【カオ転三次】怠惰を求めて   作:茅薙

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すいません遅くなりました。
今までノリと勢いだけで書いてたような感じだったので、早くもネタ切れ気味でした。
思いついて練ったエピソードも、どの時系列に入れるのがいいかとか悩んでたら1週間かかってしまいました。

前話までのやつはちょっと整合性取れてないところだったり、作者が読み返してこれはないなってなったところはちょくちょく修正していく予定です。


不穏

「────様が降臨なされたというのは本当か?」

 

「天使様が気配を感じると仰っている。疑うと言うのか?」

 

「すまない。あまりの福音につい興奮してしまった」

 

 寂れてはいないが、人気のない教会。カソックに身を包んだ男たちが、その奥にて話し込んでいる。あまり公にしたくない内容なのか、声色に興奮を感じさせながらも声量を抑え、頻繁に周囲の気配を探る。

 

「最近は周辺の霊能組織が力を取り戻してきている。それに、ガイア連合も手を伸ばしている。悪魔にこの地を支配される前に、この地の民を救済せねばならない」

 

「高位の司祭様は今、殆どがヨーロッパかアフリカにいるだろう。幸い、勝利の知らせは届いたが、こちらに来るまでには時間がかかるぞ」

 

 危機感を滲ませ、この機に動かねばならないと訴える、体格の良いブロンド髪の男。末端ではあるがテンプルナイトである彼に対して、痩せ身で眼鏡が特徴的な男は、現実論を唱える。

 

「天使様が集結し、蜂起するべしと仰っている。周辺の同志全てに対してだ」

 

 テンプルナイトがそう言って見せるのは、聖書の引用を組み合わせて出来た霊的な暗号文。メシア教の者であれば解読の必要の無いそれを見て、眼鏡の男は唸る。天使様の言うことは絶対だが、我々がこの使命を果たせるのかと。

 

「最近開発されたものか?……なるほど。『ヨハネの黙示録・第21章』……そして『出エジプト記』。メシア教徒でなければ、ただの敬虔な信徒の祈祷文にしか見えない。実に見事な暗号だ。ん?」

 

『敵は主の加護を受けし聖遺物を持っている。直ちに取り返すべし』

 

「なんだって!?異教の徒に主の加護が降りているだと?!」

 

「その通りだ。非常に深刻で緊急性のあることなんだよ」

 

 メシア教だけでなく、神を奉じる集団にとって見過ごせない1文を見て、浮足立つ眼鏡の男。しかし、次の瞬間には威勢が萎える。

 

「だが、我々が集まったところでガイア連合の者に勝てるのか? 奴らの高位の者は、大天使様をも退けると聞くぞ。もっと万全を期した方がいいのでは?」

 

「こちらで陣地となる異界も構築する。奴らは主の教えに従わない(非LAW属性)。威光に晒された状態でメタトロン(・・・・・)様に太刀打ちできるとは思えんな」

 

「それもそうか。では準備を進めておく。神の恵みがありますよう」

 

 あっさりと説得された眼鏡の男──司祭は静かに胸元で十字を切り、背を向ける。その足取りには、先ほどまでの迷いは一切ない。

 テンプルナイトの男は、カソックの懐から覗く武器の感触を確かめ、無邪気とさえ言える歓喜の光を瞳に宿してその背中に告げた。

 

「近く、この地に神の威光が降り注ぐだろう。

 ────AMEN」

 

 

 

 

 

 

 名古屋支部。出来たてのビルにて、依頼を受けた三者は、幾つも用意された小規模の会議スペースの一つで自己紹介をする。

 

「カムイニキって呼んでくれ。レベルは24。得意なのは万能属性、ドレイン系だな。こっちは式神のシヅカ。誘引と索敵役だ」

 

 最初に名乗ったのは、金髪をオールバックに撫で付けたヤクザ風の男。シャツの第二ボタンまで外したラフな服装がその凄みを強めている。それに伴うのは巨乳の女子高生型の式神。男の斜め後ろからペコリとお辞儀をしている。

 

「私は忍者ネキって呼ばれることが多いかな?アサシンは結構いるでしょ?レベルは23。得意なのは隠密と短剣。式神はポチ。騎乗と撹乱用よ」

 

「ウォン」

 

