ひび割れた大地が地平線の彼方まで続く荒野。暗雲が立ち込め、太陽の一切が遮られながらも、鉄板の上にいるかのようにそこにいる者を炙り続ける空間。
水分、酸素、霊力。益となる物のことごとくが堰き止められ、枯渇し、生存さえも至難の領域。
そこに顕現するのは『障害』の具現。
地を埋め尽くすのは
彼方にて待ち構えるはその主。永遠不滅の魔。
無限に等しい距離を、一歩でもって踏破する。一瞬前と一変する視界。それを埋め尽くす巨体の蛇。
「シィッ!」
居合の姿勢をとり、刹那の後に放つのは未来を断つ斬撃。
因果によって蛇が一刀両断され、溶けるように消える。しかし、暗雲は晴れず異界は姿を保ったまま。
幾度目かの繰り返しを、進展なく進む。
ここに展開された『障害』はいくつもある。軍勢による肉の壁、突然目の前に現れる面倒なギミック、主を守る無限の距離etc…
「悪魔に無下限教えたやつは誰だ!」
『普通に考えたら脳缶ニキ*1だが、今回は神主がギミック追加しただけではないかい?』
修行場異界下層試験
個々人によって異なる内容の中で、俺に課されたのはシンプルなタイムアタックのボスチャレンジ。
嫌な予感しかしないし、実際この通りだ。神主が漫画を楽しめてるようで良かったな。クソわよ。
制限時間は1時間。
時間加速があるので別に短くはないのだが、相手が無限リスポーンするとなれば話は別。というか暗雲が一向に晴れない時点で本当には倒せていないのだろう。
相手は【邪竜 ヴリトラLv.55】
存分に『障害』の権能を振るう神敵に、その一切を無視して近づき
『いつか出来ることは今この瞬間に出来る』そんな権能となって、縮める対象が距離ではなくそこに至るまでの時間となった。例えそれが無限の時間がかかる工程であったとしても、刹那の後に辿り着ける。
最初はギミックにも付き合ったし、悪魔の軍勢を蹴散らしてもいたが、権能を習得してからは全てを無視。有利な環境を敷いてひたすら消耗戦を仕掛けてくる陰湿なダム。【星断】で無視出来ているが、本体の耐性も万能以外無効とかいうカチカチ具合。本来はこんなに硬くはないはずなんだが、ショタおじがカスタムした分なのか。
『復活の方も権能のようだ。自然災害の具現としてのものだね。それに霊力の枯渇も酷い。すまないが、私は役立たずになりそうだ』
ヴリトラは干ばつや冬の擬人化。必要な物を堰き止める神格。それを使ってこの異界内の霊力さえも独占している。体外に出た霊力は瞬時に枯れ果てるために魔法スキルが実質封印状態。使えればヴァジュラと言い張った【ジオダイン】でもぶん投げてやった物を。
更に、厳しい自然は何度でも巡ってくるもの。神話においてもインドラと何度も戦っている。その逸話によって死んでも何食わぬ顔で復活する。
MAG濃度が低すぎて自然回復は無いも同然。堰き止められたエネルギーの解放による一撃にも警戒しなければならない。
「助言だけでも有り難いよ」
ちょっと厳しい。
節約してはいるが、食没による余剰MAGがそろそろ枯渇する。打開策を見つけないとジリ貧だ。
考えている間にも周囲から雪崩のように悪魔たちが襲ってくるのを
神話において、ヴリトラを倒したのはヴァジュラと泡。そのどちらもが再現するのを枯渇の権能によって封じられている以上、この試験において求められるのは一切合切を無視出来るパワー。
頭脳プレイで突破出来るならそれにこしたことはないのだが、エキドナの能力の大部分を封じられては俺にどうこうする手立てはない。
テクニカルに…とかスマートに…とか向いてないわ。
真正面からゴリ押すまでよ。
一歩の踏み込みでヴリトラの真正面へ。曇天の中何度も相対した蛇が待ってましたと言わんばかりに口を開いて突撃して来る。
かかったな馬鹿め。なんでわざわざ正面に来たと思ってる。
一説において、ヴリトラは口の中にヴァジュラを撃ち込まれ、それによって死んだという。
「『
つまり、口内への雷撃は効く。
短距離でも減衰が激しく、二人がかりでも致命傷とはならなかったが、弱点を突かれたことで怯み、行動が止まる。本物のヴァジュラではないので一瞬だが、俺に取っては十分な時間だ。
構えは大上段。
「いい加減に……」
まるでコマが抜け落ちたかのように、次の瞬間には世界が二つに割れていた。
「死ね!!」
◇
「合格おめでとう。見事なまでのゴリ押しだったよね」
「いや、ゴリ押し以外出来ないギミックだったじゃん」
試験を終え、ショタおじとの感想タイム。
あの一撃でヴリトラは沈んだ。その後復活することも無く、見事合格を勝ち取った訳である。
「正面突破するだろうと見込んでたからあの試験なんだけどね。対応出来る工夫があれば良し、貫き通せる力があるならそれもまた良しって感じの」
「にしても大分厳しくなかった?」
「君の場合生半可なものだと意味ないでしょ。
ともかく、今後は下層に入っていいよ」
「はぁ、やれやれ」とでも言いたげなショタおじに、しかし言い返せない程度にはゴリ押しであった。
