黄金色に輝く林檎、おそらくあの中に黄金の枝が入っているのだろう。
『みんな、戦闘の準備をして』
管理人と共に私にも人格をかぶせられる。今回はツヴァイか。
杖を大剣へを変え、戦いの準備をする。
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…あまり強くないな、むしろ拍子抜けするほど弱い。
林檎の果実は壊れ、暴れていた果実は静まった。隙間からわずかに光のようなものを覗かせている。
するとユーリが
「私が取ってきます!」
と言ってきた。その言葉に反応してグレゴールとアヤも
「私も一緒に行くよ~」
「ああ、俺も守ってやらなきゃな。いいだろ管理人?」
そういいながら3人でいつの間にか赤くなった林檎へ歩いてゆく。
ユーリが果実の隙間に手を伸ばしたその瞬間
静かだった果実の亀裂は、今にも襲い掛からんばかりの勢いで揺れ動いた。
林檎の中から出てきた蛆の大群はユーリを飲み込まんとその大口を開けている。
「ユーリ!」
すでに足が飲み込まれているユーリを、アヤが蛆にまみれながらも引っ張る。
グレゴールもハッとしたような表情の後、これ以上蛆が登らないように林檎とユーリの間に割り込む
『ムルソー!ロレンス!』
その掛け声とともに二人は駆けだした。
「吹き飛べ!」
私はそう言いながら、蛆に全身を覆われかけているグレゴールごと大剣の平たい部分でたたき飛ばす。その後、剣を可能な限り大きくし盾のように構える。
そうしている間にムルソーも2人を林檎から完全に引きはがすことに成功したようだ。
それを見届けると私は、グレゴールだったものを回収し、管理人のもとへ戻った。
『2人の状態はどうなの?』
「ユーリは両足、左腕に外傷、大腿動脈に損傷はないため応急処置を行っています。アヤは両腕に外傷、出血に問題はありませんが、どちらも早急に蛆を排除しなければ重症化するリスクが高いでしょう」
ムルソーは早口で言いながらユーリへ応急手当をしている。ファウストもそれに加わり、ヒースクリフやドンキホーテが彼女らについた蛆を取り除いている。
彼らが救命活動をしているならば、私がするべきことは一つ。
蘇生を終えたグレゴールと共に、武器を構える
『行くよ』
「ああ」
その一言にはどれほどの思いが詰まっているのだろうか、私には暴れる林檎へと駆け出す一歩に、振るう一撃にその気持ちを垣間見ることしかできなかった。
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林檎が完全に沈黙し、その口から淡い光が漏れたかと思うと、そこには黄金の枝があった。思わず近づこうと足を踏みだすと、ヒールの音と共に知らない女性がそこに立っていた。
「枝を探していたのか?」
「あんた…」
グレゴールが反応する。もしかしたら彼女が…
「思っていたより小さいね。でしょ?」
「私はヘルマンよ。これからよく会うことになるでしょう。なぜなら…私たちは枝が必要で、あなたたちは…枝を見つけることができて。あなたたちは…死なないけど、私たちは…あなたたちを殺すから」
やはりこの女性がヘルマンか、確かN社の理事だったが…なぜこのような場所にいる?