 次に名乗ったのは特徴がないのが特徴といった感想を抱く女性。母親にも若者にも、手を加えれば初老やティーンにも見えそうな不可思議な印象の顔立ちだ。その影からは狼が顔をだして軽く吠える。

 

「最後は私か。アンリネキとでも呼んでくれ。レベルは27。得意なのはネクロマで、デビルサマナーだ。こっちのが式神のシオン。剣士の前衛だな」

 

 最後は白髪赤目の少女。腰に届くロングヘアと膝上丈のワンピースコート。苦笑いしながらも会釈をする銀髪に金の瞳の式神の肩をポンポン叩いている。

 

 三人共黒札であり、レベルもそこそこ高い。そこらの異界なら一人で潰してしまえるような実力者だ。

 

 音頭を取るようにカムイニキが認識を共有する。

 

「一応確認するぞ。

 今回の依頼は異界の調査で、潰した場合は追加報酬。注意事項としては、高いLAW属性を感知したためメシア教の関連が予想されること。

 ……っていうかメシア教関連かもしれんが、大丈夫か?正直難易度と報酬釣り合ってないだろ」

 

 改めて依頼内容を読み返し、眉間にシワがよるカムイニキ。メシア教といえば洗脳は序の口、人間牧場や人体改造も行う、人間を家畜以下にしか思っていない組織だ。男の自分は死ぬだけで済むだろうが、女はどうなることか。凄惨な場面を想像したのか、女性である二人に問いかける。

 

「大丈夫。いくつか経験しているわ。それに、メシア教は積極的に狩って行きたいの」

 

「天使の死霊が欲しくてな。報酬は二の次だ。そういうカムイニキはどうなんだ?」

 

 暗い表情を覗かせつつも、硬い決意を感じさせる忍者ネキに、純粋に好奇心で来たようなアンリネキ。逞しい女性陣だと思いながら、質問に答えるカムイニキ。

 

「天使と犯ってみたかった」

 

「一番しょうもないな!」

 

 

 

 

 

 

 

「ここら辺に異界の入り口がありそうだな」

 

 名古屋周辺のベッドタウン。事前情報から教会周辺を捜索していた彼らは、MAG濃度の高い場所を見つけることに成功。それは案の定、あの教会だった。

 

「入り口は教会の中ね。二人は潜入は出来る?」

 

「多少は出来るが、得意ではないぞ。侵入は得意なんだがな」

 

「専門外だ」

 

 天使目当ての二人は戦闘の方が専門。隠密行動も出来なくはないが、得意とは言えない。

 

「なら私が先に入って寝かせてくるわ」

 

「中の反応は二人だ。天使は居なさそうだが、気をつけろ」

 

 忍者ネキは任せてとでも言うように手を軽く振りながら、無造作に、まるで散歩道を歩くようにして、礼拝堂にいる神父の元に向かう。そして、明らかに視界に入っているのに気づく様子のない神父の口元に何かを押し当て、ぐったりと力の抜けた体を椅子に寝かせると、教会の奥に進んでいった。

 

「やばくね?」

「やばい」

 

 見事な手際に思わず語彙が消失する。気配を断ち、姿を消すような隠密を想定していたら、「そもそも敵意や不審を抱かせない」という意味不明な手腕を見せつけられたのだ。さもあらん。

 

「内部も軽く見てきたけど、建物に不自然さは見当たらなかった。異界については……なんともって感じね。LAW属性のMAGに溢れてて違いが分からなかったわ」

 

「それなら私の番だな。来い、ライジュウ。【現場検証】*1!」

 

 アンリネキの呼び声に応えて現れた【悪霊 ライジュウ】が周囲に放った雷が、隠された物を明らかにしていく。いくつもの秘密が暴かれた中に、確かに異界の扉はあった。

 

 

 

 見渡す限り続く花畑の中心に、天を貫くように巨大な大聖堂がそびえ立つ。ここが楽園だと言われれば、そうだと信じてしまいそうな程に神聖な場所。

 

「うげぇ〜。LAW属性が強くて死霊が弱体化する〜」

 

「静かに。見つかるぞ」

 

 しかし、感想は人それぞれ。

 特に、使役している死霊が弱体化してしまったアンリネキには大不評。今も、いつものように技能を使わせようとした死霊が露骨に不調に陥り、直ぐに引っ込めざるを得ないのに文句が口をつく。

