時は少し遡る。
多神連合がエジプトにて決定的な敗北を喫した。
この世界におけるメシア教の覇権が決定的なものになった瞬間だった。
そうなると、怖いのは霊王へのハッキングな訳で、対策をしようと思い立ったのだ。
四文字の加護は大幅な性能強化をもたらしてくれたが、正直扱いきれていない。未だに性能は理論値から離れないし、加護があるからこそ使えるみたいな機能も無い。設計段階には無かった仕様だからしょうがないとはいえ、もったいなく感じる。使える物はとことんまで使い切りたいじゃん?
それに、厄ネタでもあるのだ。この世界で暴れに暴れているメシア教はアブラハムの宗教。半ば以上天使信仰になっているとはいえ、四文字の聖遺物とも言えるこれをそのままにしておくはずがないのだ。存在を知ればの話なので今の所問題は無いのだが。ある意味で誘蛾灯のような物。
そんな訳で、加護を十全に扱えて、よって来た蛾を叩き落とせる。そんな都合のいい存在いないかなー。
「重責すぎてやだなー、面倒ー」
ないのなら、作ってしまえ、メタトロン(5・7・5)
3分クッキングよろしく、用意しておいたメタトロンです。金髪金眼、ゆったりモコモコのパジャマのようなワンピースとヘッドホンが特徴的な、見た目と性格はメタジャン第二再臨。うっかり働き者が出てくると嫌なので、ベルフェゴールと取引して手に入れた怠惰の概念を添えて。
いやまぁ実のところ本物のメタトロンではないんだが。
言うなれば、【魔神〈私はメタトロン〉ミトラ】。メタトロンを名乗るミトラというのが正解である。元々ミトラスやミトラはメタトロンと同一視される神格であり、小YHWHというの以外は権能も大体一緒である。
それを利用して、ズルワーンの配下ということに出来るゾロアスター教のミトラに少しの天使要素を入れた式神コアを作り、四文字の加護が宿る滅却師システムと連結すればそれはもうメタトロンだ。そういうことにした。
スキル的には呪殺属性を失った代わりに万能属性が強化されたミトラ。一応【シナイの神火】*1が使える程度にはメタトロン。
メトラ・トロンヌと名付けた彼女と暇潰しのゲーム中。
「ぶい」
「これ全能使ってるよね?」
遊びなので異能は縛っていたんだが、あっちは全開でやってたらしい。何処に力を入れてるんだよ。初戦以外全敗なんだが?そっちがその気ならこっちも未来視開放してやんよ。
先の先の先を読むような勝負に白熱はしたが、結局負け越しで時間切れ。運命操作までやると流石に面白くないので自重した。
「それで、メシアンは上手く集まってる?」
気を取り直して、計画の進捗を尋ねる。
現在、名古屋周辺のメシアンを招集中。メタトロンの名前と書紀としての力を使えば面白いようにおびき寄せられた。そして用意してあるハエ取り用の異界に集まった所を、しっかり一掃するってわけ。それにしても、上位天使の指令が来ただけで信じてしまう思考停止具合はちょっと引くわ。
「それは順調ー。そろそろ1回裁いておく?」
「招待客は全員揃った?」
「もうちょっと、かな?
正しい主の教えに改心して、別の意味を読み取れた人もいるかもだけど」
こちらがばらまいた
一旦叩いといた方がいいかな?
異界ギミックとして、LAW属性の好物である
そう考えていると、携帯が鳴る。画面に写っているのはヘルタの名前。
『問題発生。黒札が三人蟻地獄に入ったのを確認。
対応した人形の
「メトラ、異界内の状況は?」
「あー、順調に探索してるよ。戦力的な問題はないみたい。でも、アナウンスに介入されてる?意味あることをしようとしてる集団がいるみたい」
結構まずいかこれ。同一犯だよな。でもわざわざ天使とメシアンを使って、黒札を呼び寄せて何をしようとしてる?