「もちろん…この枝は私が回収してくけど」
そしてガファンというものが2回手をたたくと同時に視界が暗くなり、私たちは外で目が覚めていた。
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バスの中でヴェルギリウスの説教を聞いたバス一行は、ユーリたちとの別れの時間となった。
見るも痛々しい2人に対し、グレゴールなどは暫くバスにいられないか抗議してみたが駄目だったらしい。それに対しユーリは
「グレゴールさん、今回はありがとうございました。あなたが居なければ私…ここには居なかったですし」
「私もだよ~両手はこんなんになっちゃったけど…」
アヤの両手は包帯でぐるぐる巻きにされており、少なくともあのような事務所に帰っても居場所はないだろう。
「これから私たちも居場所を探さなくちゃね~」
「えぇ…ほんとに私のせいなのに…アヤ先輩…」
空気が鉛のように重い。
「なぁ、やっぱり駄目なのか?」
「そうよ~マスコットに丁度いいじゃないの」
何人かの囚人が再び抗議するが、首を縦に振ることは無さそうだ。
…これは使えるな。利用するようで悪いが、彼女たちにとってこれ以上ない提案になるはずだ。
この契約は今まで受けていたものと変わりないと思っていたが、すでに想定を大きく上回っている。
対抗する組織がそこら辺の事務所や指、つまり都市悪夢レベルだと思っていたが、翼の、しかも理事が現場に出ている時点で明らかに異常だ。翼との対立は都市の星を相手にするよりたちが悪い。
つまり、前の職場の情報網が欲しいというわけだ。幸い退職時から何度か連絡してきてるおかげで繋がりは途絶えていない。
無理は承知だが…やってみる価値はあるな。
別れを済ませ、私以外全員がバスへ戻っていった後。
「突然だが、貴殿らは書類仕事はできるか?」
ユーリとアヤは困惑の表情を浮かべながらも答えた。
「ええ…L社ではむしろそっちが主な業務でしたし…」
「私も簡単のならやってたな~と言っても人手が足りなかったからだけどね~」
「そのほかに何かやっていたか?」
「私は…栄養士を志していたので…そのくらいですかね」
「そーなんだ!私もよく自炊していたよ~。う~ん、私は銃が使えることくらいかな~」
…これだな。
「私は、かつて務めていたところへのパイプを強固にしたくてね。生憎私の上司は軽々しく話せるような人ではないんだ。(というかそんな時間ないし)」
「そこで私と上司とのパイプ役になってほしい。…つまりは私の勤めていたところへ入る気はないか?」
「それは願ってもないことですが…いったいどこに勤めていたのですか?」
「それに、自分で言うのもなんだけど私たち低級フィクサーだよ?」
「ああ、その問題はあったが料理ができるなら都合がいい。最近福利厚生の一環で食堂を作ろうという案があってな、長年凍結していたがこれを機に再開しよう」
「交渉はこちらで行う、おそらく数日で終わるからユーリたちにはその職場へ向かってほしい」
「ああ、私の勤めていたところだったな…」
「ウーフィ協会本部…何か聞かれたらこう答えてくれ」
「元ウーフィ協会本部1課副部長、ロレンス・ヴォーグレイヴからの紹介だとな」
ってことで彼の正体は結構なお偉いさんでした!でもバス組はこのことを知らないんだよね…ちなみにドンキが気づかなかったのは、彼が圧倒的に裏方で活躍しているタイプで、雑誌などでも紹介されていないからですね。もしあっても部長が答えてます。
<読まなくてもいい設定集>
今の彼は休職扱いになってます。なんで休職扱いになっているの?って疑問に思うかもしれませんが、それは専門性が高いので一人辞めるだけで代替できる人間がほとんどいなくなるからですね。
次になぜ彼がウーフィ協会所属なのに裁判官がモチーフになっているのかという件についてなのですが、
これは完全にオリジナルですがウーフィ協会は「契約」だけでなく、契約に基づいた「裁判」や「仲裁」も行っていると考えています。特に1課ではこの要素が強くなるのかなと。契約に差異があった場合に大規模であるほど、メンツを重要だと考えているところほど武力は用いなくなると思っているんですよ。
もちろんこんな世界観で裁判とかしないだろ!とか、これってハナ協会とかの仕事じゃないの?大前提に弁護士とかいないでしょ!とか、それを強制的に執行するのがウーフィの仕事だろ!とかいくらでも反論を思いつくんですけど…作者の想像力の限界をお察しください。
また、今の彼は知りませんがバスに帰ったら課長からの素敵なプレゼント(書類)が届いていることでしょう。楽しみですね。