自己紹介から暫く経ち、バスの中にも穏やかな空気が満ちてきたころ、再び人を弾き飛ばしたあの揺れが襲い掛かるとともにバスが停車し、下車を指示される。
森をうろつくゴロツキか、わざわざ相手をするまでもないだろうに。
だが、体を動かすのには丁度いいか。
少し体を伸ばしてからバスを降りると、そこには汚れた服に粗末な武器を持った分かりやすいゴロツキが何人かおり、私は杖を片手槌に変形させ戦闘を開始した
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適当に槌を振りながらゴロツキを処理していると管理人が
『ロレンスは奥の弱ったやつにとどめを刺して』
指示通り変形した槌を振り下ろす。先ほどの3人と比べるとあまりにも貧弱な相手だな。
『ロレンス、E.G.Oを使うよ』
あれか、個人的には耳鳴りがするのが好ましくないが…しょうがない
【判決】
「数多の虚偽の中から、一つの真実を導かん!」
極限まで拡大した槌を叩きつける。真実を知らせる音は一度のみでよいのだ。
やはり耳鳴りがひどいな、体調、いや精神力がえぐられるような感覚がする
仕事柄このような感覚は慣れたつもりだったのだが、やはり人はそう変われないのか
「ふう、今日の紅茶はとっておきのものにしよう」
戦闘が終わった途端に思わずそうこぼす程には疲れていた、何も変わらない日々を過ごした人間にとって、今日はいろいろとありすぎた。
そう思いつつ、私はバスへと戻っていこうとしたが
「まだバスに戻る必要はありません」
「このバスの燃料となるエンケファリンを補給するために死体を運んでください」
そうファウストが言う。というかバスと死体になんの因果関係があるのか。
ぐぅ、わたしのティータイムを何度妨害すれば気が済むのか!
その後囚人たちのケンカ?殺しあっていたが、それを仲裁し
協力者がいるという場所まで紅茶の香りを感じつつ、ロージャに茶菓子を8割食べられ寂しくなった皿を見つめながらほんのわずかな休息を楽しむのだった
これ高かったのに(小声)
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暫くバスに揺られ、もう慣れた急停止を合図に目覚める
「おいお前ら!それくらいにしておけ、客人が来る」
案内人のウェルギリウスが些か苛立ったような声で一言
『客人?』
「初めて行くダンジョンですので、案内役が必要かと思いまして」
そう言ったすぐ後に、赤い髪が特徴な少女が来たようだ
「あの…リンバスカンパニーから来た方たちであっていますか」
「えっと、旧L社に勤務していたユーリです。よろしくお願いします」
『昔のL社って』
「ロボトミーコーポレーションですね」
「はい。私たちはこれから、旧L社支部へ向かいます」
ロボトミーコーポレーションか、であるならばこの子は折れた翼の職員なのか、武器の質からみてもおそらく9級から8級。新しく居場所を作るのは大変だったのだろう。
私は個人的にL社には思い入れはないが、経理部長がエネルギー代が30%も安くなったから部屋の改装をしようとせがんできたのは記憶に新しい。結局全員分の椅子とペンを高級品へと変えたのだったか
いけないな、未練は全て捨ててきたと思っていたのだが…
今回の協力者だ、少しくらい話してみようか。
「貴殿は、今は事務所に勤めているのか?」
「はい、登用試験中ですが…」
「そうか、登用試験中には命を懸けると言えるほど特に努力を要する時期だな。今回の件は良い反応を得られるよう互いに協力していこう。」
話す限り好印象そうでよかった。ふむ…折れたとはいえ翼に所属していたのだから人材として十分なはず。機会があったら上司に相談してもいいかもしれないな。
そのようなことを考えていると突然、
「あのう…つかぬことを聞くのだが、そのようにフィクサーの事情に詳しいということは…其方はフィクサーであるのか?」
この子はドンキホーテであったか。フィクサーの話をしたらどうなるかなど火を見るより明らかだが…適当にいなすか?
「確かにフィクサーではあったが、それはもう昔の話だ。今はただの過去に縛られた老人に過ぎないよ」
どうだ?これで大丈夫だろうか。
「そうであったのか…ではその時代のフィクサーについて聞かせてくだされ!!!」
まいったなぁ、これは。
ドンキホーテのスーパーマシンガントークを捌きつつ、ゴロツキでも何でもいいから何か来てくれと願っているとガンガンという音が車内に響く。
「おい!いい乗り物じゃねえか!」
「俺たちも乗せてくれよ!」
そう大声でゴロツキが叫んでいる。
なんという天の助け!私の人生でここまで戦闘を求めていた日はないだろう。
「…メフィストフェレスのおやつの時間だな。全員下車。」
その言葉を聞いた瞬間、正義を成さんと張りきるドンキホーテと争うように、私はバスの外へ駆けて行った。
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その後いつものように槌を振るっていると
『ロレンス、新しいE.G.O使うよ』
いつもなら苦い顔をするが、今戦っているのは私にとって恩がある者たち。それならばできるだけ苦痛なく葬るのが私にできる最大の弔いであろう
【黒い枝】
「己の罪を自覚し、悔い改めよ!」
地面からおびただしい数の枝が湧いてきて敵の腹に、頭に、背中に突き刺さる。どう見ても安らかではない、すまない見知らぬゴロツキ達、遺体すら利用するが…
バスへ戻った後、どこか後味の悪い戦闘だと思い返したが、休息を得てマシンガントークから逃れることができた。
運転席ではシンクレア、ユーリ連合と運転手カロンの壮絶な戦いの様子がうかがえるが、運転手を名乗るからには腕は良いのだろう。
数々の危険運転が脳を過ぎるが無かったものとして紅茶でも淹れてよう。
愛用しているティーポット(2代目)を固く握りしめながらコンロへと向かった
先代は空へ舞い花のように割れていったのだ。今度のポットは守ろう。必ず。