簡単に言うといつか死ぬんなら今死ねって感じ。
「あと、輪廻の枝はLv.30以上限定になったから。個人で配る分にはいいけど、転生者にはやめてね」
「やっぱそうなるか」
一旦死ねと言われて出来る人間がどれほどいるのかという話ではあるが、うっかりでも使ってしまうと黒札だった悪魔が生まれかねない。戦力的には木っ端だが、ショタおじのメンタルケアはガイア連合で何より優先されるのだ。*3
「ちなみになんだけど、英傑系悪魔ってどんな感じか知ってます?Fateの英霊のイメージで大丈夫?」
「あそこまで親身なのは期待しないほうがいいよ。何かに使うの?」
「支部のレベリング異界を作ったんですよ。
モムノフ無限湧きから2勢力に分けて、蠱毒の要領で潰し合わせつつリソース増やす設計にしたんだけど、偶に
この前琴刃のレベリングついでに異界を潰した際に、そいつらが吸っていた霊脈の霊力を纏め上げて大きめの異界を作っておいたのだ。
小牧・長久手の戦いを元に作ったおかげで、互いに殺し合うモムノフに漁夫の利を取れるレベリング場となり、今は神剣護持会の連中が必死になって戦場に突っ込んでる。
その中で
「後はノイマン*4辺りを情報担当として使いたいなと」
「まぁ基本的に他の悪魔と同じように扱うのがいいんじゃないかな。
多少は人間に近いかもしれないけど、結局は悪魔の一種族でしかないからね」
「承知。何か問題があったらまた相談しますね」
「お疲れ〜」と言いながら、迎えに来た修行僧たちに連行されていくショタおじ。出来る抵抗を一切していないことからして、ああいうやり取りも結構楽しんでいるのだろう。
「疲れた〜。帰ってダラダラしよ」
「膝枕はどうかな?」
「いる」
◇
★【対策不足】修行場異界下層試験対策板 その〇〇【即ち死】
・
・
・
503:バッハ
下層試験合格!
こんな感じの内容
クリア条件【邪竜 ヴリトラLv.55】の討伐
空間ギミック
・ヴリトラの権能による霊力、酸素、水分枯渇
・時々現れる足止めのパズル的なの
取り巻き
・【軍勢 アスラの軍勢Lv.45】ステージを埋め尽くす数
ボスギミック
・無限の距離
・権能による復活
・万能以外無効
制限時間1時間
纏めると、魔法が直ぐ霧散する空間で時間稼ぎを無視しながら復活をしないように念入りにボスを殺す必要がある
【縮地】で障害を全部無視して防御無視蘇生阻害の近接で殺してクリア
506:名無しの修羅
おめ
また一段とエグいのが来たな
511:名無しの修羅
クソギミックの癖に耐性ガチガチで草
512:名無しの修羅
五条悟かよ
516:名無しの修羅
霊力枯渇って何?酸素、水分も大分あれだけど魔法系は詰みやんけ
521:名無しの修羅
>>516
特殊な魔封って感じ
権能レベルの魔法なら射程が落ちるくらいになる
522:名無しの修羅
これを1時間は余りにも専用試験
認識時間加速がないと無理
525:名無しの修羅
ちょっと厳しいが、近接ならやれんこともないか?
蘇生をどう防ぐかが鬼門になるな
528:名無しの修羅
>>522
言うてボス倒すだけだから出来る奴もそれなりにいるだろ
530:バッハ
下層で対策しないと詰む要素は寧ろ使う側だからね
式神で知識系もカバーしてるし、特殊な状況への対応よりも突破力を試す感じだったらしい
533:名無しの修羅
>>530
確かに大体盛り込まれてる時間系が無いな
534:名無しの修羅
極限環境対策ってどんなの使ってる?
538:名無しの修羅
装備で時間加速出来ねーかなー
541:名無しの修羅
>>534
装備に【浮足玉の脚*5】付いたのがちょっと前からあるはず
後は属性耐性でも多少は軽減される
544:名無しの修羅
実際どのくらいが下層試験に挑戦する目安なん?
546:名無しの修羅
>>544
レベルは40後半、十分な装備と知識
このくらいないと話にならん
得意分野が権能域、つまり法則の押し付けレベルだとなお良し
550:名無しの修羅
最近は製造班の腕が上がって初期より難易度下がったよね
555:名無しの修羅
>>550
ショタおじが難易度調整してるからあんま変わってないぞ
560:名無しの修羅
無下限は原作再現組が喜ぶんじゃね
563:名無しの修羅
>>560
権能レベルのスキルを再現出来る俺達がどれだけいるのか
567:名無しの修羅
桃源郷とか含めて式神に入れるスキルカードのおすすめ教えて
571:名無しの修羅
【神話知識】が最初は役立つ
574:名無しの修羅
知識系は入れといて損はないぞ
・優羽
適性:ボスの人。インド関係の神格と戦ったことでそれっぽい名前のスキルに目覚めた。今回目覚めた権能が無意識に作用して技術習得が速かった。レベルによる制限はあるが、極めると救世主確定ガチャを多分回せる。ついでに終末も。
気づかないほうがいいことには気づかないでいられる直感の持ち主。