどと考えつつ、義体の者が話しているのを眺めていると
『お前の…星に従え』
そう聞こえた刹那、とてつもない勢いで鎖が飛び周りの彼らに突き刺さった。
反射的に避けてしまったがよかったのだろうか。残った1本の鎖が私を追いかけているのだが...まあ得体の知れないものだし良いか。
「本当にこれでいいんですか?」
「林檎―玉が堕ちたり」
などという会話をするのを敵がわざわざ待ってくれるわけもなく、3人との戦闘に入った。
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避ける、躱す、往なす、やはり鈍ったのか体が思うように動かないな。でも技術はまだまだ衰えていない。
愛用の片手槌でひたすら攻撃をさばき、僅かな隙を狙う
当たれば確実に命を失う斬撃が、突きが、打撃がひたすらに飛んでくる
これほどの手練れに狙われるとはこの義体の彼は一体何者なのだ?
斬撃が来れば紙一重で避ける
突きが来れば槌で軌道を逸らす
打撃が来れば思い切り叩いて弾く
森の戦いは慣れていないが、文句を言ったってどうしようもない。
しばらくは混戦となっていたが、次第に相手が決まっていったらしい
私の相手となるのは大柄な彼女らしい
私と共にバスに乗っていた者たちは他の2人に殺されているようだが…
心苦しいが救助は難しいか、っと!集中しなければな。
彼女の拳が頬を掠める。
すれ違う拳と槌が視界を覆いつくす。
柔らかい地面では踏み込みが甘くなりやすいが、それ以上にバランスを崩しやすい。
先ほどバスに撥ねられたのがが響いてきたのか、
それとも経験の差か、僅かに足が乱れたところを崩し、武器を両手槌に「変形」させ思い切り大柄な女に叩きつけた
少なくとも気絶させたかと思った瞬間、思わず膝をつくと
避け続けてきた鎖が私の心臓を通り抜けた。痛みは感じないなと思った瞬間、焼けるような熱さが襲うと
私の心臓は小柄な女に貫かれていた。
冥途の土産に時計のチェーンで首を絞めてやったが、相手の生死を確認する間もなく私の意識は闇へと落ちていった。
なんか強くね?戦う様子はガベル投げない日車をイメージしたら大体あってます。