 他の二人も言葉にこそ出さないが、肌を刺すような秩序の気配を鬱陶しそうにしている。

 

 実のところ、異界に入ってその尋常ではない威容を目にした瞬間、三人は即座に撤退を判断していた。しかし、入ってきたはずの入り口は既に消失。

 本来ならアンリネキが【トラエスト】を持つ死霊を抱えていたが、空間全体に妨害が敷かれており、徒歩での脱出を余儀なくされている状況だった。

 

 式神を先行させながらの探索は、順調に進んでいるとも言えるし、そうでないとも言える。

 

 ハプニングはあったものの、内部探索自体は順調だ。忍者ネキの気配隠蔽やアンリネキの死霊の隠密を駆使し、戦闘を最小限に抑える。避けられない戦闘はカムイニキが接触状態のドレイン攻撃(房中術)で増援を呼ばれる前に素早く仕留める。

 

 今の所上手くは行っているが、数が嵩めば露見の可能性は高くなる。早く脱出の目処を立てたいと全員が思っていた。

 

 不幸中の幸いは、この短時間で、彼らの連携は対天使に限って言えば随分と磨かれていること。

 

「来ました。数は1」

 

 カムイニキの式神のシヅカの宣言通り、曲がり角から一体の天使が現れる。

 

『人の子よ。何をし「【パララアイ】」てっ……』

 

 アンリネキが、配下の力を自らが行使する術によって動きを止め、次の瞬間には硬直した天使の首を忍者ネキがスキルを纏った短剣で掻き切る。

 

「大人しく死んでな」

 

 最後にカムイニキがネットリとしたディープキスとハグによる【エナジードレイン】でリソースを奪い取り、抵抗される前に死に至らしめる。その後、奪い取ったリソースを二人に譲渡する。

 そうすることで、全体の消耗を抑えながら探索を続けていた。

 

 

 

「おかしい。人がいるのに出入りの痕跡もないなんて」

 

 忍者ネキがそう呟く。

 既にこの異界に入って結構な時間が経っている。一向に出入り口は見つからず、それどころかここから人が出ていった痕跡が見つからない。異界には天使だけでなくメシアンもいるのを確認しているのに。

 

「見逃しか、既に出入りが必要ないってパターンは?」

 

「盗み聞きした会話からして、結構な人数が参加しているはず。それだけの人数が参加しておいて目立たない程度の量の物資で足りるとは思えない。

 それに、中庭で儀式の準備をしている最中なのに出入りが終わっているとも考えづらい」

 

「ギミックの方も変だぞ。要塞か前線基地のはずなのに出る方を制限してる。それにLAW属性も濃いってだけで特別なギミックまでは行ってない。こういうのは弱体化と強化を入れるのが定番のはず」

 

 次々と湧き上がる違和感。自分たちが探索しているこの場所は何なのか?

 

「そもそも地脈式の天使召喚は、準備にそこまで時間がかかるようなものじゃないはず。LAW属性に染める必要があったとしても、陣が用意されていない理由にはならない……」

 

「天使は初めてだから分からんが、あいつらのMAGから生臭さがするってのはいつものことか?生臭坊主と言われりゃそれまでだが」

 

 

「ミス・ヘルタのお言葉です。『それらについても説明があるから、これに着いてきて』とのことです」

 

 背後から聞こえてきたその声に、三人共が飛び退き、式神が主を守るように前に出る。そこにいたのはアンティークドールを思わせる少女。

 

 名古屋支部でパーティーの穴埋めに貸し出される、人形の少女だった。

*1
ライドウシリーズより




カムイニキ
元ネタ「後ろの正面カムイさん」
対外的にはドレイン系を名乗っているが、房中術が一番得意。最近は悪魔をヤリ殺している。成功したTS魔人ニキネキ。
式神は原作の助手。

アンリネキ
元ネタ「勇者が死んだ!」
ネクロマメインのデビルサマナー。使役している死霊を起点に自身の術を放ったりも出来る。最近は入れた物を縮小する霊装に死霊を入れて、そいつの能力を自分で使えるようになった。
式神は原作での勇者。

忍者ネキ
元ネタはなし
やたら隠密がうまい。気配を消すだけでなく、周囲に埋没することや一般人に偽装することも可能。警戒を抱かせない。
式神も特に元ネタ無し。

主人公出すタイミング無かった
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