「メトラはその何かしようとしてる集団を追跡して目的を調査。ヘルタは黒札の迎えに人形を寄越して」
大きめのことをやろうとすると毎回こんなんだから嫌になるね。
◇
異界にある聖堂の最上階。神の威光に最も近く、天使達はメタトロンが居ると思っている場所で、黒札の三人とヘルタ人形がソファに座って向かい合う。
「それで、そいつらの目的は何なんだ?」
派遣した人形を、ヘルタのネットワークに接続して遠隔操作し、事情を説明。自分の声が美少女の物だと、どうにも違和感あるな。
依頼の報酬に色をつけて払うことを約束して、帰ることを勧めたが、カムイニキ達は深入りするつもりらしい。
『帰るつもりはない感じ?』
「事情によっちゃ大人しく帰るが、出来れば何が起きてるのかくらいは知りたいな。人並みにこういう状況への憧れはあるんでね」
カムイニキの隣に座る女性二人も、彼の要求については同意している様子。これは事情を詳しく話さないと穏便には引き下がらんな。
『こいつは言っちゃってもいいか。目的はハスターの召喚。聖書に偽装した「黄衣の王」を何冊も持ち込んでいるのを確認したからほぼ間違いない』
厄ネタ中の厄ネタであるクトゥルフ系神格の召喚と聞いて、場に緊張が走る。
クトゥルフ神話において、既存の神格の正体が実は旧支配者や外なる神という展開はよくあることだ。作者が怪電波を受信して悪魔から得た情報で書いたのか、書かれたことでそういう悪魔が生まれたのかは定かではないが、神話のスケールがデカイが故に破格の力を持っているのが彼らだ。
「それにしては、なんで支部長が一掃していないのかしら。あなたのレベルが50以上というのが本当なら、ここに居ないのが不思議なのだけど」
『まぁ当然の疑問だね。
簡単に言うと、俺はこの異界から締め出されてる。一定のタイミングまで俺を入れない代わりに、ほか全てが素通りのルールだ。強引に入れない事もないが、その場合は異界が崩壊して、半端にクトゥルフ汚染された天使共が現世にばら撒かれる』
「そのタイミングってのは何時なんだ?」
『ハスター降臨』
一番酷いと、俺が入った時点でハスター降臨が達成されたことになって実際に出てくるんだよな。
俺は五条悟でもないしここは呪術廻戦でもないんだが。
『この異界の規模とリソースなら、呼べても大した霊格じゃないはずだから出待ちする予定なんだけど、それでも帰らない?』
「せっかくだし犯ってみたかったが、それなら無理は言えねぇな」
名状しがたい邪神ともか……あえては触れまい。
「狂気耐性鍛えねぇと。式神がその辺もブロックしてるんだったか?」とか言ってるのも聞こえない聞こえない。
『他二人も良かったか?』
「私は天使を確保出来たからもういいぞ」
「正直、これ以上は足手まといになりそうだから素直に帰らせてもらうわ」
『じゃあ送るか……マジ?あ、ごめんちょっと待ってて……』
「同期を一時停止しました」
メトラに
『ちょっと緊急事態。ほぼ今すぐハスター出てくるわ。脱出阻害ギミックはこれ持ってれば回避出来るから、自分らで逃げてくれ』
ゾロアスター教の聖典であるアヴェスターを渡して、接続を切ってこっち側から向かう。
どっちにしろハスターが出てくるのであればと、リスクを無視して権能を用い、異界に侵入。目につく天使やメシアンを殲滅しながら聖堂の中庭、
しかし、そこにはもう顕現していた。
邪神の依代となった憐れな天使の皮膚が割れ、グズグズに溶けたかと思えば、煤けた鱗のようになって固まる。傷口から飛び出した名状しがたい黄色の粘液も、空気に触れた瞬間から歪な組織を織り成して布となり、依代の体を覆う。その顔にはいつの間にか白磁の仮面をかぶっており、元が何だったかなどもはや関係がない。わざわざ引き裂かれたような純白の翼のみを残して、ついにはかろうじて人型を保っているだけの触手の塊へと変貌した。
同時に、凪いでいるはずなのに、耳の奥で直接『ウサギの悲鳴とフルートの不協和音』を混ぜたような音が鳴り響く。空間の裂け目から、腐肉と蝙蝠の翼を掛け合わせたような
「メトラ、やれ」
「怠惰返上!!
天から降り注ぐ神の威光が開戦の合図となった。
【邪神 黄衣の王Lv.60】
次がクライマックスです。
黒札三人
ニャルに今回のPCに選ばれた人。一番のお気に入りはカムイニキ。
ニャル
勝手にTRPGを始めた邪神。何をやってても不思議ではないから大体の悪事に加担させられる便利屋。
優羽
式神技術が便利すぎる。一応封魔管技術も納めたが、式神に付随するセキュリティ目当てに仲魔は式神にしがち。
メトラ・トロンヌ
メタトロンを名乗る魔神。ミトラ系は殆ど信仰が廃れてるので、自我がある程度残った状態からでもすんなり従った。一応主神の転生体だし。