ティータイムを終えると、特に何事もなく旧L社支部跡地に一行は到着した。
停車すると窓の外には虫の部位が生えている者たちが、集まりながら何かをしていた。
「うっ…グレッグ、もしかしてあいつらと知り合いなの?」
グレゴールの知り合いということは旧G社の者だろうか、
「ん?何がだ?この路地裏に俺の顔見知りなんているわけがな……」
確かにあれに対して不快感を示すのも頷ける。義体や強化施術のレベルを誤った者が悲惨な目に遭ったのを見たことはあるが、やはり見た目に出るものは他者から厳しい目線を浴びるものだ。中指の刺青や全身義体も目立つものであるしな。
周りの彼らを見てもやはりそうであるらしい。
「近寄るな、お前にも害虫菌が移るぞ」
「ひっ、それって本当ですか!」
グレゴールのギャグかブラックジョークか微妙なラインの冗談と共に私はそそくさと下車しようとする。
「やっぱり俺、ギャグセンスがないのかな…」と言っているのを聞くに先ほどのはギャグだったらしい。年を食うとだんだんこうなるのだよ(経験談)
うちの上司のセンスはほんとに酷かったな。
『ねえロレンス、さっき施術って言っていたけど、どんなものか教えてくれない?』
管理人から話しかけられるとは珍しい。私が口を開こうとした瞬間、途轍もない勢いでウーティスが割り込んできて
「管理人様!施術とはいくつかに分けられますが、あいつらのように見た目が変わる施術である義体と、肉体そのものを強化する刺青やH社の…………」
なぜこの者は私にそこまでの対抗心を持っているのか、べつに管理人の片腕になるつもりなど無いのだがな。
そう思いつつ、それを指摘するともっと面倒になるのは明らかなので何も言わない。処世術にて沈黙は金である(断言)
バスを降りると、それに続き何人かの囚人が降りてくる
『あれ?この人たちは?』
「ユーリさんと同じ事務所の方で、すでに何度かL社支部を訪れた経験があります」
ふむ、やはり8級か7級か。ユーリと同じ事務所のフィクサーではあるが、信頼には値しないな。
装備を見てもあまり目立つ部分はないが…あれはガスマスクか?彼らの事務所の規模にしては高価に見えるが…やはり罠があるのだろう。警戒するべきだな
そんなことを考えていると
「全員そろったな。左の方がホプキンスさん、右の方がアヤさんだ」
「よろしくね」
「赤い視線様!お会いできて大変光栄です!」
「この先の倉庫が見えるな?そこの階段からは彼らが案内する」
「こちらの2人もフィクサーとしてのキャリアがあるから、突発的な状況にもうまいこと対応してくれるだろう」
嘘だな、少しでも経験があれば低級フィクサーが頼りになるなどとは言わない。同じ事務所の先輩に対しての評価ならうなずけるが、特色とあろうものがそのような判断を下すとは思えない。
だが懐かしいな、私も地べたを這いずりながら少しでも上を目指そうと励んだものだ。才能だけでは超えられない壁があることすら理解していなかった時期の私も、彼らのようだったのだろう。
ここは都市、他人をむやみに信頼するような者が悪いのだ。管理人もそのことを知るべきだろうな。無論手助けはするが。
「これぐらいでいいだろう。俺は車内で待っている」
その後、ヒースクリフが抗議していたが受け流され、管理人が呼び出されていった。おそらく彼らについて説明しているのだろう。
わざわざ本人がいないところで話すとは本当に律儀な人だ、今まで関わった特色は一癖どころではない奴らばかりであった。朱色とか、紫とか紫とか紫とか…
『話は終わったよ、でもフィクサーって色々あるんだね』
「おお!管理人もフィクサーに興味が!?」
ドンキホーテが目を輝かせて話しかけているのを横目に
「管理人様!フィクサーとはハナ協会に登録された何でも屋のようなものです。まあ彼らは底へn」
これはまずい、なぜ案内人が気を使ったのにわざわざ台無しにしようとするのか。彼女が言うのを無理やり遮るように
「まだ期待の新人ですが、私含め誰しもそうだったのですよ。無駄話はほどほどにして進みましょう」
ウーティスから熱烈な視線を感じる。沈黙は金のように常に価値があるが、雄弁は銀のように使いようでは金を上回るのだ。まああの3人はこちらに悪い印象を抱いていないようだし、構わないか。
処世術とは大のために小を捨てることを雄大に語っているだけだ(断言)
…そこまで恨まれるようなことか!?ずっと見てくるのだが!?
忘れるところだった。アレを持っていくべきだな。
「管理人、バスに取りに行きたいものがあるので一度戻ってよいか?」
『構わないけど…早めに戻ってきてね』
そう聞くと足早にバスへと戻り、
自分の部屋においてあるトランクを開け、P社製の布を仕舞い、M社の刺繍を施した外套を纏う。
やはりこれを着ると気持ちが引き締まるな。待たせているし早めに行かなくては
私が戻ると何か言いたげなウーティスと、ユーリたちと雑談をしている面々が見えた。
「待たせてしまったな、何か共有すべき事項はあったか?」
『特にはないね。じゃあ行こうか』
「全く!管理人様を私用で待たせるとは何事か!大体貴様は準備というものすらできt…」
ウーティスの小言と共に、私たちは地下への階段を歩いて行った。
小説を書いている間は嫌なことを思い出さずに済むんですよ。